石野純也の「スマホとお金」

ワイモバイルの新料金プラン「シンプル2」徹底解説、「irumo」やUQ mobileとも比較

 ワイモバイルが、10月以降、新たな料金プランを導入します。「シンプル2」が、それです。その名が示すように、シンプル2は現行料金プランとほぼ仕組みは同じ。S、M、Lと3つの選択肢があり、データ容量が大きいほど料金は高くなります。

 シンプル2では昨今のトラフィック増加に合わせ、データ容量をSプランが1GB、M/Lプランを5GB増量しています。一方で、それに合わせて各種割引適用前の料金も上がってしまいました。

ワイモバイルは10月以降、新料金プランのシンプル2を導入する。ここでは、その特徴や他社との比較を行う

 ただし、割引を適用すると値上げ幅はわずか。ソフトバンクでは、データ容量が増えるぶん、1GBあたりの価格であるギガ単価は割安になるとしています。

 新料金プランとして導入されるシンプル2ですが、1000万を超えた既存のワイモバイルユーザーは料金プラン変更をすべきなのでしょうか。現在ワイモバイルを契約しているユーザーも、シンプル2の導入を待つべきかどうか、悩ましい選択だと言えそうです。

 ここでは、そんな観点でワイモバイルの新料金プランを新旧比較するとともに、ライバルであるNTTドコモのirumoやUQ mobileとも比較してみました。

ギガ単価アップも料金は値上げ、割引適用なら恩恵は大きい

 まずは、シンプル2の料金体系から。と言っても、仕組み自体は現行の料金プランを引き継いでいるため、そこまで複雑ではありません。シンプルさで言えば、割引なしの一本勝負な料金ほどではないものの、パッと見で理解できる範囲と言えるでしょう。 S、M、Lと3つの中からデータ容量に合わせて料金プランを選べばよく、割引も2つだけしかない からです。あれもこれもと割引がなく、変化球の料金プランが混ざっていない点も、分かりやすいと思います。

 データ容量と金額はSプランが4GBで2365円、Mプランが20GBで4015円、Lプランが30GBで5115円です。

 各種割引をすべて適用した場合の料金は、Sプランが1078円、Mプランが2178円、Lプランが3278円。

 適用できる割引は2つあります。1つ目が、支払いをPayPayカードにすると受けられる「PayPayカード割」。これは、シンプル2で新設された割引で、S/M/Lの3プランともに金額は187円です。

シンプル2の仕組み。割引として、PayPayカード割が加わっている

 もう1つが、「おうち割 光セット(A)」(以下、光セット)か「家族割引サービス」。どちらか一方しか適用できない点は現行のシンプルと同じですが、光セット側は金額が変更になったとともに、プランごとの傾斜がつけられるようになります。

 光セットで割り引かれる金額は、Sプランが1100円、M/Lプランが1650円です。現行のシンプルでは、S/M/Lともに1188円の割引だったため、Sプランは減額、M/Lプランは増額された格好です。

現行の光セット割は、画像のようにS/M/Lともに1188円の割引。シンプル2では、プランごとに差がつけられた

 家族割引サービスは、2回線目からという条件は変わりません。こちらは光セット割との選択制で、割引額はS/M/Lともに1100円です。現行のシンプルでは、2回線目以降は光セット割と同額の1188円が割り引かれていたため、割引としてはやや減額。料金プランとして、 より光セット割のほうに重きが置かれるようになった と言えそうです。

 シンプル2では、シンプルで好評だったデータ容量のくりこしは継承。また、料金プラン変更を予約すると、上位プランとの差額だけでデータチャージが可能な「プラン変更先取りプログラム」も料金プラン導入後に遅れて開始される予定だといいます。

 オプションとして追加の料金を支払うとデータ容量が増える「データ増量オプション」も、提供されています。これらに加え、M/Lプランでは、データ使用量が1GB以下だった月にそれぞれ1100円、2200円の割引を受けられるようになります。

 ザックリまとめると、 データ容量が増え、料金が上がった代わりに、割引が手厚くなった料金プラン がシンプル2の中身と言えます。

くりこしや、プラン変更先取りプログラムといった現行プランで好評なサービスは継続する
M/Lプランは、1GB以下の月に割引を受けられる。Mプランは1100円、Lプランは2200円だ

新旧シンプルのどちらがお得か、条件別に比較

 実際、データ容量が1GB/5GB増量されている割には、各種割引適用後の料金の値上げ幅は小さいと言えそうです。シンプルはSプランが990円、Mプランが2090円、Lプランが2970円。S/Mプランは88円、Lプランは330円の値上げにとどまっています。

 割引が適用されているユーザーの場合、料金プラン変更することでデータ容量を増やすことが可能。特に、 毎月データ容量がギリギリで節約して使っていたような人は、プラン変更する価値があります

割引適用後の料金はわずかに上がっているものの、データ容量の増加ぶんを考えれば十分お得感があると言えそうだ

 また、シンプルのLプランのユーザーがシンプル2でMプランを選ぶようにすれば、データ容量は5GB減ってしまうものの、料金を792円下げることが可能になります。

 ソフトバンクによると、データ増量オプションも引き続き提供されるとのことで、これを利用すれば、プランを下げて料金を抑えつつも、データ容量は維持することができます。

 少なくとも、 光セット割が適用されているユーザーであれば、シンプル2に飛びついても大損になることはない でしょう。プランLは割引適用前後のどちらも値上げ幅がほかの容量より大きいため、シンプル2に変更する際にプランMへのダウングレードを検討してもよさそうです。

各種割引適用後の場合、シンプルのLプランからシンプル2のMプランに下げ、料金を下げる手もある

 ただし、シンプル2には、PayPayカード割という新たな割引が加わっています。そのぶんだけ、各種割引適用“前”の料金が高くなっているため、 支払い額を極力抑えたい人は、PayPayカードに加入する必要があります

 PayPayカードは通常カードであれば、年会費はかかりません。PayPayの支払いで利用しても還元率は最低1%と比較的高いため、ワイモバイルのユーザーであれば、1枚契約しておいてもいいクレジットカードと言えます。

各プランとも、PayPayカードぶんだけ割引前の料金が高くなっている。料金を抑えたい場合、契約は必須と言えそうだ

 光セット割の場合は、プラン変更はおすすめできますが、 少々微妙なのが割引なしや家族割引サービスの2回線目として使っているユーザー 。後者に関しては、MプランやLプランでは、光セット割よりも割引額が少なくなってしまっているため、そのままシンプル2に移ると、料金が高くなってしまうおそれがあります。

 たとえば、割引なしのMプランのユーザーがシンプルからシンプル2に変えると、料金は3278円から4015円に。5GBデータ容量は増えますが、1カ月あたり737円の値上げになります。シンプル2にPayPayカード割を適用しても料金は3828円で、550円の値上げになります。

各種割引適用前だと、割引適用後より値上げ幅が大きくなる

 また、家族割引の2回線目の場合、シンプルのMプランが2090円だったのに対し、シンプル2のMプランは2915円に。こちらの値上げ幅は825円と、割引なしの場合よりも大きくなります。シンプル2のみPayPayカード割を入れたとしても2728円で、638円高くなります。

 Mプランのユーザーの場合、料金プランをSプランに落とすと一気にデータ容量が減ってしまうため、プランを下げるといった“逃げ場”がありません。 既存のユーザーで光セット割が受けられない場合は、料金プラン変更には慎重になった方がよさそう です。

家族割引サービスの割引額がM/Lプランは光セット割より少なくなった結果、M/Lプランは値上げ幅が拡大する。ただし、Sプランは割引後なら料金の変化は少ない

 ただし、Sプランの場合、値上げ幅が小さく、PayPayカード割だけ適用された状態でも、シンプルのSプランと同額になります。家族割引サービスと光セット割の金額差もありません。PayPayカードさえあれば、プラン変更をためらう必要はないと言えそうです。

 ここまでの話を簡単にまとめると、割引適用後のユーザーはプラン変更の価値はある一方で、割引なしのときや家族割引サービスの場合には、データ容量の増量が必要かどうか次第。 料金重視であれば、現行のシンプルにとどまってもいい でしょう。

 Sプランの場合、88円で1GB増量を選ぶかどうかによって、プラン変更を判断する必要があります。一律で値上げもしくは値下げにはなっていないため、自分のケースを当てはめて考えてみることが重要です。

UQ mobileやirumoと比べるとどうか、低容量は横並びだが20GB以上で差が出る

 では、他社の料金プランと比較した際にはどうでしょうか。まずは、ワイモバイルの直接的なライバルであり、ユーザー数も近いUQ mobileと比べてみます。

 UQ mobileは、6月に料金プランを改定し、「ミニミニプラン」「トクトクプラン」「コミコミプラン」の3本立てになっています。ミニミニプランは4GB、トクトクプランは15GB、コミコミプランは20GB。それぞれの料金は各種割引適用前で2365円、3465円、3278円です。

 ミニミニプランは、シンプル2のSプランに相当します。データ容量はどちらも4GB。割引適用前の料金も、2365円と同額です。また、割引の金額まで近く、1100円の「自宅セット割」と187円の「au PAYカードお支払い割」の2つが対応しています。

 一方で、ミニミニプランの場合、自宅セット割と排他の「家族セット割」を選択すると、割引額が半減の550円になります。ワイモバイルは家族割引の場合、2回線目からの割引になるため、この点が2社の違い。4GBプランでの大きな差はないと言っていいでしょう。

あえてグラフにする必要性は薄いが、料金は同額。データ容量も4GBで並んでいる

 ただし、自宅セット割は固定回線だけでなく、「auでんき」も対象になります。

 固定回線はモバイルでも代替できますが、電気には替えが効きません。そのサービスをauでんきに変えるだけで割引を受けられるため、 UQ mobileの方が割引の対象範囲が広い と言えそうです。固定回線がなかったり、固定回線が他社の場合でも、電気サービスをauでんきにするだけで割引を受けられるからです。その意味で、UQ mobileの方が割引の恩恵を受けやすくなっていると言えそうです。

UQ mobileは、自宅セット割に「でんきコース」があるため、割引を受けやすい

 次に、トクトクプランですが、こちらはデータ容量が15GBで割引適用前の料金が3465円。自宅セット割とau PAYカードお支払い割の適用で、この金額が2178円まで下がります。

 ワイモバイルのMプランとの比較だと、割引前はUQ mobileが安く、割引後で同額。これは、ワイモバイルの光セットが1650円と高めに設定されているからです。

 Mプランはデータ容量が20GBと大きいため、割引を受ける前提であれば、Mプランの方がお得と言えます。逆に、割引なしで使うのであれば、データ容量は少ないものの、UQ mobileの方が出費は少なくなります。

トクトクプランとMプランは、割引適用後が同額。データ容量が5GB多いぶん、ワイモバイルの方がお得度は高そうだ。ただし、割引がないと価格が逆転する

 少々比較が難しいのがLプランとコミコミプラン。UQ mobileのコミコミプランは、ahamoや楽天モバイル対抗で、割引なしの料金になっているからです。しかも、コミコミプランには10分のかけ放題までついています。ただし、データ容量は20GB。

 そのため、ワイモバイルのシンプル2だと、Lプランだけでなく、Mプランも比較対象になってきます。Lプランとの比較だと、割引適用前はUQ mobileの圧勝。割引適用後は同額になり、ワイモバイルの方がデータ容量は多い一方で、UQ mobileには10分のかけ放題がつくメリットがあります。

 シンプル2のMプランと比べても、素の料金は割引のないコミコミプランがやや安くなります。逆に割引適用後だと、Mプランは2178円と安くなります。

 10分の音声通話定額なしでも安さを追求するならワイモバイル、オプションまで含めてトータルで見た際にはUQ mobileと言えるでしょう。

 一方で、コミコミプランは割引などの複雑さを増す条件が一切ないため、契約しやすい料金プラン。 若者が1人で契約する場合などは、トクトクプランの方が気軽 と言えそうです。

割引がないコミコミプランは、そのままで安い。一方で、割引が入るとワイモバイルのMプランは料金が安く、Lプランはデータ容量が10GB多くなる。ただし、音声定額まで加味すると、判断は変わってくる可能性も

 ドコモのirumoは、データ容量が0.5GB、3GB、6GB、9GBの4つ。3GBはワイモバイルのSプランに相当します。こちらの料金は、2167円。データ容量がSプランの4GBより少ないぶん、料金は安くなります。

 割引は、「ドコモ光セット割」と「dカードお支払割」の2つで、この構造も似ています。各種割引適用後の料金は880円。1078円のSプランよりも、198円安くなります。

 データ容量が3GBでも198円安い方がいいのか、4GBで198円高くてもいいのかは微妙なところですが、競争力としてはほぼ同じと言っていいでしょう。

 ただし、irumoには家族割引がなく、ドコモ光か「home 5G」がなければ割引を受けられない点には注意が必要です。

irumoの料金体系。ドコモ光やdカードでの割引が前提になる点は、UQ mobileやワイモバイルに近い
irumoの3GBプランとは、比較がしやすい。料金ならirumo、データ容量を取るならワイモバイルだ

 irumoの場合、料金体系が少々異なり、9GB超の中容量はカバーしていません。シンプル2のMプランやLプランに相当する料金がないとも言えるでしょう。

 最もデータ容量の大きな9GBプランは割引適用前が3377円、適用後が2090円と、金額はシンプル2のMプランに近くなっていますが、データ容量は半分以下で勝負になっていません。

 ドコモの場合、中容量を担う料金プランとして戦略的にahamoに注力していることもあり、このような料金体系になっています。6GBのような容量もあり、 ワイモバイルとは根本的に考え方が異なっている こともうかがえます。

 このように見ていくと、Sプランはおおむね他社と横並びなのに対し、MプランやLプランは割引を厚めにしつつ、データ容量で他社を上回るように設計されていることが分かります。割引前提ではあるものの、この部分の競争力をつけた料金プランと言えるでしょう。

 ただし、小容量のきめ細やかさではirumoに軍配が上がります。割引不要で10分の音声定額も含まれるUQ mobileのコミコミプランも、シンプル2と比べ、使い勝手がいい料金プラン。それぞれに一長一短がある料金プランが3社から出そろったこともあり、競争はより激しくなりそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya