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家族割と学割を相次いで投入した楽天モバイル、契約数の増加でARPUを補う戦略にシフトか

 楽天モバイルが今春、家族割と学割の2つの割引施策を発表した。ベースとなる「Rakuten最強プラン」は維持しつつ、家族割「最強家族プログラム」を適用すると全ての回線が月々110円割引される。さらに、22歳以下の顧客は学割「最強青春プログラム」も併用可能で、楽天ポイントが毎月110ポイント付与される。

ARPU増が目標も、23年10~12月期は減少に転ずる

 割引を相次いで投入し、契約獲得に弾みを付けたいところだが、一方でARPUにはマイナスの影響が出かねない。学割については、一般的にパケットを多く消費しがちな若年層をターゲットにしている点や、値引きではなくポイント還元という仕組みのため、若年層のパイが広がればARPU増につながる可能性が高い。他方、家族割には年齢による縛りはなく、また既存顧客にも幅広く適用されるため、大きなリスクをはらむ。

 そもそも、割引施策導入前の23年10~12月期の時点で、ARPUが前期比で減少に転じてしまった。同社は「法人契約比率が増加した」「12月後半に契約が急増したことで、日割りでの課金者が増えた」等の特殊要因で減少しただけと強気の姿勢を崩していない。

 実は10~12月期は、KDDIが前期比で30円増だったものの、残る競合2社も楽天モバイル同様マイナスとなっており、楽天モバイル固有の問題ではない。

 とはいえ、法人契約の獲得は今年に入っても引き続き順調に進んでいる模様で、回線数の増加には寄与するものの、法人契約比率の増加はARPUの足を引っ張りかねない一因となる。

そもそもハードルが高いARPU目標、20GB超の顧客が半数以上でないと“達成困難”か

 楽天モバイルは、2024年12月までに単月でのEBITDA黒字化目標を掲げているが、そのためには契約回線数が800~1000万、ARPUも2500~3000円に達することが必要と試算されている。

出典:楽天グループ 2023年度通期決算説明会資料より

 現行の「Rakuten最強プラン」は、データ利用量に応じた段階制の価格体系となっており、ARPUを引き上げるには顧客ができるだけパケットを消費し、より上位のプランにシフトしてもらう必要がある。

 では、ARPUが2500円超になるための条件は、どのようなものなのだろうか。

 ARPUは「回線系売上÷契約数」によって計算できる。極端な例だが、契約数が2回線しかなく、売上がそれぞれ980円と2980円だった場合のARPUは「(980+2980)÷2」の式から1980円と計算できる。

 そこで、月々の基本料以外の売上は一切無視し、同社が目標とする2500円(計算を簡単にするため2480円とした)のARPUに到達するモデルケースを試算したところ、20GB超の顧客が最低でも半数を占める必要があることが分かった(表の①)。また、3GB以下の顧客が25%を超えてしまうと、月額基本料だけではARPUが2480円に到達しないことも分かった(表の③、[参考1])。

 実際のARPUには、各種オプションや通話料などが含まれるため、月額基本料だけで試算した点はいささか乱暴ではある。だが、Rakuten Linkアプリを利用すれば通話料は無料となっており、他社に比べて通話料の上積みは期待しにくい。また、今回の家族割による減収分も試算では考慮していない。

 既に顧客のデータ利用量は月平均24.5GB(23年10~12月期、B2C)まで増加したものの、一部のヘビーユーザーの存在が数字を押し上げている可能性もあり、いかにして広くあまねく半数以上の顧客を20GB超へと誘導するかが同社にとっての最大の課題となる。

 他方、ARPU目標に届かなくても、契約数が1000万を大きく上回れば、トータルで黒字目標を達成することは理論上可能だ。家族割と学割という2つの割引施策は“契約数の増加でARPU伸び悩みを補い、黒字化を目指す”方向へと舵を切ったようにも見える。契約数がどの程度上積みできるのか、今後も注視していきたい。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/