レビュー
「Google Pixel Fold」実機レビュー、グーグルが目指す「2画面✕大画面✕AI」の新体験
2023年6月27日 02:00
グーグル(Google)初のフォルダブルスマートフォン「Pixel Fold」が、7月中旬に発売される。Google ストアで25万3000円で販売されるほか、携帯電話会社ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが取り扱う。
グーグルが満を持して発売する「Pixel Fold」は、いったいどんな仕上がりになっているのだろうか? 本稿では、「Pixel Fold」のレビューをお届けする。
グーグルの思いが垣間見える外観
フォルダブルスマートフォンのなかでは“最薄”クラスをうたう「Pixel Fold」。大きさは折りたたんだ状態で139.7×79.5×12.1mm、広げた状態では139.7×158.7×5.8mm。重さは283gとなっている。カラーはObsidian、Porcelainの2色が用意される。
端末を折りたたんだ状態で横から見てみると、2つの画面の間にすき間はほぼ見当たらず、端末としてのビルドクオリティの高さをうかがわせる。グーグルによれば、ヒンジ部分には“鏡面仕上げの多相合金スチール構造”を採用。しっかり開閉できるといった印象で、開いたときの折り目もあまり目立たない。
他社のフォルダブルスマートフォンと比べ、広げたときにやや横長になるようなサイズ感は、「Pixel Fold」の特徴のひとつと言えるかもしれない。書籍にたとえるならば、他社端末を“新書”としたときに、「Pixel Fold」は文庫本をほうふつとさせる。
「Pixel 6」シリーズから採用されたカメラ部周辺のデザイン「カメラバー」は、「Pixel Fold」でも踏襲されている。「Pixel 6」以降の「Pixel」スマートフォンでは、まさしく端末を横切る帯のようなデザインだったが、「Pixel Fold」の“カメラバー”は角が丸められたうえで独立している。端末とカメラバーのアール(曲線)部分が等しく、統一感を高めている印象だ。
このカメラバー、正面から見てもなかなかのサイズだが、側面から見ると大きく出っ張っており、その存在感は際立っている。光沢のある加工は「Pixel Fold」本体側面と同じような見た目で、「Obsidian(黒曜石)」の名の通り、にぶい輝きを放つ。
音響面では、「Pixel Fold」はステレオスピーカーを搭載する。カメラ側の本体下部にはスピーカーが位置し、カバーディスプレイ側の本体上部にもスピーカーが備えられている。本を読むようなかたちで端末を開いたときに、ちょうど上下にスピーカーが来るようなイメージだ。
背面の加工はサラサラとしたマット調となっており、指紋がまったく目立たない。中央にはグーグルの頭文字「G」があしらわれ、シンプルなデザインにアクセントを加えている。側面の金属部分にも防指紋コーティングが施されているのか、指紋が目立ちにくい印象を受けた。
大画面ならではの可能性
「Pixel Fold」外側のカバーディスプレイ(OLED)は5.8インチ(1080×2092、フルHD+)で、アスペクト比が17.4:9。120Hz駆動に対応する。
端末を広げたときのメインディスプレイ(OLED)は7.6インチ(1840×2208)で、アスペクト比が6:5。カバーディスプレイと同じく、120Hz駆動をサポートする。
折りたたんで端末を持ったときの印象は、比較的コンパクト。2画面ゆえの“ずしっ”とした重さはあるが、ホールド感は良い。
そして端末を開くと登場する、7.6インチの大画面。人間の感覚とは実に不思議なもので、画面の大きさゆえか、開いてみると、先ほどと同じ283gほどの重さはないように感じられる。
グーグルでは、多数のアプリを大画面用に最適化したとアピール。たとえばGmailやYouTubeなどは、画面のスペースをうまく活用するかたちで、複数の情報を並行してチェックできる。
大画面をそのまま使うとすれば、Google マップなどはその恩恵を受ける筆頭格のアプリと言えるだろう。カバーディスプレイとメインディスプレイとで表示を比べれば、情報量の差は一目瞭然。知らない土地でも心強い味方となってくれるはずだ。
先ほど「Pixel Fold」を“文庫本”サイズと表現したが、電子書籍アプリで読書を楽しむのもいいかもしれない。端末を広めの角度で開いて片手で持っていると、本当に本を読んでいるような気分になる。
グーグルではサードパーティ製のアプリも含めて最適化を進めていくとしており、今後の展開次第で、2画面活用の幅が広がることが期待できる。
ハイクオリティ×自由度の高い撮影を実現
「Pixel Fold」のアウトカメラは3眼構成で、メインカメラは4800万画素(F値1.7、センサーサイズ1/2インチ)。
加えて1080万画素の超広角カメラ(F値2.2、画角121.1度)、同じく1080万画素の望遠カメラ(F値3.05)を搭載。5倍の光学ズームに加え、最大20倍の「超解像ズーム」をサポートする。
ユニークなモードとしては、アウトカメラを利用した高画質なセルフィー撮影(自撮り)や、端末を折り曲げて使うテーブルトップモードなどが用意されている。
そして、AI(人工知能)を活用した「Pixel」シリーズならではの高い撮影性能は、「Pixel Fold」でも健在。フォルダブルならではの多彩なモードを活用することで、クオリティも自由度も高い撮影を楽しめる。
今後のシリーズ化にも期待が高まる
「Pixel Fold」のチップセットは「Google Tensor G2」。メモリー(RAM)は12GB、ストレージ(ROM)は256GB。バッテリー容量は4821mAhとなっている。
防水性能はIPX8相当。NFCやFeliCaをサポートしている。
Google ストアでは25万3000円という価格は、決して安いとは言えない。しかし「Pixel Fold」は、ハードウェア・ソフトウェアの両面でグーグルの思いが詰まった一台になっていた。
「Pixel」シリーズならではのクセのない使いやすさと、フォルダブルというユニークさを兼ね備えた「Pixel Fold」。
「Pixel Fold」が発表されたのは、ひと月と少し前の開発者向けイベント「Google I/O」。グーグルは「Pixel Fold」について、「閉じたときにスマートフォン、広げたときにタブレットになる」と説明。わずか15分ほどのプレゼンテーションのなかで、「Pixel Fold」で実現する“新体験”の数々を披露していた。
たとえばカバーディスプレイで見ていた「Google フォト」の写真が、端末を開くと大画面でシームレスに表示される。メインディスプレイの左側の写真アプリから右側のメッセージアプリにファイルをドラッグ&ドロップすることで、思い出をすぐに共有できる。
YouTubeの動画を大画面で観ているとき、テーブルトップモードに切り替えれば、画面の下半分に別の情報が表示される。カメラアプリでは、アウトカメラを使って高画質な自撮りを楽しめる。
AIを活用した新機能として、米国でテスター向けに提供されているGmailの「Help me write」では、伝えたいメッセージや相手の名前などを入力すると、より丁寧で長い文章を自動生成してくれる。
こうしたデモンストレーションは、グーグルが「Pixel Fold」で実現したい新たな体験を示している。
プレゼンテーションは「仕事でもプライベートでも、これまで見たことのない体験を」といった言葉で締めくくられていた。2画面であること、大画面であること、そしてAIとのコンビネーション。こうした強みを持つ「Pixel Fold」は、使う人に新しい発見をもたらしてくれそうだ。
項目 | 内容 |
カラー | Obsidian、Porcelain |
大きさ | 139.7×79.5×12.1mm(折りたたんだ状態) 139.7×158.7×5.8mm(広げた状態) |
重さ | 283g |
チップセット | Google Tensor G2 |
メモリー | 12GB |
ストレージ | 256GB |
カバーディスプレイ | 5.8インチ(1080×2092) |
ディスプレイ | 7.6インチ(1840×2208) |
アウトカメラ | 4800万画素メイン(F値1.7、センサーサイズ1/2インチ) 1080万画素超広角(F値2.2、画角121.1度) 1080万画素望遠(F値3.05) |
フロントカメラ | 950万画素(F値2.2) |
バッテリー容量 | 4821mAh |
5G対応周波数(モデルG0B9620) | (ミリ波)n257、n258、n260、n261 (Sub-6)n1、n2、n3、n5、n7、n8、n12、n14、n20、n25、n28、n30、n38、n40、n41、n48、n66、n71、n75、n76、n77、n78、n79 |
4G対応周波数(モデルG0B9620) | バンド1、2、3、4、5、7、8、12、13、14、17、18、19、20、21、25、26、28、29、30、32、38、39、40、41、42、46、48、66、71 |