石川温の「スマホ業界 Watch」

「Pixel Fold」実機の仕上がりは? 先行する競合製品との違いとは

 グーグルが2023年5月10日、開発者向け会議「Google I/O」を本社横の屋外シアターで開催。新製品のスマートフォン「Pixel 7a」と「Pixel Fold」を発表した。

 今回、4年ぶりにGoogle I/Oのリアル取材に行ってきた。

 Pixel 7aに関しては、渡航前に都内で触る機会があったのだが、Pixel Foldに関しては事前の展示などは一切なし。わざわざカリフォルニア州マウンテンビューに来たからこそ、Pixel Foldの実機を体験することができた。

 筆者はこれまでサムスン電子「Galaxy Z Fold」シリーズを初代から4世代に渡って使ってきた。

 Pixel Foldを初めて触ったとき「意外と軽いかも」という第一印象であった。

 Galaxy Z Fold4などは、どちらかというと重厚感があって、ずっしりとした印象がある。一方で、Pixel Foldは持った瞬間、さほど重さを感じなかった。

 しかし、あらためて、それぞれの重量を比較してみると、Galaxy Z Fold4が263g、Pixel Foldが283gとPixel Foldのほうが重かったのだ。

左:Pixel Fold、右:Galaxy Z Fold4

 なぜ、そのような感覚に陥ったのかと言えば、ひとつにはPixel Foldは折りたたんだときの投影面積がGalaxy Z Fold 4よりも大きいことがある。逆に折りたたんだときの厚みに関してはPixel Foldのほうが薄い。

 質感に関しても、Pixel Foldは、Pixel 7のようなカジュアルな風合いになっている。結果として、持ったときに「大きくて薄い」ということで、意外にも軽く感じたようなのだ。

 実際にPixel Foldを触っていると、折りたたみスマホではあるが、違和感がなく、すんなり受けいれられる感じがする。

 おそらく、折りたたんだときに5.8インチで17.4:9という、これまでのスマホに近い、画面サイズ感、画面の縦横比率になっているのだ。普段、使っているスマホを開くと7.6インチの大画面になるといった感じで、普段使いが使いやすそうな印象なのだ。

 実際に開いてみると、もちろん小型のタブレットぐらいの使い勝手が実現する。折りたたみスマホは「折り目が気になるか」という人が多いが、使っている最中、画面が光っている状態であれば、さほど気にならない。

 本体をノートパソコンのように机の上に置き、カメラを起動すると画面いっぱいにファインダーが表示される。しかし、Galaxy Z Fold 4ではどうしてもファインダーが小さくなりがちだ。

 Pixel Foldのほうが多くの場面で、画面を有効活用できる縦横比率になっているような気がする。

 今回、グーグルでは、折りたたみスマホやタブレットの登場に向けて、大画面や画面分割でのアプリの操作性を向上させている。グーグルの関連アプリは50以上で、新しいデザインに変更されたという。
 Pixel Foldでも画面下からスワイプするとメニューが登場し、アプリのアイコンを画面の真ん中にドラッグするとアプリが起動。左右それぞれ画面を分割して2つのアプリを同時に起動できる。

 グーグルがハードとOSを連携させる形でユーザーインターフェイスを作り込んできたので、期待はできる。ただ、短時間の使用ではうまく操作できないことがあるなど、ちょっと慣れが必要かも知れない。

 個人的にはPixel Foldはグーグル初の折りたたみと言うことで気になる存在なのではあるが、やはり25万3000円という価格は無視できないところだ。

 Galaxy Z Fold4も25万円程度するので、折りたたみスマートフォンの相場と言えば相場なのだが、Pixel FoldはGalaxy Z Foldの後発なのだから、もうちょっと「新しい折りたたみスマートフォンの使い方」を提案して欲しかった。

 少なくともGalaxy Z Foldはペンが使えるのも売りとなっている。「Pixel Fold独自の機能」があれば良かった。

 これまでのグーグルの戦略を見ていると、ひょっとしたら来年あたりに「Pixel Fold a」なんてのが出てくるのではないか、とうがった見方をしたくなる。

 同じG2チップを搭載し、スペック的にも同等。でも安いという「Pixel Fold a」が出てくれば一気に検討するという人も増えるだろう。

 Pixel Foldの数少ない弱点は「価格」であることは間違いないだけに、グーグルの今後の展開にも期待しておきたい。

左からOPPOの「Find N2」、「Pixel Fold」、Galaxy Z Fold4
石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。