【MWC19 Barcelona】

KDDI高橋社長インタビュー

「5Gサービスは9月に。ウォレットは中身をしっかり比べてもらいたい」

 2018年4月にKDDI代表取締役社長に就任した高橋誠氏。2019年2月には「スマートマネー構想」を発表するなど、通信とライフデザインの融合路線を推し進める中、今年中にはいよいよ5Gサービスの導入を控えている。MWC19 Barcelonaで、auの今後の方向性などについて、話を聞いた。

5G、9月にサービス開始

――今年、いよいよ5Gサービスをスタートされる予定ですね。

高橋氏
 そうですね。まもなく申請を出して、おそらく4月に免許を受けて、9月にサービスインという流れになると思います。

 ちょうど9月に大きなスポーツイベントが控えているので、それをメドにパートナー企業といっしょに、5Gを利用したスタジアムソリューションを始動させたいと考えています。

――5Gサービスについては周波数帯域の違いで、6GHz以下の「Sub-6(サブシックス)」と28GHz以上の「mmWave(ミリ波)」の2つがありますが、どちらを利用したいという意向があるのでしょうか?

高橋氏
 申請内容や計画については、まだお話ができませんが、一般的にコンシューマーサービスに向いているのはSub-6だと言われています。28GHz帯はスタジアムソリューションなど、新しいビジネスに活用できそうですが、これまでと違った周波数帯域なので、扱い方は難しいかもしれません。

 各社ともエリア計画なども含め、どういう申請内容にするのかをお互いに探り合っている状況で、割り当てが決まれば、その分、早くサービス開始の準備も進められる感じですね。

2019年度の取り組みは

――社長就任から間もなく1年です。新しい取り組みの発表もありましたが、来期へ向けての準備を進めている中で、いよいよ「本気を出す」ということなのでしょうか?

高橋氏
 社長に就任する前の一年間、田中(孝司氏、前代表取締役社長)といっしょに経営企画をやっていたんです。

 通信とライフデザインの融合は2人でやろうと決めていましたし、今年は融合に関連する発表もいくつかできましたし、先日もスマートマネー構想も発表しました。

 電力なども順調に動きはじめていて、ライフデザインのビジネスの拡張は着実に進んでいます。これらが来年(2019年度)から始まる中期経営計画の中心になるので、道筋は作れたかなと思います。

 昨年来の総務省のモバイル研究会の動きなどがなければ、もう少し余裕があったかもしれませんが、いろんなハプニングなどもあったので、ちょっとたいへんな一年だったかなという感じですね。

料金プラン、ドコモに対抗

――モバイル研究会の流れで言えば、料金プランの値下げや見直しはどうなりますか。4月とされているNTTドコモの発表内容を見て対応されるのでしょうか?

高橋氏
 すでに何度か話をしてきましたが、我々は先に分離プラン(「auピタットプラン」と「auフラットプラン」)を導入していて、料金のパイオニアでありたいなという思いがあります。そういう意味では分離プランはそれが実現できたと考えています。

 最終的にドコモさんが発表するのは分離プランになるんでしょうけど、同水準かなと予想しています。もし、我々よりも下げてきたら、当然、そこはキャッチアップしていくつもりです。

5Gの料金はどうなる?

――5Gについては周波数利用効率も高くなり、単価も下がることになると言われています。設備投資などのコストもありますが、料金体系は同じような水準からスタートして、下げていくという流れでしょうか?

高橋氏
 これまで3G、4Gと世代を進めてきて、次は5Gを提供するわけですが、5Gになったからと言って、劇的にドンと下がるかというと、そういうことではないと思っています。

 もちろん、ビット単価は下がっていくわけですが、その分、データ通信量も増えていくので、結果的に総額は同じくらいのレベルに落ち着いていくんじゃないでしょうか。4Gのときもスマートフォンが登場して、データ通信量がドンと増えたけど、LTEでビット単価が下がっていたので、同じくらいになりました。

 おそらく、5Gも初期段階では同じような流れになるんじゃないかなと予想しています。今回、各社から話を聞いていると、最初は4Gと5Gのデュアルチップが利用されるので、どうしても端末が高くなってしまう。

 5Gが始まるタイミングでは「NSA(Non Stand Alone)」と言われる、4Gと5Gを併用するハイブリッドです。端末は高くなるし、ネットワークも5Gのみのシンプルなネットワークにはできない。そういう意味では徐々にスタートしていくようなイメージになると思います。

5Gで実現する未来

――一般消費者はスマートフォンで5Gを利用することになりますが、自動運転やスタジアムソリューションなどはパートナー企業と取り組み、B2B2Cのビジネスが増えて、それが社会を変え、主流になっていくのでしょうか?

高橋氏
 整理をすると、我々が一般消費者みなさんにスマートフォンを利用していただく「B2C」のビジネスは5Gの時代でも現在の4Gの延長線上として、続いていくと思います。

 ちょっと高すぎるとは思うけど、今回、各社で発表された折りたたみディスプレイのスマートフォンなどもありますし、ソニーさんが発表された縦横比21:9の縦長ディスプレイ搭載の「Xperia 1」もいいですよね。

 ああいう製品が出てくると、一般消費者のみなさんにも5Gがイメージしやすい。こういった世界は今までと同じように拡大していくと思います。

 そうなると、ついに今回は動画なのかな(笑)。3Gも4Gも動画だと言ってきたけど、拡がりは限られていました。でも、今回は絶対に動画が来るという予感はありますよね。

 そういったものとは別に、法人向けのビジネスがあるわけで、こちらはパケット単価が安くなったことで、新しい可能性が拡がる状況にあります。だから、新しいビジネスモデルを作る必要があり、KDDI DIGITAL GATE(5Gビジネスの開発拠点)を配置して、取り組んでいます。これまでは一般消費者向けのB2Cのビジネスが中心でしたが、これからは他の法人と組んでビジネスを並行して、やっていこうというわけですね。

――現在、5Gへ向けたパートナー企業はいわゆる大手企業ばかりです。中小企業向けのビジネスも展開していくのでしょうか?

高橋氏
 少しわかりやすく説明すると、ボクらは5Gを使ったプラットフォームを作らなきゃいけないんです。

 昔のコンシューマー向けサービスで例えるなら、もう20年も経っちゃった「EZweb」や「iモード」などがありましたけど、ああいったプラットフォームを5Gらしく作り替える必要があるわけです。

 そこでビジネスを展開するのは、大企業もありますし、中小企業の方もご参加いただけます。

 今回、議論をしている中で言うと、5Gでは「ネットワークスライシング」という技術が注目されてますよね。2021年くらいになってくると、ネットワークを切り売りするような世界が出てきます。

 たとえば、「A商会は資金が潤沢にあるので、ここからこの時間、太い回線を使いたい」というオーダーがあれば、それに対応したプランをお渡しするといったことができます。

 EZwebの時代は課金やダウンロードだけのプラットフォームでしたけど、どんどんネットワークが進化して、認証からスライシングまで、細かく提供できるようになるのが5Gの世界だと考えてもらうといいかもしれません。

――法人向けのビジネスは料金などが個別に交渉されているので、なかなか表に出てこないですよね。ちょっとイメージがしにくいような気もします。

高橋氏
 たとえば、SAP(ドイツのビジネスソフトウェア会社)やマイクロソフトのやり方を見ていると、デザインシンキングと言いながら、ビジネスモデルを作っている。最終的に何をやっているかというと、彼らの持っているプラットフォームを使ってもらうこと。

 IBMで言えば、Watsonもそうですよね。「AIだ」「人工知能が必要だ」と言って、結果的にはWatsonを使ってもらって、そこで収益を上げていく。そういう意味ではAmazonのAWS(Amazon Web Services)も同じだし、NVIDIAもそうですよね。

 そういうビジネスモデルを作った延長線上にサーバーがあるので、最終的に使ってもらうプラットフォームをどう整備するかがB2Bの仕事だと思います。

鍵は「ポイントを生み出す仕組み」

――フィンテックが注目される中、最近は各社がポイントサービスを提供し、そこと連携させるような動きも見えていますが、どのように見ておられますか?

高橋氏
 ポイントサービスがフィンテックなのかという議論もありますけど(笑)、ちゃんと説明しておくと、まず、au WALLETで「ウォレット」に貯まっているポイントには現金価値がありますよね。

 ポイントって、結局、どこかが出しているから、ウォレットに貯まるわけです。たとえば、Eコマースなどは加盟店が出していますが、我々の場合は通信キャリアがポイントを出しています。

 このポイントを変換して、au WALLETで使えるようにしていますが、各社で少し意味合いが違います。たとえば、PayPayはPayPayのサービスでしか使えませんし、メルカリさんのメルペイもウォレットしかない。

――確かに、そうですね。

高橋氏
 ところが、我々のような通信キャリアはいろいろなサービスやしくみと結び付いている。ポイントをじぶん銀行で現金化する人もいれば、コマースでそのままポイントで支払う人もいますし、料金やコンテンツに使う人もいます。

 そうなってくると、このウォレットにどれだけのお金が貯まっているのかがカギになってくる。

 我々やドコモさんはお客さんの月々の料金の支払いなどに対して、ポイントを付与しているので、そこには一千数百億が貯まっています。現在、こういうしくみで展開できるのは通信キャリアだけなんですよ。

 他社のサービスでは加盟店からポイントを取っている例もありますが、一部で報道されたように「加盟店から取り過ぎではないか」といった指摘もあります。

 また、決済サービスやポイントサービスを提供していても、もともとポイントやお金を生むサービスを提供していないと、なかなかポイントが貯まりません。結局、高額のキャンペーンや20%のポイント還元をやったり、加盟店の手数料をタダにしたりして、一度、ウォレットにチャージをしてもらおうとしています。

 だから、さまざまな企業が決済サービスやポイントサービスを提供しているけど、実は中身が全然違うわけです。ウォレットにいくら貯まっているのかで判断して欲しいですね。メルカリなんかは面白いかもしれません。物品の売買をするので、そこでお金が生まれてきますからね。

5Gで地方創生も

――少し話は変わりますが、KDDIとして、地方創生への取り組みなどはどうお考えでしょうか。

高橋氏
そうですね。地方創生は真剣にやらないといけないと思っていて、実は今回、5Gサービスの計画の中にも盛り込んでいますし、今後、発表するものの中でも予算を注ぎ込むものも検討していますよ。

 いい格好をするわけではないんですけど、我々も利益をしっかり上げるわけで、それをユーザーのみなさんに還元し、株主の方々にも配当という形でお渡しし、その上でちゃんと社会貢献にも使っていこうとしています。

 こういう活動って、社員にとっても自分の会社が社会貢献をしていることが、良いことだって思えますよね。

――本日はありがとうございました。