石野純也の「スマホとお金」
楽天モバイル「最強家族プログラム」徹底解説! 家族で2万ポイントもらえる「紹介キャンペーン」のインパクト
2024年2月15日 00:00
楽天モバイルが、家族契約時の割引キャンペーンを開始します。同社はサービス開始当初から「ワンプラン」を売りにしており、家族割引や固定回線とのセット割がありませんでした。
条件によって異なる割引が複数あると、そのぶんだけ料金が“複雑”に見えてしまうからです。元々、同社は料金の安さを売りにしていたこともあり、家族割引は設けていませんでした。
このポリシーを変え、同社初の家族割引として導入されるのが「最強家族プログラム」です。サービス開始は、2月21日から。家族割引のような位置づけですが、現状の仕組みは非常に簡易的。
対象となるユーザーも、広そうです。ここでは、その仕組みとともに、楽天モバイルに与えることになりそうな影響を考察していきます。
割引は家族全員110円、シンプルな仕組みが楽天流か
家族割引と言っても、その中身は非常にシンプル。適用されるユーザー全員が、110円の割引を受けられるだけです。2人以上でグループを組んでいれば、この割引の対象。
他社のように、人数で割引額が変動するようなこともありません。2人以上の家族で契約すれば、お互いが110円の割引を受けられるという仕組みは、非常にシンプルと言えるでしょう。
Rakuten最強プランは、使ったデータ量に応じて料金が変動しますが、この110円割引はいずれの段階にも適用されます。
3GB以下の場合は1078円 → 968円に、3GB超20GB以下の場合は2178円 → 2068円に、20GB超過後の場合は3278円 → 3168円に料金が下がります。
どの段階でも割引額が変わらないため、割引“率”で見れば、3GB以下の場合がもっともお得になると言えるでしょう。この容量の時に税込みで1000円を下回るのも、心理的なお得感を演出できそうです。
年間の割引額は、家族2人なら2640円、3人なら3960円、4人なら5280円になり、月額110円といってもバカにはならない金額です。家族が多ければ多いほど、その恩恵は大きくなると言えるでしょう。
楽天モバイルは、現在、紹介者、非紹介者の両方にポイントが入るキャンペーンを実施していますが、これとの相乗効果を狙っていることがうかがえます。
楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏は、「営業をしていると、家族プランはないのかとよく言われる」と語っていました。元々料金が安い楽天モバイルですが、やはり、家族でまとめて複数回線契約した際には、何らかの割引があってほしいと思うのが人の常ではないでしょうか。
大手3キャリアが長く家族割引サービスを続けていたこともあり、他社に移るなら家族丸ごとで……と考えていた人もいるはずです。三木谷氏が、「日本人にとって極めて重要」と語っていた背景には、このような理由があるとみられます。
家族の証明は“名字”だけ、利便性の半面、適用範囲が狭まることも
ただし、最強家族プログラムは、他社のように戸籍謄本や住民票などが必要な厳密なものではありません。
割引額が110円と低いことや、シンプルさを重視したためか、家族のグループを組む方法も非常に簡略化されています。代表回線を持つユーザーが「my楽天モバイル」上でリンクを作り、それを家族に送って登録してもらうだけと、その仕組みは非常に簡易的です。
他社の場合、書類を持参してショップを訪れたり、申し込み書類を郵送したりする必要がありますが、楽天モバイルの最強家族プログラムは、そのプロセスもありません。
現時点では、申し込んだユーザーとリンクからグループに登録したユーザーが、「同姓」であること一点のみが条件とされています。「家族」と銘打たれてはいるものの、同一住所である必要もありません。
回線数は20回線まで。家族のグループを作成する主回線の契約者は18歳以上である必要がある一方で、割引を適用される家族の年齢も問われません。
極端なケースでは、生まれたばかりの0歳児から、最強家族プログラムの恩恵にあずかることができます。オンラインでの申し込みだけで適用され、適用範囲も広いのはうれしいポイントです。
例えば、離れて住む親せきに楽天モバイルユーザーがいた場合でも、同姓という条件さえ満たしていれば、最強家族プログラムが適用されます。他社の場合、3親等などの制限がありますが、最強家族プログラムにはそのような条件もありません。
そこまで離れた親族にグループ入りするURLを送るための連絡がつくかどうかは微妙なところですが、理論上は、叔父・叔母の子どもであるいとこの、さらにその子どもでも対象になるというわけです。
一方で、同姓を条件にしてしまっている関係で、適用範囲が限定される側面もあります。例えば、同姓パートナーや事実婚などは、たまたま名字が同じならOKですが、その確率はかなり低そう。
そうでない場合には非対象と見なされてしまいます。また、パートナー側の家族に関しても、名字が違うケースが多いでしょう。このような場合にも、最強家族プログラムを組むことができません。
ただし、同姓を条件にしているのは、あくまでスタート時点での話。最強家族プログラムの発表会でも、今後、その範囲を広げていくアップデートは検討していくことが語られていました。
同姓を条件にするのは、システム的に対応が簡単だと思われる一方で、家族の形が多様化している中、すくいきれないニーズがあるような気がします。アップデートの検討を明言しているため、今後の対応には要注目です。
最強家族プログラムは解約抑止に効果を発揮か、キャンペーンとの相乗効果も
もっとも、これで楽天モバイルを家族で契約するユーザーが一気に増える……というようなことにはならない気がしています。 他社の事例を見ると、家族割引の効果は、どちらかと言えば解約抑止に出る からです。
自分が1人だけ抜けてしまうと、他社で割引を受けられなかったり、家族の割引額が下がってしまったりといった金銭的な不利益があるため、解約をしづらくなるのが実情でしょう。
その意味で、最強家族プログラムは、現在展開中の紹介キャンペーンと対をなすような仕組みと言えそうです。紹介キャンペーンは、現在、第3弾を実施中。紹介したユーザーは7000ポイント、紹介されたユーザーはMNPで1万3000ポイント、純新規契約で6000ポイントがもらえます。
例えば自分が友だちや同僚の紹介で楽天モバイルにMNPした場合、1万3000ポイントを入手できます。次に、配偶者(夫や妻)に紹介し、楽天モバイルにMNPしてもらえば、さらに7000ポイントがもらえます。
紹介された側の配偶者にも1万3000ポイントが入り、その額は3万3000ポイントに。子どもの契約を増やしていけば、さらにポイントが増加します。獲得という側面で言えば、こちらの方がインパクトは強そうです。
楽天モバイルは、新規獲得を重視する一方で、解約率を低下させることも経営指標の1つにしていました。いくらユーザー数が増えても、解約が激しいと純増につながらないだけでなく、獲得コストも無駄にかかってしまうおそれがあります。
1GB以下0円だった「UN-LIMIT VI」を廃止した際には解約が続出したものの、Rakuten最強プラン導入以降は徐々にその数値も落ち着き、他社に近い水準に近づきつつあります。最強家族プログラムは、こうした状況に対するダメ押しになるかもしれません。
少々残念なのが、対象となるのが1人につき1回線というところ。スマホ用とタブレット用それぞれに楽天モバイルを契約しているような時には、最強家族プログラムの対象から外れてしまいます。
他社には、タブレットやPCなどのデータ端末を持つ際に割安になるセット料金も用意されています。これに対し、楽天モバイルは1端末1回線でそれぞれに料金がかかってしまうのが難点。家族割引の次は、データ端末に特化した専用プランを期待したいところです。