石野純也の「スマホとお金」
auの新料金プラン「auマネ活プラン」、契約すべきはどんな人?
2023年8月31日 00:00
KDDIが、9月1日から一風変わった新料金プランを導入します。「auマネ活プラン」が、それです。
通信周りの仕様を見ると、既存の「使い放題MAX 5G/4G」とほぼ同じ。スマホのデータ容量は無制限で、テザリングや国際ローミングのデータ通信は30GBまで利用ができます。音声通話関連のオプションも、そのままの形で提供されます。
各種割引適用前の金額も、使い放題MAXから据え置きで7238円のままです。また、NetflixパックやALL STARパックなどの、コンテンツパックプランもそのまま提供されます。
最大の違いは、KDDIフィナンシャルホールディングス傘下の金融機関や保険会社、クレジットカード会社との連携が、従来よりも手厚くなっているところにあります。割引ではなく、それぞれのサービスを通じて還元を受けやすくなるという形で発想を転換しているのが、auマネ活プランの特徴と言えるでしょう。とは言え、還元が受けられるサービスが多岐に渡っているため、一見しただけでは複雑に見えてしまうのも事実。そこで今回は、どのような人がauマネ活プラン向きなのかを読み解いていきます。
割引適用時の料金は使い放題MAXより割高、単身契約者にはお得に
金融サービスの還元が手厚くなったauマネ活プランですが、使い放題MAXと比べると、割引は少なくなっています。使い放題MAXは、家族2人で契約すると550円、家族3人で1100円の「家族割プラス」で料金が安くなります。また、au PAYカードで料金を支払うと、毎月110円の割引を受けられます。ここに、固定回線のセット割である「auスマートバリュー」を加えると、1100円の割引が追加され、料金は4982円まで下がります。家族契約や固定回線契約が前提ながら、使い放題で5000円以下になるのは比較的お手頃と言えるでしょう。
これに対し、auマネ活プランに適用される割引は、auスマートバリューだけ。家族割プラスは人数のカウント対象にはなるものの、割引は一切ありません。家族割プラスを組んだ家族には恩恵がある一方で、auマネ活プランに切り替えた本人は割引がなくなってしまうというわけです。また、後述するように還元があるためか、au PAYカードお支払い割も非対称になっています。そのため、通信料金という観点で言えば、使い放題MAXよりも割高。auスマートバリューを適用した際の料金は6138円で、使い放題MAXよりも1156円高くなります。
そのぶん、auマネ活プランには、「au PAY残高還元特典」が計800円ぶん設けられています。au PAYカードを契約すると300円、そのau PAYカードかauじぶん銀行で料金を支払うと200円、さらにauじぶん銀行の口座を持ち、au IDを登録すると300円というのが、その内訳です。au PAYカードは、支払いに利用していれば年会費はかからず、auじぶん銀行も口座開設に手数料などは不要。この2サービスがあれば特典が受けられるため、条件としては手軽です。
ただし、合計額は800円のため、すべて適用されたとしても実質価格は5338円。家族割プラスとau PAYカードお支払い割が適用される通常の使い放題MAXよりも、410円ほど高くなります。au PAY残高還元特典だけでは、家族割プラスやau PAYカードお支払い割の割引額を取り戻せないというわけです。逆に、こうした割引が受けられないユーザーにとっては、auマネ活プランの方が還元を簡単に受けられます。そのため、単身でauの使い放題MAXを契約したいという人は、auマネ活プランを選んだ方が、確実に実質価格は安くなります。
家族割プラス適用のユーザーも、ゴールカード会員なら一考の価値あり
悩ましいのが、家族割プラスが適用されているユーザー。家族割プラスとau PAYカードお支払い割で受けていた、計1210円の割引を捨ててまで、auマネ活プランに変更するかどうかは判断が分かれるはずです。難しいことを考えずに、割引を受けて毎月の料金を抑えたいなら、使い放題MAXからあえて変更する必要はありません。ただ、auマネ活プランは、金融サービスと連携することで、お金やポイントを“増やす”ことが可能。マネ活と銘打っているだけのことはあります。
この金融特典をどこまで生かせるかが、マネ活プランに変更するかどうかの分かれ目になりそうです。auマネ活プランにすることで受けられる金融特典は次のとおり。まず、au PAYゴールカードの通信料に対する還元額が、1年限定で10%増額され、計20%になります。マネ活プランは最低でも6138円(税抜き5580円)支払う必要があるため、au PAYゴールカードの還元額は1年限定で約1116ポイントに。上乗せぶんとして、558ポイントがもらえます。1年間の累計は、上乗せぶんだけで6696ポイントになります。
ただし、上記はあくまで概算。au PAYゴールカードの上乗せぶんは、通常ポイントが100円につき1ポイント、ゴールド特典が1000円につき90ポイントで、auマネ活プランを契約した際のプラン特典は1000円ごとに100ポイントです。そのため、端数が切り捨てられ、上記の6696ポイントよりも実際にもらえるポイントが少なくなります。あくまで、支払った金額がぴったりだったときに最大値が20%になる点には注意が必要です。
au PAYゴールドカードは、1万1000円の年会費がかかりますが、20%特典があれば、それだけで年会費を上回る還元を受けられます。また、au PAYゴールドカードでの決済も、通常より0.5%上乗せされます。この上限は毎月5万円ぶんの決済につく250ポイントまでですが、1年経てば3000ポイントに。au PAYゴールカード契約し、ある程度使っていれば、それだけで1年間、1万円近く、還元額が上乗せされるというわけです。仮に1万円の還元だとしても、月あたり833円。この時点で、家族割プラスなどがつく通常の使い放題MAXを実質価格で下回ります。
通信料への還元が20%にアップするのは1年限定ですが、auマネ活プランは料金プランのため、いつでも通常の使い放題MAXに戻すことは可能。少なくとも、au PAYゴールカードホルダーでかつauの使い放題MAXを契約している人に関しては、最初の1年間だけでも、auマネ活プランに変更することをお勧めします。極端な言い方ですが、家族の絆よりも、クレカの還元というわけです。単身契約しているユーザーだけでなく、ゴールカードホルダーもauマネ活プランの利用は検討してみる価値があります。
逆の見方をすれば、auマネ活プランはau PAYゴールカードの加入を促進するための料金プランとも言えそうです。実際、MNO4社を見ると、KDDIは楽天カードの強い楽天モバイルや、dカードやdゴールドの契約数を伸ばしているドコモを追う立場。クレジットカード契約時に付与するポイントに加え、料金プランや得意とする金融サービスの連携を強化することで、クレジットカード分野でキャッチアップを図ろうとしている意図も見え隠れします。
ゴールドなしでもauじぶん銀行、au PAYで元を取れる
とは言え、au PAYゴールドカードは年会費もかかります。そこまで支払いをKDDIグループにまとめられないという人もいるでしょう。たとえば、航空会社のマイルを貯めるために支払いをANAやJALのカードに寄せていたり、楽天市場をフル活用するためにメインのカードは楽天カードから変えられないという人もいるはずです。このようなケースでは、au PAYゴールカード抜きでも、auマネ活プランはお得になるのでしょうか。それを左右するのが、auじぶん銀行やau PAYでの特典です。
まず、auじぶん銀行の円普通預金金利は、auマネ活プランに加入すると、1000万円まで0.05%上乗せになります。仮に1000万円限界まで預けたとした場合、1年で上乗せされる利息は税引前で5000円。1000万円までという制約はあるものの、超低金利時代のなか、普通預金で0.05%もの金利優遇を受けられるのは、インパクトが大きいと言えるでしょう。
ちなみに、金融広報中央委員会が実施した22年の「家計の金融行動に関する世論調査」では、預貯金の平均が単身世帯で370万円、2人以上世帯で562万円とされています。前者であればauじぶん銀行の上乗せ金利で年1850円、後者であれば年2810円の金利を得られます。前者で月154円、後者で月234円。使い放題MAXとの差分は先に述べたように410円のため、500万円程度、auじぶん銀行に預けておける資産があれば、ある程度差を埋めることができます。
また、au PAYのコード決済やネット支払いも、プラン特典として還元率が0.5%アップします。こちらは、プラン特典の上限が月150円。3万円の支払いをすれば、クリアできる金額です。auじぶん銀行の金利優遇とau PAYの決済特典を組み合わせれば、au PAYゴールドカードがなくても、通常の使い放題MAXより実質価格を抑えることができるというわけです。
これに加え、auカブコム証券でau PAYカードを使って投資信託の積み立てをしていけば、プラン特典として0.5%の還元を受けられます。毎月3万円ずつ、投資信託を購入していけば、プラン特典の還元額は150円に。ここまで視野に入れれば、家族でauを契約しているユーザーであっても、あえてauマネ活プランに変更する価値が出てきます。
ここまでの話をまとめると、auマネ活プランは、単身でauの使い放題MAXを契約している人やau PAYゴールカード契約者はもちろん、auじぶん銀行やau PAY、auカブコム証券をバランスよく使いこなしているユーザーにとっても、お得になる料金プランと言えそうです。特に、家族割プラスが適用されない単身契約者は、すぐにプラン変更し、au PAYカードやauじぶん銀行と連動させた方がいいでしょう。au PAYゴールカードを持っている人も、1年間、auマネ活プランを契約してみることをお勧めします。
あとは、資産状況やマネ活次第。すでに家族でauを契約しており、au PAYゴールドカードを持っていない場合は、いかにKDDIフィナンシャルホールディングス傘下のサービスを活用できるかでお得度が変わってきます。1つ1つの還元額はそこまで大きなものではありませんが、コツコツと積み重ねてお得を作っていけるのがauマネ活プランのおもしろいポイント。そのぶん料金体系が複雑になるのは、マネ活という造語の由来にもなっているポイ活に通じるところがあります。計算が煩雑なため万人受けはしないかもしれませんが、こうした積み重ねをゲーム感覚でできる人にとっては、楽しい料金プランと言えそうです。