法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

ドコモは「For All」をキーワードに「みんなのドコモ」を目指す

NTTドコモの2018年夏モデル発表会

 NTTドコモは5月16日、2018年夏モデルの発表会を開催し、今年の夏商戦へ向けたスマートフォン10機種、タブレット1機種、新サービスなどを発表した。主要3社の夏商戦へ向けた発表としては最後となったNTTドコモだが、発表会のテーマに「For All」というキーワードを掲げ、充実した端末ラインアップだけでなく、今までにないジャンルの新サービスを含め、注目度の高い発表内容だった。すでに本誌では速報レポートをお届けしているが、今回の発表内容の位置付けや解釈、各モデルの印象などを踏まえ、レポートをお送りしよう。

「For All」と打ち出したNTTドコモの吉澤社長

変わりはじめた競争軸

 改めて説明するまでもないが、NTTドコモは国内で最大の契約数を持つ携帯電話事業者だ。日本電信電話公社のポケベルサービスや自動車電話サービスを引き継ぐ形でスタートした同社は、携帯電話サービスを展開し、iモードなどのヒットサービスを生み出し、現在に至っている。現在の国内の携帯電話事業者はNTTドコモをはじめ、au(KDDI)、ソフトバンクの3社に集約され、今年4月に1.7GHz帯の免許を与えられた楽天が新たに業界に参入し、2019年10月にサービスを開始する予定となっている。

 こうした携帯電話業界の隆盛を語るうえで、ひとつの評価軸として、長らく注目されてきたのが「契約数」だ。契約数が多いということは、多くのユーザーが選んでいる裏付けであり、エリアやネットワーク、サービスなどが充実しているだろうという解釈だ。もちろん、企業としても契約数は売り上げに直結する指標であり、経済紙などでは契約数や純増の多さなどで、各携帯電話事業者の勢いを評価する傾向にある。

 NTTドコモはもっとも早くから事業をスタートさせていたこともあり、当初は圧倒的なシェアを確保していたが、新規事業者の参入をはじめ、2006年にスタートした携帯電話番号ポータビリティ(MNP)などの影響もあり、トップシェアはキープしているものの、他社にシェアを奪われる形が何年も続いていた。特に、MNPがスタートしたばかりの頃は、「MNP転入が事業者の人気のバロメータ」といった解釈が強調されたこともあり、各社の激烈なMNP獲得競争がくり広げられ、NTTドコモは一時、純減を記録するなど、多くの契約者を流出させてしまった。また、近年は「格安SIM」「格安スマホ」を謳うMVNO各社、サブブランド各社が攻勢を強めつつある。

 他業種でも指摘されているように、これから日本は少子高齢化の時代を迎える。携帯電話が高価な持ち物だった時代から「1人1台」の時代を経て、現在は契約数が人口を超えるところまで普及した。スマートフォンとタブレット、個人用と会社支給など、1人で複数の契約を持つこともそれほど珍しいことではなくなってきたが、それでも契約数を伸ばし続けることが難しくなることはある程度、見えている。5G時代に入れば、自動車や機械などにも組み込まれるため、契約数自体は伸びるかもしれないが、これまでのように「契約数×利用料金」という単純な図式だけでは、十分な利益が確保できなくなるかもしれない。つまり、新しい時代へ向けて、どのように成長戦略を描いていくかが各携帯電話事業者にとって、ひとつの課題となっている。

 こうした状況に対し、NTTドコモは4月に行なわれた決算会見の場でも説明したように、今後、これまでのような契約数ベースの戦略を拡大し、dアカウント(dポイント会員)を軸にした『会員』数ベースで事業を展開していく方針を明らかにしている。これまでのように、MNPや新規契約などで契約数を追うのではなく、「dアカウントを持つ他社ユーザー」も含めた会員基盤を拡大し、さまざまなサービスを提供することで、事業を展開し、利益を上げていくというわけだ。その方針を裏付けるように、今年5月1日には同社サイトのトップに、「ドコモは、みんなにオープンだ」というメッセージを掲げたWebページを公開している。詳しい内容はWebページをご覧いただきたいが、スマートフォンや通信だけではない新しい事業を展開しようというNTTドコモの強いメッセージが伝わってくる。

ドコモのWebサイトに掲げられているメッセージ

 そんな状況を受ける形で、5月16日に開催されたのがNTTドコモの2018年夏モデルの発表会だ。プレゼンテーションに登場したNTTドコモの代表取締役社長の吉澤和弘氏は、冒頭に「For All」というキーワードを掲げ、ドコモのユーザーはもちろん、ドコモのユーザー以外も含め、期待を超える感動と驚きを届けたいという方針を説明した。

AIサービス「my daiz」を発表

 今回の発表会で、まず、最初に取り上げられたのは、昨年の発表会で今春からのサービス開始を予告されていたAIサービスだ。サービス名は「my daiz」(マイ デイズ)と名付けられ、5月30日から開始されることが明らかにされた。

 NTTドコモはケータイ時代から「iコンシェル」や「しゃべってコンシェル」などのエージェントサービスを展開してきた実績があり、今回のmy daizはiコンシェルをベースに、進化させたサービスになる。

 従来のiコンシェルはユーザーがあらかじめ登録した路線や道路、地域などの情報に基づき、公共交通機関の運行情報や渋滞情報、天気、スーパーのチラシといった情報を提供してきた。これに対し、my daizはユーザーの行動履歴などから最寄り駅、スケジュール、よく訪れる場所といった情報を学習し、その結果に基づいた情報をユーザーの行動を先取りする形で提供するという。提供される情報はNTTドコモからのものだけでなく、提携するパートナー企業からの情報も利用されるため、外出先から帰宅するとき、雨が降っていると、「タクシーを呼びますか?」といった提案を受け、タクシーの配車サービスに連動するといった使い方もできる。

「my daiz」

 ユーザーインターフェイスは白く四角いmy daizのキャラクターをタップするか、しゃべってコンシェルと同じような音声による対話型ユーザーインターフェイスも利用できる。サービスは無料で利用できるものと有料サービスで利用できるもので構成されているが、月額料金は100円と安いため、無料で始めてみて、有料のものが使いたければ、1カ月でも試してみるのも手だ。

 こうしたエージェントサービスやAIを利用したサービスは、今後、スマートフォンがより身近で便利な存在になっていくうえで欠かせないものだと言われているが、ユーザーとして、ひとつ気になるのはどのサービスを付き合っていくのかという点だろう。

 すでに、Androidプラットフォームには「Googleアシスタント」、iOSには「Siri」が存在し、AIスピーカーではAmazonの「Alexa」、LINEの「Clova」などがあり、端末側にもGalaxyの「Bixby」、少し趣は違うが、シャープ製端末の「エモパー」など、いくつも『しゃべるAIエージェント』が存在する状況にある。それぞれに連携しているサービスなどが異なるため、AIエージェントによって、しゃべる内容が異なるが、天気予報や路線の運行情報、渋滞情報などは、ほぼ同じ提供元の情報を利用するため、使い方によっては同じ情報を何度もくり返し見ることになる。どのAIエージェントを使うのかはユーザーが選んでいくしかないが、今後、my daizがユーザーに選ばれるためには、如何にユーザーの行動を上手に学習し、的確に情報を伝えるかという部分だけでなく、NTTドコモとパートナー企業だからこそ提供できる情報が発信できるかにかかっているだろう。

 また、こうしたAIエージェントサービスで、もうひとつ気になるのが提供者側が想定しているユーザー像がやや偏っている部分だ。たとえば、これらのサービスでは自宅や職場を登録しておくと、通勤に利用する路線や道路に関する情報を伝えてくれる。しかし、世の中には筆者のように、自宅で仕事をする自営業者も多いし、通勤も徒歩圏、あるいは自転車という人もいるはずだ。ましてや、今や『モバイルワーカー』といった言葉があるように、決まったオフィスに勤務しないような働き方も増えてきている。AIエージェントサービスはこうしたユーザーの利用を想定しているように見えないことが多く、今ひとつ積極的に使う気になれないこともある。たとえば、モバイルワーカーにとっては、近くにコワーキングスペースやシェアオフィスがあるか、カフェに電源やWi-Fiがあるかといった情報が役に立つことが予想されるが、そういった情報も提供されるようになってくれば、もっと幅広いユーザーが積極的に活用するようになりそうだ。

dポイントを使った投資サービス

 さて、my daizに続き、もうひとつ発表されたのが投資関連のサービスである「ポイント投資」と「THEO+ docomo」だ。投資と書いてしまうと、「あ、自分は関係ない」と考えてしまうかもしれないが、NTTドコモとしては、まったくの初心者も考慮した投資関連のサービスをスタートさせる。

 この十数年、国内でもオンライントレードをはじめ、投資をする人は増えてきたとされ、最近では仮想通貨なども話題になることが多い。ところが、投資で資産を運用する人は限られており、日本は欧米各国に比べ、株式や投資信託などを利用した資産運用をする比率がかなり低いとされている。その背景には投資に対する不安感などがあるとされているが、「日本は諸外国に比べ、お金の教育が遅れている」という指摘もあり、株取引などの運用はわかるものの、どうやって銘柄を選ぶのか、どのように運用すればいいのかがわからないという声も多い。

「ポイント投資」

 今回、NTTドコモが開始する「ポイント投資」は、こうした不安を取り除くため、dポイントを投資に使い、ほぼお任せで運用ができるサービスになる。「アクティブコース」と「バランスコース」のいずれかを選び、自分が持つdポイントを投資すると、あとはNTTドコモと提携した株式会社お金のデザインという会社が運用する投資信託と連動する形で、dポイントが日々変動していくというものだ。投資したdポイントはいつでも1ポイント単位から引き出し、dアカウントが持つdポイントに戻すことができる。

 一般的な証券会社での取引と違い、面倒な手続きが不要で、dアカウントがあれば、誰でも手軽に投資を始めることが可能だ。ただ、仕組みとしては投資信託と連動するため、投資したdポイントは増えることもあれば、当然、減ることもあり、その点のリスクは十分に理解しておく必要がある。

 NTTドコモはdポイントのサービスを拡充して以来、dポイントをお金とほぼ同じ価値を持つ仮想的な独自の電子マネーに近い存在として扱っており、『投資体験』といった表現を使うことには些か違和感があるが、それでもまったく投資経験のない人がdポイントで、投資したもの(dポイント)が上下する感覚を実体験できるのは、意外に面白い取り組みと言えそうだ。ちなみに、サービス自体は発表会当日の15時から提供が開始されており、筆者も投資してみたが、現時点では投資したdポイントが目減りしている(笑)。

「THEO+ docomo」

 ポイント投資によって、投資の感覚をつかむことができたユーザー向けには、実際にお金を使い、投資ができる「THEO+ docomo」(テオプラス ドコモ)が提供される。このサービスは前述のお金のデザインが提供する資産運用サービスで、年齢や貯蓄額など、5つの質問に答えることで、ロボアドバイザーが世界の約6000種類のETF(上場投資信託)から最適な組み合わせの運用方針を提案してくれる。

 一般的に、投資は銘柄選びが難しいが、最近は実質的にお任せで投資ができるサービスが各社から提供されており、なかにはAIを活用した運用サービスも登場し始めている。THEO+ docomoも同様のサービスで、最低1万円から運用できるため、初心者にも始めやすいという特徴を持つ。月末の運用残高に基づいたdポイントの付与をはじめ、dカード利用時のお釣りに相当する金額で投資ができるなど、ユニークなサービスも用意されている。

 こうした個人向けの投資サービスはさまざまな企業が取り組んでいるが、投資をする人としない人の差が広がるばかりで、なかには「まったく縁がない」「銀行でいいのでは?」といった考えの人も少なくない。そういう意味では幅広いユーザーを持つNTTドコモがこうしたサービスに取り組むことは、今後、金融サービスや証券サービスがより身近な存在になっていくうえでも重要な動きと言えそうだ。実際の運用結果も含め、今後の動きが注目される。

スマートフォン10機種、タブレット1機種を発表

 さて、ここからは今回発表された2018年夏モデルについて、筆者がタッチ&トライで試用した印象なども含め、チェックしてみよう。ただし、いずれも開発中のモデルであるため、最終的な仕様や印象が異なるかもしれないことはお断りしておく。

 今回、NTTドコモはスマートフォン10機種、タブレット1機種を2018年夏モデルとして発表した。主な特徴としては、ネットワークが5CCA(5波を束ねるキャリアアグリゲーション)による受信時最大988Mbps/送信時75Mbps対応、トリプルカメラやダブルカメラを搭載したマルチカメラモデル、立体音響技術「Dolby Atmos」対応モデル、docomo with向けの2機種などが挙げられている。

 まず、通信速度については年を追うごとに高速化が進んできているが、現在は変調方式の高度化、キャリアアグリゲーションで束ねる周波数帯域の多元化や広帯域化、4×4 MIMOなどのアンテナ技術向上などが中心となっている。ユーザーとしては通信速度が高速化すれば、快適に利用できるはずだが、前回のauの記事でも触れたように、ある程度、高速化が進むと、ベンチマークテストでもしない限り、その違いがわからなくなってしまうため、ユーザーが高速化をどこまで魅力的に感じてくれるのかは未知数になりつつある。

