インタビュー

KDDI、携帯料金値下げの影響で年間約700億の減収見込み――決算発表での質疑応答

 KDDIは30日、2022年3月期第1四半期決算を発表した。本記事では、同日午後の決算説明会における質疑応答の様子をお届けする。

――まず、春の携帯料金値下げの影響を教えてほしい。

高橋氏
 料金の値下げによってお客様に還元するという部分と、現在推進している5G通信によって、データ通信料の収入が上がってきたという部分があります。この2つをネットすると、年間としては600~700億程度の減収が出ます。また、第1クォーターに限ると117億円程度の減収になります。

――値下げの影響について、「au」「UQ mobile」「povo」のうち一番大きい影響を受けたものはどれか。比率も知りたい。

高橋氏
 比率についてお答えすることはできませんが、我々でいうとUQ mobileやpovoにお客様が流れていきますので、auの稼働数がその分減少していきます。

 その分UQ mobileやpovoの加入者数が増えていくという構造ですので、総量として一番影響を受けているのはauになります。

――値下げの影響をカバーしたものとして、成長領域のほか、「その他」のプラス126億円というのが大きい要素だと思うが、こちらの内訳を教えてほしい。

村本氏
 詳しい詳細の数字については控えさせていただきますが、ひとつはローミング収入です。それからもうひとつは、海底ケーブルの修繕引当金の戻しや、あとポイントの引当などの戻しといったものになります。

――今期に提供がスタートしたpovoの加入進捗を知りたい。

高橋氏
 povoの契約数は、現在でおよそ100万です。

――契約数の伸びはどうなっているのか。

高橋氏
 povoの提供開始時には契約数が急激に伸びたが、我々がUQ mobileへの注力を強めた結果、(povoの契約数が)現在は落ち着いたという状態になっています。

――povoのトッピングについて、追加のトッピングがまだ公表されていないが。

高橋氏
 追加のトッピングについては、今は出していません。現在はUQ mobileに力を入れています。ただ、povoについては個人的にも非常に思い入れがあるものになりますので、今お話しできることはありませんが、いろいろと検討を進めています。

――ソフトバンクの「LINEMO」への対抗策について教えてほしい。

高橋氏
 すぐには手を打ちませんが、お客様の声や市場動向を注視して考えたいと思っています。UQ mobileの「でんきセット割」では、月額990円を提供しはじめ、お客様からの評判も良いという状況です。しっかりモメンタムを回復することに全力を注いでいきます。

――UQ mobileとpovoの、5G対応の計画について知りたい。

高橋氏
 UQ mobileもpovoも、5Gに対応するのは心に決めたので対応していきます。時期は、近日中にお知らせできるように準備を進めています。

 方向性は間違いなくすべて5G対応で、少なくともできるだけ早く対応していきたいと思っていますので、今しばらくお待ちいただきたいと思います。

――数年は収入が減収していくと思うが、5Gの推進によってデータ通信料収入が増えていくことも期待できる。それが逆転し、収入が増えるタイミングはどれくらい先になるのか。

高橋氏
 タイミングについてお答えすることはできませんが、5Gを使っているお客様のトラフィックと4Gのお客様のトラフィックを比較した場合、(5Gが)倍以上のトラフィックを生んでいます。

 要因は明らかに動画サービスによるもので、これによってトラフィックも倍以上になっており、我々にとってはプラスの要素です。

――MVNOの利用者からpovoやUQ mobileへ、どれだけのユーザーが流入してきたのか。

高橋氏
 手元に資料もありませんし、開示もしておりませんので差し控えたいと思いますが、それほどインパクトを与えるような数字はなかったように思っています。

――MVNOとMNOは、今後どのように市場を分け合っていくと考えているか。

高橋氏
 今の政策は、MNO4社で競争してスイッチングコストを下げることにより、お客様に対する還元を広げていこうということです。したがって、競争によってお客様へのサービスを良くするということは、我々としても望むところというか、やっていかなければいけない最大のテーマです。

 ですから我々も努力していくことになりますが、それによって我々のネットワークをお使いいただいているMVNOの方々の料金も下がっていくと思います。

 ただ、将来的にどうなっていくかということについては、あまり考える余裕がないというのが正直なところです。事業としては収益が落ちていく方向になりますので、これを成長させるのに一生懸命です。

――先日発売された雑誌で、菅総理大臣が「携帯電話料金はさらに下げられる」と発言していたが、それをどう受け止めているか。

高橋氏
 その雑誌を見ていなかったのでお答えするのが難しいですが、先ほどお伝えしたとおり、スイッチングコストを下げて安い料金をお出ししていくという動きは、今後も続いていくと思います。

 今回も減収が出ていますが、我々も企業ですから、さまざまな事業領域でそれをリカバーしながら増益を目指していきます。したがって、競争の結果としてもたらされるお客様への還元については、継続されるべきものだと理解しています。

――半導体不足について、基地局の整備計画やスマートフォン供給への影響は。

高橋氏
 半導体や、それに起因した部品の不足が、世の中で大きな課題になっています。したがって、我々も購買部門を中心に、非常に慎重に情報を集めているところです。

 今のところ基地局建設という点で大きな支障が出るとは聞いていませんが、伝送装置で一部影響が出ているようです。ただ、これによって基地局整備に大幅に遅れが出ることはないと思っています。

 スマートフォンに関しても、今のところは大きな影響がないかと思っていますが、AppleさんのiPhoneに関しても報道がありましたので、そのあたりは慎重に様子を見て対応したいと思います。

――3Gの停波が近づいているが、通信設備の切り替えや、3Gを利用している既存顧客の移行状況などをどのように評価しているか。

高橋氏
 個人のお客様、それから法人のお客様の双方について、停波に向けての会話を進めていますが、今のところは順調に進んでいるという印象です。

 法人に関しては、先ほど半導体不足の話がありましたけれども、やはり若干の遅れがあるような状況です。ただ、3月末までに会話を続けていき、予定通り停波ができると考えています。

――ソフトバンクやドコモよりも早く3Gをやめることのメリットとデメリットを教えてほしい。

高橋氏
 大きいのは、3G停波によって設備の運用コストが下がってくることです。また、3Gの設備は消費電力が大きくなっていますので、それが5Gの設備に置き換わりますと、脱炭素の面で貢献できるかと思います。

 悪いところとしましては、今期、停波に伴うコストが掛かっていますので、それは今年度の業績においてマイナスに働くかと考えています。

――販売代理店のあり方について、KDDIとして評価制度の見直しは考えているのか。

高橋氏
 販売店さんに対する評価制度の見直しにおける課題については、十分認識しています。我々としては真摯に受け止めて、改善に向けて動いていきたいと思います。諸官庁からの要請はいただいておりますので、別途回答を予定しています。

 世間的には総務省さんのご指導によって端末と通信料金の分離というのが推進されていきますし、日本の人口減少ですとか、Web契約の推進もありますので、通信事業において非常に重要な販売チャネルについては、今後もしっかり検討していきたいと思っています。

――成長領域ではライフデザインとビジネスの部分が伸びているという形だったが、新型コロナの影響はどういったものになるのか。

高橋氏
 ライフデザインについては、金融やキャリア決済関係など、すべての領域が順調に伸びていると思っていただいて結構です。

 新型コロナの影響という意味では、スマートフォンでゲームなどを楽しむお客様は増えているようでして、それに関連するビジネスは成長していると思っています。

 ビジネスセグメントのところにつきましては、コーポレートビジネスに関して、コロナ禍で働き方が変わっている企業もあります。早くこの事態が収束してほしいという思いは当然ありますが、ビジネスのほうにはプラスの影響があるというところです。