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法林岳之の「Galaxy Note7」発表会レポート
実機ファーストインプレッションも現地からお届け
2016年8月3日 17:02
サムスンは8月2日(米国・東部時間)、米国ニューヨークのManhattan Hammerstein Ballroomにおいて、「SAMSUNG Galaxy Note Unpacked 2016」を開催し、Galaxy Noteシリーズの最新モデル「Galaxy Note7」を発表した。本誌ではすでに製品の詳細を解説する記事を掲載しているが、ここではイベントの様子などを交えながら、解説しよう。
6代目モデル「Galaxy Note7」
昨年のGalaxy Note5とGalaxy S6 edge+の発表に続き、米国ニューヨークでGalaxy Noteシリーズの発表会を催したサムスン。今回はニューヨークのタイムズスクエアに程近いManhattan Hammerstein Ballroomで開催された。このManhattan Hammerstein Ballroomは元々、オペラ劇場として建てられたものが改修され、現在はコンサートホールやスポーツイベントの会場などとして利用されている。今回は1階の観客席の床と同じ高さにステージが用意され、メインホールの高さを最大限に生かし、さらにステージの床面も一体的に使った巨大なプレゼンテーションスクリーンを背景に、プレゼンテーションが行なわれた。
イベントの冒頭、リオディジャネイロオリンピックを控え、世界各国のユーザーがAnthem(国歌)を口ずさむ様子をつなぐイメージムービーが流され、サムスンのMobile Communication DivisionのDJ Koh社長が登壇。このイベントがライブ中継されるロンドンとリオディジャネイロの会場がスクリーンに映し出されると、それぞれの会場からは大きな歓声が上がった。
「Galaxy Note」シリーズの始まりは5年前、2011年に発表した「GALAXY Note」で、大画面ディスプレイを搭載したスマートフォンという新しいカテゴリーを創り出し、「GALAXY Note II」(2012年発表)、「GALAXY Note 3」(2013年発表)、「GALAXY Note 4」(2014年発表)、「Galaxy Note 5」(2015年発表/日本未発売)と進化をさせてきたことが紹介された。そのプロセスにおいて、クリエイティブな新しい世代のユーザー層を生み出し、人々がイノベーションに触発されてきたとする。
そして、次なる製品でのイノベーションとして、セキュリティが求められる今日、新たに搭載される虹彩認証が重要になるという。セキュリティが担保されることにより、さらに新しい利用シーンなどが拡大するとした。
すでにGalaxy S7 edgeなどで実現されている「防水」や「ワイヤレス充電」にも対応することで、ユーザーの利便性を向上させる。Galaxy Noteシリーズの特徴のひとつである、本体に収納できるSペンは、ワコムとの技術を活かして開発されたものだが、これも進化を遂げている。ペンとしての操作性や書き味だけでなく、ペン自体が防水に対応することで、濡れた状態での操作や手書きも可能にするとした。
さらに、スマートフォンの可能性を拡げるモノとして、VR製品や360度カメラ、ワイヤレスイヤホンなどの周辺機器もラインアップが拡充される。
今回の発表では会場内の約1400の座席にGear VRが用意されており、新たに発表されたGalaxy Note7の紹介映像が流された。
防水防塵や虹彩認証に対応
続いて、Product Strategy担当のSenior Vice PresidentのJustin Denison氏が登壇し、製品の具体的な特徴についての解説が行なわれた。
まず、Galaxy Noteシリーズは初代モデル以来、大画面ディスプレイを搭載し、Sペンによるクリエイティブな使い方ができるスマートフォンとして、広くユーザーに支持されてきたが、今回は単に「大きな画面」ではなく、「大きなアイデア」(大きなことをしようという意味)へ進化を遂げるとした。
デザインについては、心地良さと美しさが求められており、今回はGalaxy S7 edgeでも採用された「デュアルエッジスクリーン」を起点としてデザインされたという。ただし、同じカーブディスプレイを流用するのではなく、デュアルエッジのカーブをデザインし直し、エッジ部分はギリギリのところで湾曲させている(カーブがきつくなっている)という。同様に、背面もエッジ部分を同じように湾曲させることで、前面と背面が、側面でシンメトリカル(対称的)につながる薄型ボディに仕上げている。ガラス面とボディをシームレスにつなぐことで、ちょうど側面部分が3Dカーブを描くような曲線に仕上げ、上下左右と表裏のバランスが取れた美しいデザインにまとめたという。
ディスプレイは5.7インチのQHD表示が可能なSuperAMOLEDを搭載するが、これも単純にディスプレイが大きいというだけでなく、UX(ユーザー体験)もリファインされている。たとえば、さまざまなアプリのアイコンもデザインし直され、設定画面の一覧表示なども視認性を考慮したデザインでまとめられている。壁紙も本体の動きに合わせて、微妙に変化する「Motion Wallpaper」が搭載され、本体のボディカラーはBlack Onyx、Silver Titanium、Gold Platinum、Blue Coralの4色がラインアップされる。
Sペンが防水や高精細化、機能も進化
次に、Sペンについては、さまざまな面で改良が加えられている。まず、ペン先の太さを従来の1.6mmから0.7mmに細くし、より細やかな線を表現できるようにすることで、スケッチ画などの微妙なタッチをディスプレイ上で再現する。プレゼンテーションでは新しい描画ツールを使い、微妙な色合いを重ねた絵を描く様子が紹介された。
Sペンで手書き(手描き)入力が使えるアプリとしては、これまで「アクションメモ」「Sノート」「メモ」「スクラップブック」がプリインストールされていたが、今回からは「Samsung Note」という統合アプリケーションがプリインストールされる。
また、Sペンを利用した新しい機能として、Webページなどを表示しているとき、Sペンのペン先を表示されている単語に近づけると、Google翻訳を利用し、その単語の翻訳を表示することができる。
従来モデルではロック画面からでもSペンを取り出すだけで、メモが取れる機能が搭載され、Galaxy Note7にも継承されているが、この機能がGalaxy S7 edgeにも搭載されたAlway On Displayにも対応しており、これらを連携させて利用することができる。
さらに、YouTubeなどの動画コンテンツを再生するとき、Sペンを使い、動画からGIFアニメーションを生成する機能が紹介された。生成したGIFアニメはメールやSNSなどで共有することもできる。
ボディの防水については本体がIP68の防水防塵対応で、Sペンも防水対応のため、水しぶきなどがかかったときはもちろん、水に沈めた状態でも手書き入力ができる。本体については、Sペンを取りはずし、Sペン収納口に水が入った状態でも防水性能は維持され、問題なく利用できるように設計されているという。ちなみに、Sペンについては本体から取り出せばすぐに利用できるため、Justin Denison氏は「どこかのメーカーのように、使い始める前に充電をする必要もない」とコメントして会場を沸かせた。
HDR対応ディスプレイなどハイスペックな本体
エンターテインメントについては、ゲームやコンテンツなどを大画面で楽しむことができるが、それだけではない。
そのひとつが現在、テレビでも対応が始まっているHDR(High Dynamic Range)コンテンツの再生だ。スマートフォンとしては初めて、HDR対応の明暗差のある美しい映像を楽しむことができるという。こうしたコンテンツの再生にはチップセットなどの処理能力が求められるが、Galaxy Note7にはサムスン独自の「mDNIe(mobile Digital Natural Image engine)」と呼ばれるディスプレイエンジンチップセットを搭載することで、「HDR10」フォーマットのコンテンツの再生を可能にしている。ちなみに、プレゼンテーションではAmazonが提供するコンテンツが上映され、AmazonプライムでのHDRコンテンツ配信が計画されているようだ。
ゲームについてはGalaxy S7 edgeでもサポートされていたVulkan APIをサポートしており、高いグラフィック性能を求めるゲームを快適に利用できるようにしている。Vulkan API対応のゲームについてはGoogle Playでも専用コーナーで提供されるという。
カメラについてはGalaxy S7 edgeに搭載されたデュアルピクセルカメラが継承され、F値1.7のレンズと12Mピクセルのデュアルピクセルセンサーの組み合わせで、現在のスマートフォンでもっとも美しい写真を撮影できるとした。今回のGalaxy Note7はGalaxy S7 edgeと同じカメラモジュールが搭載されているが、画像処理エンジンなどは最新のものに更新されており、一段と写真のクオリティを高めたとしている。
メモリーについては4GB、内蔵ストレージについては64GBを搭載するほか、最大256GBのmicroSDメモリーカードも装着が可能だ。
チップセットの性能については従来のGalaxy Note5から30.7%、GPU性能については58.5%もパワフルになっているという。バッテリーは3500mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、充電はFast Wireless Chargingによるワイヤレス充電に対応する。ワイヤレス充電については、本体の背面に装着できるバッテリーカバー(純正オプション)にも採用されており、しかもバッテリーカバーを装着した状態でも防水に対応するという。
外部接続端子は表裏どちら向きにもコネクタを挿すことができるUSB Type-Cが採用される。USB Type-Cは今後の主流になると見られるが、ユーザー視点で言えばまだしばらくは現在のmicroUSBと併用することになるため、パッケージには変換アダプタが同梱される。Denison氏はここでも、「ちなみに、オーディオジャックは同じだから」と一言付け加えて、再び会場を沸かせた。
従来のGalaxyシリーズの端末から買い替えたときは、USBケーブルやWi-Fiなどを使うことで、それまで使っていた端末からデータを引き継ぐ機能が提供される。さらに、こうしたデータを保存することができるSamsung CLOUDが提供され、最大15GBまで無料で利用することが可能だ。
虹彩認証でセキュリティをさらに強化
セキュリティにも言及される。現在のスマートフォンはメールや連絡先、航空券の情報など、さまざまな情報が保存されており、これらを安全に守ることが求められている。SamsungではこれまでKNOXという機能を搭載することで、情報を安全に守ることができるように取り組んできた。さらに、セキュアな情報に容易にアクセスできるように、3年前から指紋認証センサーも搭載してきた。
そして、今回のGalaxy Note7では新たに虹彩認証を搭載した。本体に内蔵された赤外線センサーを使い、人の眼の虹彩情報の特徴点をデジタルデータとして記録し、これをロック解除などの認証に利用している。この虹彩認証はWebページなどのログインにも利用することができるうえ、オンラインバンキングのログイン認証にも利用できるように準備が進められているそうだ。
Denison氏からは最後に、発売は米国を中心に、8月19日になることが明らかにされた。
Galaxy Note7対応の新Gear VR
続いて、Product Planning担当のSuzanne De Silva氏が登場し、Galaxyシリーズを楽しむための周辺機器が紹介された。
まず、今、もっとも注目を集めているVRコンテンツ。会場の各席に用意されたGear VRを通じて、オリンピックが開催されるリオディジャネイロの風景を中心に、VRコンテンツの体験や、新たに発売される新型の「Gear VR」、VRコンテンツを容易に作成するための360度カメラの「Gear 360」が紹介された。
新Gear VRは従来モデルから視認性などが改良されたほか、Galaxy Note7がUSB Type-Cを採用しているため、端末を装着する部分のコネクタが変更されている。従来のGalaxy S7 edgeなどを装着できるように端子の変換アタッチメントも同梱されるという。
VR以外の製品群として、Fitnessユーザーのための「Gear Fit2」、左右の耳の間の接続ケーブルもないワイヤレスイヤホンの「Gear Icon X」が紹介された。サムスンが米国などを中心に展開するSamsung Payも利用できる環境を増やしているという。
ここで製品のプレゼンテーションは終了し、エンディングになったのだが、ステージには薄いスクリーンが降ろされ、ステージ左右のエリアから一斉にスタッフがデスクや什器、機材を運び出し、わずか数分程度で、ステージ上にタッチアンドトライのスペースを作り出した。まるで演劇の舞台の早変わりのような演出に、会場からは万雷の拍手が送られ、イベントは終了した。
Galaxy Note7、ミニインプレッション
今回発表されたGalaxy Note7だが、短い時間ながら、発表会場で実機を試用した印象などをお伝えしよう。製品のスペックなどについては、速報記事やサムスン電子の製品情報のページなどをご参照いただきたい。
幅を抑え、さらに進化したエッジスクリーン
まず、ボディそのものの印象だが、基本的にGalaxy S7 edgeのデザインの流れをくんでいるものの、Galaxy S7 edgeのデュアルエッジスクリーンに比べ、湾曲する部分がより両端に寄っているうえ、背面もディスプレイと同じ曲線で湾曲しているため、表裏がシンメトリカルな形状でつながるように仕上げられている。Galaxy S6 edgeが台形に近い形状で、Galaxy S7 edgeではこれを背面側からも湾曲させていたが、今回のGalaxy Note7は前面と背面を対称的に湾曲させたデザインにまとめているわけだ。ボディのメタル部分とガラス面のつなぎ目もGalaxy S7 edgeよりもシームレスに仕上げられており、ディスプレイと本体が一体感のある美しいデザインにまとめられている印象だ。
このボディ形状により、ボディ幅は従来のGalaxy Note 5よりも2.2mmも幅が狭められ、Galaxy Noteシリーズとしてはもっとも幅が狭い仕上がりとなっている。実際に持った印象としては、背面の形状の違いもあり、Galaxy S7 edgeにカバーを付けた状態とあまり変わらないサイズ感という印象だ。
ちなみに、この5.7インチディスプレイで73.9mmというボディ幅は、5.5インチを搭載するiPhone 6s Plusに比べ、3.9mmも幅が狭いということになる。
大画面ディスプレイは迫力ある映像を楽しめるという魅力がある半面、重量が増えてしまう傾向にあるが、Galaxy Note7は169gに抑えられている。これは歴代のGalaxy Noteシリーズでもっとも軽かったGALAXY Note 3と1gしか変わらない重量となっている。防水防塵に対応するために、重量の面では不利とされるゴムやシリコン素材が増えていることを考慮すると、シリーズ最軽量と表現しても差し支えないレベルだ。
Sペンの書き心地が向上、写真の中の文字も翻訳可能
また、Galaxy Noteシリーズのアイデンティティとも言えるSペンについては、先端部を細くし、スキャンレートを360Hzに高め、圧力感知を4096段階にしたことで、格段に書き味が向上している。
ちょっとしたメモを取るときの追従性もさることながら、水彩画や油絵のような表現を可能にするドローイングツールでは繊細なタッチで表現することができる。おそらく、これまでのGalaxy Noteシリーズで、「絵を描くのは楽しいけど、もう一息、タッチが……」と感じていた人たちにも満足できそうな仕上がりだ。
Sペンを利用した機能としては、Webページなどの単語を翻訳するエアビューの翻訳機能、最大300%まで拡大できるズーム機能などが用意されているが、翻訳機能はGoogle翻訳を利用しているため、現時点で最大92カ国語の単語を翻訳できる。しかもWebページの単語だけでなく、写真に写っている文字の言葉もOCR機能を利用して翻訳できるため、写真として撮影した案内板や看板なども、単語の意味を知ることができる。特に、アルファベット以外の文字を利用する言語の意味を知りたいときなどにはとても便利で、海外旅行や海外出張の多いユーザーにはぜひ試して欲しい機能のひとつだ。
虹彩認証、カメラ、ワイヤレス充電
虹彩認証については、国内ではすでに富士通のArrowsシリーズで実現されているが、これとほぼ同じ仕組みのものが搭載されており、認識の速さも一瞬で、ほとんど同じレベルだ。従来モデル同様、指紋認証センサーも搭載されるため、ユーザーの好みに応じて使い分けができそうだ。
カメラについてはGalaxy S7 edgeと同じカメラモジュールが搭載され、画像処理エンジンなどは最新のソフトウェアが反映されているが、Galaxy Note7ではユーザーインターフェイスが見直されたことで、非常に直感的に操作できるようになった印象だ。
充電についてもGalaxy S7 edgeなどで採用されたワイヤレス充電に対応しており、対応の充電器を用意すれば、ワイヤレスながらも高速に充電することができる。アクセサリーとして提供されるバッテリーパックにもワイヤレス充電の技術が採用されており、本体背面に装着するだけで、充電を開始することができる。米国でも人気になっているポケモンGOなどのゲームをヘビーに遊ぶユーザーには魅力的なアクセサリーだろう。
日本語ページを公開
今回の発表会では日本市場向けのアナウンスが一切なく、今後の展開がまったく見えない状況だが、すでにサムスン電子ジャパンのWebページには、製品情報ページが日本語化された状態で公開されている。前モデルで昨年発表のGalaxy Note 5の日本市場への投入が見送られた後、ユーザーからもかなり厳しい意見が出てていたことを考慮すると、今回は日本市場向けに投入される可能性は十分にあると言えそうだ。