法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

AI対応チップセットで新たな可能性を開く「HUAWEI Mate 10 Pro」

 11月28日、ファーウェイはフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 10 Pro」の国内向けモデルを発表した。すでに、本誌では10月にミュンヘンで開催されたグローバル向け発表会でのファーストインプレッション、今回の国内向けモデルの発表会レポートなどが掲載されているが、一足早く国内向けモデルの実機を試すことができたので、レビューをお送りしよう。

HUAWEI Mate 10 Pro
ファーウェイ「HUAWEI Mate 10 Pro」、約154.2mm(高さ)×74.5mm(幅)×7.9mm(厚さ)、約178g(重量)、チタニウムグレー(写真)、ミッドナイトブルー

もうひとつのフラッグシップモデル

 グローバル市場はもとより、国内市場においても着実に存在感を増しつつあるファーウェイ。国内の各携帯電話事業者やMVNO各社にスマートフォンやタブレット、モバイルWi-Fiルーターなどを供給する一方、拡大が続くSIMフリー市場においても次々と新製品を投入し、トップシェアを獲得している。

 そんなファーウェイのフラッグシップモデルとして、昨年のHUAWEI P9の後継モデルとして発売されたのが「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」だ。Leicaとの協業によって開発されたダブルレンズカメラは、モノクロイメージセンサーとカラーイメージセンサーを組み合わせることにより、今までのスマートフォンにはなかった高いクオリティの写真撮影を実現し、各方面で高い評価を得ている。同時に、デュアルカメラは搭載していないものの、同じデザインコンセプトを継承しながら、よりリーズナブルな価格設定がされた「HUAWEI P10 lite」は、国内で販売されるSIMフリースマートフォンとして、もっとも好調な売れ行きを記録しており、幅広いユーザーに支持されている。

 ファーウェイのラインアップには、このHUAWEI Pシリーズと並ぶ形で、もうひとつフラッグシップに位置付けられるモデルがある。それが「HUAWEI Mate」シリーズだ。MateシリーズはコンパクトなボディのHUAWEI Pシリーズに対し、「大画面」「ハイスペック」「大容量バッテリー」という3つの要素を強化されており、国内市場向けにも「HUAWEI Mate 9」「HUAWEI Mate S」などが販売されてきた実績を持つ。なかでも昨年12月に発売された「HUAWEI Mate 9」は、昨年の「HUAWEI P9」と同じLeicaレンズを採用したダブルレンズカメラを搭載し、大画面スマートフォンのヒット商品となった。

 今回発表された「HUAWEI Mate 10 Pro」は、HUAWEI Mate 9の後継モデルに位置付けられ、今年10月に独ミュンヘンで開催されたファーウェイのイベントにおいて発表されたモデルの国内版となる。基本的な仕様はグローバルモデルと共通だが、日本語入力のサポートや国内キャリアの相互接続テストをクリアするなど、国内市場向けに最適化されたパッケージとなっている。発売は12月1日からとなっており、HUAWEI P10/P10 Plusと並ぶ、ファーウェイのもうひとつのフラッグシップモデルとして、広く展開される予定だ。

約6インチ「Full View Display」搭載

 「大画面」「ハイスペック」「大容量バッテリー」という特長に基づいて、製品を進化させてきたHUAWEI Mateシリーズだが、今回のHUAWEI Mate 10 Proも同じ方向性を維持しながら、これまで以上に大きく変化を遂げている。

 まず、何と言っても特徴的なのが本体前面に搭載された約6インチの「Full View Display」の存在感だ。2160×1080ドット表示が可能なフルHD+解像度のOLED(有機EL)ディスプレイで、画面の縦横比は18:9で、70000:1の高コントラスト、NTSC比112%の色域というスペックを持つ。本体前面のほとんどをディスプレイが覆うデザインは、今年に入って、Galaxy S8/S8+やGalaxy Note8、LG V30+、iPhone Xなどが相次いで採用してきており、ファーウェイもフラッグシップモデルにいち早く取り込んできたというわけだ。HUAWEI Mate 10 Proの画面はiPhone Xに比べ、画面占有率(本体前面に画面が占める割合)こそ、1%以下の違いしかないが、面積比では16%も広く、持ちやすいサイズで大画面を実現している。

手にフィットするボディ。従来のHUAWEI Mate9よりも小さくなり、持ちやすくなった

 ボディは背面側がラウンドしたフォルムでデザインされており、狭額縁ディスプレイの効果により、ボディ幅は74.5mmに抑えられている。昨年のHUAWEI Mate 9が5.9インチディスプレイで、ボディ幅が78.9mmだったことを考えると、ボディ幅は4.4mm狭くなったわけだが、実際に持った印象は「大画面スマートフォン」特有のボリューム感が抑えられ、グッと持ちやすくなっている。その他の機種の比較ではiPhone Xの70.9mmに比べると、少しワイドだが、iPhone 8 Plusの78.1mmよりはコンパクトで、Galaxy Note8の74.8mm、Galaxy S8+の73.4mmと同程度のサイズ感に仕上げられている。

HUAWEI Mate 10 Pro(左)とHUAWEI Mate 9(右)。色の違いの影響もあるが、ボディ幅は4.4mmも狭く仕上げられている
厚さも両機種とも7.9mmだが、HUAWEI Mate 9(右)が中央部分が盛り上がった曲面であるのに対し、HUAWEI Mate 10 Proはほぼフラットな背面で、両端がカーブしている仕上がり

 ボディカラーはグローバル向けモデルが4色展開だったのに対し、国内向けはミッドナイトブルーとチタニウムグレーの2色が採用された。カラーバリエーションが少なくなったと考えるかもしれないが、昨年のHUAWEI Mate 9も2色展開でスタートしており、今後の売れ行きやMVNO各社の採用などによって、カラーが追加される可能性はありそうだ。

HUAWEI Mate 10 Proの国内版(左)とグローバル版(右)。形状はまったく同じ
背面のデザインも共通。グローバル版(右)のカラーはMocha Brown(モカブラウン)

 ほとんどをディスプレイが占める前面に対し、背面にはダブルレンズカメラ、デュアルLEDフラッシュ、指紋認証センサーが備える。カメラがある部分には帯のようなビジュアルパターンをあしらい、デザイン面でのアクセントとなっている。ちなみに、背面は曲面のGorilla Glass(ゴリラガラス)を採用しているが、その内側はコーティングやUV硬化、PETフィルム、インクフィルムなどの多層フィルムで構成され、光沢感のある美しい仕上がりとなっている。この美しい仕上がりを保護するため、パッケージにはクリアタイプの柔らかい材質のケースが付属しており、購入後も安心して使うことができる。

 また、今回のHUAWEI Mate 10 Proが最近の同社製SIMフリー端末と大きく違うのは、IP67等級の耐水防塵性能を備えたことが挙げられる。同社製端末は国内でも着実に人気を得つつあるが、これまで防水防塵に未対応であることを心配する声があったことから、今回の対応は国内ユーザーの要望に応えたことになる。ちなみに、同社は各携帯電話事業者向けに防水対応端末を納入してきた実績もあり、技術的には何も不安はなく、今回の試用でも問題なく、濡れた環境で利用できている。

背面には指紋認証センサー、ダブルレンズカメラ、デュアルLEDフラッシュを備える。指紋認証のレスポンスも良好
右側面には電源キーと音量キーを備える
下面にはUSB Type-C外部接続端子を備える。3.5mmイヤホンマイク端子は廃止されている
デュアルSIM&デュアルスタンバイに対応。SIMカードはnanoSIMを採用し、左側面にトレイを備える
HUAWEI Mate 10 Proのホーム画面。インストールされたアプリはホーム画面を左右にフリックした画面に並ぶ。ボタンからアプリ一覧を表示する方式に切り替えることもできる
ステータスパネルでは一般的な項目のほかに、マルチスクリーンの設定なども可能

AI対応チップセット「Kirin 970」搭載

 今回発表されたHUAWEI Mate 10 Proで、もっとも大きな特長のひとつと言われるのがチップセットになる。これまでファーウェイはチップセットとして、グループ傘下のHiSilicon Kirinシリーズ、米Qualcomm製Snapdragonシリーズを、モデルに応じて使い分けてきた。今回のHUAWEI Mate 10 Proには同社が新たに開発したAI対応チップセット「Kirin 970」が搭載される。

 Kirin 970はクアッドコア2つから構成するCPU、Mali G72 12コアGPUに加え、世界初の「NPU(Neural-network Processing Unit)」を組み込んだ構成。10nmのプロセスルールで製造され、55億個のトランジスタを内蔵する。従来のMate 9に搭載されていたKirin 960との比較で、CPUは電力効率が20%アップ、GPUは20%のパフォーマンスアップと50%の電力効率アップが図られているという。「NPU」についてはAIのパフォーマンス向上にも大きく寄与しており、CPUを1とした場合、パフォーマンスで25倍、電力効率では50倍の性能向上を実現しているという。AIによるユーザーの利用環境の最適化も図られており、レスポンスで60%アップ、スムーズな操作性は50%アップを実現し、長期間利用しても基本的なレスポンスやスムーズな動作は変わらないとしている。

 今回は試用期間が短かったため、AIについて単純に評価することはできないが、独ミュンヘンで行なわれたプレス発表ではユーザーが長期間利用したときと同じ環境をロボットなどを利用することで擬似的に再現し、変わらないパフォーマンスが得られたという動画も公開しており、継続的に安定したパフォーマンスで利用できることを強くアピールしている。

 本体には4000mAhの大容量バッテリーを搭載しており、前述の電力効率アップの効果などもあって、HUAWEI Mate 9よりも高いパフォーマンスを発揮しつつも、30%のロングライフを実現。ヘビーユーザーで1日以上、標準的なユーザーであれば、約2日間の利用を可能にしている。今回の試用では毎日のように充電するのではなく、ある程度、利用して、バッテリー残量が減ってから充電するような使い方をしたが、利用頻度が高くなければ、2日に一度で十分な印象で(実際には毎日充電するだろうが……)、旅行や出張での移動中など、長時間、充電できない環境が続いても安心して利用できるという印象を得た。

 ちなみに、充電については同社独自の「HUAWEI SuperCharge」と呼ばれる急速充電に対応しており、付属のACアダプターとケーブルを使って、約30分で58%まで充電できるという。充電の安全性についてもドイツの試験機関TUV Rheinland(テュフ ラインランド)による充電の信頼性試験をクリアしており、幅広い温度環境下での利用や落下後の動作などについても検証されている。

 ネットワークの対応については、FDD-LTEやTDD-LTE、W-CDMA、GSMに対応する。SIMカードスロットはデュアルSIMで、デュアルSIM&デュアルスタンバイに対応するが、これまでのように、LTEが片方に限られるのではなく、2枚ともLTEが利用できる「デュアル4G LTE/デュアルVoLTE」をサポートする。

左上の事業者名も二段表示。右側のアンテナピクトも2つ表示される

ただし、国内でのVoLTEについては、今のところ、ソフトバンクのネットワークに限られており、NTTドコモやauのネットワークはVoLTE未対応(LTEによる通信は利用可能)という扱いになる。MVNO各社が利用するネットワークの状況を鑑みると、NTTドコモとauのVoLTEに対応しないということは、実質的にデュアルVoLTEは限られた環境でしか利用できないことになる。やはり、VoLTEについてはNTTドコモ及びNTTドコモのネットワークを利用するMVNOに対応し、au及びauのネットワークを利用するMVNOでも利用できる環境を早々に整えて欲しいところだ。

デュアルSIMの動作を設定する画面。どちらのSIMカードを通話や通信で利用するかを設定できる
モバイルネットワークの画面ではSIMカードごとに、VoLTE通話の有効/無効を設定可能
NTTドコモのSIMカードを装着したときのAPN画面。出荷時に多くのMVNO各社のAPNが登録されている
ソフトバンクのSIMカードを装着したときのAPN画面は、ソフトバンクとワイモバイルのみ

 また、本体メモリー(RAM)は6GBで、ストレージ用には128GBのROMを搭載する。Androidスマートフォンとしては大容量の部類に入るが、microSDカードに対応していないので、その点は注意する必要があるだろう。

 外部接続端子は下部にUSB Type-Cポートを備えており、充電やパソコンとの接続に利用できるほか、ディスプレイや家庭用テレビのHDMI端子を接続することで、HUAWEI Mate 10 Proをパソコンのようにマルチウィンドウで利用できる「PC MODE」をサポートする。PC MODE利用時はHUAWEI Mate 10 Proの画面をタッチパッドのように利用したり、Bluetoothでマウスやキーボードと接続して、パソコンの代わりに利用することも可能だ。同様の機能はGalaxy Note8でも採用されているが、今後、スマートフォンの利用シーンを拡大する機能として、標準的な機能になっていくことが予想される。

 ちなみに、HUAWEI Mate 10 Proは3.5mmイヤホンマイク端子を備えておらず、パッケージにはUSB Type-Cポートに接続するハイレゾイヤホンと、USB-Typeから3.5mmヘッドフォンジャックへ変換するアダプターを同梱。これらを利用して、音楽や映像コンテンツのサウンドを楽しむことになる。最大384kHz/32bitのハイレゾオーディオにも対応しているので、音楽プレーヤーとしても存分に楽しむことが可能だ。

インテリジェントに進化したダブルレンズカメラ

 ファーウェイが先鞭をつけて、今年あたりから他メーカーも採用したことで、一気にブレイクした感のあるダブルレンズカメラ(デュアルカメラ)だが、もちろん、今回のHUAWEI Mate 10 Proにも搭載されている。

背面にはおなじみのダブルレンズカメラを搭載。レンズはF1.6の「SUMMILUX-H」を搭載
カメラ起動時のファインダー画面。左下の三日月のアイコンは夜景と自動的に認識していることを表わす。上段のアイコンは左から[フラッシュ][ワイドアパーチャ][ポートレート][アニメーション写真][色][フロントカメラ切り替え]

 イメージセンサーとしては1200万画素のRGBセンサー、2000万画素のモノクロセンサーを採用し、F1.6の新しいLeica製「SUMMILUX-H」レンズを組み合わせ、光学手ぶれ補正も搭載する。センサーの仕様は昨年のHUAWEI Mate 9や今年のHUAWEI P10/P10 Plusと同等だが、レンズが業界トップクラスの明るさに向上したうえ、2つ搭載されたISP(画像処理プロセッサー)のスループットが25%アップ、レスポンスタイムが15%向上するなどの改良が図られている。オートフォーカスもレーザー、デプス、コントラスト、像面位相差の4つの方式を組み合わせた4in1ハイブリッドフォーカスに進化し、暗いところでもすばやく確実にフォーカスを合わせられるようにしている。なかでも暗いところでの撮影は、これまでの同社製端末のダブルレンズカメラを上回るほどの仕上がりで、後述するAIによる被写体認識との効果も相まって、あまりカメラに知識のないユーザーでも手軽に美しい写真を撮影できるという印象だ。

 HUAWEI Mate 10 Proは前述のように、AI対応チップセット「Kirin 970」を搭載しており、パフォーマンスや電力効率の向上に役立てている。しかし、AI対応チップセットの効果はそれらだけでなく、カメラにも活かされている。たとえば、カメラを起動し、被写体にカメラを向けると、被写体をリアルタイムで判別し、それぞれの被写体に合わせ、色、コントラスト、明るさ、露出などを自動的に調整して撮影できる機能を搭載している。被写体については花や青空、植物、フード、日の出/日の入り、雪など、13種類が用意されており、この被写体認識と最適な設定を導き出すため、1億枚に及ぶ画像をあらかじめ機械学習をさせているという。ちなみに、AIの効果を活かさない設定をするには、シャッターボタン上の短いバーをフリックし、撮影モードを[PRO]に切り替えて、撮影する。

ワイドアパーチャを有効にして、ボケ味の利いた写真を撮影できる
メインカメラの撮影モードは13種類が用意されており、さらに追加することも可能
シャッターボタンの真上に位置する短いバーをタップすると、プロモードに切り替わり、ISOやシャッター速度などを変更できる
カメラの設定画面。パーフェクトセルフィーなども用意されている

 ダブルレンズカメラならではのボケ味の利いた撮影も可能だが、手軽に設定するのであれば、ファインダー上段のアイコンで[ポートレートモード]に切り替え、ファインダー内右側の四角いアイコンをタップすると、「芸術的ボケ味が有効になりました」と表示され、切り替えられる。人物も何枚か撮影してみたが、自然にボケ味が利いた写真が撮影できており、セルフィー(自撮り)を重視するユーザーにとって、かなり有用な撮影機能になりそうだ。

「HUAWEI Mate 10 Pro」撮影サンプル
夜景と認識されたクリスマスツリーの画面。背景の建物の明かりも含め、色のバランスが崩れることなく、美しく撮影できている
いつもの薄暗いバーでの写真。こちらもグラス、キャンドル、背景のボトル柵などがきれいに撮影できている

ファーウェイ史上最強のフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 10 Pro」

 ここ数年、国内ではSIMフリースマートフォンの市場が拡大し、市場全体に占める割合も着実に伸びてきた。しかし、国内の各携帯電話事業者が販売するモデルもハイスペックなモデルからリーズナブルなモデル、個性的なモデルなど、幅広いラインアップを揃え、攻勢を強めてきている。

 そんな中、今回発表されたHUAWEI Mate 10 Proは、ここ数年、好調な売れ行きを示してきた同社製端末の流れを受け継ぎ、非常に完成度の高いモデルとして、仕上げられている。HUAWEI P9以降、進化を続けるLeicaとの協業によるダブルレンズカメラをはじめ、これまでのMateシリーズで好評を得てきた大画面&大容量バッテリーというアドバンテージを活かし、新たに開発したAI対応チップセットとそれを活かした多彩な機能を搭載することにより、ファーウェイがこれまで発売してきたスマートフォンの中でも確実に「最強」と言える仕上がりとなっている。その分、価格は8万9800円(税別)というフラッグシップモデルらしい値付けになっているが、独ミュンヘンで開催された「Huawei Mate 10 Global Launch」で明らかにされた価格が799ユーロだったことを考慮すると、それほど大きな差もなく、むしろ、国内市場の勢いを後押しできる価格設定をしてきたと言えそうだ。

 逆に、気になる点があるとすれば、やはり、ネットワークへの対応だろう。改めて説明するまでもないが、国内の携帯電話事業者はNTTドコモが最大のシェアを持ち、MVNO各社が利用するネットワークもNTTドコモが圧倒的に多い。これに次いで、ここ1~2年、auのネットワークを利用するMVNOも増えてきており、ソフトバンクのネットワークを利用するMVNO(「格安SIM」「格安スマホ」を提供するMVNO)は数えるほどしかない。LTEによるデータ通信のみの利用であれば、現状の仕様でもまず問題ないが、音声通話の利用を考えると、VoLTEのサポートは欲しいところだ。auのように、3Gが利用できず、VoLTE対応が必須というネットワークもある。

 ひるがえって他社の動向を見てみると、すでにモトローラは3社のネットワークに対応した製品を提供しており、いずれの事業者のネットワークでもVoLTEが利用できるモデルをラインアップに加えている。SIMフリースマートフォンの市場が拡大し、あまりリテラシーの高くないユーザーが増えつつある現状では、そのMVNO各社がどこのネットワークを利用しているのかを気にせず、契約してしまうユーザーもいるだろう。そういったユーザーの動向をからも3社のネットワークに対応することは、今後、必須となってくるはずだ。裏を返せば、各携帯電話事業者向けにタブレットやルーター、スマートフォンを納入した実績を持つファーウェイだからこそ、こういったところには積極的に取り組み、市場をリードして欲しいところ。

 同社は国内向けに供給するSIMフリースマートフォンにおいても積極的にOSのアップデートやセキュリティパッチのアップデートを行なっており、発売後のバージョンアップで対応ネットワーク(VoLTE)が拡がることを期待したい。

 このネットワークの対応を除けば、HUAWEI Mate 10 Proは非常に完成度が高く、デザイン的にも機能的にもかなり満足度の高いモデルに仕上げられている。これだけのモデルが10万円を切る価格で買えるのだから、SIMフリースマートフォンをフルに活用したいユーザーなら、チェックしない手はない。家電量販店の店頭ではデモ機なども設置される予定なので、ぜひ一度、実機でそのポテンシャルを試していただきたい。

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法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。