三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

着実な進化を遂げた「AQUOS R8 pro」は、1型センサーで自然な写真を撮れる!

 7月20日、シャープ製のAndroidスマートフォン「AQUOS R8 pro」が発売された。「AQUOS R」シリーズの最新モデルとなる。

 高級コンパクトデジタルカメラと同等の1型という大きなセンサーを搭載して話題をさらった「AQUOS R6」。やや緩慢な動作で撮影には難儀したが、翌年の「AQUOS R7」でそれを改善して着実に進化を感じさせてくれた。

 今回はその系譜を継ぐ最新モデルということで、さっそく端末を手に、暑い街をブラブラと撮影してみた。

シャープ「AQUOS R8 pro」カメラの特徴

 先代同様、「AQUOS R8 pro」はシングルカメラ搭載機だ。1型という大きなセンサーとライカが監修したズミクロンレンズがウリである。

 約4700万画素の像をクロップして使うスタイルで、レンズ本来の画角で撮影するには超広角の「0.7x」で撮影しなければならないのは「AQUOS R7」と同様だ。

 センサーやレンズを前モデルから流用してはいるものの、AI関連と熱処理に手を入れて、本モデルはキビキビと動作して気持ちがいい。

 レンズ周りのギザギザとした加工は、センサーとチップセットの熱をモーターサイクルの空冷エンジンフィンの要領で放熱する、新発想の放熱設計サーモマネジメントシステムだ。

 「Snapdragon 8 Gen 2」や大容量メモリーとあわせて、快適な動作を約束してくれる。

 また、「AQUOS R8 pro」は進化したAIと「14chスペクトルセンサー」を積んでいる。AIは被写体の追尾や顔、瞳の認識に、「14chスペクトルセンサー」は正確なホワイトバランスを実現するために用いられている。

 特にオートフォーカスは速くて正確になった印象を受けた。ブラブラと歩いてスナップしているときに、全般的に撮影体験が向上したと感じたが、これはオートフォーカスだけでなく「AQUOS R8 pro」の動作全てが高速化しているからだろう。

 またこの「AQUOS R8 pro」が面白いのは、サードパーティによる専用アクセサリーが用意されているところだ。フィルターの装着が可能な専用ケースや数々のフィルターがラインナップされている。面白い試みなので今後の動向にも注目したい。

画角や撮影モードをチェック

画角の違い

 1型センサーをフルに活かすには「0.7x」での撮影が必要。フル画素で撮るには「ハイレゾ」モードで。35mm版19mm相当になる。

35mm版24mm相当の「1.0x」。のびやかな写り
「2.0x」で。1型センサーの絵はやはり美しい

ポートレートモード

 ポートレートモードでの境界判定とボケ味も自然な感じ。「ぼかし」と「美肌」が選択できる。また、動物も認識可能だった。

スペクトルセンサー

 正確なホワイトバランスの取得が可能とされるスペクトルセンサー。室内でのミックス光、薄暮のシーンでも肉眼に近い色再現結果が得られた。

ナイトモード

 大きな1型センサーだけあって、通常モードでも、低照度の環境下でクリーンな写りを見せてくれる。ナイトモードも備えるがやや色味が転んでしまうので使用には注意したい。

シャープ「AQUOS R8 pro」でブラブラ撮影を楽しむ

 前の機種よりサクサクと動作するようになり、AIに磨きをかけ写りも良くなった「AQUOS R8 pro」。自分はスマートフォンでの撮影で大切なのは、カメラ機能の「起動の速さ」だと思っている。

 歩いていて少し先の被写体や美しい光景を発見して、すかさずカメラ機能を立ち上げられない端末は使いたくない。その点この「AQUOS R8 pro」は1型という大きなセンサーを搭載しているが、起動速度もまずまずだ。

 何よりも設定で「素早く起動」を指定できるのがいい。ハードの電源キー2回押しで確実にカメラを立ち上げられるからだ。ポケットの中でも確実に起動できるので、シャッターチャンスに強いと言える。使っていてストレスをあまり感じることなく撮影を楽しめた。

三島の源兵衛川をブラブラと歩く。大きなセンサーはさすがゆとりのある描写だ。ハイライト部、シャドウ部の連続感がいい
セミの抜け殻を見つけた。「AQUOS R8 pro」の1型センサーなら、ポートレートモードを使わずとも、接近することによって豊かなボケを演出できる
木陰の紫陽花を撮った。一般的に日陰だと色が転んでしまうことが多いが、スペクトルセンサーのおかげで見た目に近い色合いに写すことができた
ブラブラと長距離歩いたのでカフェでひと休み。暑かったがコーヒーはやはりホットで。1型センサーで写る窓辺にフォーカスして「AQUOS R8 pro」のシャッターを切ると、周囲がきれいにボケてくれた
湧き水の出る公園でのカット。大きなセンサーによる精細なアウトプットはスマートフォンというより高級コンパクトデジタルカメラに近い。緻密さと的確な色再現が魅力だ
シングルカメラ機の「AQUOS R8 pro」だが、クロップによるカメラの切り替え速度も前モデルより向上している印象だ。普通に使える感じに仕上がっている

 空を行く旅客機を最大の6倍で撮ってみた。等倍で見ると機体のディテールが残っているのが分かる。

新宿の都庁前から高層ビルと飛行機を入れて「AQUOS R8 pro」のシャッターを切った。電源ボタンをダブルクリックで起動するカメラは本当に使いやすい
夜間に新宿をブラブラしたときのカット。ライカ監修のズミクロンとはいえども、このようなシチュエーションではやはりフレアが盛大に発生する。撮影時は注意したい

 この「AQUOS R8 pro」は自然な写りを求める人にマッチするスマートフォンだろう。いわゆるコンピュテーショナルフォトグラフィーをバリバリと駆使した描写ではなく、デジタルカメラライクな自然な表現を求める人に向いている。スペクトルセンサーによる見た目に近いホワイトバランスも魅力である。

 35度を越す炎天下を数日間「AQUOS R8 pro」を持って撮り歩いたが、暑さによる撮影不能状態にはならなかった。これは新発想の放熱設計サーモマネジメントシステムの恩恵だろう。大型センサーを搭載しているが、バッテリーの持ちも良好であった。

自然な仕上がりで撮れる大型センサーカメラ

 1型センサーを搭載して注目を浴びた「AQUOS R6」から熟成を重ねて、一歩一歩確実に進化した「AQUOS R8 pro」。過去モデルで感じた動作のモッサリ感がだいぶ解消され、十分に普段使いができる大型センサー搭載スマートフォンになっていると感じた。

 AIを駆使しているとは言え、いわゆるコンピュテーショナルフォトグラフィー感はそれほどなく、デジタルカメラライクな仕上がりを望む人たちにとってはピッタリの端末ではないだろうか。

 しっかりと放熱対策もされ、薄く手触りとホールド感高いボディは撮影もしやすかった。サードパーティーとの専用アクセサリー展開も興味深く、ユニークなスマートフォンになっている。

三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau