三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

「iPhone 15 Pro Max」のカメラを試す! 光学5倍望遠カメラの写りはいかに?

 今年もアップルから新型iPhoneが登場した。話題は何といっても5倍の望遠カメラを搭載した「iPhone 15 Pro Max」だろう。

 Androidハイエンド機では搭載するモデルも多い高倍率望遠カメラだが、iPhoneも今回のモデルチェンジで高倍率望遠カメラを搭載した。

 果たしてその写りはどのようなものだろうか? 端末の詳細スペックや価格などは本誌の別記事を参照していただきたい。

「iPhone 15 Pro Max」カメラの特徴

 「iPhone 15 Pro Max」は3つのカメラを搭載している。仕様はこのとおり。

  • 48MPメインカメラ:4800万画素 24mm / F1.78
  • 12MP超広角カメラ:1200万画素 14mm / F2.2
  • 12MP望遠カメラ:1200万画素 120mm / F2.8
48MPメインカメラは昨年モデル同様にピクセルビニングを採用しており、記録画素数が12MPとなるが、「設定」→「写真撮影」→「写真モード」で24MPにすることが可能だ。
また「ProRAW と解像度コントロール」→「プロデフォルト」で「HEIF(最大、48MP まで)、ProRAW12MP、ProRAW(最大、48MPまで)と記録フォーマットを変更することも。もちろん48MPで記録できるのはメインカメラのみだ(17.0.1にアップデートしたiPhone 14 Proでも可能であった)。
動画は「Apple ProRes」での収録ができ「ProRes エンコーディング」設定より「HDR」、「SDR」、「Log」で撮影できる。

注目の5倍望遠カメラはいかに?

 アップル「iPhone 15 Pro Max」最大の特徴は光学5倍の望遠カメラだ。Android機で採用されているペリスコープ方式ではなくテトラプリズムという新しいスタイルを採用している(とは言え同様の屈曲光学系だ)。

 レンズとセンサー間にプリズムを置き、光路を4回曲げて焦点距離を稼ぐというもの。さらに「オートフォーカス3Dセンサーシフトモジュール」でオートフォーカスと手ブレ補正を同時にしているという。なかなか面白い仕組みだ。

 5倍望遠カメラはヌケ感の高い描写だ。スナップや風景撮影に役立ちそうである。

5倍120mm相当から最大25倍667mm相当のデジタルズームもできる。画質はイマイチだがいざという時には便利だろう。8倍付近からフレーミング用の小さなウィンドウが表示されて撮影をアシストしてくれる。

画角の違い

 各画角ともiPhoneらしいはっきりクッキリとした万人受けする写真をアウトプットしてくれる。晴天時は優等生的な写りだと感じた。

 ただメインカメラ(2x)から望遠カメラへの「差」が大きく感じられないだろうか。野外ならともかく室内だとこのギャップは人によって使いづらく思うかもしれない。

超広角カメラ
メインカメラ
メインカメラ(2x)
望遠カメラ
望遠カメラ(25x)
なお「設定」→「メインカメラ」で「24mm」のデフォルト以外に、1.2xの「28mm」、1.5xの「35mm」という2つの焦点距離を追加することもできる。

新搭載のUSB-C、アクションボタンの使い心地は?

 さて今モデルから「USB-C」ポートが採用され、独自規格の「Lightning」ケーブルから解放されることとなった。これによってさまざまなアクセサリーが使えるようになったのがうれしい。

 たとえばデジタルカメラのメディアを取り込むことができるカードリーダーや、外部メディア(SSD)にProRes 4K 60Pを外部出力できるようになった点だ。iPhoneの活躍するシーンが飛躍的に広がったかたちである。

 スマートフォンは「カメラの起動がクイックでなければならない」と前にこの連載で書いた。カメラ起動のしにくさがiPhoneの弱点であったが、今回から採用された「アクションボタン」にカメラ起動が割り当てられたので、「ようやくこれで撮影がスムーズにできる!」と思った。

 が、残念ながら期待外れであった。まずボタンを「長押し」しなければならない点と、「iPhone 15 Pro Max」の場合、サイズ的にアクションボタンが遠くて押しづらいのである。

 さらにケースによっては装着することによってボタンを押すことが不可能な場合もあった。 なお起動時に「セルフィー」、「ビデオ」など各モードを割り当てることができる。

アップル「iPhone 15 Pro Max」でブラブラ撮影を楽しむ

 今まで「iPhone 14 Pro」を使っていたので「iPhone 15 Pro Max」は大きく重たく感じる。

 チタン素材を採用したとは言えサイズアップしたので当然である。非常用モバイルバッテリーのケーブルを「Lightning」から「USB-C」に変えて、ブラブラと初秋の街を撮り歩いてみた。

「マクロ撮影コントロール」をオンにすればビアグラスもご覧のとおり。泡の後や水滴までクリアに描写してくれた。超広角カメラなので迫力のある絵が楽しめる。
メインカメラ(2x)の写りは優秀だ。ピクセルビニングの威力でボトルの立体感、エチケットの精細感、全体の色再現性が見事である。

 望遠カメラをガンガン使わなければ「iPhone 15 Pro Max」を買った意味はない! と最大25倍のデジタルズームで観光船を狙ってみた。あいにく曇り空の影響かノイジーな仕上がりとなった。動体を撮影する際にスコープ代わりの小さなウィンドウが表示されるが、ピタッと被写体をおさめられるときとそうでない場合があった。

48MP HEIFはさすがの解像感である。歴史的建築物の階段を撮ったが、そのディテールを余すところなくキャプチャーできた。石材の感じからすり減った表面まで実に見事。しかし1枚約20MBという大きなデータとなる。24Mモードだと約6MBとなる。
前モデルから明るい都内ではなかなかナイトモードが発動しなくなったので夜間撮影には苦労させられる(笑)。カラフルなネオンサインを撮ったが、ややコンピュテーショナルフォトグラフィーっぽく仕上がった。輝度の差が何となくわざとらしい。

 超広角カメラは風景撮影に活躍する。圧倒的なワイド感が魅力的である。「iPhone 15 Pro Max」は色味やコンピュテーショナルフォトグラフィーの度合いが前モデルより濃厚になった印象を受ける。スマートフォンの写真は「記録色より記憶色」と言われるように派手めな仕上がりが特徴だが、年々iPhoneの描写がより「映える」方向に進んでいるように感じられる。

iPhoneの弱点といえば強烈な光源を撮影した際の、盛大なフレアとゴーストの発生があった。今回それに対処したということで期待をしたが、発生しないわけではなかった。球状のものが出現しているが、シーンによって前モデルと同等の場合もあった。ケースバイケースだろう。

 少し前までiPhoneのポートレートモードはストローのような細い被写体をうまく切り抜けなかったが、徐々に力をつけて使えるようになってきた。用水路脇に咲くヒガンバナを狙ったがまずまずの境界判定となった。

「写真モードでのポートレートモード」をオンにしておくと人、犬などの顔が検出された場合に自動的に被写界深度情報を取得してポートレートモードが適用される。カメラロールで効果のオンオフ(被写界深度とピント位置)が可能である。ただ建物や静物などでも自動でポートレートモードになるケースも多かった。
酒場で会う知人を2xポートレートモードで。頬の境界がやや直線的に感じるが髪の周辺部はいい感じに切り抜かれている。肌やTシャツのディテール、メガネ周りの描写はとてもいい印象だ。

iPhoneで望遠カメラを使いたい人にはおすすめ!

 この「iPhone 15 Pro Max」は5倍~の望遠カメラを使いたい人にとっては素晴らしいチョイスになるだろう。今までAndroidの後塵を拝してきた望遠域での撮影を大いに楽しめるからだ。

 手軽に美しい望遠写真を誰でも手にすることが可能になっていると思う。 個人的にはメインカメラ(2x)から望遠カメラへのギャップが気になった。購入は店頭で実際に試してから判断するのがいいかもしれない。

 残念なのは「アクションボタン」の使い勝手だ。「iPhone 15 Pro Max」のサイズ的な要因が大きいが、ここら辺も実機でカメラを起動してみるといいだろう。

 なお「48MP」、「ProRAW」など高解像度モードや「シネマティックモード」撮影時に「iPhoneを冷やす必要があります」と表示されて撮影できないときがあった。長時間連続しての撮影時には気をつけたい。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau