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KDDI、5Gで2台の建機を遠隔操作する実証実験に成功

 KDDIは、12月3日~12月14日にかけて大林組、NECとともに5Gを活用した建設機械(建機)の遠隔操作の実証実験を行った。

 今回の実証実験は、大阪府茨木市で建設中の安威川ダムの施工エリア内で、5Gを活用し、バックホー(ショベルカー)とクローラーダンプ(ダンプカー)の2台の建機を遠隔操作で連携させた作業を行うというもの。災害時での活用を想定し、NECの80GHz帯を使用する無線エントランスもあわせて使用している。

 それぞれ建機に2Kのカメラ3台と360度カメラ1台、さらに作業現場を俯瞰撮影するカメラ2台ずつ設置され、その映像を5G経由で遠隔操作室に伝送する。建機の屋根にはNECが開発した28GHz帯の超多素子アンテナを用いた5Gの通信装置が設置され、100メートルほど離れた基地局と通信。そこから約750メートル先の遠隔操作室までの間をNECの無線エントランス「iPASOLINK EX Advanced」で繋ぐ。

実証実験の概要

 建機は360度回転し、アーム部分によって通信の死角が発生する場合があるため、干渉しない高い位置にアンテナが設置され、さらにアンテナが常に基地局の方向を向くように大林組が開発した安定装置「スカイジャスター」が台座として使用されていた。こうした設備を動かすための発電機が取り付けられるなど、かなり大がかりなシステム構成となっているが、今後、5G端末がスマートフォン程度の大きさになれば、大幅に小型化できる見込み。

バックホー
クローラーダンプ
作業現場全体を俯瞰できるカメラも用意
建機の屋根には5Gの通信機器と安定装置を装備
100メートルほど離れたところに高所作業車に駐車し、リフトに5Gの基地局を設営
無線エントランスを用いて750メートルほど離れたところにある遠隔操作室と繋ぐ
作業エリアでの実証実験の模様

 5Gを使用して建機を遠隔操作する実証実験はこれまでにも実施されてきたが、昨年度に行った事例では2台の4Kカメラを使い、4Kの3D映像を伝送していたが、通信ではなく、映像処理によって600msほどの遅延が発生しており、これがオペレーターの疲労につながっていたという。快適に遠隔操作を行える目安は200ms未満とされているため、今回は解像度を2Kに落とし、映像処理の際に発生する遅延を抑えることで100ms未満に改善した。

 建機にはマイクが設置され、ディスプレイ脇のステレオスピーカーとシート内蔵の重低音スピーカーでその音をオペレーターに伝える。映像だけでなく、音が遅延なく伝送されることで、遠隔操作時の違和感が大幅に改善されることが分かったという。

 また、災害時に迅速に遠隔操作環境を構築することを想定し、5G基地局は高所作業車のリフトに設置。光ファイバーよりも早く設置可能な無線エントランスと組み合わせ、遠隔操作室もトレーラーハウスに乗せることで機動性を高めた。

 2台の建機を連携させて作業するというのも今回の実証実験の特徴で、2人のオペレーターがそれぞれ担当する建機を操作するパターンと、1人のオペレーターがバックホーを操作しながら、音声指示でクローラーダンプを操るパターンが披露された。

トレーラーハウスに乗せられた遠隔操作室
バックホーの操作機
クローラーダンプの操作機
音声でクローラーダンプを操作
End to Endでの遅延が少ないため、音声でも安全に運用できる
遠隔操作室付近から作業現場を見た風景
遠隔操作室での実証実験の模様

 大林組 技術本部 技術研究所 上級主席技師の古屋弘氏によれば、クローラーダンプを自動運転とすることで複数台導入できるようにすれば、さらに作業効率が向上するとみられるため、実用化に向けてこうした検討も行っていく意向。

 建設業界では熟練したオペレーターの不足が大きな問題となっており、5Gをはじめとするさまざまな技術を導入し、遠隔操作で人材を有効に活用しながら、工期短縮とコスト縮小を図っていきたいとしている。

(左から)NEC 新事業推進本部 マネージャーの大橋一範氏、大林組 技術本部 技術研究所 上級主席技師の古屋弘氏、KDDI モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 マネージャーの五水井一浩氏
実証実験が行われた安威川ダムの建設現場。安威川ダム資料館は毎週木曜に一般公開されている