インタビュー

「『Redmi Note 10 JE』の開発費は100億円」シャオミのスティーブン・ワン氏インタビュー

 シャオミ(Xiaomi)は2日「Redmi Note 10 JE」を発表した。KDDIから発売されるキャリア版で、auとUQ mobileから発売される。

 シャオミ東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン(Steven Wang)氏は、弊誌を含めたグループインタビューに応じ、「Redmi Note 10 JE」やシャオミの日本市場についての考えなどについて答えた。

シャオミ東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン(Steven Wang)氏

「Redmi Note 10 JE」の開発について

――FeliCa機能の搭載について、「Mi 11 Lite 5G」の際はグローバルモデルと一緒に作られたという話だったが、今回はMi 11 Liteとプロセスが異なり、ベースとなる機種にFeliCaや防水など日本向けのチップセットを加えたのか?

Mi 11 Lite 5G

ワン氏
 まず、「Mi 11 Lite 5G」はグローバルモデルですが、「Redmi Note 10 JE」は日本市場専用モデルになっています。

 ただ、実際は「Redmi Note 10 5G」をベースに大きな変更を加えてできたモデルとなっています。最も大きな変更となったのは、IP68相当の防水防塵性能を入れたことです。アーキテクチャー全体を変えることになりました。

 また、「Snapdragon 480 5G」の採用については、「日本市場で何が求められているか」を考え柔軟にカスタマイズしました。

 今回の開発は、かなりコストのかかる「踏み込んだ開発」を行っており、おそらく100億円ほど資本投入していると思います。

――昨年KDDIから発売されたモデルは、「Mi」シリーズだったが、今回「Redmiシリーズ」になったわけは?

ワン氏
 キャリア向けのデバイスについて、シャオミは広範なデバイス、広範なテクノロジーから適切なものを選択して提供できます。

 そういったなかで、シャオミとキャリアが協議し、キャリアの戦略的な目標達成のため最も有益なモデルを選択しています。

Mi 10 Lite 5G

 昨年の「Mi 10 Lite 5G」は、日本市場でコスパのいい5G端末という位置づけで提供しており、今回も同じような位置づけで提供します。

 「これまで高価格帯の製品でしか提供されなかった新しい技術をあらゆるユーザーに提供する」思考で動いた結果、今回の機種選定に至りました。キャリアの戦略にも合致したものになっていると考えます。

「おサイフケータイ」はあって当たり前の機能

――「おサイフケータイ」機能(FeliCa)について、シャオミ端末では今回で3機種目の搭載となる。その一方で、「日本国内での利用率はそんなに高くないのでは?」という声が聞かれるが、シャオミとしてFeliCa機能についてどのように考えているのか?

ワン氏
 これは、私個人の意見になりますが、シャオミは日本市場で「FeliCa」や「防水防塵」といった機能を搭載した端末を発売し、「日本市場で最も求められる製品はなにか?」を探っています。今年出した製品のデータをふまえ、来年はさらに日本市場を捉えた製品開発ができると思っています。

 FeliCa機能については、「今でもかなり重要な機能」という認識です。

 ご指摘の通り、FeliCa機能の使用率はそれほど高くないと我々も認識しています。しかし、FeliCa機能の搭載で「ボーナスポイントは稼げない」が、搭載しないと「マイナスポイントになってしまう」と理解しています。

 言い換えると、「FeliCa機能があるからより高い価格を払ってもらえるものではないが、搭載していないと別の製品に流れてしまう」ものだと考えています。

 そのため、FeliCaの有無は製品に影響を与える要素であると考えます。

――今回採用したチップセット「Snapdragon 480 5G」について、エントリー向けのチップセットという印象だが、シャオミはどのような評価をしているのか。なにか製品でユーザーの使い勝手がよくなるよう工夫しているものはあるか?

ワン氏
 全体論として、スマートフォン向けのチップセットは、年々劇的に改善され続けており、今やエントリー向けのものでも5Gの機能を搭載しており、使い勝手もよいモデルになってきているという状況があります。

 エントリーモデルを購入するユーザーは、「最高の性能」は求められておらず、「日常的に使う一般的な機能を心地よく使える」ことが求められていると考えています。インターネットブラウジングやチャットアプリなどがスムーズに使える性能が求められています。

 「Snapdragon 480 5G」は、高速通信できる5Gに対応しており、クアルコム(Qualcomm)製のチップセットで信頼性が高く、そしてスムーズに普段遣いできる性能を持っているチップセットです。

 「Redmi Note 10 JE」では、これに加え高速駆動に対応するディスプレイと高画素カメラを搭載していますので、これらの処理にも対応できるチップセットということで選んでいます。

KDDIの知見とシャオミの技術の集合

――「Redmi Note 10 JE」は、KDDIのみで販売される端末か? SIMフリーなどで販売されるのか?

ワン氏
 「Redmi Note 10 JE」はKDDIのauとUQ mobile向けの製品です。KDDIのみへ提供される端末です。

――KDDIからどういう要望/ニーズが上がってきたか? FeliCa搭載や防水防塵性能は、KDDIの要望だったのか?

ワン氏
 まず、ハードウェアについては、「日本市場専用」のモデルということで、非常に柔軟にスペックを選択できました。KDDIとシャオミはともに共同プロダクトマネージャーのような役割で開発しており、KDDIからは日本市場に関する知見を提供いただき、シャオミからはプロダクトに関するアイデアを提供し、製品を作り上げていきました。

 プロセッサーの選択は、KDDIからの知見を元に選定し、FeliCaと防水防塵性能は、KDDIからのリクエストに応じて搭載した機能です。

 高速リフレッシュレート対応デジスプレイや4800万画素のカメラ、大容量バッテリーなどは、シャオミが提供する機能で、お互いに知見や技術を持ち寄って作り上げていきました。

 ソフトウェア、とりわけユーザーインターフェース(UI)については、昨年KDDIから発売された「Mi 10 Lite 5G」やそれ以前の端末で得られたフィードバックを元に、さまざまな改善を、細かな部分まで最適化しています。

 また、auのエコシステムへの統合化にも取り組んでいます。たとえば、電源ボタンを2回押すと「au PAY」アプリが起動しかんたんに支払える機能を搭載しています。

シャオミの日本市場の考え方

――「Mi 11 Lite 5G」の売れ行きは?

ワン氏
 「Mi 11 Lite 5G」は「コストパフォーマンスが衝撃的」や「デザインが素晴らしい」など、市場でも非常に好評を頂いています。

 実際、7月現在で生産が追いつかない状況になっており、日本でも入手が難しい状況となるくらい好調で、予想を上回る売れ行きとなっています。

 シャオミから2021年に発売したデバイスは、すべて非常に好調に推移しております。日本市場向けには、カスタマイズを施して販売しているため、大なり小なりコストが掛かります。このカスタマイズの判断が功を奏し、全体のボリュームを押し上げられたと考えています。

――今回の「Redmi Note 10 JE」では、100億円ほど開発費がかかった(1問目の問い)とのことだが、100億円という金額を支える理由はなにかあるのか? 「Redmi Note 10 JE」だけでペイする考えなのか、好調な日本市場向けデバイスを考えてのことなのか?

ワン氏
 「Redmi Note 10 JE」だけでぜひ開発費を回収していきたいですね。でないと、「Redmi Note 10 JE」は結局赤字だったということになってしまうので。

 研究開発費用は多くかかってしまいます。「Redmi Note 10 JE」は、ほかのモデルと異なり「日本市場だけで販売される」製品であるため、グローバルで開発費を回収することができない、日本でのみ回収できるモデルになります。

 シャオミは、日本ではまだまだ新参者だと考えており、まだ大きな利益をあげようと思っていないことや、KDDIの非常に強力な販売チャネルで提供できるということを踏まえると、今回の100億円という開発費は、十分に有意義なものだと考えております。

 一方で、日本市場で大きな赤字をだすということも避けたい、という考えもあります。

――現在、シャオミはソフトバンクで「Redmi Note 9T」、KDDIで「Redmi Note 10 JE」、SIMフリーでまた別の機種というように、キャリアやSIMフリーで機種を分けて提供している。一方、ほかのメーカーでは、同一機種を2つ以上のキャリアやSIMフリー版で提供しているところもあるが、シャオミとしては端末の展開方法は変わらないのか?

ワン氏
 2021年は、シャオミにとって日本のマーケットに取り組んだ「最初の年」ということで、いろいろ試している状況にあります。

 日本市場は、「どの製品を展開するか」「製品をどう開発していくか」という点で非常に難しいマーケットだと考えています。

 できるだけ迅速にデータを収集したいという思いから、さまざまな販売チャネルでさまざまな種類の製品を展開しているという状況なので、チップセットの種類やFeliCa/防水機能の搭載有無など、いろいろ試しており、今後これらの取り組みが土台になることで、将来よりよい製品開発ができると考えています。

 今後、製品モデルを固めることができれば、さまざまなリソースを節減できるようになりますが、これには販売チャネルのパートナーの皆様とも協議して決めなければなりません。販売パートナーのニーズなどもお伺いしながら決定していくことになるので、現段階では明確にお答えすることは難しいです。

――本日は、ありがとうございました。

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