インタビュー

夏モデルの動向、my daizの拡充、5G時代の料金――ドコモ吉澤社長が語る

 今春、dポイントの会員基盤を事業の軸にすると宣言したNTTドコモ。通信サービスだけではなく、さまざまな領域への進出を図り、さらに2020年の5G時代に向けた準備も着々と整えている。11日、NTTドコモの吉澤和弘代表取締役社長が本誌インタビューに応じた。

夏モデル、売れ筋は?

ドコモの吉澤社長

――2018年の夏モデルが登場しました。今回はファーウェイの「P20 Pro」が登場して話題を呼びましたが、売れ筋はいかがでしょうか。

吉澤氏
 XperiaシリーズですとCompact(Xperia XZ2 Compact SO-05K、6月22日発売)ですね。P20 Proは、発売からまだ間もないのですが、トリプルカメラということもあって、初速はいいですね。

――2017年夏からdocomo withが提供されていますが、ハイエンドモデルの売れ行きは今も大きな影響は出ていない形でしょうか。

吉澤氏
 昨年の6月から提供しているdocomo withは二百数十万台規模にまで達し、利用は増えています。シニア向けにdocomo with対応の「らくらくスマートフォン me」を提供し始めて、受け入れられています。

 いわゆる格安スマホ対策として意識しないわけではないですが、そもそも長く使いたい方にとっては必ずしもハイエンドでなくてもいい、その分料金を安くしてほしいという方をターゲットにしていました。性能はそこそこながらちゃんとあって、3万円前後で正価で買っていただける方にきちんと反応していただけたかなと思っています。

dポイント、会員拡大に注力

――この春、「dポイント」の会員基盤を軸にすると発表がありました。そうした戦略のもとで、今後、展開する分野は?

吉澤氏
 2017年4月に発表した「beyond宣言」で、スタイル革新宣言としてAIやエンターテイメント、フィンテックなどを触れているのですが、それらの分野に進出していきます。

 フィンテックでは今夏、ポイント投資を始めたところですが、既に15万人ほど利用していただいてます。平均すると2000ポイント程度、あわせて3億ポイント程度の利用です。男性の30代~40代が多く、女性でも若い方に利用していただいています。ポイントが上下することで、現実の投資に興味を持っていただいて、同じく今夏始めた「THEO+docomo」という投資サービスに移る方も出てきています。

 それに限らず、たとえば決済にあわせてポイント付与などを考えていますし、加盟店を増やして使える場所を拡大して、dポイント会員を増やす作戦です。特に今年はそのあたりに注力していきます。

 我々のサービスが利用されることもありますが、ドコモ回線を利用し続けてくださいます。解約が少なくなりますね。

――もう解約率に見える形で効果が出ているのでしょうか。

吉澤氏
 dポイントだけというとわかりづらいでしょうが、クレジットカードの「dカード」「dカードGOLD」の会員は、通常の解約率の1/4程度です。

 ポイントプログラムでたくさんもらえる、使えるということになれば、解約率にも効果があると見ています。パートナーの商流拡大にも寄与しています。

――ポイントにあわせて購買行動のデータを活用するお話がありましたね。

吉澤氏
 そうですね、マイクロマーケティングに繋げていくことが重要です。これまでは、システム的にも、回線契約に紐付けていると、解約されればデータが消えてしまいます。1人1人のポイント会員情報に購買行動や回線契約、位置情報といったデータが集約されます。それを次に繋げる。提携パートナーが持つ属性データもあり、お互いに「こういうことを知りたいんだけど」「こういうお客さんに情報を配信してほしい」といった取り組みを今初めています。それは大きな動きですね。

my daiz、今後は契約期間の更新や機種変更の通知も

――そうした取り組みは、コンシューマーにとって、別のサービスで見えるようになるのでしょうか。たとえばAIエージェントの「my daiz(マイデイズ)」もありますが……。

吉澤氏
 「my daiz」では先読みでの配信などを実現していますが、そうした形ではまだ活用しきれていません。個人的にはOne to Oneマーケティングの大きなツールにしたい。my daizを通じていろいろ提案していくですとか、たとえばドコモ回線がもうすぐ更新時期を迎える、あるいは機種変更はいかがですか、といった通知など、ドコモショップへ行かずともmy daizがお客さまとの接点になることも考えていきたいですね。

――いつぐらいに実現させますか。

吉澤氏
 できるだけ早くやりたいですね。「究極のAIエージェント」と申し上げていますが、まだまだ改善するところたくさんあります。そうした機能を追加していきたいです。

――ちなみに吉澤さん個人としても「my daiz」をお使いですよね。利便性を感じられた、印象的な場面などはありましたか?

吉澤氏
 はい、もちろん利用していますよ。便利なのはやっぱり天気ですね。かなり詳細に出てきます。とはいえ、まだまだ改善が必要です。先日、海外へ出張したのですが、訪問先の天候を質問してもうまく答えを得られませんでした。ただ、訪問先の時刻を問うときちんと教えてくれました。そういう細かなあたりは調整が必要でしょう。

 先読みとして雨が降りそうなときに傘を持つようオススメしたり、沿線のスーパーマーケットのチラシ情報を配信してくれたりしますよね。自宅の近所にこんなたくさんスーパーがあったのかと驚きました。

――AIエージェントという視点では、スマートフォンのOS側から提供されている機能がある一方、国内の携帯電話会社としてはドコモがリードしている格好です。このあたりの市場の取り合いはどう見ていますか?

吉澤氏
 AmazonさんやLINEさんなどがスマートスピーカーを提供されていますが、やはり自宅の中での利用ですよね。一方で、私どもは、以前から申し上げているように自宅でも外でも使えるということでスマートフォンやタブレットで利用していただく形です。

 AIエージェントのプラットフォームを活用していただけるようAPIを用意しますので、サードパーティから(自宅向けの)新たなものを出していただければいいですね。

――そうしたデバイスは、次の2018年秋冬シーズンに登場するのでしょうか。

吉澤氏
 秋冬では、これまでと大きく異なる形状のデバイスはあんまり出てこないかなと思っています。ただ、いろいろと問い合わせをいただいて、動いているものはあるでしょう。癒やし系のぬいぐるみのようなデバイスなどが出てくるかもしれません。

 一方で、重要なのは、サービスや、情報を提供していただけるパートナーさんです。いかに問い合わせしても、答えてくれることがなければ意味がありません。そこをいかに増やすことが強みになります。

――サードパーティのデバイスはドコモショップでも取り扱われることになりますか? AIエージェントのみならずIoTデバイス全般を含めた取り組みかもしれませんが……。

吉澤氏
 どこまで拡げるかによるでしょうか。スマートホーム向けのセンサーのようなデバイスは数多くありますが、全部手がけるのはなかなか難しいですよね。何らかのパッケージにしてサービスなどで本格的に展開する場合は取り扱うでしょうが、そこまではあんまり考えていません。

 家電などと連携するには、規格が標準化されたほうがいいでしょうけども、それはなかなか難しい。家電メーカーと組んで、全てに通信モジュールを組み込むアイデアもあるでしょうが、同じメーカーで揃えるのは難しいですよね。

サービスと料金のバンドルは5G時代に

――ひかりTV for docomoなどもあって、スマートフォンやタブレットだけではなく、IoTを含めた世界観を徐々に整備していくのか、とも感じていたのですが……。

吉澤氏
 「ひかりTV~」は現在手続き中で、まだ提供しておりませんが、ぜひお待ちください。一方でdTVターミナル(現在はドコモテレビターミナル)をご提供しており、光回線を含め、当然必要だろう、ということでご用意しています。

――映像分野ということであれば、競合のauがNetflixをバンドルした料金を発表しました。

吉澤氏
 そういう形は今後の動きになるのかなと思ってます。じゃあドコモがすぐそういうプランを出すのか、というとそうではなく、私自身は5G時代かなと思っています。

 5Gに向けて、トライアルサイトなど、パートナー企業とさまざまな取り組みを進めていますが、サービスと料金を別々にするよりも、5Gの通信とサービスを一緒にした料金をいただくという動きが出てくるでしょう。コンシューマー向けでもそうかもしれません。通信料を含めてまとめていくらというのはこれからですね。

――そのあたりはMNOとMVNOの違いという展開もあり得そうですね。

吉澤氏
 MVNOさんでも、さまざまなサービスを手がけておられますから、いろいろとやっていかれるのではないでしょうか。ドコモとしても、要望があれば「dマガジン」(雑誌読み放題サービス)などを提供することはやぶさかではありません。ただ、料金とセットということになるとちょっとまだ難しいかもしれませんね。

――ありがとうございました。