法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

帰ってきた“愛されるスマホ”~「Galaxy Note8」ファーストインプレッション

Galaxy Note8本体。ディスプレイサイズは6.3インチと大きいが、ボディ幅はGalaxy S8+と比べて、1.4mmしか増えていない

 8月23日、サムスン電子は米・ニューヨークでプライベートイベント「Unpacked 2017」を開催し、フラッグシップ「Galaxy Note」シリーズの最新モデル「Galaxy Note8」を発表した。

 短い時間ながら、実機を試用することができたので、ファーストインプレッションをお届けしよう。なお、本誌にはすでに速報記事発表会レポートが掲載されている。あわせてご覧いただきたい。

愛されるスマートフォン

 現在、スマートフォンで世界トップシェアを持つサムスンには、数多くのラインアップが存在するが、同社のフラッグシップに位置付けられるのが「Galaxy S」シリーズだ。初代モデルの発売以来、ライバルと激しい競争をくり広げながら、Galaxyというスマートフォンのシリーズを成功に導いたシリーズであり、今年3月にはその最新モデルとなる「Galaxy S8」「Galaxy S8+」が発表され、国内でも今年5月にNTTドコモとauから発売された。

 このGalaxy Sシリーズから派生する形で、ほか製品にない新しいスマートフォンとして生まれたのが「Galaxy Note」シリーズだ。2011年に発売された初代モデル「GALAXY Note」では、当時としてはかなり大型だった5.3インチのディスプレイを搭載し、電磁誘導式のタッチペンを組み合わせ、大画面スマートフォンで手書きの良さを実現する新機軸のモデルとして、注目を集めた。

Galaxy Note7

 その後、Galaxy Noteシリーズは着実に進化を遂げ、2014年には初の湾曲ディスプレイを搭載した四代目モデルの「GALAXY Note Edge」、昨年は初の防水防塵を実現した六代目モデルの「Galaxy Note7」を世に送り出した。

 ところが、残念ながら昨年のGalaxy Note7は発売直後に内蔵バッテリーの不具合による発火事故を起こしてしまい、全世界でリコールをすることになってしまった。国内でも発表を予定していながら、急遽、発表そのものがキャンセルされ、た。今年1月にはバッテリーの不具合に関する説明が行なわれ、今年3月のGalaxy S8/S8+で再スタートを切った形だったが、それでは満足していないユーザーがいたのも事実だ。

Unpacked 2017が開催された米・ニューヨークのPark Avenue Armory。

 今回のGalaxy Unpacked 2017のプレゼンテーションのオープニングでは、そんなGalaxy Noteシリーズを愛して止まないユーザーたちのアツいコメントからスタートした。初期のモデルのユーザー、S Penで絵を描くクリエーター、音楽やGear VRユーザーなど、Galaxy Noteシリーズを愛用する多くのユーザーが映し出されるが、その後、Galaxy Note7の不具合とリコールに対し、落胆するユーザーや悲しむユーザー、問題を解決して直して欲しいというユーザー、ほかのGalaxyでは満足できないんだといったユーザーの映像が流れた。今回発表されたGalaxy Note8がそんなアツいユーザーの期待に応えるべく、復活したモデルであることを強くアピールするオープニングだった。

左右2つと床に映像を投影する巨大スクリーンを使って、プレゼンテーションが行なわれた

 製品レビューとは少し離れてしまうが、筆者の周囲でもGalaxy Noteシリーズを愛用するユーザーは多く、今回、いっしょに取材した日本のライター諸氏にも取材でGalaxy Noteシリーズを活用してきた人が多い。ただ、日本市場の場合、2012年4月に初代モデル「GALAXY Note」発売以降、2012年8月発表の二代目モデル「GALAXY Note II」、2013年9月発表の三代目モデル「GALAXY Note 3」と、順に国内で発売されたものの、2015年発表の「Galaxy Note 5」の国内投入が見送られたため、2014年の「GALAXY Note Edge」を最後に、その流れは途絶えてしまっている。

初代Galaxy Noteこと「Galaxy Note SC-05J」
GALAXY Note Edge SCL24

 しかし、現在でも街中でGALAXY Note Edgeを利用するユーザーを見かけることがあり、相変わらず、シリーズとして根強い人気を持つという印象が強い。おそらく、そんな日本のGalaxy Noteユーザーも今回のプレゼンテーションのオープニングを観て、共感を抱いたのではないだろうか。

約6.3インチのInfinityディスプレイを搭載

 初代Galaxy Noteから続くシリーズの特徴と言えば、まずは大画面のディスプレイが挙げられる。今回のGalaxy Note8は、6.3インチのSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)を採用。解像度はGalaxy S8+と同じく、QHDよりも大きい2960×1440ドット表示となる。縦方向ではスクロール表示が見やすく、横表示では映像コンテンツなどを迫力ある画面で楽しめる。Mobile HDRにも対応しており、映像配信サービスで対応が増えているHDRコンテンツを楽しむことが可能だ。

 縦横比は18.5:9という、Galaxy S8/S8+と同様の縦長の比率を採用し、ディスプレイの両端を湾曲させた「デュアルエッジスクリーン」で仕上げた。ディスプレイのサイズが6インチオーバーと聞くと、かなり大きなボディだと考えそうだが、ボディ幅は約74.8mm、厚さは約8.6mmに抑えられ、それほど大きさを感じさせない。ちなみに、同クラスのディスプレイを搭載したほか機種との比較は以下の通りで、Galaxy Note8が大画面を搭載しながら、ボディ幅を抑えたボディに仕上げられていることがよくわかる。

機種名ディスプレイ横幅厚さ
Galaxy Note86.3インチ74.8mm8.6mm
Galaxy S8+6.2インチ73.4mm8.1mm
iPhone 7 Plus5.5インチ77.9mm7.3mm
HUAWEI Mate 95.9インチ78.9mm7.9mm
デュアルエッジスクリーンを右からスワイプしたときに表示されるAPPS EDGE。通常のアイコンのほかに、2つのアイコンが重ねて表示されている部分がある

 6.3インチと一段と大型化したディスプレイを活かす機能として、Android 7.0に搭載されている複数アプリのマルチウィンドウが挙げられる。Galaxy Noteに限らず、これまでのマルチウィンドウ機能は、ひとつずつアプリを起動しなければならず、実用面では今ひとつ操作が煩雑な印象が否めなかった。

 そこで、Galaxy Note8ではエッジスクリーン側からスワイプしたときに表示される「APPS EDGE」に、2つのアプリを組み合わせたものを登録できるようにすることで、複数のアプリを同時にマルチウィンドウで起動できるようにしている。たとえば、GoogleマップとGoogle Play Musicをいっしょに登録しておくことで、クルマに乗ったときは音楽を流しながら、ナビを利用するといった使い方がすぐにできる。登録も非常に簡単で、APPS EDGEから「CREATE APPS PAIR」を起動し、組み合わせたいアプリをひとつずつ選ぶだけだ。今ひとつ活用されてこなかった印象の強かったマルチウィンドウだが、こういうしくみがあれば、ユーザーの利用シーンも拡大しそうな機能だ。

GoogleマップとGoogle Playミュージックを同時に起動して、マルチウィンドウで表示
起動したいアプリをユーザー自身が自由に組み合わせて登録できる

 ボディそのものについては、昨年のGalaxy Note8や今年のGalaxy S8/S8+に続き、IP68の防水防じん対応となっており、S Penについても防水対応で、水中でのメモも可能にしている。水深1.5mの真水で30分間という制限はあるが、ディスプレイが濡れた状態でもGalaxy NoteのアイデンティティのひとつであるS Penが操作できるのはうれしいところだ。

 ボディの素材には、加工が難しいとされるアルミニウム7000シリーズを採用する。特徴的なのはGalaxy S8/S8+が背面や周囲が丸みを帯びた流線形のような形状で仕上げているのに対し、Galaxy Note8は少しスクウェアな形状となっている。両側面のデュアルエッジスクリーンもGalaxy S8/S8+に比べ、曲線が少し立っており、全体的に見ても角を少し丸めた箱形のような筐体という印象だ。もう少し踏み込んで例えるなら、Galaxy S8/S8+が未来感のあるデザインで仕上げているのに対し、Galaxy Note8はトラディショナルな手帳の雰囲気を残したデザインにまとめられている。

Galaxy S8+(左)、Galaxy Note8(中央)、Galaxy S8(右)を並べてみたところ。サイズや周囲の形状の違いがよくわかる

 Galaxy Note8本体の重さは195gと、最近のスマートフォンの中でも重量級だが、手に持った印象はそれほど重量感があるわけではない。これがボディの大きさに対する重さなのか、ボディが薄くフラットに仕上げられているためなのかはわからないが、重さのわりに持ちやすいと言えそうだ。

 ボディカラーはMaple Gold、Midnight Black、Deepsea Blue、Orchid Grayが展示されていたが、国と地域によって、発売時のカラーは異なるという。ボディカラーの色が使われているのは背面側のみで、デュアルエッジスクリーンの裏側部分に回り込んだ部分があるため、側面からもそのカラーが見て取れる。背面の仕上げはいずれも光沢感のあるものだが、Maple Goldのみがメタリックな仕上げで、そのほかの3色はフラットなカラーで仕上げられている。

Maple Gold
Midnight Black
Deepsea Blue
Orchid Gray

 側面のボタンレイアウトは基本的に従来のGalaxyシリーズの流れを継承して、右側面に電源キー、左側面に音量キーとBixbyキーを備える。BixbyキーはGalaxy S8/S8+と同じで、インテリジェントサービス「Bixby」をいつでも起動することができる。底面には上下どちら向きにもケーブルを挿すことができるUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える。

本体左側面には音量ボタンとBixybyボタンを備える
右側面は電源ボタンのみ

 また、従来のGalaxy NoteシリーズではGalaxy Sシリーズ同様、本体前面中央に物理ボタン(ホームボタン)が備えられていたが、Galaxy S8/S8+と同じように、今回のGalaxy Note8では物理ボタンを廃し、ナビゲーションキーをソフトウェア表示に切り替えている。ホームボタンが表示される部分には感圧センサーが内蔵されており、ハプティクス技術により、ユーザーが押したかどうかを指先で感じ取れるようにしている。

 従来のGalaxy Noteユーザーにとっては少し戸惑いがあるかもしれないが、筆者自身は同じ仕様のGalaxy S8+を使いはじめて、すでに3カ月ほどが経つ中、ホームボタンが表示されない状態での操作に慣れることができた。ちなみに、Galaxy S8/S8+でも実現されていたのと同じく、ナビゲーションキーのソフトウェア表示に伴い、[戻る]ボタンと[履歴]ボタンの左右入れ替えなども可能にしている。

上部にはトレイ式のSIMカードスロットを備え、両サイドの角付近にはアンテナを内蔵していると推測される継ぎ目の樹脂が見える

 背面には後述するデュアルカメラ、その隣にフラッシュと指紋認証センサーを備える。Galaxy S8/S8+では背面の中央のカメラの真横に指紋認証センサーを搭載したため、指紋認証時にカメラのレンズを触ってしまい、レンズを汚してしまうことがあったが、今回はデュアルカメラのレンズ部と指紋認証センサーの間にフラッシュを配置したことで、少し位置的に離して、レンズ部を触らないように配慮している。ただ、本体の長さは縦方向に長く、手の大きさによっては指先が指紋認証センサーに届きにくいケースも考えられる。その場合はほかの認証方法を利用するのが手だ。

 セキュリティについては指紋認証のほかに、Galaxy Note7やGalaxy S8/S8+でも採用されている虹彩認証を搭載しており、さらに顔認証にも対応する。いずれも画面に表示されるガイダンスがわかりやすく、容易に設定することができ、実使用時もすばやく認識される印象だ。ただ、虹彩認証についてはそのしくみ上、どうしても画面の上部1/4程度のエリアに自分自身の顔(眼の周辺のみ)を映す必要があり、その点を少し躊躇するユーザーがいることも書き加えておきたい。カメラの「Sticker」と同じような飾り付け機能を利用する手もあるが、できれば、内部的に虹彩を認証しながら、画面内には映し出している映像をフルに表示しないような工夫も欲しいところだ。

SIMトレイはnanoSIMとmicroSDカードの装着に対応
底面にはUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える

デュアルカメラを搭載

 今回発表されたGalaxy Note8で、ひとつ特徴的なのが前述のように、背面にデュアルカメラを備えたことが挙げられる。デュアルカメラについては、すでにファーウェイやアップル、LGエレクトロニクスなどが取り組んでおり、それぞれに異なる形で2つのカメラの特性を活かしているが、Galaxy Note8では大きく分けて、2つの機能を実現している。

背面に備えられたデュアルカメラ。向かって左側が望遠レンズ、中央が標準レンズ。隣にフラッシュが備えられ、もっとも右側の黒い部分が指紋認証センサー

 ひとつめの機能は望遠と標準を撮影できるもので、背面のカメラの内、片方はGalaxy S8/S8+と同じデュアルピクセルセンサーによる12Mピクセルカメラが搭載され、もう片方には12Mピクセルセンサーに2倍の望遠レンズを組み合わせたものが搭載されている。つまり、普段は標準カメラで撮影しておき、遠景を撮影したいときに画面内のボタンをタップして、望遠カメラに切り替えるというわけだ。さらに、デジタルズームを組み合わせることで、画質の劣化を抑えながら、最大10倍ズームでの撮影を可能にしている。

標準カメラで撮影時のファインダー。Galaxy S8/S8+と同じデュアルピクセルセンサーによる12Mカメラを搭載。レンズもF1.7と明るい
2倍ズームで撮影時のファインダー。少し離れた被写体も画質を劣化させることなく、ズームが可能

 また、デュアルカメラは静止画と動画撮影時の手ぶれ補正に対応する。実際に撮影した映像やデモなどを見ることができたが、同じデュアルカメラを搭載したほか機種に比べ、拡大したときもブレがほとんどなく、安定した撮影が可能だった。

撮影時と撮影後に背景のボケ味を自由に変更できるLive Focus

 もうひとつの機能は「LIVE FOCUS」と名付けられた撮影モードで、2つのカメラから得られた映像信号を元に、被写体までの距離を算出し、撮影時や撮影後に背景のボケ味などを調整できる機能だ。たとえば、LIVE FOCUSで撮影時に画面中央下のスライドバーを動かすことで、背景をボケさせ、メインの被写体をより際立たせた写真を撮ることができる。

 撮影後にも同様の操作で、背景のボケ味を調整することができ、調整後の写真を新しいファイルとして、保存したり、共有したりできる。特に人物などのポートレート撮影時などに適しており、写真全体の見栄えを良くできるが、同時に、背景に看板や人物などが写っていて、うるさく見えてしまうようなシーンでも調整して、余計な背景を隠すといった使い方もできる。SNSなどで写真を共有することが多いユーザーには魅力的な機能と言えるだろう。

さらなる進化を遂げたS Pen

S Penを抜くと表示されるS Penメニュー。アイコンをタップして、各機能を起動できる

 Galaxy Noteシリーズのアイデンティティである「S Pen」も進化を遂げている。S Penは一般的なスタイラスペンと違い、電磁誘導式を採用しており、元々、その書き味には定評があり、それがこれまでのGalaxy Noteシリーズの高い評価につながってきている。冒頭で触れたクリエイティブな楽しみ方を持つユーザーが数多く存在するのもS Penの使いやすさが優れていたからこそと言われている。

 今回のGalaxy Note8ではペン先が0.7mmとなり、4096段階の筆圧を検知可能で、スキャンレートもGalaxy Note 5の240Hzから360Hzへ向上している。基本的には昨年のGalaxy Note7を継承した形になるが、書き味は非常になめらかで追従性もよく、メモなども手早く書くことが可能だ。

 ただ、今回のGalaxy Note8のS Penは、S Penそのものの書き味よりもアプリや機能に注目点が多い。かつてのGalaxy NoteシリーズはS Penを出し、S Noteなどの専用アプリに何かを書き込むという印象だったが、今回のGalaxy Note8では実使用のさまざまなシーンにS Penが活かせるようになっている。

S PenでLive Messageを作成し、GIFアニメーションに変換が可能

 たとえば、S Penのメニューから起動できる「Live message」では、手書きでメッセージや絵を入力し、その動きをGIFアニメに変換して、SNSで共有したり、メールやMMSで送信することができる。旅先で撮影した写真に、ちょっとした言葉や絵を描き足し、その動きを加えたメッセージを作成することも可能だ。しかも、書き込むときの筆の動きにアニメーションのエフェクトが加えられるため、ちょっとした言葉でも随分と派手なメッセージに見えるように仕上げることができる。

 こうした新しいコミュニケーションのための機能を特定機種間のみで利用できるようにするのではなく、端末内で汎用的なGIFアニメなどに変換できるようにすることで、より多くの人たちとのコミュニケーションを楽しくさせよう、充実させようとしている点は高く評価できる。

 ちなみに、このGIFアニメに変換する機能と同じしくみを利用し、動画の一部を切り出し、GIFアニメに変換する機能も用意されている。たとえば、誕生日に子どもがロウソクを吹き消すシーンを撮り、その部分だけを切り出して、家族に送るといった使い方もできる。

 また、Galaxy S8/S8+では待機中も画面オフにはせず、時刻や通知情報などを表示できる「Always On Display」という機能が搭載されているが、ここにS Penでメモした情報を表示できる機能も追加されている。しかもメモした内容を編集したり、複数ページで構成することができるなど、さらに実用性が増している。

 このほかにもS Penでおなじみの画面キャプチャにメモを書き加えたり、起動中のアプリを小さいウィンドウ表示に切り替えて、重ねて表示したり、画面内の一部を拡大表示するルーペ機能なども搭載される。

 さらに、Galaxy Note7でも搭載されていた翻訳機能が強化されている。たとえば、英文のWebページなどを表示しているとき、わからない単語があれば、翻訳機能を起動し、わからない単語にS Penを近づけるだけで、翻訳された単語がポップアップする機能が搭載されていたが、今回のGalaxy Note8では翻訳のモードをセンテンス(文章)モードに切り替えることで、そのブロック全体を訳してポップアップ表示することができる。

翻訳機能を使えば、Webページに表示されている単語をいつでも翻訳可能
翻訳をSentenseモードに切り替えれば、ブロック単位での翻訳ができる

実用性を高めるSamsung DeXとBixby

Samsung DeXの専用クレードルに載せ、HDMIケーブルで接続すると、パソコンと同じような環境を実現できる
Samsung DeXの専用クレードルはGalaxy S8/S8+向けにグローバルで販売されているものと共通。国内向けには販売されていない

 今年3月に発表されたGalaxy S8/S8+に搭載されながら、国内向けの販売が見送られた「Samsung DeX」が、Galaxy Note8でもサポートされる。Samsung DeXは、Galaxy Note8を専用クレードルに挿し、HDMIケーブルでディスプレイに接続。そこに、Bluetoothでキーボードやマウスを接続することで、Galaxy Note8をパソコンのように使うことができる機能だ。

 具体的には、アプリをマルチウィンドウで表示したり、ファイルをドラッグ&ドロップで移動できるようにするなど、Windowsなどのパソコン環境に準じた環境を手軽に実現することができる。基本的には従来のGalaxy S8/S8+の機能を継承した形になるが、アプリメニューを全画面で表示できるようになったり、ゲームもSamsung DeX対応のものが全画面表示でプレイできるようになるなどの改良が図られている。Galaxy Note8の通信機能を活かしたビデオ会議も利用可能で、途中で本体をSamsung DeXの専用クレードルから外して、通話に切り替えたり、もう一度、専用クレードルに戻して、ディスプレイ表示に戻すといった使い方もできる。

アプリメニューが全画面で表示されるようになり、目的のアプリを見つけやすくなった
Androidアプリのゲームは通常、縦画面だが、Samsung DeX対応ゲームは全画面で遊ぶことができる

 また、Galaxy S8/S8+ではじめて搭載されたインテリジェントサービス「Bixby」も進化を遂げている。側面に備えられたBixbyボタンを押すと、その場に合わせた情報などが表示されるほか、ワインのラベルを撮影して、銘柄の情報を表示するといった使い方ができるが、今回のGalaxy Note8では「Quick Command」という機能が搭載された。Quick Commandはユーザーが利用する複数の機能と処理をひとつの音声コマンドにまとめたものだ。

 発表会のプレゼンテーションでは、Bixbyボタン押して起動した後、「Food Photo」と音声で発するだけで、目の前のピザをFood Modeで写真を撮り、自分のライブラリのフードグループに登録するといった一連の操作を実演していた。

 また、「Goodnight」とQuick Commandで話しかけると、お休みモードに切り替え、アラームをセットし、画面をブルーライトカットモードに切り替えるという一連の操作を自動的に処理していた。これらの一連の処理はユーザーが自分でカスタマイズできるそうで、うまく活用すれば、Galaxy Note8に搭載されている多彩な機能をうまく活用することができそうだ。

今年こそ、国内での販売に期待したい

 スマートフォンが進化を遂げ、完成度を高めてきたことで、「どのスマートフォンも似たような……」といった表現を目にすることがあるが、Galaxy Noteシリーズは大画面とS Penという個性により、ほかの製品にはないアドバンテージを築いてきた。しかし、昨年のGalaxy Note7の不具合により、順調に進化を遂げてきたGalaxy Noteシリーズはつまづいてしまい、サムスン自身のブランドにも傷が付いたと言われてしまった。

 しかし、今回の発表会冒頭で流されたGalaxy Noteユーザーのアツい思いにサムスンの開発陣がしっかりと応え、昨年のGalaxy Note7の失敗を乗り越える最強モデルとして生み出させたのがGalaxy Note8と言えそうだ。Infinity Displayによる新しい映像体験に始まり、デュアルカメラによる楽しさを増した写真、S Penの新機能による楽しいコミュニケーション、Bixbyを使ったユーザビリティ、Samsung DeXによるパソコン的な利用環境など、今までのスマートフォンを一歩も二歩も上回る環境を作り出したと言えそうだ。

国内で好調な売れ行きを記録しているGalaxy S8+(左)に続き、国内でもGalaxy Note8の発売を期待したい

 今回の発表では日本市場への投入については何もアナウンスされず、関係者からも何もコメントは得られなかった。一方で、すでにサムスン電子ジャパンのWebページには製品情報が日本語で掲載されており、順当に行けば、今年こそは国内のユーザーも最新のGalaxy Noteを手にすることができそうだ。できることなら、国内向けの投入が見送られたSamsung DeXなどと共に、Galaxy Note8を最大限に楽しめる環境での国内投入を期待したい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。