法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
シャオミ「Redmi 12 5G」、ちょい上を狙ったお買い得モデル
2023年12月8日 00:00
コストパフォーマンスの高いスマートフォンだけでなく、ウェアラブル端末やタブレット、IoT製品にもラインアップを拡大するシャオミから、「機能も、見た目も、ちょい上スマホ」を謳う「Redmi 12 5G」が発売された。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。
日本市場にさらに注力するシャオミ
かつて、数十社が端末を供給していた国内の携帯電話市場は、端末メーカーの事業統合や撤退などによって、十社に満たないところまで減ってしまった。
今年はFCNTや京セラ、バルミューダなどの撤退が報じられたが、その一方で、海外メーカーの日本市場への積極的な取り組みも注目を集めている。
なかでも2019年12月に国内市場に参入した中国のシャオミは、コストパフォーマンスの高いモデルを次々と投入し、着実に日本市場に浸透しつつある。
XiaomiシリーズやRedmiシリーズなどのスマートフォンだけでなく、Mi BandやXiaomi Watch、Redmi Budsなどのウェアラブル製品、Xiaomi PadやRedmi Padなどのタブレット、リモートカメラなどのIoT製品も発売するなど、ラインアップを拡大している。
今年9月に催された国内向けの発表会では、今回取り上げる「Redmi 12 5G」をはじめ、フラッグシップモデルの「Xiaomi 13T Pro」「Xiaomi 13T」、ウェアラブル製品やIoT製品、さらにはチューナーレステレビ4モデルも発表するなど、さらにラインアップを拡大してきた。
新たに代表取締役社長に就任した大沼彰氏も登壇し、国内市場へ積極的に注力する姿勢を見せた。
また、12月5日からは東京・渋谷の「Hz SHIBUYA(ヘルツシブヤ)」で、体験型ポップアップスペース「Xiaomi Smart Holidays from “mi” to you!」をオープンし、シャオミ製品を誰でも体験できる環境を提供している。
12月17日までの開催だが、国内未発売のキックボードなども展示されており、今後のシャオミの国内展開の姿勢をうかがわせるイベントとなっている。
これまで携帯電話やスマートフォンなどの新製品を試す場所と言えば、各携帯電話会社のキャリアショップや家電量販店などが中心で、メーカーではアップルがAppleストアを展開していたが、サムスンは2019年に常設のGalaxy Harajukuをオープンさせる一方、新製品発売時に全国各地で体験イベントを展開するなど、メーカー独自のプロモーション展開が活発になっている。
シャオミも今後、今回の体験型ポップアップスペースをきっかけに、海外で展開する「Mi Store」の日本市場への導入が期待される。
ちょい上を狙う「Redmi 12 5G」
シャオミは国内市場向けに、主に2つのシリーズを展開している。ひとつはフラッグシップの「Xiaomi」シリーズ(従来は「Mi」シリーズ)で、もうひとつはミッドレンジの「Redmi」シリーズになる。
ただ、どちらのシリーズもチップセットやディスプレイなどのスペックをライバル製品と比較すると、かなりコストパフォーマンスが高いことが特徴となっている。
「Redmi」シリーズとしては今年3月に「Redmi 12C」が発売されたが、ネットワークは4G LTE対応までで、外部接続端子がMicro USBだったり、防水防塵に非対応だったこともあり、市場での反応は限定的だった。
これに対し、今回発売された「Redmi 12 5G」は、5Gネットワークに対応したミッドレンジのモデルであり、FeliCa搭載でおサイフケータイに対応しながら、3万円を切るリーズナブルな価格を実現している。
「機能も、見た目も、ちょい上スマホ」というキャッチコピーに謳い、国内で販売される4~5万円クラスのミッドレンジのライバル製品に対抗できるモデルに位置付けている。
「Redmi 12 5G」はオープン市場向けのSIMフリーモデルだけでなく、auとUQモバイルでも販売されている。いずれの販路も価格は基本的に変わらないが、auではスマホトクするサポートで購入できるため、月々700円強の24回払いで、2年後に端末を返却すれば、実質負担額を1万6000円程度に抑えることができる。
ある程度のスペックを求めながら、端末購入費用の負担を抑えたいユーザーには、魅力的なモデルと言えるだろう。
また、オープン市場向けの「Redmi 12 5G」については、12月8日にメモリーとストレージを強化したモデルが追加販売されることになった。価格は5000円ほど、高くなるが、よりパフォーマンスを求めるのであれば、こちらのモデルを買うのも手だ。
背面ガラス仕上げのスリムなボディ
外観をチェックしてみよう。従来のシャオミ製端末は、背面をラウンドさせたデザインが多かったが、昨年の神ジューデンスマホ「Xiaomi 12T Pro」をはじめ、今年の「Xiaomi 13T Pro」や「Xiaomi 13T」などではフラットなデザインが採用され、今回の「Redmi 12 5G」もボディが同様のフラットな形状にデザインされている。
ただ、この価格帯のモデルとしては珍しく、背面にガラス素材を採用しており、光沢感のある美しい仕上がりとなっている。ボディの厚みも8.2mmとスリムで、パッケージに同梱されたソフトケースを装着してもあまり分厚くなる印象はない。
耐環境性能については、IPX3準拠の防水、IP5X準拠の防塵に対応する。一般的にスマートフォンの防水は、IPX5やIPX8準拠のモデルが多いが、IPX3は降雨時に影響を受けないレベルなので、防水というより、防滴や生活防水レベルと考えておいた方がいいだろう。
本体には5000mAhの大容量バッテリーが内蔵され、動画の連続再生は約27時間、通話は約48時間、ゲームプレイは約10時間の利用が可能としている。充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を使い、最大18Wの急速充電に対応するが、ワイヤレス充電には対応しない。
ディスプレイは6.8インチのフルHD+対応のIPS液晶を搭載する。この価格帯のスマートフォンでは対角サイズが最大クラスで、本体前面の画面占有率も91.8%とかなり広い。
リフレッシュレートは最大90Hzに対応するが、標準ではAdaptive Syncディスプレイにより、パフォーマンスと消費電力のバランスを取りながら、リフレッシュレートが自動的に変更される。
60Hzと90Hzの固定リフレッシュレートを設定することも可能だ。タッチサンプリングレートは240Hzで、ゲームなどの操作にも十分対応できる性能を持つ。
生体認証は電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証、インカメラを利用した顔認証に対応する。指紋認証の操作は、タッチと押下を選ぶことができる。
前述の通り、本体背面にはFeliCaが搭載されており、おサイフケータイの各サービスが利用できる。すでに、JR東日本のモバイルSuica対応機種一覧にも「Redmi 12 5G」として、掲載されており、安心して利用できる。
4nmプロセスの最新チップセット搭載
チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 4 Gen2を搭載する。Snapdragon 4 Gen2はその名の通り、従来のSnapdragon 4xxシリーズの流れをくむチップセットで、最新の4nmプロセスルールで製造されている。
パフォーマンスはベンチマークテストのスコアだけで比較できないが、2021年発売のミッドレンジのモデルに搭載されていたSnapdragon 750GなどよりもCPUやGPUのスコアが上回っっており、十分な性能が確保されている。
メモリーとストレージはRAM 4GB、ROM 128GBを搭載し、microSDXCメモリーカードも装着することができる。RAMはストレージ領域を利用することで、最大8GBまで拡張することができる。
オープン市場向けのSIMフリーモデルについては、前述のように、RAM 8GB、ROM 256GBのモデルが追加販売されるため、より容量を必要とするユーザーは、そちらを選ぶこともできる。
ネットワークは国内の5G/4Gに対応し、5GはSub6のみで利用できる。対応バンドとしてはNTTドコモが5Gで利用するn79に対応していないものの、国内4社が利用するn77/n78に対応するほか、転用で利用されるn3/n28にも対応する。
SIMはnanoSIM/eSIMのデュアルSIMに対応する。SIMカードトレイにはnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードは同時に装着できるため、eSIMと組み合わせれば、2回線を運用しつつ、メモリーカードにデータを保存するといった使い方ができる。
衛星による位置情報測位は米国のGPS、ロシアのGlonass、欧州のGalileo、中国のBeidouに対応するが、日本のQZSS(みちびき)には対応しない。同じシャオミ製品でも「Xiaomi 13T」やスマートウォッチの「Xiaomi Watch S1」などが対応していることから、やや残念な印象が残る。
プラットフォームはAndroid 13ベースのMIUI 14を搭載する。ホーム画面はすべてのアプリを表示する「クラシック」、上方向にスワイプしてアプリ一覧を表示する「アプリドロワー」、アイコンを大きく表示する「シンプルモード」を選ぶことができる。
「クラシック」では上方向にスワイプしてアプリ一覧を表示するか、検索ボックスを表示するかを選べたり、「アプリドロワー」ではアプリをカテゴリー別に表示するなどのカスタマイズもできる[設定]アプリ内の項目は、標準的なAndroidプラットフォームと少し異なるため、使いはじめたときは少し戸惑うかもしれないが、徐々に慣れていくはずだ。
背面に5000万画素メインカメラを搭載
カメラは背面に5000万画素/F1.8のメインカメラを搭載する。背面にもうひとつ備えられたカメラリングは、200万画素/F2.4の深度センサーで、ポートレートを撮影するときなどに被写界深度を測り、背景のボケを演出する。
前面のディスプレイ上部のパンチホール内には、500万画素/F2.2のフロントカメラを搭載する。
5000万画素のイメージセンサーを採用したメインカメラは、4つの画素を1つにまとめて撮影するピクセルビニングにより、暗いところや逆光などでも明るく撮影することができる。
そのため、通常は3072×4080ドットで撮影され、撮影モードを[50MP]に切り替えれば、6144×8160ドットで撮影される。太陽光による十分な光があり、拡がりのある風景などを撮るときは、[50MP]に切り替えて、撮ってみるといいだろう。
撮影モードは[写真]や[ポートレート][夜景][ビデオ][タイムラプス][50MP]とシンプルな構成で、[ポートレート]では絞り(F値)を調整して、背景のボケ具合を切り替えたり、[写真]では最大10倍、[ビデオ]では最大6倍のデジタルズームでの撮影もできる。
[夜景]と[50MP]では1倍と2倍を切り替えて撮影することが可能だ。ただし、フロントカメラでは[夜景]が利用できないため、夜景をバックにした写真を撮るときは、メインカメラを利用した方がいいだろう。
撮影した写真やビデオは、シャオミ独自の[ギャラリー]アプリで参照でき、[トリミング]や[調整]で編集ができるほか、[落書き]で手書き文字などを追加したり、[モザイク]でなぞった部分をモザイク処理で隠すこともできる。
[透かしの削除]で撮影時に写し込んだ透かしも削除できる。端末には[ギャラリー]アプリのほかに、Googleフォトと連携する[フォト]アプリもインストールされているので、撮影した写真やビデオはGoogleフォトに自動的にバックアップすることが可能だ。
3万円前後で買える十分なパフォーマンスのお買い得モデル
コロナ禍がようやく一段落し、ようやくかつてのような生活を送れるようになってきたが、この数年間、国内のモバイル市場は料金プランこそ、強制的な官製値下げによって、消費者の負担が減ったものの、肝心のスマートフォンは半導体不足や急激な為替レートの変動の影響で、全体的に価格が高騰し、端末の販売台数も漸減傾向にある。
そんな国内市場においては、単に安いだけでなく、コストパフォーマンスの高いモデルが一段と求められている。今回、シャオミが発売した「Redmi 12 5G」は、最新のチップセットを採用し、クラス最大級のディスプレイを搭載しながら、3万円前後というお手頃価格を実現している。
フラッグシップモデルに比べると、さすがにスペックは抑えられているが、耐環境性能やおサイフケータイなど、日本のユーザーが求める機能はしっかりとサポートしており、実用性の高いモデルに仕上げられている印象だ。
オープン市場向けのSIMフリーモデルに加え、auとUQモバイルでも扱われるため、幅広いユーザーが購入しやすい環境を整えている。手頃な価格で「ちょい上」スペックのスマートフォンを求めるユーザーには、ぜひチェックしてみて欲しい端末だ。