法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「motorola razr 40/40s」、手軽にフォルダブルをはじめたい人のための一台
2023年12月25日 00:00
コストパフォーマンスとデザインに優れた端末ラインアップを展開するモトローラから、折りたたみスマートフォン「motorola razr 40」が発売された。ソフトバンクでも「motorola razr 40s」として取り扱われることになり、手頃な価格帯のフォルダブルスマートフォンとして、注目を集めている。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。
フォルダブルに興味はあるけれど……
新しいスマートフォンのデザインとして、ここ数年、急速に注目を集めているのが『フォルダブル』だ。有機ELディスプレイの曲げられる特性を活かし、かつての折りたたみケータイのようなデザインを実現し、これまでのスレート形のスマートフォンとは新しいユーザビリティを含め、一線を画した存在感を示している。
フォルダブルスマートフォンについては、国内ではサムスンがひと足早く「Galaxy Z Flip」シリーズと「Galaxy Z Fold」シリーズを発売。モトローラも2021年3月に「motorola razr 5G」を国内向けにリリースし、今年はGoogleの「Google Pixel Fold」も加わり、フォルダブルの市場に拡がりが見えている。
フォルダブルスマートフォンは大きく分けて、「縦開き」と「横開き」の2つのスタイルがあるが、どちらのスタイルも『閉じたときはコンパクト、開くと大画面』という特長を持つ。
ただ、実用面ではそれぞれに違いがある。文庫本のような「横開き」デザインは、コンパクトなタブレットに匹敵する大画面を求めるユーザーに適しており、動画コンテンツだけでなく、電子書籍や電子コミックなども見やすいという特長を持つ。
かつてのケータイを彷彿とさせる「縦開き」デザインは、『閉じたときはコンパクト、開くと大画面』というフォルダブル本来のメリットを活かしたもので、手のひらに収まるほどのコンパクトなボディを持ち歩き、動画を視聴するときは横向きの大画面、SNSなどは縦向きの大画面で閲覧できるという、ケータイらしいユーザビリティが魅力とされる。これに加え、「縦開き」デザインは本体を『L字』に曲げた状態にして、机の上に置いて、コンテンツを視聴したり、外側のディスプレイを使って、メインカメラで自撮りをするといった使い方もウケているようだ。
こうした魅力が伝えられる一方、フォルダブルスマートフォンは曲げられるディスプレイやヒンジ部分などが複雑な機構で構成されていることから、価格設定が高めで、「興味はあるけど、ちょっと20万円前後はさすがに……」と躊躇する声も少なくない。同時に、常に持ち歩くデバイスであるため、落下時などの耐久性を気にする声も耳にする。
お求めやすい価格に
今回、モトローラから発売された「motorola razr 40」は、こうしたユーザーの期待に応え、誰もが手軽に持てるフォルダブルスマートフォンという位置付けになる。「motorola razr 40」は2023年8月にオープン市場向けに発売された「motorola razr 40 ultra」よりもひとつ下の普及価格帯のモデルで、モトローラ公式オンラインストアでの価格は12万5800円に設定されている。IIJmioは通常価格を11万2000円に設定したが、2024年1月31日までは9万5800円で販売し、MNPを利用した乗り換え価格は7万9800円と、かなり買いやすい価格を設定している。
また、2023年12月8日はソフトバンク向けの同仕様モデル「motorola razr 40s」も発売されたが、こちらは端末購入サポートプログラム「新トクするサポート」を利用すると、一括購入価格が12万1680円のところを「月々1326円×24回払い+月々3744円×24回払い」で購入できるため、2年後に端末を返却するのであれば、「実質負担額3万1824円(月々1326円×24回)」という驚異的な価格で端末を手にすることができる。ただし、 ソフトバンクの新トクするサポートの価格設定は、2023年12月27日にスタートする改正電気通信事業法による端末購入割引の限度額変更により、見直される可能性がある 。モトローラの製品発表会時、ソフトバンクの関係者は「端末購入割引の見直しによって、お客さんの負担額がそんなに極端に増えることはないだろう」ともコメントしていた。
老舗メーカーのモトローラ
モトローラについてはあらためて説明するまでもないが、世界初の携帯電話を開発した老舗メーカーとしても知られ、事業分割や買収などを経た後、現在はパソコンでおなじみのLenovo傘下でグローバル市場にスマートフォンのラインアップを展開している。
国内市場については、もっとも古くから参入してきた海外メーカーのひとつだが、近年はオープン市場向けのSIMフリースマートフォンなどで存在感を示す一方、ワイモバイル向けに「moto g53y 5G」の供給を開始するなど、再びキャリア向けモデルにも注力しはじめている。
国内のサポート体制もしっかりと整えており、「moto care」と呼ばれるスマートフォン保証サービスは月748円で利用できるほか、スマートフォンの修理サービスを提供する「iCracked」との連携により、即日修理サービスも提供される。
ちなみに、ソフトバンク向けの「motorola razr 40s」については、ソフトバンクが新たに提供を開始した補償サービス「あんしん保証パックネクスト」(月額990円)が利用でき、修理割引と配送交換を合わせて、1年ごとに合計2回まで、すべての修理を0円で対応するとしている。
オープン市場向け「motorola razr 40」、ソフトバンク向け「motorola razr 40s」のいずれを購入するにしても安心して使いたいのであれば、これらの補償サービスに加入しておくことを強くおすすめしたい。
折りたたむとコンパクトで持ちやすいボディ
まず、ボディからチェックしてみよう。前述の通り、「motorola razr 40」は縦方向に折りたたむフォルダブルデザインを採用しており、端末を綴じた状態では幅74mm、高さ(長さ)89mm、厚さ15.8mmというサイズにまとめられている。ちょうど女性の化粧のコンパクトを少し大きくした程度のサイズ感と言えそうだ。折りたたんだ状態では一般的なスレート形の端末に比べ、少し厚みがあるが、端末を開くと、約7.4mmしかなく、非常にスリムで持ちやすい。
「motorola razr 40」の外観で、もうひとつ特徴的なのは前後面のパネルにヴィーガンレザーを採用していることだろう。ヴィーガンレザーはレザー調の人工皮革だが、「motorola razr 40」に採用されているものは、しぼ感のある仕上がりで、爪などで押すと、復元する弾力性のあるものになっている。カラーは落ち着きのある「セージグリーン」、明るさのある「バニラクリーム」がラインアップされ、ソフトバンク向けの「motorola razr 40s」のみに「サマーライラック」が追加される。いずれもヴィーガンレザーとマッチした仕上がりで、本体フレームのマット仕上げとも相まって、よくまとまったデザインと言えそうだ。ちなみに、上位モデルの「motorola razr 40 ultra」ではパッケージに専用カバー(ケース)が同梱されていたが、「motorola razr 40」と「motorola razr 40s」には同梱されていない。市販品を装着するのも手だが、このまま、ヴィーガンレザーの質感やデザインを楽しみながら、持ち歩くのも手だ。
端末を折りたたんだときの側面は、「motorola razr 40 ultra」同様、2つの筐体がぴったりと合わさっており、隙間をなくしているが、どちらの筐体も側面がラウンドした形状に仕上げられているため、端末は開きやすい印象だ。こうした上下筐体の合わせを実現しているのは、後述するメインディスプレイが折りたたんだとき、ティアドロップ形に曲がるように設計されているためだ。
上筐体の右側面には音量キーと電源ボタンが備えられており、電源ボタンには指紋センサーが内蔵される。電源ボタンと音量キーはサイズや形状を変え、指先で判別できるように配慮しているが、使いはじめたときはやや戸惑うことが多かった。端末を開いた状態でも閉じた状態でもヒンジ側に電源ボタンがあることを意識すると、少しわかりやすそうだ。生体認証は電源ボタン内蔵の指紋認証に加え、顔認証にも対応する。
耐環境性能はカタログで「IP52相当の防水防塵」と表記されているが、IPX2は防滴レベルと考えるのが適当で、降雨中や濡れた手で触る程度は問題ないものの、豪雨の中での使用や水没などは避けるべきだろう。防塵についてはIP5X相当なので、スレート形のスマートフォンとほぼ同レベルだが、フォルダブルスマートフォンはヒンジ部分に砂やゴミなどが入り込むと、故障の原因になるため、海岸や砂場などでの利用は避けたい。
バッテリーはコンパクトなボディながら、4200mAhのバッテリーを内蔵し、本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用して、最大30WのTurbo Powerチャージャーによる充電に対応するほか、Qi規格準拠の5Wワイヤレスチャージも利用できる。パッケージには充電器やUSBケーブルは付属しないため、モトローラが販売するオプション品を購入するか、市販品を利用することになる。バッテリー残量が80%~100%の状態で連続充電して、バッテリー性能が劣化することを防ぐ過充電防止の機能も備える。
Felica搭載によるおサイフケータイにも対応しており、モバイルSuicaをはじめ、各社の対応サービスを利用することができる。FeliCaのスイートスポットは下筐体のモトローラの「M」ロゴの横にあるため、カードリーダーには下側の筐体をかざす。
フルHD+対応6.9インチ有機ELディスプレイ搭載
端末を開いたときのディスプレイは、2640×1080ドット表示が可能な6.9インチのフルHD+対応pOLED(有機EL)を採用し、本体を開いたときの画面占有率は85.5%と、本体のほとんどを画面が占めるデザインとなっている。6.9インチという対角サイズは、iPhone 15 Pro Maxの6.7インチ、Galaxy S23 Ultraの6.8インチ、Xiaomi 13T Proの6.7インチを上回るサイズであり、本体を横にすれば、映画やドラマ、動画コンテンツを迫力ある画面で楽しむことができる。ちなみに、本体の上筐体と下筐体にはそれぞれスピーカーが内蔵され、本体を横向きにしたときはステレオスピーカーとして利用でき、Dolby Spatial Audioによる拡がりのあるサウンドを楽しむことができる。
ディスプレイの仕様としてはDCI-P3規格120%の広色域に対応し、ピーク輝度は1400nitと、かなり明るい。リフレッシュレートは標準が80Hzで、ゲームモード利用時など、よりなめらかな描画を求めるときは最大144Hzに設定を変更できる。
また、本体を折りたたんだとき、前述のように、メインディスプレイはティアドロップ状に曲がるしくみとなっているが、中央部分の折り目は他機種よりも目立たない印象で、映像コンテンツなどを表示しても歪みがまったく気にならない。
一方、本体の外側には、194×368ドット表示が可能な1.5インチのOLED(有機EL)によるアウトディスプレイ(外部ディスプレイ)を搭載する。「motorola razr 40 ultra」のような上筐体の外側のほとんどを覆うようなアウトディスプレイではないが、かつてのケータイのサブディスプレイのように使うことができる。ディスプレイの仕様としては、最大60Hzのリフレッシュレートに対応し、ピーク輝度は1000nitと明るい。
「motorola razr 40」では[設定]アプリ内に、メインディスプレイを設定する[ディスプレイ]とは別に、アウトディスプレイのための[外部ディスプレイ]という項目が用意され、表示する内容などを細かく設定できる。通常は時計と日付、バッテリー残量を表示するが、端末を閉じた状態で上方向にスワイプすると「通知」、下方向にスワイプすると「クイック機能設定」(クイックパネル)を表示できる。左右にスワイプすると、「天気」「タイマー」「カレンダー」「メディア再生」「ボイスレコーダー」などを起動できるなど、実用性の高いユーザーインターフェイスとなっている。
音声通話の着信時にも通知が表示され、応答や拒否の操作ができるが、音声通話についてはかつてのケータイと同じように、着信時に端末を開いて応答し、閉じて終話するといった使い方もできる。
米Qualcomm製Snapdragon 7 Gen1を搭載
チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 7 Gen1を採用し、8GB RAMと256GB ROMを搭載する。外部メモリーカードには対応しない。Snapdragon 7 Gen1は2022年のミッドハイ向けのチップセットになるが、パフォーマンスに不足はなく、大画面を二分割して、複数のアプリを同時に操作するといった使い方もできる。
ネットワークは5G NR/4G LTE/3G W-CDMAに対応する。5GについてはSub-6に対応するが、NTTドコモが一部で展開するn79には対応していない。NTTドコモは転用もスタートしているため、実用上は大きな問題にならないだろうが、NTTドコモが販売する端末などとは差分があることは理解しておきたい。SIMカードはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応する。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/axに加え、Wi-Fi 6Eにも対応する。位置情報サービスはGPS/A-GPS/GLONASS/Galileo/BeiDouに対応するが、日本のQZSS(みちびき)には対応していない。
プラットフォームはAndroid 13を搭載する。モトローラ製端末のAndroidプラットフォームは「Pure Android」とも呼ばれ、Android標準に近いシンプルなユーザーインターフェイスを採用する。とは言え、ユーザーの使い方に合わせたカスタマイズやモトローラ独自の機能なども数多く搭載されいる。
モトローラ製端末独自の機能は、これまでのモトローラ製端末同様、[Moto]アプリにまとめられている。項目は「カスタマイズ」「ジェスチャー」「Moto Secure」「Razrヒント」「ディスプレイ」「プレイ」に分かれている。端末を手に持って、手首を2回ひねってカメラを起動する「クイック撮影」、背面を2度タップして、特定のアプリを起動する「クイック起動」、ロック解除時のPIN入力でPINパッドをランダムに表示する「PINパッドのスクランブル」をはじめ、「3本指でのスクリーンショット」や「持ち上げてロック解除」などのおなじみの機能も搭載されている。「motorola razr 40」の大画面を活かした機能としては、「スワイプで分割」も便利だ。画面中央のヒンジ付近を左から右、右から左と、往復するようにスワイプすると、画面を分割表示でき、複数のアプリを同時に起動できる。たとえば、メールを見ながら、カレンダーをチェックしたり、動画を再生しながら、Webページで詳細な情報を確認するといった使い方ができる。この他にも「motorola razr 40」のアプリやコンテンツを家庭用テレビやディスプレイに表示するモバイルデスクトップ「Ready For」も搭載されており、テレワークやリモートワークの環境をはじめ、ゲームや映像コンテンツを楽しみたいユーザーのニーズに応えている。
アウトディスプレイを活かした撮影が楽しいカメラ
カメラは上筐体の背面側に6400万画素イメージセンサー/F1.7のメインカメラ、1300万画素イメージセンサー/F2.2の超広角/マクロカメラ、メインディスプレイ上部のパンチホール内には3200万画素イメージセンサー/F2.4のインカメラをそれぞれ搭載する。メインカメラとインカメラについては、クアッドピクセルテクノロジー(ピクセルビニング)が利用できるため、暗いシーンでも多くの光を取り込んで、明るく撮影できる。メインカメラについては光学手ぶれ補正、環境照度センサー、レーザーオートフォーカスを搭載する。超広角カメラは画角120度のワイド撮影に対応する。
撮影モードは一般的な「写真」「ポートレート」「動画」「スローモーション」などに加え、露出やシャッタースピードなどを細かく設定できる「プロ」、特定のカラーを活かして撮影する「スポットカラー」、前後のカメラで撮影する「デュアル撮影」、6400万画素イメージセンサーの高解像度をフルに活かした「Ultra-Res」など、高度な撮影を楽しむこともできる。
「motorola razr 40」のカメラは、通常通り、端末を開いて撮影したり、インカメラでの自撮りができるが、フォルダブルの特性を活かすながら、アウトディスプレイとメインカメラによる撮影がおすすめだ。たとえば、端末をL字に開いたフレックススタイルで机の上などに置いて、手のひらを見せてシャッターを切る「ジェスチャー自撮り」で撮影したり、端末を閉じたまま、クイック撮影でカメラを起動し、アウトディスプレイを見ながらの自撮り、V字に開いた端末を置いての撮影などが挙げられる。特に、自撮りについてはインカメラもピクセルビニングに対応しているものの、イメージセンサーやレンズの仕様はアウトカメラの方が優れており、アウトカメラとアウトディスプレイの組み合わせを基本に撮影した方が有用だろう。
撮影した写真については、他のAndroidスマートフォン同様、Googleフォトアプリで確認できる。GoogleアカウントでGoogle Oneを契約していれば、撮影した写真の補正や効果を利用できる。
フォルダブルにデビューしたい人のための一台
スマートフォンの新しいスタイルとして、注目を集めているフォルダブル。なかでもかつてのケータイを彷彿とさせる「縦開き」のスタイルは、『折りたたみデザイン』を手にしたことがない世代にとっても新鮮なイメージを持たれているようで、注目度はかなり高い。ただ、フォルダブルスマートフォンは複雑な構造を持っているため、価格的に高いモデルが多く、落下による破損などにも不安を覚えるユーザーも少なくない。そんな状況に対し、標準価格で10万円強、端末購入サポートプログラムを利用すれば、3万円程度(2023年12月20日時点)で購入できる「motorola razr 40」は、新しいスタイルに興味を持つユーザーが『フォルダブルデビュー』をするための一台として、非常にいい選択肢と言えそうだ。フォルダブルならではの機能も充実しているが、日本のユーザーにとって欠かせないおサイフケータイにも対応しており、モトローラとソフトバンクの補償サービスの体制も整っていることから、安心してデビューすることができそうだ。ライバル機種を含め、フォルダブルスマートフォンはまだ機種が限られており、自分ならではの個性的なスマートフォンを求めるユーザーなら、ぜひチェックしておきたい一台と言えるだろう。