本日の一品

妻の一手に完敗! “トウモロコシ型立体パズル”を攻略せよ

 Temuを眺めていて思わず目に留まったのが、黄金に輝くトウモロコシのような物体だった。価格も数百円。説明を読むと、どうやらこれが“立体パズル”らしい。届いた現物は3Dプリンタ製の艶やかな黄色い円筒体で、中心の「芯」「①」に沿って粒ブロックを積み重ねていく仕組み。見た目はユーモラスだが、実際に挑戦すると予想以上に手強い。

 最初は軽い気持ちで始めたが、最後の1個がどうしても入らない。筆者は途中で投げ出しそうになり、ついChatGPTさんに確率計算や解法のヒントを相談してみた。しかし、そのアドバイスを試す前に、妻があっさりと完成させてしまった。どうやらこのパズル、理屈よりも“手の感覚”を問うタイプの知育系トラップだったようだ。

 構成は「芯」1個と、5粒が一組になったブロック12個。形状は2種類あり、左寄りの3段タイプ(A)が8個、右寄りの3段タイプ(B)が4個という、やや非対称な構成になっている「②」。ブロックは軸に沿って上下反転させてはめ込むことができるため、見た目以上に組み合わせのバリエーションが広い。

 この非対称バランスが思考を惑わせる。人間の目は“円対称”を好むため、ついBを等間隔に配置したくなるが、それが正解とは限らない。Bを3個おきに並べても、上段を重ねると最終段で“あと1個が入らない”現象に陥る「③」。つまりこのパズルは、見た目の整然さではなく“内部の整合”を優先して組まなければ完成しないのだ。

 軸を通すとさらに難易度が上がる。3Dプリンタ特有の精度誤差により、ブロックが少しきつめにはまる「④」。その微妙な抵抗が思考を乱し、作業のテンポを奪う。

 妻は早々に「軸を外したほうが分かりやすい」と言い出し、実際に軸なしで何度か仮組みしてから最終的に芯へ通した。物理的なストレスを減らすと、論理的な判断がしやすくなる……理にかなった“心理戦略”である。

 配置のコツは、まずAとBの在庫バランスを意識すること。Bは4個しかないので、序盤で使い切らないよう注意が必要だ。初期段階ではBをやや等間隔気味に置きつつ、Aを間に埋めて全体の輪郭を作る。

 その後、各層で上下方向を交互に配置し、少しずつ“目地”をずらしながら重ねていく「⑤」。これにより噛み合わせが安定し、最終段の“詰まり”を防げる。最後が入らない場合は、Bの分布や上下の交互パターンが途中で崩れていないかを確認すれば大抵解決する。

 このように、トウモロコシパズルは単純な組立て玩具ではなく、空間認識力・左右対称感覚・手先の調整力などを総動員する“直感型知的トレーニング”といえる。

 ルービックキューブがアルゴリズムで攻める論理型なら、こちらはフィーリングとリズムで組み上げる感覚型だ。数理的に見れば膨大な並べ方が存在するが、現実には「感覚の整合性」を掴んだ者だけが完成へ辿り着く。

 完成したトウモロコシは、黄金に輝く小さなアートオブジェのようだ。上から見ても横から見ても整然とした粒の並びが美しく、思わず飾っておきたくなる完成度である。筆者の敗北を尻目に、妻は得意げに「これ、理屈じゃなくて流れなのよ」と一言。確かに、手でリズムを刻むように組むと、自然と最後の1ピースがピタリと収まる。

 Temuで見つけた数百円のプラスチックパズルだが、ここまで家族を巻き込み、笑いと達成感を生むものはなかなかない。ルービックキューブが“論理の立方体”なら、この黄金パズルは“感覚の円筒体”。頭ではなく、指先で考えるタイプの知的ガジェットとして、今日も机の片隅で不思議な存在感を放っている。

商品名発売元実売価格
トウモロコシ・パズルTemu約500円