石野純也の「スマホとお金」

遂に発売された「Pixel Fold」、各社出そろってきたフォルダブルスマホはこれからどうなる?

 グーグルが、同社初のフォルダブルスマホとなる「Pixel Fold」を、7月27日に発売しました。この1日前にあたる26日には、サムスン電子が韓国・ソウルで製品発表イベントの「Galaxy Unpacked」を開催。縦折りの「Galaxy Z Flip5」と、横折りの「Galaxy Z Fold5」の2機種を披露しています。日本での展開予定は明かされていませんが、従来通りであれば、ドコモやauからの発売が期待できます。

サムスンは、7月26日に韓国・ソウルでGalaxy Z Flip5、Fold5を発表した
Google初のフォルダブルスマホとなるPixel Fold。日本では、7月27日に発売された

 また、残念ながら発売が8月下旬に延期になってしまいましたが、モトローラも、縦折りフォルダブルスマホの「motorola razr 40 ultra」の販売を予定しています。同モデルは、直販や家電量販店での単体販売に加え、MVNOではIIJmioが独占的に取り扱うことが表明されています。Galaxyほぼ一択だったフォルダブルスマホですが、23年に入り、日本市場でもその選択肢が多様化し、ユーザーが好みの1台を選べる状況になりつつあります。

モトローラは、8月下旬に外側ディスプレイを3.6インチまで広げたrazr 40 ultraを日本で発売する

高額なイメージがつきまとうフォルダブルスマホ、実際のお値段は

 一方で、フォルダブルスマホというと、どうしても“高額”なイメージがつきまといます。実際、価格を性能の近いハイエンドモデルと比べると、やはりフォルダブルは高めの傾向にあります。たとえば、サムスン電子の場合、2月に発売された「Galaxy S23」は、米国市場での価格が799ドル(約11万4073円=8月1日時点の1ドル142.75円を適用)から。上位モデルの「Galaxy S23 Ultra」は、1199ドル(17万1157円)からといった価格がつけられていました。

諸外国でのGalaxy S23シリーズは3モデル展開。もっとも価格を抑えたGalaxy S23は、799ドルから。写真は米サンフランシスコで2月に開催されたGalaxy Unpackedで撮影

 これに対し、7月26日に発表されたGalaxy Z Flip5は同じくドルでの価格が999ドル(約14万2607円)から。Galaxy Z Fold5に至っては1799ドル(約25万6807円)と、20万円を超えています。ドル建ての価格で比較すると分かりやすいと思いますが、Galaxy Z Flip5はGalaxy S23に対してちょうど200ドル(約2万8550円)の差がつけられています。また、Galaxy Z Fold5は、Galaxy S23 Ultraよりも、600ドル(約8万5650円)高い価格設定です。

Galaxy Z Flip5は、Galaxy S23+と同じ999ドルから
Galaxy Z Fold5は、Galaxyの中でもっとも高い価格設定となる1799ドルで発売する

 また、日本では発売されていませんが、Galaxy S23には大画面版の「Galaxy S23+」も存在します。こちらの価格は、Galaxy Z Flip5と同額の999ドルになります。これら5機種を並べると、Galaxy S23>S23+=Z Flip>S23 Ultra>Z Fold5の順になっていることが分かります。こうして見ると、Galaxy Z Flip5がフラッグシップモデルとしては割安に思えてきますが、スペックを比べると、必ずしもそうではありません。

 たとえば、カメラに関してはGalaxy S23、S23+が超広角、広角、望遠のトリプルカメラを採用しているのに対し、Galaxy Z Flip5は超広角と広角のデュアルカメラです。また、そのデュアルカメラは、2つとも1200万画素。Galaxy S23、S23+の広角カメラは画素数が5000万画素で、ピクセルビニングによって画素を束ねることで受光面積を増やし、暗所でも明るく写真撮影ができます。端的に言えば、Galaxy Z Flip5の方がGalaxy S23やS23+より、スペックが抑えられているため、いわゆるコストパフォーマンスは高くありません。

折りたためるのが売りのGalaxy Z Flip5だが、カメラ機能など、一部スペックはGalaxy Sシリーズよりも低くなっている

 これは、他のメーカーでも同じ。たとえばグーグルのPixel Foldは、日本での価格が23万9850円で、Pixelシリーズとして最高額になっています。同じグーグル独自設計の「Tensor G2」を搭載した「Pixel 7 Pro」でも、価格は12万4300円から。Pixel FoldはPixel 7 Proと同じトリプルカメラ構成ですが、その中身を見ていくと微妙にスペックダウンしているため、“フォルダブルプレミアム”が乗っていると考えるのが妥当と言えるでしょう。

Pixel Foldは、Pixel 7 Proと同じトリプルカメラ構成だが、メインカメラのピクセルピッチは廉価モデルの「Pixel 7a」と同じ。望遠カメラも画素数が抑えてあり、超解像ズームは30倍にとどまる

2つのディスプレイやヒンジ、試験コストなどが乗ってくるフォルダブルスマホ

 では、なぜフォルダブルスマホが一般的なスマホと比べると高くなっているのかというと、1つには、部材が多いことが挙げられます。今現在、市場に流通しているフォルダブルスマホは、折りたたんだ状態でも使えることが前提。横折り型は折りたたんだときに一般的なスマホサイズに、縦折り型はコンパクトな形状のまま使えるよう、サブディスプレイが搭載されています。

Galaxy Z Foldシリーズは、閉じたままでも普通のスマホに近いサイズで操作できる

 特に横折りのフォルダブルスマホの場合、単純に言えば、スマホとコンパクトなタブレットをそれぞれ持つのと同じだけのディスプレイが搭載されているということになります。縦折りも、年々サブディスプレイが大型化しており、razr 40 ultraは3.6インチ、Galaxy Z Flip5も3.4インチのディスプレイを搭載しています。日本に初上陸したiPhone 3Gが3.5インチだったことを踏まえると、それと同程度のサイズのディスプレイがもう1枚搭載されているというわけです。

縦折りのフォルダブルスマホも、外側のディスプレイは年々大型化している。写真はrazr 40 ultra。3.6インチは黎明期のスマホとほぼ同サイズ

 折りたたみを支えるための命とも言えるヒンジも、一般的なスマホにはない部材です。単純に開閉するだけでなく、半開きの状態で利用できるのが昨今のフォルダブルスマホのトレンド。その設計も、世代を経るたびに見直されており、コストがかかっています。さらに、折り曲げられるディスプレイ自体も一般的なものと比べるとコストが高いと言われています。

ヒンジも、一般的な板状のスマホにはない部品で、コストがかかっている

 付け加えるなら、製造時の試験工程が一般的なスマホより増えるのも、フォルダブルスマホならでは。ユーザーが利用している間、何十万回と開閉しても破損しないよう、試験も行っています。部材が増え、機構が複雑になっているぶんのコストが上乗せされ、一般的なストレート型のスマホよりも高い価格が設定されていると言えるでしょう。製造台数も一般的なスマホより少なくなるため、スケールメリットも効きづらくなります。

 ただし、これらはあくまで通常のスマホとの“差分”。絶対値として、フォルダブルスマホが高いのは、現状、このジャンルの製品がハイエンドモデルに偏っていることもあります。ディスプレイが大きく、解像度が高かったり、2つのディスプレイを同時に動かすこともあるため、やみくもにパフォーマンスを下げるわけにはいかないのかもしれませんが、そのぶん、価格が高くなる傾向にあると言えるでしょう。

フォルダブルスマホの価値とは? ミドルレンジ化の期待も

 もちろん、スマホの真価は搭載されているチップセットやカメラのセンサーだけで決まるわけではありません。フォルダブルになることで上がるメリットが、価格に見合っていれば、高くても手に取る価値は十分あります。大画面をコンパクトなサイズで持ち運べたり、机やテーブルの上に置いて使いやすくなったり、サブディスプレイを使ってセルフィーが撮りやすくなったりというのは、これまでのスマホにはない魅力です。

開閉だけでなく、その中間状態である半開きでも使えることで、利用シーンが広がる
タブレットのようなユーザーインターフェイスで使えて、1画面の情報量が多くなるのも横折りフォルダブルスマホの価値と言えるだろう

 実際、筆者も「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Fold4」を立て続けに購入し、使っていますが、一度この大画面に慣れると、なかなか一般的なスマホのディスプレイサイズには満足できなくなってきます。そのサイズのディスプレイを備えたスマホを、ポケットに入れて持ち歩ける特徴は、代えがたいものがあります。Galaxy Sシリーズの最上位モデルとの価格差はもう少し縮めてほしいのが本音ですが、ギリギリ許容範囲なことも事実です。

 一方、メーカー側の工夫で、徐々に低価格な製品も登場してきています。たとえば、モトローラのrazr 40 ultraは、その一例。同機が採用しているチップセットは、1世代前の「Snapdragon 8+ Gen 1」ですが、そのぶんだけ価格はお手頃です。

razr 40 ultraは、チップセットにSnapdragon 8+ Gen 1を採用する。性能は高いものの、22年に主力だったチップセットをあえて搭載することで価格を抑えているものとみられる

 日本に初上陸した「razr 5G」は発売時の価格が17万9800円でしたが、razr 40 ultraはスペックを上げつつも、価格を15万5800円まで抑えています。MVNOとして独占販売するIIJmioでは、期間限定の割引価格で販売を行う予定。一括払いの場合、価格は13万9800円まで下がります。

 日本では発売していませんが、モトローラはrazr 40 ultraの下位モデルとして、「motorola razr 40」というultraのつかない通常版も用意しています。こちらは、チップセットにミッドレンジモデル向けの「Snapdragon 7 Gen 1」を搭載。外側のサブディスプレイも、razr 40 ultraほどのサイズはなく、1.47インチと小さめですが、そのぶん、価格は抑えられています。

razr 40は、価格を抑えたミッドレンジモデル。10万円を下回っており、購入しやすい価格と言えるだろう

 先に価格が明かされた中国市場では、ストレージが128GBのモデルが3999元(約7万9652円=8月1日時点の1人民元19.92円を適用)と、一般的な非フォルダブルのハイエンドモデルより、リーズナブルです。ここまで価格がこなれてくれば、機種変更の候補にフォルダブルスマホを入れやすくなってくるのではないでしょうか。よりボリュームゾーンの価格帯に近づいたことで、さらなる普及が期待できます。競争が進めば、サムスンやグーグルもミッドレンジモデルを投入する可能性があり、今後は価格競争にも注目したいところです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya