インタビュー

ドコモのAIエージェント「my daiz」開発の舞台裏

キャリアならではの“先読み”がもたらす利便性

 5月30日、NTTドコモが音声対応のAIエージェントサービス「my daiz(マイデイズ)」の提供を開始した。鉄道の遅れや、急な雨、スケジュールに入れた予定を事前に知らせるなど、ユーザーの行動を支援するというものだ。

 これまでにもGoogleアシスタントやSiri、Alexaなど、さまざまな企業が音声対応のエージェントサービスを提供する中、NTTドコモの「my daiz」はユーザーの情報をもとに、「先読みして情報を提供する」ことを特徴に打ち出す。競合がひしめく中で「my daiz」の開発をリードした、NTTドコモのエージェントサービス担当部長の関崎宜史氏、第一エージェントサービス担当課長の近藤佳代子氏、第一エージェントサービス担当の大場さおり氏に話を聞いた。

左から大場氏、関崎氏、近藤氏

「ひつじのしつじくん」去る、その背後に「my daiz」のコンセプト

――サービス開始から2週間(取材時点)になります。

関崎氏
 「my daiz」は、これまでドコモが提供してきたiコンシェル、しゃべってコンシェルのアプリをアップデートすることで利用していただけます。これにあわせて「ひつじのしつじくん」というキャラクターは表に出てこなくなる(※雑談用の機能で収録されている)のですが、サービスローンチ後、寄せられる声を拝見していると、ひつじのしつじくんが居なくなったことをさみしく感じられる方が非常に多いんです。

近藤氏
 利用者数などは現時点では非公表なのですが、計画に向けて堅調と見ています。バージョンアップで驚く方がいる一方、今回をきっかけとして初めて使い始める方もいらっしゃいます。Twitterなどを拝見していると、雑談をして「こんな返事をしてくれた」と想像以上にいろんな語りかけをしてもらっていて、ありがたいです。

――iコンシェル時代から雑談の利用は多いというお話でしたよね。ひつじのしつじくんを惜しむ声が挙がることは、開発サイドにとって予想の範疇だと思うのですが、なぜキャラクターを変更することにしたのでしょうか。

発表会では「お豆腐」とも呼ばれたmy daizのキャラクター

近藤氏
 キャラクターについては、たとえば線が波打って話している様を表わすようなもの、あるいは丸が動くようなものなど、人格や性別はまったく感じられないパターンなどがあって、さまざまなものを検証しました。そうした中で、愛着を持って話しかけていただくには、「表情」をあらわせることが大事なんだという結論に至ったのです。単なる情報の窓口、ゲートウェイではなくって、あの四角いキャラクターにも、何か性格をうかがわせる仕草があって、お客さまへ伝える言葉にも暖かみがある。それを実際に体験していただければ嬉しいですね。

――それはよくわかります。しかし、それでもひつじのしつじくんの卒業は仕方がないことだったのでしょうか?

近藤氏
 私たちは、これまでiコンシェル、しゃべってコンシェルを運営してきたチームでもあります。ひつじのしつじくんにはもちろん愛情があります。でも今回、「先読み」というコンセプトを取り入れて、パーソナライズした情報を届けられること、さらにはパートナー企業にも参加していただくことになりました。サービスやコンテンツのバリエーションが広がっていくときに、「1つの存在」が全てを語るのは限界があるよね……と考えたのです。それと同時に、パートナー企業さんそれぞれのエージェントが登場するアイデアもありました。そのあたりをうまく表現できるキャラクターに進化することも重要だ、というのがきっかけですね。

my daizが登場する1年前、2017年6月の発表会で示された、パートナーごとのエージェントのイメージ

 いろんなエージェントが入ってくるというのが、今までのiコンシェル/しゃべってコンシェルの考えとガラリと変化していることなんですよ。

――my daizが1つのプラットフォームになり、さまざまなパートナーが参入することでキャラクターの顔が1つでは足りなくなるということですか。サービスコンセプトの違いがキャラクターの変更に繋がっていったと。

近藤氏
 そこでのバランスを取るときに、キャラクターが最終的に変わったという形です。

大場氏
 ひつじのしつじくんへの思い入れはすごくあるんです。これまでのiコンシェルで、2割くらいの方が、ひつじのしつじくんへ「おはよう」「こんにちは」「疲れた」と話しかけて、どんな返事が返ってくるか、楽しみにしてくださっていました。そうした方々にmy daizをこれからも愛していただけるよう、無機質な形よりも誰かに話しかけている形はきちんと残したいと考えたんです。

5月の発表会で綾野剛、高畑充希、堤真一がmy daizを体験した

 5月の発表会では、高畑充希さんが「お豆腐みたい」と表現されましたが、私たちの中では、開発中、「はんぺんくん」とも呼んでいました(笑)。他にも「コンセント」「チーズ」と表現する人もいましたね。そんな風に身近な何かにたとえて、何かやってくれる、ユーザーを手伝ってくれる存在になるという、この四角いキャラクターは、数あるアイデアの中でもダントツで良いなと思ったのです。状況にあわせてシルエットも変化しますし、このキャラクターでいこうと。

「サービスごとにエージェント」、そのきっかけは“ご当地マチキャラ”

――サービスごとにエージェントというアイデアはすんなり出てきたのでしょうか?

近藤氏
 いままで、iコンシェルやしゃべってコンシェルとして、エージェントサービスを提供する中で、私たちは「生活に必要なものがこれかな?」と考えて、コンテンツプロバイダーの方々とうまく連携して、皆さんへ情報を提供する形でした。

 しかし、「究極のエージェント」というテーマで考えてみたら、個々のお客さまへ最適な情報を出すには、“お膳立てしたものだと足りなくなる”と思ったんです。

さまざまなパートナーのコンテンツが取り入れられる

 それよりも、たとえば銀行の取引情報は、その銀行が提供するエージェントと話したいと思われるのではないか……そこで専門のエージェントというアイデアが出てきました。たとえば旅行のときには専門のエージェントが出てきてもいいじゃないかというわけです。このあたりの考えの発端は、実は、「ご当地マチキャラ」など訪れる場所によって異なる情報を配信してきたことがあります。これまでをベースにしつつ、より特徴的に見せるなど、エージェントにバリエーションがあるという世界観が面白いんじゃないか。

 それが日常生活に近い感覚ではないでしょうか。たとえば役所を訪れたら係の人とお話しますよね。ドコモショップであればショップスタッフと対面してお話していただくことになります。場によってお話しする方も内容も異なってくる。初期の頃は、そういうイメージで、サービスごとに異なるエージェントが出てくると面白そうですよね。

関崎氏
 ……という説明を、上司である僕は受けたわけです(笑)。個人的には、とても面白いと感じました。そこで、当時、さらに上層部へと提案しにいくわけです。その中には、たとえば「エージェントと言えば1人ではないか」といった反応もありました。自分のかたわらにいるのは1人、その人が何でも対処するというのがエージェントじゃないのかと。

――確かに「執事」という言葉から連想するように、エージェントという存在は複数というよりも1人だけというイメージを抱いていました。

近藤氏
 my daiz自体はこれからも幅広さを進化させていきます。でも、本当に個人的な出来事で区役所を訪れるなんてときには、現実では秘書の方にはお願いせず、自分でやりますよね。そういう感覚をサービスの中で形にしていきたかったのです。

1年半で開発

――ちなみにそうした開発初期というのは、いつごろのことですか?

近藤氏
 そうですね……コンセプトの検討は、一昨年、2016年の秋冬のころでした。

――2017年初頭に米国の展示会「CES」でAmazonのAlexa対応製品が一気に増えたというニュースが飛び交いましたが、それよりも前の時期ですね。

近藤氏
 ドコモにとっては、2016年夏にタブレットで使える「iコンシェルホーム」を出して間もない時期でした。「iコンシェルホーム」を発表した会場では「タブレットを家でみんなで使うよね」「1人1人のエージェントがひつじくん以外がいると面白いよね」と、取材中の皆さんからお声をいただいたんです。そんな経験もあって、複数のエージェントという考え方が、面白いんじゃないかと考えました。iコンシェルホームで、複数のエージェントの必要性に思いが至ったのです。ユーザーインターフェイスもiコンシェルホームでは“玉がふわふわ浮かんでいる”という形でした。

――その当時、他社さんの動きをどう見ていましたか?

関崎氏
 米国でAmazon Echoが登場し、日本市場に登場するかもしれない、と考えていた時期でもありました。社内でも「日本に来たらどうするのか」と。調べてみると、音声というインターフェイスが、当時、思っていた以上に米国内で普及しはじめていました。

 エージェントサービス自体は、ドコモからiコンシェルを10年、しゃべってコンシェルを5年提供して、ある程度共感していただいてきましたが、それとはまた違った形での音声インターフェイスが日本でも多少なりとも広がる可能性はあると考えましたね。

特徴の「先読み」、その発端は

――その上で開発された「my daiz」は、ユーザーにあわせて、先読みすることが特徴とされています。どういった経緯で「先読み」がドコモの強みになると思われたのでしょうか。

近藤氏
 スマートフォンであれば、いつもお客さまと一緒にいて、行動が推定できます。先読みは音声エージェントと親和性が高いと思ったのです。またスケジュール情報も活用します。そろそろ出発する時間ですよ、とプッシュ配信でお知らせできるわけです。

 そして、キャリアならではの要素として回線契約の設定をもとにしたユーザープロファイルも許諾をいただいた上で活用できます。これらの要素は、他のサービスと比べた場合の強みになると思ったのです。次の行動に向けた提案をしながら対話もするというハイブリッド感を産み出していくことが、他社さんのサービスとの違いになり得ると考えを進めていったのです。

――なるほど。対話するという面で見ると、競合他社の中にはスマートスピーカーを提供しているところもあります。こうしたデバイスはドコモからは、現時点で登場していないわけですが、迷いはありませんでしたか?

関崎氏
 1ユーザーとしては、象徴的なプロダクトですし、興味はありました。その一方で、コミュニケーションを提供する企業の一員として考えると、多くの人がいつも在宅しているわけではなく、外に居る時間が多いこともありますよね。

 自宅に帰った瞬間は、スマートスピーカーのようなプロダクトが活躍できるかもしれません。しかし、日常の中では、家だけにある製品よりも、もっと身近にあるもののほうがいいのではないか。今はそれがスマートフォンで、将来はまた別の形のプロダクトになるかもしれませんが、常に手元にあるスマートフォンは、キャリアだからこその強みにも繋がります。

オススメしたいmy daizの機能

――そうして開発されたmy daizの中で、手応えを感じている機能はどういったものになりますか?

近藤氏
 ぜひ使っていただきたいのは「早めに出発アラーム」「雨雲アラーム」といった機能ですね。私たち自身、これは毎日役立つな、と思っている部分です。

大場氏
 my daizでは、雨が降りそうなら傘を持っていくよう進めたり、旅行する予定があれば目的地周辺の観光情報や旅行する時期の天気予報などを案内してくれたりします。これがパーソナライズし、先読みしたことによるコンテンツになります。

 単に天気予報をお伝えするだけではなく、「傘を持っていってね」というところまで踏み込んで表現したのはわかりやすいですよね。このあたりはこだわったポイントです。私自身、今度青森へ旅行に行くんですが、これにあわせて十和田湖周辺の情報をmy daizが配信してくれました。

雨雲が近づいていることを知らせてくれた
落雷の注意喚起も

関崎氏
 ユーザーインターフェイスは開発チームのみんなが頑張って良いものができあがりました。たとえば週末に家族とともにどこへ出かけようか、という場合に、規模が小さめなイベントの情報もお届けする形になっています。これは新しい気づきが得られるのかなと思っています。

チラシが届くと通知
自宅周辺のスーパーのチラシ情報が掲載されている
さまざまなコラムも掲載

近藤氏
 いわゆるお出かけ情報は、日常圏に居る場合と、旅行のように非日常圏に居る場合で、提供するコンテンツを少し変えています。日常圏では近隣のイベント情報など、内容がその時々で大きく変化するものをお届けします。一方、非日常圏だと位置情報をもとに著名な観光スポットなど、初めて訪れる人にとって嬉しいであろうコンテンツをお伝えします。このあたりはじわじわと感じていただけるかなと思います。

スケジュール件数を通知
タップすると予定表をチェックできる

大場氏
 これまでのiコンシェルは、移動中、その道すがらのご当地情報が配信されます。my daizでは目的地がはっきりしていれば、その目的地に関する情報になります。ちょっと賢くなったかなと思います。

数週間の学習で便利さを体験できるように

利用から間もないため、筆者が普段乗車しない路線の情報を案内してくるmy daiz

――私はまだ有料サービスを契約しはじめて間もないのですが、そこまでパーソナライズされた実感を得ていないですね……。

近藤氏
 あ、そうなんです。実は学習に数週間、お時間をいただくのです。徐々に徐々に、体感していただける場面が出てくると思います。

――そのことを感じられる場面がもっと増えるといいですね。

近藤氏
 はい、使い方を一緒に感じていただけるよう、努力していきます。「my daiz navi」というサイトもご用意しており、いろいろとご紹介していきたいです。「何を話しかけて良いかわからない」というのは、しゃべってコンシェルでもご指摘をいただきました。今回は「しゃべり方ガイド」も用意していますので、お試ししていただいてもいいですね。

 また「NOW」画面などで、スクロールするごとにmy daizのキャラクターのセリフも変わります。ここは工夫を凝らしたポイントでして、どんどん話題をお客さま自身が能動的に話しかけるのは大変ですよね。キャラクター側から話しかける形にすることが大切だと考えました。

――そうした使いやすさへの配慮は、どんな経緯で方針が整えられていったのでしょうか。そもそもドコモは幅広いユーザー層に利用されているので、文化と言えるのかもしれませんが……。

関崎氏
 ここまでにキャラクターから話しかける、お客さまの次の行動を促すといった話をお伝えしましたが、近藤がコンセプトを考えたころも「エージェントがどこまで立ち入るのか」というのは、開発陣の中で議論をしていたと思います。将来的には、ユーザーがして欲しいことを全て、エージェントが代行するということがあるかもしれませんが、今の段階では、最後の意思決定は人自身がやらなきゃいけないのではないか、エージェントは意思決定の手前を促すのが良いのではないか。

 リコメンドというとちょっと軽く聞こえてしまうかもしれませんが、1人1人の方にマッチする形でコンテンツを届けるところを追求したほうが良いのではないかと議論を重ねていましたね。そのときに、海外の動向などはあまり意識していなかったです。

 他社さんのサービスの中では、「今、この店に居ますよね。レーティングつけませんか」と通知してくるものもあります。一方、my daizはそうしたリアルタイム性よりも、ユーザーの行動を学習して、“次”に向けた提案をします。位置情報を活用させていただくという形は他社さんも当社も同じように見えるかもしれませんが、ちょっと違うんです。

 「この場所の次はあそこへ行く」といった形で学習できれば、お客さまの習慣や行動にあわせて、交通情報や気象情報を届ける、といった行動支援・促進のコンテンツを届けられます。それが実現できたかなと思います。

有料サービスと無料サービス

――5月の発表会では、報道陣からiモードのようなサービスを目指すのか? という質問もあがりました。my daizは、パートナー企業もコンテンツを提供できるようになっており、音声エージェントのプラットフォームでもあります。ここで気になるのは月額100円(税抜)という有料サービスの存在です。有料と無料を分けたのはなぜでしょうか。パートナー企業によっては有料コンテンツもあり得るのでしょうか。

近藤氏
 「my daiz」の無料・有料のどちらをお使いでも、エンドユーザーの方からすると、パートナー企業である“メンバー”のコンテンツサービスは同じように使えます。そこに違いは設けないというのがサービスプラットフォームとして目指すべきアプローチだと考えています。パートナー企業にとってもmy daizユーザーは全て同じと言える環境です。

 一方、my daizに有料サービスをご用意したのは、「先読み」という特徴で、行動を支援し促す形にしており、こだわった部分でもあり、価値を認めていただけると考えました。

――グーグルなどは音声エージェントを無料で提供しています。100円という利用料は少額ですが、この違いは大きく感じました。

近藤氏
 そこは結構いろんな議論をしましたね……。1つの考え方として、私たちは「必然的なプッシュ」と呼ぶことがあるのです。コンテンツをただ見ていただける状態はいわばプル型で、無料会員の方でもご覧いただけます。一方、有料サービスでは、個人に紐付いて必要な情報だからこそ“降ってくる”という形にしています。これは新しくお客さまに気づきを持っていただけるよう開発した部分です。その部分で料金をどうするのか。社内でも議論がかなりあったのは事実です。結果としては有料にしましょうと。

