本日の一品

万博のキャラが指を噛む ユカイ工学「EXPO2025 甘噛みハムハム ミャクミャク」

 大阪・関西万博も10月13日の閉幕まで残りわずかとなった。開幕前は批判の声が目立った万博だが、実際には連日の大盛況だった。来場者のSNS投稿が拡散し、効率的な回り方を示す“攻略法”が次々と共有された。デジタル時代の万博の姿がそこにあった。

 会場はモバイル技術の実験場でもあった。パビリオン予約はスマホアプリが必須で、レストランや売店は完全キャッシュレス化されていた。自販機ひとつとっても、対応する決済サービスの多さが目をひいた。

 NTTやKDDIは独自パビリオンを出展し、落合陽一氏がプロデュースした「null2(ヌルヌル)」、河森正治氏の「いのちめぐる冒険」といったメディアアート作品も話題を集めた。カナダ館ではAR技術を活用した展示が、ウクライナ館ではバーコードスキャンで映像を呼び出す仕組みが導入されていた。

 関東在住の筆者は、仕事とプライベートを合わせて9日間も夢洲に通い、スタンプラリーに熱中する万博フリークと化していた。会場で繰り返し目にするうちに、当初「気持ち悪い」と評された公式キャラクター「ミャクミャク」にも愛着が湧いてきた。赤い細胞と青い水が融合した独特のデザインは、大阪らしい異色のキャラクターだった。

 そんなミャクミャクが、指を噛んでくれるロボットになった。ユカイ工学が6月に発売した「EXPO2025 甘噛みハムハム ミャクミャク」を試用した。口に指を入れると、ロボットが甘噛みしてくれるぬいぐるみだ。価格は6600円で、通常版(5830円)より770円高い。

 体長約25cmの着座姿勢のミャクミャクは、赤い細胞と青い水が融合した独特の造形をしている。一見すると普通のぬいぐるみだが、口の中には秘密がある。

 プラスチック製の噛み機構「ハムリングシステム」を内蔵し、布越しに上下の歯が指を包み込む構造だ。電源は単3電池3本。背中のジッパーから電池ボックスを取り出せるようになっている。

 指を差し入れると1~2秒で反応が始まる。「むにむにむに」と早いテンポで噛んだかと思えば、「かっしり、かっしり」とゆっくり噛むこともある。ギュッと噛んだまま離さないパターンもあった。プログラム「ハムゴリズム」により、5~10種類の噛みパターンからランダムに選択される仕組みだ。

思ったより強めの噛み心地

 実際に使ってみると、想像以上に噛む力が強い。上下の歯が顎でくるむ構造がはっきり分かる。痛いわけではないが、赤ちゃんやペットの甘噛みというより、しっかりとした噛み応えだ。布で覆われているため、直接機械に触れることはないが、プラスチックの感触は伝わってくる。

 デスクの横に置いて、仕事の合間に指を入れてみる。考えに詰まったとき、ミャクミャクに指を噛んでもらいながら思考を整理する。

 主にプログラマーの間で「テディベア効果」や「ベアプログラミング」などと呼ばれるタスク処理の方法がある。ぬいぐるみに話しかけることで頭を整理する方法だが、この甘噛みハムハムは妙にそれと相性が良い。小脇に抱えるには少し大きめだが、デスクに座らせておくにはちょうど良いサイズだ。

 ただ、面白がって何度も指を入れていると、すぐに飽きてしまう。噛みパターンは確かに複数あるが、10分も遊べば一通り体験できてしまう。むしろぬいぐるみとして眺めて、たまに手を入れてみるくらいの距離感が心地良い。

癒し系ロボットメーカーの新境地

 筆者はユカイ工学の「Petit Qoobo」という尻尾が生えたクッションロボットを愛用している。撫でると尻尾が揺れる癒し系ロボットで、同社の製品設計の巧みさは実感していた。

 甘噛みハムハムも以前から気になっていたものの、通常版のデザインや価格の面を見て、購入を見送っていた。しかし今回、万博公式キャラクターのミャクミャク版が登場したことで購入を決めた。会場で見慣れたミャクミャクが、今度は指を噛んでくるという組み合わせが面白い。不思議な造形のキャラクターが噛み付いてくることで、その不気味さがむしろ魅力になっている。

 万博グッズのミャクミャクぬいぐるみが同サイズで3500円程度。それを考えると、ロボット機能が付いて6600円なら手が届く範囲だ。人気で品薄になりがちなミャクミャクグッズとしては貴重な存在で、筆者もオンラインストアの再販情報を見つけてすぐに購入した。

 会場内では「EXPO2025 甘噛みハムハム ミャクミャク Ⓚ」として、会場外では通常版として販売されている。

 10月13日に万博は閉幕する。会場で体験したメディアアートや最新技術の記憶は薄れていくかもしれない。だが、デスクに座るミャクミャクが指を噛むたび、あの夢洲での熱狂的な日々が蘇ってくる。批判から始まり大盛況で幕を閉じる万博の、妙に手放せない思い出の品として、このぬいぐるみは机上に鎮座している。

製品名発売元実売価格
EXPO2025 甘噛みハムハム ミャクミャクユカイ工学6600円