石野純也の「スマホとお金」
JALとANAの格安SIMを比較、ANAモバイルは高くてもおトク?
2026年5月14日 00:00
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアは、モバイル通信サービスの契約者を基盤にしながらその周辺を取り巻く経済圏を強化しています。楽天モバイルはその逆で、元々強かった経済圏に足りなかったモバイル通信サービスを自社で始めた経緯があります。これに対し、最近では元々巨大な経済圏を構築していた企業がMVNOとしてモバイル通信サービスを取り込む動きも目立つようになってきました。
特に注目度が高いのは、航空会社系のMVNO。日本航空のJALモバイルや、全日本空輸(ANA)傘下のANA Xが始めたANAモバイルがそれにあたります。航空会社が付与するマイルは、ポイ活の原点とも言える存在です。
ポイ活という言葉の誕生以前から、マイルを貯める「マイラー」や、日々の決済でマイルを貯める「陸マイル」という言葉が存在していました。その意味では、各社が取り組む共通ポイントの強力なライバルと言えます。
そんなJALやANAが始めたMVNOですが、共通点はマイルを武器にして、自社の経済圏と日常的な接点を持つサービスにしていること。一方で、サービス内容やビジネスモデルを見ていくと、その方向性は2社で大きく異なっています。むしろ、真逆な点もあり、差別化につながっています。ここでは、そんな2社のサービスを比較していきます。
マイルの使いやすさに焦点を合わせたJALモバイル
航空会社のMVNOは、ユーザー接点を強化することを目的として立ち上げられたサービスです。JALとANA、2社ともがその軸としてマイルを付与する形を取っています。また、電気やガスなどのサービスに近いライフスタイルサービスのカテゴリーとしてモバイル通信を提供している点も、2社の共通項と言えるでしょう。
元々、マイルはその名のとおり、飛行機に乗った際に、距離や運賃クラスに応じて付与されるポイントでした。一方で、一部の出張族を除けば、毎月のように飛行機に乗る人は少数派。そのユーザーを経済圏にとどめておくため、クレジットカードなどの利用にもマイルを付与するようになっていきました。MVNOは、こうした陸マイルの延長線上にあるサービスと言えるでしょう。
ただ、そのサービス設計はJALとANAで大きく異なっています。まずサービスの立ち上げで先行したJALは、マイルが貯まるという以上に、マイルが使えることを重視した特典を売りにしています。料金プランに対するマイルの付与率は、音声SIMの2GBプランで月25マイル程度。10GBプランでも50マイルと少なめで、東京から名古屋までの片道で付与されるマイルにも届きません。
一方で、JALモバイル契約者は行き先がランダムで決まる「どこかにマイル」が、往復1500マイルで利用できます。通常、この特典航空券は7000マイルで利用できるため、あえてマイル数に換算するのであれば、4倍以上おトクと言えるかもしれません。行き先を自ら定めず旅行に出かけて、そこでの発見を楽しみたい人にはいいサービスです。
ちなみに、2GBプランでも1年で300マイル貯まるほか、毎月「JMBアプリ」に表示されるシークレットマイルが100マイルずつ貯まるため、これらを漏らさず獲得できれば、年間で1500マイルになります。契約者であれば、低容量プランであっても年1回、どこか国内に旅行できるというわけです。マイルの獲得以上に、利用が重視されたサービスと言えるのはそのためです。
また、マイルではありませんが、JALモバイル契約者はLife Statusポイント(LSP)が毎月1ポイントずつ貯まっていきます。LSPは生涯にわたって蓄積されていくポイント。250ポイントとクレジットカードの保有で「JMB elite」になり、グレードごとにサクララウンジや空港の無料宅配サービスといった特典を受けられます。
1500ポイントの「JGC Three Star」以上は、いわゆる上級会員の資格を得ることが可能。JALモバイルの1ポイントだけだと1500ポイントまで125年かかってしまうため現実的ではないものの、フライトやクレジットカードの利用で貯まるLSPの足しにはなります。
20%のマイル還元を売りにするANAモバイル
マイルの使いやすさを売りにしたJALモバイルに対し、ANAモバイルは、ストレートにマイルの貯まりやすさを打ち出しています。その付与率は、料金に対して20%。しかも、音声通話定額などのオプションに対しても、マイルがつきます。MVNOなので、元々の料金プランは安めではあるものの、音声対応の2GBプランで、毎月170マイルも貯めることができます。
より毎月の料金がかかる20GBプランであれば、付与されるマイルは430マイルまで上がります。ここに、オプションの「10分かけ放題」をつけると、貯まるマイルは600マイルに。1年間で7200マイルにもなります。フライトで、7200マイルを貯めようと思うと、なかなか大変。エコノミーの安い運賃だと、ハワイ3往復でもここまで貯まりません(実体験)。
ちなみに、上記の20GBプランに10分かけ放題オプションをつけた際の料金はちょうど3000円。年3万6000円で7200マイルがつくと考えると、かなりマイルの獲得単価は低いことになります。例えば、ANAゴールドカードは100円につき1マイル相当が貯まるので、7200マイル貯めようとすると、72万円ぶんの決済が必要。フライトやクレジットカードの利用をはるかに上回る大盤振る舞いをしていることが分かります。
ここまでマイルの付与率が高いと、“マイルを買う”感覚でANAモバイルを契約する人が出てきても不思議ではありません。最も高い、100GBプランは6900円で1380マイル。10分かけ放題をつけると、毎月1550マイル、年1万8600マイルにもなります。1年でかかる料金は9万3000円。データ通信が大量に使えて、かつアジア圏への往復特典航空券に換えられるほどマイルが貯まるというわけで、旅行好きにはかなり刺さりそうです。
ただし、JALモバイルとは違い、マイルの使いやすさはANAモバイル非契約者と同じ。開放される空席の数などは、ANAのステータスに依存するため、ANAモバイルだけでサクッとマイルを貯めて、好きな時期に旅行に行けるかどうかはその時の状況次第です。この点で、ANAモバイルの特典はマイルを貯めることに特化していると言えるでしょう。間口を広げているJALモバイルに対し、ANAモバイルはANAのヘビーユーザーにこそ刺さるサービスになっているように見えます。
大きく異なるビジネスモデルを反映した料金プラン
こうした特典の打ち出し方だけでなく、ビジネスモデルも2つのモバイルサービスには大きな違いがあります。JALモバイルがIIJのホワイトレーベルとしてサービスを提供しているのに対し、ANAモバイルはANA X自体がMVNOになり、MVNEの支援を受けながらモバイル通信サービスそのものを自ら構築しています。その結果は、料金プランに表れています。
JALモバイルは、ユーザーが契約する相手がIIJになり、料金プランもIIJmioのギガプランと同じ。厳密な定義で言えば、ブランド名を冠しているだけでMVNOですらありません。契約上は、IIJの通信サービスにJALのマイルに関するサービスが付帯しているものというわけです。回線品質など、その他のサービスもIIJmioに準拠しています。
一方のANAモバイルは、MVNOとして自ら料金プランを設計しており、データ容量の選択肢が多彩にあります。最小のデータ容量は1GBですが、先に述べたように、100GBプランまで選択肢が用意されており、ユーザーはコストと毎月のデータ使用量や付与されるマイルを天秤にかけながら、自由な選択が可能。柔軟性では、ANAモバイルに軍配が上がります。
ただ、IIJmioの料金プランをそのまま使っているJALモバイルに対し、ANAモバイルは独自にサービスを構築しているぶん、料金がやや高めに設定されています。2GBプランは850円でJAL、ANA双方が同料金です。しかし5GBはJALモバイルが950円と1000円を下回っているのに対し、ANAモバイルは1150円と100円を超えています。JALモバイルの最上位プランである55GBでは、JALモバイルが3900円なのに対し、ANAモバイルは4600円と、700円もの開きがあります。
毎月の料金の安さがIIJmio基準になっているJALモバイルに対し、ANAモバイルは独自性があるぶん、やや高くなっているといえるでしょう。逆に、その柔軟性ゆえに利益を使ってマイルとしてユーザーに還元しやすくなるという構図も見え隠れします。
このように、導入の目的は近いJALモバイルとANAモバイルですが、その手段であるサービス内容は真逆。ともすれば横並びになりがちな通信サービスですが、2社とも、航空会社ならではの独自性を打ち出せている点は評価できます。