 次に、スマートフォンのメインカメラ(リアカメラ)のマルチカメラ化については、ここ1~2年で急速に進んだ印象だが、なかでもファーウェイをはじめ、SIMフリースマートフォンでは各メーカーが積極的に搭載してきた印象がある。今回発表された11機種中、トリプルカメラが1機種、デュアルカメラが3機種となっており、キャリア向けモデルでも主流派になろうとしている。ただ、マルチカメラは機種によって、手法が違い、モノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせたもの、望遠と広角を組み合わせたものなどがあるが、今回はシャープがAQUOS R2で静止画と動画のカメラを別々に搭載するという新しい取り組みを実現した。

 ファーウェイは今年3月にグローバル向けで発表したHUAWEI P20 Proを供給するが、このモデルはモノクロセンサーとカラーセンサーによるカメラを搭載し、カラーセンサーについては標準と望遠のカメラを組み合わせてトリプルカメラとしている。マルチカメラは被写界深度の違いを利用し、ボケ味の利いた写真を撮影できることがひとつのアドバンテージだが、今回は暗いところでの撮影に強いことを謳うモデルが増えている。

 ハードウェアのスペックについては、スマートフォン10機種中6機種が米Qualcomm製SDM845を搭載する。メモリーについては8機種がRAM 4GB以上、ROM 64GB以上となっており、このクラスがハイエンドモデルに位置付けられる。バッテリーもスマートフォン10機種中7機種が3000mAh以上のバッテリーを搭載する。ワイヤレス充電については、Xperiaの上位2機種、Galaxyシリーズが対応しているものの、他機種では採用されておらず、iPhone X/8/8 Plusが対応し、標準機能になりつつあることを鑑みると、少し残念だ。

Xperia XZ2 Premium SO-04K(ソニーモバイル)今夏発売予定

 従来モデルからわずか半年強で登場したXperiaシリーズのプレミアムモデルの後継機種。今年のMWC 2018ではデュアルカメラのモジュールのみが発表されていたが、4月にそのデュアルカメラを搭載したモデルがグローバル向けに発表され、日本市場向けモデルも登場することになった。すでにau向けに発表されているモデルと基本的に共通仕様となっている。

 注目はXperia XZなどに搭載されてきた「Motion Eye」をベースにしたXperiaシリーズ初のデュアルカメラ「Motion Eye Dual」。デュアルカメラは1220万画素モノクロCMOSイメージセンサーと1920万画素カラーCMOSセンサーで構成され、独自開発の画像処理プロセッサー「AUBE」により、両方のセンサーから読み出された信号を処理し、静止画や動画を生成する。モノクロ/カラー方式の特徴を活かし、暗いところでの撮影にも強いが、静止画だけでなく、暗所での動画の撮影にも強いとしている。動画撮影は4K HDRに対応し、撮影した動画を4K相当の表示が可能な5.8インチディスプレイで再生できるため、1台で4K HDRの撮影から再生(表示)までの環境をサポートする。今回はタッチ&トライコーナーに暗い部屋を用意し、そこで撮影を試すことができたが、これまでのXperiaシリーズと違い、人間の眼で見る以上に明るく撮影することができた。

 ボディはこれまでのXperiaシリーズの流れから少し変わった印象で、ラウンドさせた背面にデュアルカメラと指紋センサーを搭載する。指紋センサーの位置が他機種よりも中央寄りにレイアウトされているため、少し慣れが必要で、ワイヤレス充電に対応した影響か、ボディも少し厚く大ぶりに仕上がった印象だ。映像コンテンツやゲームなどを楽しむとき、内容に合わせて振動する「ダイナミックバイブレーションシステム」など、エンターテインメントを強化した「SONY」ブランドらしい一台と言えそうだ。

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Xperia XZ2 SO-03K(ソニーモバイル)5月31日発売予定

 今年のMWC 2018で発表されたXperiaシリーズの主力モデル。従来モデルからデザインを一新し、指紋センサーを側面から背面中央に移動し、背面を丸みを帯びたデザインに仕上げている。ディスプレイはこれまでの縦横比16:9のものから、フルHD+の表示が可能な縦横比18:9のものに変更しており、狭額縁で仕上げたことで、全体的な印象も大きく変わっている。縦長ディスプレイを搭載したことで、ボディ幅は72mmに抑えられているが、Xperia XZ2 Premium同様、ワイヤレス充電に対応した影響なのか、ボディは約11.1mmとやや厚めで、重量はかろうじて200gを切る198gに仕上げられている。

 背面に備えられたカメラはXperia XZ1に搭載されていたMotion Eyeをベースにしたもので、ソフトウェアの仕様などを変更したことで、960fpsのスーパースローをフルHD対応で撮影できるようにしている。動画撮影については4K HDR撮影に対応しているが、搭載されるディスプレイの解像度はフルHD+なので、撮影した映像を本格的に楽しむには、4K対応テレビやディスプレイが必要になる。同時に発表されたXperia XZ2 CompactがフルHDになり、上位に4K相当の表示が可能なXperia XZ2 Premiumがラインアップされ、ライバル機種にQHD対応ディスプレイ搭載モデルが増えていることを考慮すると、Xperia XZ2のディスプレイの解像度がフルHD+というのは少し物足りない印象も残る。Xperia XZ Premium同様、映像コンテンツやゲームなどに合わせて振動する「ダイナミックバイブレーションシステム」も搭載されており、エンターテインメントを楽しみたいユーザーに適した一台と言えそうだ。

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Xperia XZ2 Compact SO-05K(ソニーモバイル)6月下旬発売予定

 Xperia XZ2同様、MWC 2018で発表されたコンパクトモデル。従来のXperiaシリーズのコンパクトモデルはディスプレイの解像度がHD対応止まりだったが、今回は2160×1080ドット表示が可能なフルHD+の5.0インチディスプレイが搭載される。ディスプレイサイズが5.0インチということもあり、ボディ幅は65mmとスリムで、背面のラウンドした形状とも相まって、コンパクトで持ちやすい印象だが、厚さが12.1mm、重量が168gと、少し重厚な仕上がりという見方もある。

  背面には上位機種同様、指紋センサーが搭載されているが、Xperia XZ2 Premiumとレイアウトが違い、カメラが上部寄りに備えられ、指紋センサーの位置も中央よりはわずかに上の位置にある。ワイヤレス充電やダイナミックバイブレーションシステムには対応せず、ネットワークも受信時最大644Mbpsまでとなっている。カメラは基本的にXperia XZ2のものを継承しており、960fpsのスーパースローモーションもフルHD対応で撮影することができる。コンパクトなボディで、しっかりしたカメラ機能を搭載したモデルを選びたいユーザーなら、ぜひチェックしておきたいモデルだ。

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Galaxy S9+ SC-03K(サムスン電子)5月18日発売

 MWC 2018に合わせて開催されたサムスンのイベント「Unpacked 2018」で、グローバル向けに発表されたサムスンのフラッグシップモデル。グローバルモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様が実装されている。

 昨年のGalaxy Note 8に引き続き、背面にデュアルカメラを搭載するが、カメラモジュールは新設計のもので、広角と望遠(2倍相当)という構成で、どちらも光学手ぶれ補正に対応する。デュアルカメラのうち、広角側のカメラは非常にユニークな構造で、暗いところの撮影に強いF1.5のレンズを組み合わせているが、周囲の明るさに合わせて、メカニカルに絞りをF2.4に切り替える機構を内蔵している。暗いところでの撮影だけでなく、明るいところでの撮影も高画質の撮影を可能にしている。

 カメラの撮影機能もユニークで、デュアルカメラの特性を活かし、ボケ味の利いた写真を撮るとき、ぼかした背景の光の点を星形やハート型に加工できる編集機能も搭載し、SNSなどにこれまでとひと味違った写真を投稿できる。960fpsのスーパースローの動画撮影にも対応するが、ライバル機種と違い、あらかじめ設定した枠内に動く被写体が入り込むと、自動的にスーパースローモーションに切り替わるようにするなど、撮りやすさにも工夫が見られる。

 従来からユーザーの要望が多かったステレオスピーカーも搭載し、AKGによってチューニングされたサウンドを楽しめるほか、DolbyAtmos対応のサラウンドにも対応する。背面にはデュアルカメラのほか、指紋認証センサーを搭載するが、従来モデルやGalaxy Note 8からレイアウトが変更され、アクセスしやすくなり、カメラを触ってしまうことがないように仕上げられている。虹彩認証にも対応しているが、各生体認証を組み合わせたインテリジェントスキャンに対応しており、あらかじめ設定をしておけば、端末を手に取り、画面を見るだけでロックを解除できるため、ストレスなく、快適かつセキュアに使うことができる。

 ディスプレイはQHD+対応の6.2インチ有機ELを搭載。縦長サイズのため、ボディ幅は74mmに抑えられており、手にフィットして持ちやすい。AR絵文字など、SNSで活用できる機能も豊富で、スマートフォンにより多くの機能と高いスペックを求めるユーザーの期待に応えるモデルと言えるだろう。

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Galaxy S9 SC-02K(サムスン電子)5月18日発売

 MWC 2018に合わせて開催されたUnpacked 2018で、Galaxy S9+といっしょに発表されたサムスンのフラッグシップモデル。Galaxy S9+同様、グローバルモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様が実装される。基本的な仕様はGalaxy S9+と同様で、ディスプレイサイズ、カメラ、RAMの容量、バッテリー容量などが異なる。

 ディスプレイはQHD+の表示に対応した5.8インチの有機ELで、ボディ幅は69mmと、大画面の割にスリムで持ちやすい。カメラはシングルだが、Galaxy S9+に搭載されている広角側のカメラと同じものが採用されており、F1.5のレンズを組み合わせながら、周囲の明るさに合わせ、メカニカルに絞りを切り替える機構を内蔵することにより、明るいところでも高画質の写真を撮影できるようにしている。暗いところでの撮影については、Galaxy S9+と並び、業界トップクラスと言って差し支えない。

 指紋認証や虹彩認証、インテリジェントスキャンをはじめ、ワイヤレス充電やおサイフケータイ、ステレオスピーカーなどの機能もGalaxy S9+と共通。従来のGalaxy S8/S8+ではネットワークの仕様に差があったが、今回は両機種で変わらないため、コンパクトなボディを重視して、Galaxy S9を選ぶというのも手だ。

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AQUOS R2 SH-03K(シャープ)6月上旬発売予定

 昨年、フラッグシップモデルのブランドを統一して、人気を得た「AQUOS R」シリーズの後継モデル。シャープ初となるツインカメラを搭載しているが、これまでの他社のデュアルカメラと違い、動画専用カメラと静止画専用カメラで構成する。

 カメラというと、静止画ばかりが注目されがちだが、SNSの投稿などで動画の利用はかなり拡大している。これまでのカメラでも動画を撮ることができたが、本来、動画撮影に求められる画角やレンズ、画像処理エンジン、手ぶれ補正などは、静止画撮影時に求められるものと違う。そこで、AQUOS R2では動画専用カメラに135度という超広角レンズを採用し、手ぶれ補正も動画に強い電子式を組み合わせる。これに対し、静止画専用カメラは広角22mmにF1.9の明るいレンズを採用し、光学式手ぶれ補正を組み合わせる。静止画と動画のカメラは自動的に切り替えられるが、動画撮影時にAIがベストショットと判断した構図を静止画カメラで撮影する機能も搭載されるため、ユーザーは動画撮影に集中できる。ディスプレイはシャープ製端末でおなじみのIGZO液晶を採用するが、縦横比19:9の6インチWQHD+対応のパネルを採用し、AQUOS R Compactと同じように、上部のカメラ部を半円状にくり抜いたノッチ(切り欠き)のあるデザインを採用する。

 従来モデルに引き続き、ハイスピードIGZOによるなめらかさと応答性能を実現しているが、駆動周波数を120Hzから100Hzにすることで最適化を図り、消費電力も一段と抑えている。チップセットはSDM845を採用するが、筐体のデザインと放熱構造を設計し直すことにより、従来モデルより連続稼働にも強い仕様を実現している。動画撮影を中心に、エンターテインメントを楽しみたいユーザーにおすすめの一台だ。

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HUAWEI P20 Pro HW-01K(ファーウェイ)6月下旬発売予定

 今年3月にフランス・パリで発表されたファーウェイのフラッグシップモデル。基本的にはグローバル向けモデルをベースにしながら、おサイフケータイに対応し、日本のユーザーのニーズに応える仕様となっている。しかもNTTドコモのみが扱う専売となる。

 最大の特徴は背面に備えられたトリプルレンズカメラで、ファーウェイが従来からLeicaとの協業で進化させてきたカラーイメージセンサーとモノクロイメージセンサーを組み合わせるデュアルカメラをベースに、さらに望遠カメラを組み合わせたトリプルレンズカメラとなっている。しかもメインのカメラに採用される4000万画素のカラーイメージセンサーは、コンパクトデジタルカメラを上回る1/1.7インチという大きなイメージセンサーで、これまでのスマートフォンにはない高画質の写真を撮影することができる。特に、暗いところでの撮影は独特の明るさと雰囲気の仕上がりになるため、撮影することが楽しくなるほど。

 本体はスリムで持ちやすい形状に仕上げられており、本体前面には6.1インチのフルHD+対応の有機ELディスプレイを搭載する。ディスプレイ上部にはインカメラなどを収めたノッチ(切り欠き)があり、ディスプレイの下部には指紋センサーを内蔵しており、本体前面のほとんどをディスプレイが覆い尽くすデザインとなっている。チップセットは自社のKirin 970を採用し、RAM 6GBとROM 128GBと、かなり大容量。ただ、microSDメモリーカードを本体に装着できないため、データの移動やバックアップ用として外付けメモリーカードリーダーがパッケージに同梱される。

 ディスプレイがフルHD+であることやmicroSDメモリーカード非対応など、細かい部分は気になるが、トリプルレンズカメラで撮影できる写真のクオリティは、現在販売されているスマートフォンの中でも抜きん出ており、SNSへの投稿なども含め、写真を存分に楽しみたいユーザーには、ぜひおすすめしたい一台と言えるだろう。

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LG Style L-03K(LGエレクトロニクス)6月下旬発売予定

 スリムなボディに5.5インチのフルHD+対応ディスプレイを搭載したdocomo with対象端末。これまでのdocomo with対象端末に比べ、RAMやROM、ディスプレイなどのスペックがワンランク高いモデルで、ハイエンドモデルに迫る仕様で仕上げられている。

 前面に搭載された5.5インチディスプレイは縦横比18:9の縦長ディスプレイで、本体前面のほとんどを覆うデザインとなっている背面には指紋センサーやカメラを搭載しており、指紋センサーの位置も手に持ったときにちょうどいい位置に来る印象だ。厚さ8.7mmのスリムなボディながら、防水防じん、耐衝撃に対応し、おサイフケータイやワンセグも搭載するなど、機能的にもかなり充実している。新しい機能としては、昨年の冬春モデルのV30+ L-01Kにも搭載された顔認証が搭載されており、ディスプレイオフでも瞬時に顔認証が行なわれ、すぐに利用を開始できる。

 スタンダードなデザインの端末だが、スペックは上位モデルに迫るものであり、docomo with対象端末の価格帯で購入できることを考えると、今回発表されたモデルの中でもトップクラスのコストパフォーマンスを誇るモデルと言えそうだ。

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arrows Be F-04K(富士通)5月31日発売予定

 昨年のarrows Be F-05Jの後継に位置付けられるdocomo with対象端末。基本的なデザインのコンセプトは継承しながら、チップセットをはじめ、内部を一新したモデル。従来モデルに引き続き、防水防じん、耐衝撃に対応するが、NTTドコモのスマートフォンとして、はじめてハンドソープによる洗浄に対応する。

 本体側面には昨年のarrows NX F-01Kでも採用された「Exlider」(エクスライダー)を搭載する。Exliderは電源ボタンと指紋認証センサーを兼ねるほか、スライド操作をすることで、画面のスクロールや拡大・縮小などの操作ができる。arrows NX F-01Kでは右側面にExliderが備えられているため、スライド操作は右手が基本となっていたが、今回は従来のスライド操作に加え、指を置くだけでも同様の操作ができるようになったため、左手でも操作がしやすくなったとしている。

 富士通製端末ではテレビCMなどの「割れない刑事」でもおなじみの耐衝撃性能が特徴となっているが、今回は内部構造にステンレスフレームを加えるなど、全体的な強化を図り、高さ1.5mから26方向でコンクリートに落下させても画面が割れないことを確認できている。ディスプレイやチップセット、メモリーなどのスペックはミッドレンジのミニマムという印象だが、おサイフケータイやワンセグなど、日本仕様も搭載しており、安心感のあるモデルに仕上げられている。タフに使いたいユーザーはもちろん、子どもを持つママさんユーザーにもおすすめできる一台と言えそうだ。

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TOUGHBOOK P-01K(パナソニック)今夏発売予定

 2016年11月に発売されたP-01J以来、久しぶりのパナソニック製端末。同社がパソコンやタブレットで展開する「TOUGHBOOK」(タフブック)の名を冠したAndroidスマートフォン。法人向けに提供されるモデルだが、個人がドコモショップなどで注文して、取り寄せることも可能。

 本体は5インチのHD対応ディスプレイを搭載したモデルで、衝撃吸収構造のボディにより、内部基板への衝撃も緩和する設計にすることで、MIL規格よりも厳しい1000回の落下試験、1.8mからの落下試験をクリアするタフネス構造を実現している。前面のガラスは旭硝子製「Dragontrail Pro」を採用し、出荷時に液晶保護フィルムを貼り付けておくことで、ガラス割れの起点となるキズを付きにくくしている。厳しい業務環境での利用を考慮し、高温・低温での動作をはじめ、配送時の振動や工場内の粉塵などにも耐えられる製品として仕上げられている。3つのマイクで周囲のノイズを打ち消すノイズサプレッサー機能も搭載するなど、実用面での機能も充実している。タフな環境で利用することが多いユーザーなら、ぜひチェックしておきたい一台だ。

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dtab Compact d-02K(ファーウェイ)今夏発売予定

 昨年、夏モデルとして発売されたdtab Compact d-01Jの後継モデル。8.0インチのディスプレイを搭載したコンパクトなAndroidタブレットで、従来モデルに続いて、eSIMを採用する。

 コンパクトなボディは携帯性に優れ、防水防じんにも対応するなど、スマートフォンにプラスアルファするデバイスとしては、ちょうどいい位置付け。特徴的なのは背面上部に備えられたダブルレンズカメラで、1300万画素と200万画素のCMOSイメージセンサーを組み合わせ、ボケ味の利いた写真などを撮影できるようにしている。オーディオブランドのharman/kardonチューニングによるスピーカーも搭載されており、映像コンテンツや音楽コンテンツなども迫力あるサウンドで楽しめる。子どもといっしょに利用することを想定し、子ども向けアプリをプリインストールするほか、ペアレンタルコントロールによる時間制限なども設定できる。

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「ドコモは、みんなにオープンだ」で、新しい道を切り開く

 ケータイ時代からスマートフォン時代へとシフトしてきたモバイル業界は、変革の時期を迎えつつあると言われている。冒頭でも説明したように、国内市場は携帯電話事業だけを見ると、これまでのような右肩上がりの成長が望めない状況にあり、新しい成長戦略を考えなければならない時期に来ている。そのために各社とも新しい事業戦略を描きはじめており、NTTドコモも「beyond宣言」にあるように、新しい方向性を打ち出している。

 ユーザーからは今ひとつ方針が見えにくいところだが、一般消費者向けのメッセージとしては、5月1日からホームページに掲げられた「ドコモは、みんなにオープンだ」という言葉がひとつのカギになってくる。本稿でも説明したように、NTTドコモは今後、同社の回線を契約するユーザーだけでなく、dアカウントを持つ会員を基盤にしたサービスを展開していくことを打ち出している。つまり、携帯電話事業を核としつつ、ドコモの回線を持たない人たちにもdポイントなどを軸にしたサービスを展開していくことで、「みんなのドコモ」を目指したいという考えのようだ。

 筆者の周囲でも、他の携帯電話事業者やMVNO各社と契約しながら、dマガジンなどのサービスを契約するユーザーはおり、一見、難しそうに見える方針であるものの、NTTドコモが多くのMVNO各社に回線を提供していることを鑑みると、NTTドコモのサービスをオープンに提供することで、MVNOと共同戦線を展開することも十分可能になりそうな印象だ。

 また、今回の発表ではmy daizという新しいAIエージェントサービスが5月30日からスタートすることが発表された。今後、スマートフォンがより身近な存在になっていくうえで、AIエージェントは非常に期待できるサービスや機能であることは間違いないが、スマートフォンを取り巻く環境にはGoogle アシスタントをはじめ、他のAIエージェントも数多く存在するわけで、やはり、NTTドコモならではの特徴をしっかりと打ち出していかなければ、ユーザーに広く利用されるようにはならず、AIの進化も他製品に置いて行かれることになってしまう。その意味でも「提供する」だけではなく、「使ってもらう」工夫にもしっかりと取り組んでいく必要があるだろう。

 そして、端末については、主要3社の夏モデルとして、最後に発表されたが、ラインアップは3社中、もっとも充実している印象だ。しかもMWC 2018以降、グローバル向けに発表されたモデルの中で、もっとも注目度が高かったHUAWEI P20 ProをNTTドコモの専売として獲得するなど、かなり思い切った戦略を打ち出してきている。同じくマルチカメラを搭載するモデルとしては、Galaxy S9+、AQUOS R2、Xperia XZ2 Premiumがラインアップされているが、それぞれに違った方向性でデュアルカメラの個性を発揮しており、ユーザーとしても迷ってしまう内容だ。

 今回発表された2018年夏モデルは、すでに一部のモデルの販売が開始されており、その他のモデルも順次、発売日がアナウンスされ、デモ機も店頭に並ぶ予定だ。同時に、今回は各社とも主力モデル向けのキャンペーンを数多く展開しており、もし、購入を検討しているのであれば、最新のキャンペーン情報などをチェックしておくことをおすすめしたい。店頭で実機を手に取り、ぜひ、自分にぴったりの端末を見つけつつ、新しいサービスも存分に楽しんでいただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。