三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

7.6インチディスプレイでの新たな撮影体験! グーグル「Pixel Fold」のカメラを試す

 グーグル(Google)から登場したフォルダブルAndroidスマートフォン「Pixel Fold」。開けば小さめのタブレット、閉じれば普通のスマホという2つのスタイルで写真撮影を楽しめる端末だ。

 ここ数カ月使用してみて、開いたスタイルでの撮影にすっかりはまってしまった。絶妙な大きさとバランスのディスプレイに写る街の風景は、それはそれはとても魅力的に見えるのであった。詳細スペックや価格などは本誌既報記事を参照してほしい。

「Pixel Fold」のカメラの特徴

 搭載しているアウトカメラは3つだ。メインとなる48メガピクセル F1.7の広角レンズカメラ、10.8メガピクセル F2.2の超広角カメラ、10.8メガピクセル F3.05の望遠カメラ(光学ズーム5倍、超解像ズーム20倍)である。

 フラッグシップ端末の「Pixel 7 Pro」と比較すると超広角域と望遠域、マクロ機能などやや物足りない点もあるが、夜景モード(Night Sight)やポートレートモードはしっかりと搭載されている。

 どのカメラを使ってもコンピュテーショナルフォトグラフィーのパイオニア、グーグル「Pixel画質」で誰でも美しい写真を手にすることができる。

撮影に没入できるオープンスタイルでの撮影が楽しい

 「Pixel Fold」は何といってもディスプレイを開いた状態での撮影が楽しい。

 カパッと開くと5.8インチから7.6インチの大画面に早変わり。両手で「Pixel Fold」をホールドしながらタブレットに匹敵するサイズのディスプレイで被写体をライブビューするのが実にいい。とても撮影に没頭できるのだ。

 大きくて明るく美しいディスプレイは、構図にこだわるフォトグラファーにとって最高のプレゼントである。

 被写体をしっかりと見据え、画面の四隅まで余計なものが入っていないかよく確認できシャッターを切る。そのレスポンスも良好で撮影もスピーディーに行える。しかも撮影が終わった後はパタッと閉じてポケットにサッとしまえるのだから。これは新しい撮影体験だと言えよう。

 前回記事でスマホカメラでは起動の速さが大切、と書いたが、この「Pixel Fold」も電源ボタンダブルクリックで即座に起動できるので問題ない。しかも大画面で構図の確認も確実に行えるので本当にすばらしい端末である。

オープンスタイルでのオススメはカメラの設定画面で「比率」→「画面に合わせて切り抜き(3:4)」だ。
「画面全体(4:3)」も選べるがやや迫力がない感じ。閉じた状態ではワイドクロップ(16:9)も選択が可能になっている。
話題のグーグル製タブレット「Pixel Tablet」と比較してもオープンスタイル時でのディスプレイの大きさが分かるだろう

 また、下の写真のように自立するので、記念撮影やセルフィー(アウトカメラを使うのも容易だ)、動画やタイムラプス撮影で役に立つ。夜間に空気が澄んだ場所で「Pixel Fold」単体での「星景モード」による撮影も可能だ。

画角の違い

 オープンスタイルで「画面に合わせて切り抜き(3:4)」時での画角の変化はこんな感じである。どのカメラも描写のバラツキが少なく好感が持てる仕上がりになっている。

0.6x
1x
2x
5x

「Pixel Fold」は撮影環境を充実させてくれる端末

 オープンスタイルでは写真を撮るだけでなく、さまざまな撮影に関する体験を「Pixel Fold」は広げてくれるのがいい。

 広大なディスプレイで「カメラ」と「フォト」を同時起動して、片側に撮影ライブビュー、片側に撮影したカットを表示して比較しながら写真を撮ることも可能だ。

 グーグル製の高機能写真アプリ「Snapseed」も、オープンスタイルなら現像加工処理もきめ細やかに行うことができる。

 美しく明るいディスプレイは山座同定アプリ「PeakFinder」や星座早見盤アプリ「Stellarium」、航空機ロケーションアプリ「Flightradar24」も見やすく、撮影時の情報収集に何かと役立つ。ロケの際に「Googleマップ」も見やすく大いに助かった。

グーグル「Pixel Fold」でブラブラ撮影を楽しむ

 というわけで「Pixel Fold」のオープンスタイルでの撮影は被写体をじっくりと観察しながら、慎重にフレーミングしての撮影が楽しめる。

 6月から全国各地を撮り歩いたが、このスタイルでの撮影はクセになりそうなほど魅力的だった。ディスプレイのサイズ感とアスペクト比、それと「Pixel」シリーズの描写が素晴らしいからだと感じている。

作例

豊後水道を撮ったカット。海と空の境界線、そしてそれらのグラデーションが素晴らしい。連続感が美しいではないか。
盛夏を過ぎてあまり見かけることがなくなったセミの抜け殻。その姿を空ヌケで捉えた。心地良いボケが主のいなくなった姿を浮かび上がらせた。

 日が昇る直前の箱根・芦ノ湖。微妙な色合いを、的確なホワイトバランスと明るさで「Pixel Fold」は表現してくれた。

東京23区内唯一の渓谷、世田谷の等々力渓谷をブラブラした。かなり日射しが強く高コントラストだったが、「Pixel Fold」は赤いゴルフ橋の姿を鮮やかかつバランスよく写しだした。さすがコンピュテーショナルフォトグラフィーの雄、グーグル製の端末である。
成城で昼食をとった。「Pixel Fold」はシズル感満点にその様子を記憶以上にキャプチャーしてくれた。今見ても美味しかったその味を思い出せるほど。
青春18きっぷで訪れた福島・会津若松。日没時の駅舎が美しく、旅行者が撮影をしていた。その様子をやや離れた場所から撮影した。肉眼に近いムーディーな仕上がりはとても好感が持てる。いい雰囲気だ。
静岡・沼津狩野川の花火大会。シャッターを押すだけの通常モードで美しい大輪の姿を「Pixel Fold」はキャプチャーした。橋の上にいる人々と川面に浮かぶ警戒船の姿もちゃんと描写しているのに驚く。

 夜景モード(Night Sight)も圧巻だ。スマホカメラ最高峰とも言われるこの低照度時でのモードは、本当に見事な写りをしてくれる。夜の神社、境内の大木、空に浮かぶ月まで自然かつ高画質に写しとってくれた。

「Pixel Fold」で新しい撮影体験を味わう!

 この端末はトータルでの撮影体験をググッと高めてくれる。オープンスタイルでの撮影はもちろん、その広大なディスプレイを使って写真を加工したり、アプリを2つ立ち上げながら原稿を書いたりしてみたがサラッとこなせてしまうのだ。これには驚いた。

 「Pixel Fold」で撮影をして「Googleドキュメント」でメモを書き記したりと、夏のブラブラ旅がとても楽しく有意義なものになった。ノートPCいらずである。ズバリ、オススメの端末と言える。

 カメラの写りはトップレベルなので不満は特に感じられなかったが「Pixel 7 Pro」と比較するとカメラ機能が若干物足りない。しかしさまざまな使い勝手を考えると「仕方ないかな」と思ってしまうほどだ。

 この新しい撮影体験を味わうには25万3000円という出費が求められる。悩みどころだがキャリアなどの施策をうまく利用すれば手が届くかもしれない?

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau