石川温の「スマホ業界 Watch」

ドコモの新料金プランにみる、「わかりやすさ」と「選びにくさ」

 発表早々、「わかりにくい」という声が上がったNTTドコモの新料金プランである「irumo」と「eximo」。

 500万契約を突破するなど、一気に定着した「ahamo」に寄せ、すべて「mo」で終わる名称となったため、一般の人からすると、違いがわかりにくくなったのではないだろうか。

 料金プランに個性的な名前がついたことで「とっつきにくい」という印象になったのは間違いない。

 ただ、NTTドコモの新しい料金プラン群は「わかりやすくなった面」と「選びにくくなった面」という2つの側面が存在する。

 メインの料金プランである「eximo」は音声プラン、ISPサービス、データ通信がワンパッケージとなった。料金設計的には、これまでの「ギガライト」と「ギガホプレミア」を足して二で割ったようなつくりになっている。

 データ容量が無制限なのが売りなので、とりあえず「スマホをたくさん使う」という人が選べば良い。

 すでに家の固定回線がドコモ光になっている、dカードで支払っているといった「ドコモに囲われている人」向けのプランと言える。

 スマホをそこそこ使いつつ、「月に何度か、使ったデータ容量を確認している」というマメな人は、20GBもしくは大盛り100GBのahamoを選んだほうが良さそうだ。

 今回、eximoになったことで、「ギガライト」がなくなったというのが大きいだろう。

 ギガライトは小容量プランだったが、お世辞にも「おトク」とは言えるような代物ではなかった。データ容量は小さいながらも、明らかに割高であり、「あまり使わないだろうからライトでいいわ」という、スマホのデータ容量に疎いユーザーをターゲットにしている感がアリアリであった。

 一方、キャリアからすれば、ギガライトは「儲けの源泉」ともいえる設計となっており、菅政権が値下げ圧力を強めても、ここだけは死守してきた感があった。

 そんななか、NTTドコモが英断し、ギガライトを廃止しつつ、自分に見合ったデータ容量を選べる「irumo」を投入してきたのは驚きだったりもする。

 NTTドコモがスマートフォン向け料金プランでギガライトを廃止し、eximoに一本化したことで、メインの料金プランは1つに集約された。ここまでは「わかりやすくなった面」といえる。

 しかし、サブといえる「irumo」では4つのデータ容量から選択可能であり、オンライン専用となるahamoでは20GBと大盛りで100GBが選べるようになっている。

 つまり、NTTドコモでは合計7つの選択肢から選べるというわけだ(エコノミーMVNOはここでは除く)。

 OCN モバイル ONEを飲み込み、irumoにしたことで、光回線やカード払い割などを組み合わせて提供するなど、キャリア側にとっては大きな利点がある一方、ユーザーからすれば、まず「irumo、eximo、ahamoのどれから選べば良いか」から始まり、「irumoにしよう」と決めた後に「容量はどれにすればいいか」という2段階、悩む必要が出てきてしまった。

 これが「選びにくくなった面」につながってしまっているのだ。

KDDIやソフトバンクは?

 ちなみにKDDIでは、メインブランドであるauだけで7つのプランが存在する。

 7月1日以降、基本的には「使い放題MAX」と「スマホミニプラン」という、従来のNTTドコモと同じような構成なのだが、「使い放題MAX」においては「使い放題MAX 5G with Amazonプライム」とか「使い放題MAX 5G/4G DAZNパック」、「使い放題MAX 5G/4G Netflixパック」、「使い放題MAX 5G/4G テレビパック」と言ったように、コンテンツの月額利用料がコミになったプランを強化しており、組み合わせられているコンテンツに応じて、料金プランが複数、並んでしまっているという状況にあるのだ。

 UQ mobileにおいては、ahamoと楽天モバイルを意識した「コミコミプラン」を主力に据えつつ、割引を適用させれば1000円以下で回線を維持できる「ミニミニプラン」、使っても使わなくても安価になるという「トクトクプラン」という3つのプランに改定されたばかりだ。

 オンライン専用の「povo」に関しては基本料金がゼロ円のワンプランでわかりやすいが、データ容量のトッピングが基本的には6つもあり、さらに期間限定のお試しトッピングが突然、発表されるなど、どのタイミングでどの容量のトッピングを選べばいいのか、結構、難しかったりもする。

 ソフトバンクの場合、メインでは「メリハリ無制限」と「ミニフィットプラン+」に加えて「スマホデビュープラン」が存在する。この「スマホデビュープラン」では4GBと20GBが選べると言うことで、4つの選択肢が存在することになる。

 サブであるワイモバイルは「シンプルS/M/L」という3つから選べる。このプランが世間に出てきた当初は本当にわかりやすい感じがして好印象であった。

 オンライン専用プランとして「LINEMO」があるが、他社に比べて個性に乏しい感じがしてならない。

 LINEモバイルをソフトバンクに取り込んだり、NTTドコモが2020年12月にahamoをセンセーショナルにデビューさせた影響を受けて、LINEMOが生まれたものの、ahamoやpovoに比べるとインパクトが弱い気がしてならない。

 宮川潤一社長もかつては「LINEMOは今後、もう少し差別化をやっていきたいと考えている。その時期が来たらカタチとして示していきたい」と語っていたこともあったが、契約者が増えているようで、大きく変えていくつもりはないようだ。

 また、先日の株主総会ではワイモバイルとLINEMOの統合も「考えていない」(宮川社長)としていた。

 今回、NTTドコモはギガライトをなくしてeximoに一本化したものの、irumoでは4つの選択肢があることで、選べるユーザーはかなり得をするのだろうが、そこまで知識がないユーザーは「どれを選ぶのが得なのか」というのが、わかりにくくなったかも知れない。

 総務省の有識者会議は料金値下げとともに「通信料金がわかりづらい」と指摘しつづけてきた。

 政府からの圧力により、キャリアの中で、メインとサブ、さらにはオンライン専用もできたことで、安い料金プランが出てきたものの、結局、「いっぱい選択肢がありすぎて、ユーザーはよくわからなくて選べない」という状況に陥ってしまったのではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。