三井公一の「スマホカメラでブラブラ」

片手で操作しやすい超広角カメラ! 「ASUS Zenfone 9」を試す

 性能を追い求め肥大化するスマートフォン。そんなトレンドに逆らうかのような端末「ASUS Zenfone 9」。片手にスッポリと収まるスリムかつコンパクトなボディは街中でのスナップ撮影にも向いているだろう。

 小さなボディなのにチップセットは「Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1」とハイエンドクラスなので、サクサクとシャッターを切ることができそうである。さっそく冬の街へ「ASUS Zenfone 9」を持って繰り出してみた。

 なお端末の仕様、スペックなど詳細は本誌別記事を参照していただきたい。

「ASUS Zenfone 9」について

 この端末は目を引く外観をしている。ただの薄い板状のスマートフォンが多い中、2つ目のカメラ部と独特の質感を持つ背面仕上げとでカッコよく仕上がっていると感じた。

 チップセットは「Snapdragon 8+ Gen 1」、ディスプレイは5.9型OLED(2400×1080ドット)。キビキビと動作し、撮影時のフレーミングや撮影結果の鑑賞も実に快適。それでいてこのコンパクトさと格好良さなので申し分ない。

 端末背面のややザラザラとしたマット仕上げも片手での操作をより快適にしてくれている。

カメラ部を見てみよう

 2つのカメラは5000万画素の広角カメラと1200万画素の超広角カメラという構成だ。メーカーはソニー製センサーを採用していることをうたっており、それぞれ、IMX766センサーは35mm換算約24mm相当 F1.9、IMX363センサーは35mm換算 14.5mm相当 F2.2である。

 大きめのレンズユニットは外観のアクセントになっており、メカメカしい端末が好きな人にはグッとくるルックスになっている。ちなみに上部(写真左)が広角カメラで下部(写真右)が超広角カメラである。広角カメラには6軸ジンバルモジュールを搭載しており、動画撮影などで強力な手ブレ補正効果を得られる。

 5000万画素広角カメラの出力は3072×4096ピクセル、1200万画素超広角カメラの出力は3024×4032ピクセルだ。望遠カメラは搭載せず、広角カメラからの切り出しになり、3072×4096ピクセルとなっている。デジタルズームは最大8倍まで。

カメラ撮影画面
超広角カメラ
広角カメラ
2倍時
8倍デジタルズーム時はちょっとキビシイ写りとなる

ポートレートモード

 ポートレートモードはF0.95からF22までの絞り効果をコンピュテーショナルフォトグラフィーの力で味わえる。ただし細かい部分の境界判定は苦手のようだ。

周辺部の描写がややおかしくなっている
こちらはまずまずの境界判定か

マクロモード

 自動切り替えのマクロはなかなか便利だ。それぞれカメラでレンズ先端から数cm〜10cm程度まで被写体に接近できる。あまり寄りすぎた場合は「カメラを被写体から離して、フォーカスを調整してください」とディスプレイに警告が表示される。

広角カメラで花に接近。色合いも質感もなかなかに感じる
スイセンにググッと寄ったがピント面もシャープで背景もキレイにボケてくれた

ライトトレイルモード

 カメラの撮影メニューには「ライトトレイル」モードがある。これはスローシャッターでの長時間露光効果を模したものだ。

 「トラフィックライト」「ライトグラフィティ」「滝」「人の往来」「スタートレイル」などメニューが用意されており秒数の設定も可能だ。ただしこの機能はベータ版となっている。

撮影画面
撮影中の画面。三脚の使用が望ましいが数秒程度ならよく効く手ブレ補正機能のおかげで手持ちでもイケそうである
水路を手持ちで「トラフィックライト」使用。水の流れが長秒露光のようになった
通常のカメラモードでの撮影。画角がやや異なっている

夜景モード

 「夜景」モードはカメラモード「その他」内に隠れている。マニュアル撮影ができる「PROモード」と同じ場所だ。「設定」メニューから「夜間撮影を自動検出」をONにすることも可能。

「夜景」モードをON。暗部の描写がクッキリと浮かび上がり月の輪郭もシャープだ
「夜景」モードOFF時。暗部が沈み込み空の明るさも若干ダークに。被写体によってはこちらのほうが雰囲気があっていいかもしれない

「ASUS Zenfone 9」でブラブラスナップを楽しむ

 基本性能はなかなか高そうな「ASUS Zenfone 9」。それでは冬の街をブラブラと実写してきたので、その撮影結果を見ていこう。

神田川に停泊する屋形船。その様子を超広角カメラで撮影。35mm換算14.5mm相当の画角は広大に風景を写し込める。暗部にややノイズが乗っているが水面を泳ぐ鳥もしっかりと写しとっている
公園に展示されている蒸気機関車を撮ったが、その汚れ具合や金属の質感をうまく表現していると感じた。凹凸など細かいディテールも思った以上に捉えられている。カメラの起動速度もまずまずで、ポケットから取り出したさほど時間を要さずに撮影できた

 野菜と果物の無人販売スタンドを撮ったがやや露出オーバーになった。また彩度も飽和に近く、極端なコントラスト下では、好みに応じて露出補正を行うほうがいいだろう。

二子玉川の河川敷に架かる国道246号線バイパスの橋脚を撮影。太陽をフレーム中央に配したが、露出オーバー部分が完全にぶっ飛んでしまった。ちなみにHDRはオートである
こちらも同じ橋脚をほぼ順光で撮影したもの。肉眼ではもうちょっとコントラストが高くメリハリがあるシーンなのだが、オートHDRはフラットな印象に仕上げてしまった。好みによってHDRをON/OFFするといいかもしれない

 午後の日射しが差し込む竹林をブラブラと。竹と太陽が作り出す光と影の様子を広角カメラでキャプチャーした。見た目よりやや冷たい仕上がりになったが、落ちている葉の解像感や幹のディテールはいい印象である。

 広角カメラのIMX766センサーは35mm換算約24mm相当となるが、画角的に使いやすいし、いいアウトプットをしてくれる。太陽光がダイレクトに当たる祠の描写と立体感が実にいい。このシーンでは色再現性も自然で好感が持てる。

咲き誇る梅の花。花のひとつひとつをちゃんと知覚できる解像感と、花の淡い色を背景の青空とともに美しく撮影できた。「ASUS Zenfone 9」、小さな端末だがなかなか優秀だと感じた
気をつけたいのがカメラに斜めから入る強烈な光だ。ほとんどのスマートフォンにも当てはまるが盛大なフレアとゴーストが発生する。夜間の点光源にも気をつけたい
古民家の和室。畳の目から天井の板張り、木製の扉までしっかりと写しきっている。「ASUS Zenfone 9」の広角カメラはなかなかいい。ちなみにHDRオートで撮影している

 超広角カメラも、光量が十分なシーンではいい結果を提供してくれる。メタリックな塗料で覆われた壁のディテールや背景の色合いもメリハリを感じられる仕上がりだ。

軽量ゆえ、ホールド感やポケットへの収まりが素晴らしい

 「ASUS Zenfone 9」は軽量コンパクトで片手での操作がしやすく、2眼構成の広角カメラがいい写りで、さほど望遠カメラを必要としない人にはオススメできる端末だという印象を持った。

 ポケットへの収まりが良く、パッと取り出したときにホールド感もよく、広角カメラでキレイな写真をキャプチャーできるという端末のコンセプトがとてもいい。

 今回は使用できなかったが、オプションの「Connex Accessories Set」や、マグネットホルダーで脱着できる「Smart Backpack Mount」などユニークなアクセサリーもあり、撮影やブラブラ歩きが楽しくなる「仕掛け」がいい。ルックスと質感も上々なので実際に手にして感触を確かめると買いたくなってくる(価格もまずまずなのだ)端末に仕上がっている。

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三井 公一

有限会社サスラウ 代表。 新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。 雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなども行っている。Twitter:@sasurau、Instagram:sasurau