法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

3年ぶりの復活! Sペンとデュアルカメラで史上最強を目指した「Galaxy Note8」

 サムスン電子ジャパンはNTTドコモ向けとau向けに「Galaxy Note8」の供給を開始し、それぞれの事業者から国内でも販売が開始された。昨年のGalaxy Note7のリコールを乗り越え、国内向けにはGALAXY Note Edge以来、3年ぶりの復活となった。すでに、本誌では米国・ニューヨークでの発表時の速報記事発表会レポートファーストインプレッションを掲載しているが、筆者も国内向けに発売された製品を購入したので、実機レポートをお送りしよう。

NTTドコモ/サムスン「Galaxy Note8 SC-01K」、au/サムスン「Galaxy Note8 SCV37」、約163mm(高さ)×75mm(幅)×8.6mm(厚さ)、約190g(重量)、メープルゴールド(写真)、ミッドナイトブラック

積み重ねた支持を崩してしまった「Galaxy Note 7」

 サムスンはスマートフォンで世界トップシェアを持つメーカーだ。同社のシンボリックなモデル、フラッグシップモデルと言えば、「Galaxy S」シリーズであり、国内向けには2010年10月にNTTドコモから初代モデルが発売され、今年もNTTドコモとauから発売されたGalaxy S8/S8+が人気を得ている。

 このGalaxy Sシリーズの二代目モデル「GALAXY S II」が登場した2011年。これをベースに、ペンを使ったユーザビリティによって、新しいスマートフォンの方向性を打ち出したのが「GALAXY Note」シリーズだ。2011年9月にグローバル向けに発表された初代モデルは、デジタルツールの象徴的な存在であるスマートフォンに、ペンによる手書き入力というアナログなアイテムの組み合わせが話題となった。これに加え、当時としてはかなり大画面の5.3インチSuperAMOLED(有機EL)ディスプレイに、2500mAhの着脱式大容量バッテリーを搭載したことで、スマートフォンをもっと積極的に使いたいユーザー層を中心に高い支持を得た。このGALAXY Noteの登場を機に、グローバル市場では大画面&大容量バッテリーのニーズが高くなり、現在の市場トレンドの火付け役的な存在となった。

 一方、国内市場ではグローバル向けの初代モデルから半年後、2012年4月にNTTドコモから「GALAXY Note SC-05D」が発売された。基本的な仕様はグローバルモデルを継承しながら、グローバルモデルが未対応だったLTEにいち早く対応し、日本仕様のワンセグも搭載するなど、日本市場向けにしっかりとカスタマイズされた製品としてリリースされた。その後、2012年11月には二代目モデルの「GALAXY Note II SC-02E」(NTTドコモ)ではおサイフケータイに対応し、2013年10月に発売された三代目モデルではNTTドコモから「GALAXY Note 3 SC-01F」、auから「GALAXY Note 3 SCL22」が発売された。

 Galaxy Sシリーズのように、グローバルモデルをほぼ同じ時期に日本市場向けに供給するというサイクルが転換期を迎えたのが、2014年10月に発売された四代目モデルの「GALAXY Note Edge SC-01G」(NTTドコモ)と「GALAXY Note Edge SCL24」(au)だ。GALAXY Note Edgeは有機ELディスプレイの側面を曲げた「エッジスクリーン」を初めて搭載し、注目を集めたが、グローバルモデルで同時発表されたフラットスクリーンの「GALAXY Note 4」は国内投入が見送られた。このとき、独特な形状のエッジスクリーンを敬遠し、GALAXY Note IIやGALAXY Note 3のまま、使い続けていたユーザーもいたと言われている。

2014年10月発売の「GALAXY Note Edge」(左)以来、3年ぶりの復活となった「Galaxy Note8」(右)

 GALAXY Note Edgeに対する賛否両論の評価の影響もあってか、2015年8月にグローバル向けに発表された「Galaxy Note 5」は、日本市場への投入が見送られてしまう。Galaxy Note 5は同年に発売された「Galaxy S6 edge+」(Galaxy S6 edgeの大画面モデル)の兄弟モデルという位置付けで、デザイン的にも新しいGalaxy Noteシリーズの方向性を打ち出したモデルとして注目されたが、残念ながら、日本では発売されず、この判断が結果的にGalaxy Noteシリーズの空白期を生むことになった。ちなみに、後に関係者からは「あのとき、無理をしてでもGalaxy Note 5を出すべきだった」と悔恨の思いを何度となく、聞かされた。

 そして、記憶に新しいのが昨年8月に発表された「Galaxy Note7」だ。前年のGalaxy Note 5、同年に発売されたGalaxy S7 edgeなどのデザインを一新し、Galaxy Noteシリーズの原点であるペンによるユーザビリティを再構築したモデルとして開発された。米国・ニューヨークで開催された発表会に参加した筆者は、いち早く実機を試し、その完成度の高さから、国内での発売に期待を寄せていたが、残念ながら、発売直後に発火トラブルを相次いで起こし、全世界的なリコールとなり、販売中止となってしまった。国内ではNTTドコモとauからの発売が確実視され、両社とも準備を進めていたとされるが、グローバルでのリコールにより、発表が見送られ、両社とも秋冬モデルの販売戦略を大きく変更せざるを得なかったという。その後、サムスンは今年1月に発火問題の原因がバッテリーの不具合に基づくものであるという調査結果を発表し、再発防止策として、今後は「8-Point Battery Safety Check(8項目のバッテリー安全性試験)」を導入し、安全性に万全を期すとした。

 こうした流れを受け、今年8月に米国・ニューヨークで行なわれた「Galaxy Unpacked 2017」でグローバル向けに発表されたのが「Galaxy Note8」になる。発表当時の内容は速報記事や発表会レポート、ファーストインプレッションでもお伝えしたが、なかでもオープニングで流れたGalaxy Noteシリーズを愛して止まないユーザーたちのアツいコメントと映像は、まさにGalaxy Noteシリーズが初代モデルから積み重ねてきたユーザーの思いと愛に満ちあふれた内容で、会場で取材をしていたメディア関係者も「ちょっとウルッと来てしまった」と話すほどのものだった。

 そして、いよいよ10月には日本市場向けに、NTTドコモから「Galaxy Note8 SC-01K」、auから「Galaxy Note8 SCV37」として、発売された。前述のように、国内では2014年のGALAXY Note Edge以来、3年ぶりの新モデルであり、復活を待ち望んでいたユーザーも多い。実は、Galaxy Noteシリーズを愛用するユーザーは業界内でも非常に多く、本誌でもおなじみのライター諸氏や各誌の編集担当をはじめ、各携帯電話事業者の役員や業界関係者もGalaxy Noteシリーズを愛用していて、今回の復活を心待ちにしていた人がいる。米国での発表当時のファーストインプレッションでは、「帰ってきた“愛されるスマホ”~」と評したが、日本にも同じ思いのユーザーが数多くいるはずだ。

約6.3インチのInfinityディスプレイを搭載

 今回発表されたGalaxy Note8は、国内市場の空白期を挟んでいることもあり、従来のモデルのGALAXY Note Edgeとは大きくデザインが異なる。どちらかと言えば、国内未発売だったGalaxy Note7から今年のGalaxy S8/S8+への流れを継承したものであり、これまでのGalaxyシリーズとは違った存在感を持つ。

筆者の手に持った状態。75mmのボディ幅は思ったほど、大きさを感じさせない。ただ、シャツの胸ポケットなどへの収まりは今ひとつ

 その独特の存在感のベースとなっているのが本体前面に搭載さ入れた約6.3インチSuperAMOLED(有機EL)を採用したInfinityディスプレイだ。元々、Galaxy Noteシリーズは大画面ディスプレイと大容量ディスプレイを特長としてきたが、Galaxy Note8に搭載された縦横比18.5:9という縦長のディスプレイは、本体の前面をほぼ覆い尽くすほどの大画面ながら、ボディ幅は74.8mmに抑えられており、ボディの薄さと相まって、意外に持ちやすい。かつてのGALAXY Note Edgeはボディ幅が82mmもあり、大判の手帳という印象だったが、Galaxy Note8はスリムな手帳という印象だ。

機種名ディスプレイ横幅厚さ
Galaxy Note86.3インチ74.8mm8.6mm
Galaxy S8+6.2インチ73.4mm8.1mm
iPhone 8 Plus5.5インチ78.1mm7.5mm
HUAWEI Mate 10 Pro6.0インチ74.5mm7.9mm

 約6.3インチのInfinity DisplayはGalaxy S8/S8+と同じ2960×1440ドット表示が可能で、モバイルHDR(High Dynamic Range)に対応する。HDR対応コンテンツはYouTubeをはじめ、NetflixやAmazon プライム・ビデオなどもサポートしており、今後、さらに拡大すると見られる。縦横比18.5:9のディスプレイはかなり縦長だが、縦向きではWebページやSNSなどを閲覧するとき、横向きでは映像コンテンツを閲覧するときなどに見やすくなる。ボディの両側面はGalaxy S8/S8+と同じように、ディスプレイを湾曲させたデュアルエッジスクリーンを採用するが、Galaxy S8/S8+よりもカーブが急で、フラットな部分が広い。

Galaxy S8+(左)とGalaxy Note8(右)を並べると、画面サイズはわずかにGalaxy Note8が大きい
Galaxy S8+(左)とGalaxy Note8(右)を並べた背面側。Galaxy S8+のボディが丸みを帯びているのに対し、Galaxy Note8はスクエアなボディに仕上げられた

 ボディカラーはNTTドコモ、au共に、ミッドナイトブラックとメープルゴールドの2色展開で、グローバル版にラインアップされていたDeepsea Blue、Orchid Grayは採用が見送られている。グローバル版の発表会ではいずれのカラーも評価が高かっただけに、残念なところだ。Galaxy Note8に限った話ではないが、どうもグローバル向けモデルのボディカラーを選ぶときの各携帯電話会社のセンスには、やや疑問を感じることが多い。

 従来のGALAXY Note Edgeをはじめ、GalaxyシリーズではおなじみのホームボタンはGalaxy S8/S8+同様、ソフトウェア表示に変更されており、ナビゲーションバーの表示/非表示も切り替えることができる。ディスプレイ内のホームボタン部分に感圧式センサーを内蔵し、ホームボタンが表示されていないときでも押し込むことで、ホームボタンの機能を利用することが可能だ。ナビゲーションバーのボタンレイアウトもカスタマイズができ、他機種からも乗り換えやすくしている。

 チップセットはクアルコム製Snapdragon 835 MSM8998オクタコアを採用し、6GBのメモリー(RAM)と64GBのストレージ(ROM)を搭載する。映像コンテンツの視聴など、比較的、負荷の大きい状況でも本体背面が暖かくなる程度で、動作は安定している。内蔵バッテリーも3300mAhと大容量で、急速充電及びワイヤレス充電に対応しているため、ヘビーユーザーのニーズにも十分、応えることが可能だ。ちなみに、筆者は本体に純正カバーを装着した状態で利用しているが、この状態でもワイヤレス充電で充電することができる。

Galaxy S8/S8+では国内で扱われなかった「ALCANTARA COVER」がGalaxy Note8向けには販売されることになった。カラーはPink(写真)のほかに、Blackがある

 生体認証については背面に指紋認証センサー、本体前面上には顔認証と虹彩認証のためのカメラをそれぞれ備える。指紋認証センサーについてはGalaxy S8/S8+が背面カメラの真横に備えられていて、指紋認証の度に指でレンズに触れてしまう仕様だったが、今回はカメラがデュアルカメラになったこともあり、レイアウトが変更され、カメラと指紋認証センサーの間にLEDフラッシュが配されている。手の大きさによっては片手で持ったとき、指紋認証センサーの位置がやや遠く感じられるケースがあるかもしれないが、わずかに持つ位置をずらすことに慣れれば、ストレスなく使うことができるだろう。

 虹彩認証もGalaxy S8/S8+と同じ仕様のものが搭載されており、すばやく認証ができる。ただし、カラーコンタクト装着時やサングラス利用時は虹彩が正しく認識できないため、指紋認証を利用することになる。顔認証はiPhone XのFace IDのような三次元的なパターンを認識するものではないため、指紋認証や虹彩認証ほど、セキュアなものではなく、簡易的なものと解釈して利用するのがおすすめだ。ちなみに、Webサイトなどのログイン情報を保存しておき、指紋認証や虹彩認証を利用して、ログインするといった使い方もできる。

背面は光沢のある美しい仕上がり。指紋の跡が着きやすいので、カバーを装着しての利用がおすすめ
底面中央にはUSB Type-C外部接続端子を備える。右側にある四角い突起部分を押すと、Sペンの頭部が飛び出し、簡単に取り出せる
左側面は上部側に音量ボタン、下にBixbyボタンを備える
右側面は電源ボタンのみを備える
SIMカードは上部にトレイを備える。nanoSIMカードを採用し、microSDメモリーカードを装着できる
Galaxyシリーズ伝統のホームキーがなくなり、ナビゲーションボタンはソフトウェア表示に変更。左端の[・]で表示/非表示を切り替え可能

大画面を活かす多彩な機能

 約6.3インチという大画面を搭載するGalaxy Note8だが、この大画面を活かすための機能としては、マルチウィンドウとアプリペアなどの機能が搭載されている。

 マルチウィンドウはその名の通り、複数のアプリを同時に起動し、画面の上下に表示するというもので、Android 7.0で実装されたマルチウィンドウの機能をよりわかりやすく搭載している。たとえば、メールを見ながら、待ち合わせの場所をマップで確認したり、スケジュールを確認するといった使い方ができる。操作も簡単で、ナビゲーションバーの履歴キーを長押しして、表示されたアプリ一覧から、マルチウィンドウで表示したいアプリのアイコンをタップするだけだ。縦画面なら上下分割、横画面に持ち替えれば、左右分割で複数のアプリを表示できる。

 このマルチウィンドウをより簡単に起動できるのが「アプリペア」だ。アプリペアは画面右上で内側にスワイプしたときに表示されるエッジスクリーンのAPPS EDGEに、あらかじめ組み合わせて利用したいアプリを登録しておくことで、一度に起動できるというものだ。たとえば、ブラウザとYouTubeを登録しておき、動画コンテンツを流しながら、Webページをチェックしたり、メールとカレンダーの組み合わせで、スケジュールをチェックしながら、メールの返信を作成するといった使い方ができる。アプリペアの組み合わせもAPPS EDGEから簡単に作成できるため、はじめてのユーザーでも迷わずに操作できる。

 また、画面サイズが大きくなると、画面内で指が十分に届かず、操作性が低下してしまうことがある。たとえば、Galaxy S8/S8+ではフリック入力で文字を入力するとき、画面の左側に表示される「あ」ボタンと「た」ボタンの左フリックが入りにくく、下フリックと解釈されて、「お」や「と」が入力されてしまうという問題を指摘した。サムスンによれば、Galaxy Note8ではこの問題が解決されており、他機種のフリック入力の判定などと比較しながら、チューニングを行なったという。実際の操作感もかなり改善され、「あ」ボタンや「た」ボタンの左フリックで、「い」や「ち」が入力されるようになった。

 ただ、文字入力についてはまだ改善点が残されているので、加えて指摘しておきたい。Galaxy Note8で日本語を入力するとき、画面中段には予測変換の候補が表示されるが、この表示が小さく、タップしたときに選択ミスが起きやすい。他機種の数値と比較してみると、その差はハッキリしていて、Xperia XZ PremiumやAQUOS Rは予測変換の候補が二段で表示されるが、一段あたり実測で縦方向が約7mmであるのに対し、Galaxy Note8は約5mmしかない。iOSは予測変換候補は一段表示だが、iPhone 8 Plusは約8mm、iPhone 8は約6.5mm、iPhone Xは約7mmが確保されており、候補の選択ミスを起きにくくしている。Galaxy Note8はせっかく約6.3インチでQHD+表示が可能な大画面ディスプレイを搭載しているのだから、こういった部分でも大画面を活かした使いやすさを考慮して欲しいところだ。

Galaxyシリーズのおなじみのホーム画面(NTTドコモ版)。ウィジェットも多く貼り付けておくことができる
ホーム画面を上方向にフリックすると、アプリ一覧画面が表示される。グリッドは「5×6」(写真)のほかに、「4×6」の設定も可能。並べ替えなど、カスタマイズもしやすい
ステータスパネル内のボタンは「4×3」が標準設定。「3×3」や「5×3」の設定にも切り替えられる
ステータスパネル内のボタン(2画面目)。ボタンは自由に並べ替えられる
Bixbyボタンを押すと、周辺の観光スポットなどが表示される
フリック入力は改善されたが、予測変換の候補が小さく、縦方向のエリアが狭いため、間違って選んでしまう。この画面では「天気」をタップしたつもりが、「電気」や「電器屋」が選ばれてしまうことがある

 もうひとつハードウェア関連で注目されるのは、Galaxy S8/S8+発売時には見送られていた「DeX Station」も発売されたことだ。DeX Stationは小型の卓上ホルダーで、Galaxy Note8を挿し、HDMIケーブルでディスプレイに接続することにより、パソコンのようにマルチウィンドウで操作できる環境を実現する。実際の利用シーンはImpress Watch Videoの「法林岳之のケータイしようぜ!! #452」「Galaxyアクセサリー」で取り上げているので、そちらをご覧いただきたいが、出張先のホテルなどで、パソコンを使わずに作業をするときなどにも便利だ。

操作性が向上したSペン

 さて、Galaxy Noteシリーズ最大の特徴と言えば、やはり、「Sペン」が挙げられる。Sペンは一般的なスタイラスペンなどと違い、ワコムのタブレットなどで知られる電磁誘導式ペンの技術をベースにしたものが採用されており、スタイラスペンにはない書き味や独自機能が数多く搭載されている。

本体下部に格納されているSペンを取り出すと、画面のようにエアコマンドのメニューが表示される

 これまでのGalaxy Noteシリーズでは世代を追うごとに、Sペンそのものの性能を向上させ、Sペンを利用した機能も充実してきている。今回のGalaxy Note8では下面にSペンが格納されており、Sペン格納部分を押すと、Sペンの頭部が少し飛び出す構造を採用しており、取り出しやすくなっている。Sペンの筆圧はGALAXY Note Edgeの2048段階から2倍となる4096段階に向上し、ペン先も約0.7mmと細くなり、書き味が一段と良くなっている。筆者は絵よりも文字を書く方だが、過去のGalaxy Noteシリーズで絵を描いたことがあるユーザーに聞くと、かなりタッチが良くなり、絵が描きやすくなった印象だという。

 Sペンを活かす機能としては、まず、画面オフメモが挙げられる。本体の画面がオフの状態、あるいはAlways on Displayが表示されている状態で、Sペンを本体から取り出すと、画面オフメモが起動し、すぐにメモを取ることができる。画面オフメモは最大100ページまで書くことができ、書いた内容をAlways on Displayに登録して、いつでも参照できるようにしたり、サムスン標準アプリのGalaxy Notesに保存して、あとでさらに情報を書き加えるといった使い方ができる。

 次に、ロックが解除された状態でSペンを取り出すと、画面右側にエアコマンドのメニューが表示される。これはSペンを利用した便利な機能がまとめられたメニューで、標準では「ノートを作成」「全てのノートを表示」「スマート選択」「キャプチャ手書き」「ライブメッセージ」「翻訳」「Bixby Vision」が登録されており、ユーザーの好みに応じて、追加や削除、並べ替えなどのカスタマイズができる。

 これらのうち、「ノートを作成」と「全てのノートを表示」はGalaxy Notesでメモを書いたり、保存されているノートを参照するものになる。「スマート選択」はWebページに表示されている内容などを切り取って、テキストを抽出したり、動画の一部をGIFアニメとして保存する機能になる。「キャプチャ手書き」はスクリーンショット(画面キャプチャ)にSペンで書き込みをする機能などで、地図をキャプチャして、手書き文字で目印などを書き込むといった使い方ができる。翻訳はGoogle翻訳を活用し、表示した画面の単語や文章にSペンをかざすと、ポップアップで翻訳を表示できるというもので、海外旅行などでも役に立ちそうだ。

「キャプチャ手書き」ではスクリーンショットを撮って、Sペンで文字や線などを自由に書き加えることができる
画面オフの状態から、Sペンを取り出すと、すぐにメモができる「画面オフメモ」。最大100ページまで記録可能
「PENUP」は塗り絵を楽しむことができるアプリ。絵心がなくても絵を描く楽しみが体験できる

 「ライブメッセージ」は手書き文字を動くスタンプのように、GIFアニメとして保存できるもので、手書きでメッセージを書くだけでなく、写真を背景で取り込み、そこにSペンで書き込むこともできる。フォーマットもGIFアニメなので汎用性が高く、メールやSNSのアプリでも利用できるため、今年のクリスマスや年末年始のメッセージに活用すると、相手にもちょっと驚かれるかもしれない。

ライブメッセージでは背景に写真を取り込み、メッセージを手書きで入力可能。GIFアニメ形式で保存されるので、さまざまなアプリで活用できる

 エアコマンドの初期設定にないものとしては、「ルーペ」「カラーリング」「小窓表示」などが用意されている。ルーペはSペンをかざすと、いつでも拡大表示ができるというもので、大画面かつ高解像度の表示が可能なGalaxy Note8を考慮した機能だ。カラーリングは「PENUP」というアプリによる塗り絵の機能で、好きな下絵を選び、Sペンを使って、カラーリングすることができる。小窓表示はアプリを小さいウィンドウで表示しておき、必要に応じて、Sペンをかざして全画面表示に切り替えられるという機能で、ライブ配信の映像を最小化して、見たいシーンになったら、切り替えたり、地図などを最小表示しておき、目的地付近に着いたら、拡大表示して、参照するといった使い方ができる。

シリーズ初のデュアルカメラ搭載

 今回のGalaxy Note8は昨年のGalaxy Note7から今年のGalaxy S8/S8+へと続く進化の延長線上にあるが、ハードウェアでもっとも大きく変わったのはカメラだ。Galaxy Note8では背面にシリーズ初となるデュアルカメラを搭載している。

 デュアルカメラについては、製品によって、標準と望遠など、異なる焦点距離のカメラを搭載する手法やモノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせる手法があるが、Galaxy Note8は望遠と広角のカメラで構成する。いずれも12メガピクセルのセンサーを採用し、広角カメラはGalaxy S8/S8+でも高い評価を得たデュアルピクセルイメージセンサーに、F1.7という業界トップクラスの明るいレンズを組み合わせている。望遠側は12メガピクセルのイメージセンサーで、F2.4のレンズを組み合わせる。広角と望遠のカメラはいずれも光学手ブレ補正を備えており、なかでも望遠での撮影時に光学手ブレ補正が利用できるのは、かなり有効と言える。

背面には広角と望遠を組み合わせたデュアルカメラを搭載。中央のLEDの左側がデュアルカメラで、右側が指紋認証センサー
ライブフォーカスが有効になると、画面にその旨が表示される。表示の下のゲージを左右に動かすと、被写界深度を変更して、ピントの合う範囲を変更できる。

 また、焦点距離が異なる2つのカメラの組み合わせを利用し、撮影時や撮影後に、被写体の一部や背景をぼかしたり、ピントが合うように調整する「ライブフォーカス」という機能も搭載される。背景のぼかしは、メインの被写体を際立たせるという効果があるが、その他にも背景に邪魔なものが写ってしまったときに、背景をぼかすことで、隠すこともできる。操作も非常に簡単で、ファインダー内の「ライブフォーカス」をタップして、表示されたゲージを左右に移動することで、ぼかしの強弱を調整できる。ただし、被写体が近すぎたり、光量が不足している環境では、ライブフォーカスが利用できないことがある。とは言え、撮影後も効果を編集できるメリットもあるので、普段からライブフォーカスで撮っておくのも手だ。

 望遠カメラについては広角の光学2倍に相当する画角で撮影が可能で、撮影時は広角側のカメラでも撮影され、いっしょにファイルに保存される。望遠カメラで遠くの被写体を撮りながら、広角でも同時に撮影することで、その場所の空気感を知ることができる。

 ディスプレイ側のサブカメラについてはGalaxy S8/S8+のものを継承。8メガピクセルのイメージセンサーにF1.7の明るいレンズを組み合わせており、画像処理などのソフトウェアが最新のものに更新されている。Galaxy S8/S8+でも好評を得たフェイスフィルターや3Dライブステッカーなども継承されており、サブカメラでの自分撮りだけでなく、メインカメラでの撮影時にも適用できる。忘年会やクリスマスなど、人と会う機会が多いシーズンには、かなり楽しめる機能のひとつと言えるだろう。

 また、美顔モードについては「肌の色合い」「スポットライト」「顔をスリムに」「目を強調」「輪郭を補正」という5つの項目が用意されており、それぞれを個別にコントロールして、設定することができる。ちなみに、サブカメラ撮影時にディスプレイを光らせて、フラッシュとして利用するモードも用意されている。撮影モードについてはメインカメラが[自動][プロ][パノラマ][食事]、サブカメラでは[自分撮り][ワイド自分撮り]など、多彩なモードが用意されており、シチュエーションに合わせた撮影が可能だ。

 実際の撮影した写真の仕上がりについては、ベースとなったGalaxy S8/S8+がトップクラスの実力を持っていたこともあり、Galaxy Note8もデュアルカメラという仕様の違いこそあれ、仕上がりは文句なしにトップクラスにあると言って、差し支えないだろう。特に、暗いところでの撮影については、標準設定のままでもかなり明るく撮影することができ、モードを[プロ]などに切り替えれば、さらに凝った撮影ができる。ライブフォーカスも初心者にわかりやすいユーザーインターフェイスになっており、今までと違った雰囲気の写真を撮って、楽しむことが可能だ。

Galaxy Note8 撮影サンプル
背面のデュアルカメラの広角で撮影
背面のデュアルカメラの望遠で撮影
秋の紅葉とドイツのノイシュバンシュタイン城。離れた橋から望遠で撮影
ドイツ・ミュンヘンの新市庁舎を撮影。夜だったが、クッキリと美しく撮影できている
おなじみの薄暗いバーで撮影。暗いところでもこの明るさで撮影できるのはうれしい

クリエイティブなユーザーが最大限に楽しめるGalaxy Note8は買い!

 スマートフォンも10年近くが経過し、製品として完成度が高められてきた。一方で、どの製品でも変わらない機能を利用できることになり、最近では「個性的な製品が少なくなってきた」と言われるようになってきている。そんな中、約3年ぶりに復活したGalaxy Note8は、歴代のGalaxy Noteシリーズで培われてきたものを継承しながら、最新のGalaxy S8/S8+の機能も取り込むことで、非常に多機能かつ便利で、使い応えのあるスマートフォンとして仕上げられている。なかでもSペンを利用した多彩な機能は、思いついたことをすぐにメモすることに始まり、写真や画像にメッセージを書き加えたり、ちょっとした絵やイラストを描いてみたりと、かなり幅広いシーンで活用できる環境を整えている。クリエイティブなユーザーはもちろん、ペンによる入力に何か可能性を感じるユーザーにもぜひ試して欲しいレベルの仕上がりだ。

Galaxy Note8の魅力と言えば、やはり、Sペンによる手書き入力。こんなイラストも簡単に描ける

 ちなみに、価格についてはこれだけの機能とスペックを実現していることもあり、一括払いで12万円を超え、NTTドコモの月々サポートやauの毎月割を適用した実質価格でも7万円台半ばになってしまう。NTTドコモではMNPで移行するユーザーに対し、月々サポートでさらに多くの額を割り引き、実質負担額を2万円台半ばまで下げる施策を打ち出しており、少しでも割安な価格で購入したいのであれば、これを利用するのも手だ。

 なかなか文章と写真だけでは、その魅力を十分にお伝えすることができないが、サムスンでは東京・原宿に「Galaxy Studio」と呼ばれる体験スペースをオープンするなどしている。会場にはGalaxyシリーズを知り尽くした詳しい説明員が常駐しているので、ぜひ実機のデモを楽しみながら、Galaxy Note8のポテンシャルを体験していただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。