――my daizとは異なる部分ですが、昨今、消費者のさまざまなデータを集めて、マーケティングなどに活かすという動きがあります。実際にドコモでも、セブン&アイさんとの連携もありましたし、d払いでの購買情報の将来的な活用という話もあります。無料サービスにすることで、間口を広くしてより多くのデータを集めるという考え方は、みなさんの中でも議論されたと思うのです。端から見ていると、my daizの有料サービス提供という点はそうした流れと合っていないように思えたのです。

関崎氏
 そうですね。繰り返しになるのですが、iコンシェルを有料で提供してきた中で、全ての方ではないですが、気象情報や終電情報など「このタイミングでこんな情報が届くのってやっぱり便利だよね」と感じていただけた方もいらっしゃいます。最近ではiコンシェルでも、my daizでも自治体の広報情報を掲載するようになっています。そうした機能・コンテンツに、有料サービスとして価値を認めてくださっていた方がそこそこの規模でいらっしゃったわけです。事業者として、全てを無料にせずとも、有料サービスの価値があると考えました。

――なるほど。有料サービスのユーザーが一定数いると。競合他社はそうした面を狙っていくかもしれませんが……。

関崎氏
 無料サービスにしてユーザーを集めて広告などに活かすというのは、Webサービスでは一般的な手法ですよね。そこはあえて、今までと同じ建て付けで進めていくことに決めました。

近藤氏
 my daizの環境は、お客さまにきちんとフォーカスするというコンセプトです。だからこそ、どのパートナー企業のコンテンツを利用するか、お客さま自身、ユーザー自身が選ぶ形にしています。まるで「自分のためのチームを作る」ことになります。だからパートナー企業のことを、my daizでは「メンバー」と呼んでいるのです。

 もちろん全てを選ぶのは大変ですから、オススメメンバーが初期設定で選ばれますが、カスタマイズできます。何もかもが配信されるわけではなく、本当に必要と思える情報だけ、つまりお客さまがノイズから守られた形でエージェントが活動するわけです。こうした環境をご提供することも、有料サービスとして満足していただけるのではと自信を持っています。

これからのmy daiz

――将来について教えてください。業界動向としてユーザーの購買行動などのデータを活用する流れがあります。もしmy daizのユーザーが増えると、そこで配信される情報の内容について、精度がアップするですとか、何か影響があるのでしょうか? あるいはユーザー数の増加は、コンテンツの精度向上などと無縁なのでしょうか。

近藤氏
 個人的な主観なのですが、両方あるかなと思います。相関関係があって、何らかの傾向を予兆分析などできるようになるでしょう。利用者数が増えることで見えてくることがあるでしょうし、データを使った推定に活用できるかもしれません。

関崎氏
 ちょっと違う視点かもしれませんが、ユーザーが増えれば増えるほど、my daizの「NOW」画面や、プッシュ通知が増えると、いわば「個を深掘りする」形になります。私どもとしてはポジティブな循環をさせたい。パートナー企業のサービスをパーソナライズして提供することもありますし、たとえばdTVのエージェントが「この時間ならこんなコンテンツがオススメです」などと言う提案ができるかもしれません。

 対話機能では、どんどん話しかけていただけると、my daizの「耳」「口」にあたる機能が成長し、認識精度などを高められます。より求められる情報をしっかりお届けしやすくなると思います。

 そしてドコモとしては、この春からdポイントの会員基盤を軸にしていくことになりました。お客さまの承諾を得た上で、いわゆるDMP(データマネジメントプラットフォーム)でmy daizの情報を活用し、分析していくといったことはこれから進めていくかもしれません。

――APIについて教えてください。これからどんなものが用意されるのでしょうか。

近藤氏
 AIエージェントAPIとして、サービス側、デバイス型をそれぞれ用意しています。パートナー企業がmy daiz向けにコンテンツを提供するために活用していただくのがサービス側のAPIです。

 一方、デバイス型は、たとえば、ソニーモバイルさんの「Xperia Ear Duo」がその1例なのですが、スマートフォン以外のデバイスでmy daizのコンテンツを利用していただけます。将来的には、YKKさんの未来ドアのように、YKKさんのメインメージェントがいるなかで、my daizを活用して気象情報を表示するといった形になります。

――発表会では、APIで課金するかもしれないという話もありました。

近藤氏
 一部のAPIを有償で、というのは順次発表させていただくことになりそうです。

――なるほど。今日はありがとうございました。