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「最強シニアプログラム」発表の楽天モバイル、その狙いや今後の展望とは

 楽天モバイルは13日、新たな割引プログラムとして「最強シニアプログラム」の提供を開始した。

 同日に開催された説明会には、鈴木和洋代表取締役共同CEOが登壇し、その狙いや今後の展望を語った。また、説明会後の質疑には、中村礼博マーケティング企画本部長も応じた。

鈴木氏

 楽天モバイルは、2023年6月に「Rakuten最強プラン」を発表した。2024年2月には「最強家族プログラム」、3月には「最強青春プログラム」、5月には「最強こどもプログラム」を発表し、幅広い世代のユーザーが「Rakuten最強プラン」をお得に利用できるしくみを整えてきた。

 これらのプログラムが奏功し、若年層を中心にデータ利用量は増加傾向にある。1カ月あたりの平均データ利用量は27.9GB。また、13歳~22歳のユーザーに限れば、平均44.2GBになるという。

 「Rakuten最強プラン」はデータ利用量に応じて料金が変わる段階制のプランであり、データを多く使うユーザーが増えれば、楽天モバイルにとってはARPU(ユーザーひとりあたりの平均売上)が上がることになる。「最強青春プログラム」の導入により、ARPUが向上しているデータが示された。

 楽天モバイル全体の契約回線数も好調に推移しており、9月14日には785万回線を突破する見込み。鈴木氏は「800万(契約)はもう射程圏に入っている。1000万の大台の背中が見えてきた」と手応えを語る。

 従来は30代がコアユーザー層だったが、若年層へのアプローチが順調に進む楽天モバイル。一方で、シニア層はアプローチが行き届いておらず、「伸びしろが大きい」(鈴木氏)。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行は進むが、機能を使いこなせず、結果としてデータ容量をあまり使わないシニアユーザーも多いという。

 そこで今回、「最強シニアプログラム」が登場した。「毎月110ポイントの還元」「安心につながるオプション」「店頭サポート」を主なアピールポイントとする。また、スマートフォンアプリ「楽天シニア」や郵便局でのオンラインスマホ教室、紹介キャンペーンなども紹介された。

 「これからどんどん増えていくシニア層の方に、最強の“デジタルシニア”になっていただくお手伝いをしたい」と鈴木氏は意気込んだ。

「楽天シニアサポーター」を招いたトークセッションも開催された

質疑応答

――シニア層(向けの施策)を強化するという話だった。リアルの店舗を充実させていく計画はあるのか。

鈴木氏
 リアル店舗の展開に関しては、さまざまな観点から検討しています。

 ある地域を戦略的に選んで、そこに店舗を展開するということも含めて、常に検討はしています。どこに何店舗増やすかというようなお話は、ちょっとここではできません。

――NTTドコモが「ahamo」のデータ容量を20GBから30GBに上げた。このあたりの受け止めは。

鈴木氏
 私ども無制限プランを持っていまして、一番高くなっても2980円(税別)です。データをどれだけ使っていただいてもそれ以上はいただきませんというのが最大の売りですので、他社さんの追随を許さないプランを提供できていると考えています。

――「最強青春プログラム」「最強こどもプログラム」と来て、少し間が空いて「最強シニアプログラム」が登場した。敬老の日と合わせるために取っておいたのか。

鈴木氏
 特に敬老の日を狙ったわけではなく、いろいろと調査などに時間を要したというところがあるかと思います。

 特にシニア層に関しては、いろいろな角度からデータを集めて調査を実施しました。その準備期間が必要だったと考えていただければ。

――若年層向けの割引によってデータの使用が増えてARPUが上がるというのが好循環だと思う。「最強シニアプログラム」でもそのような狙いはあるのか。

鈴木氏
 シニア層のARPUについて、私どもは多彩なサービスを提供していますので、これによって(使用)データ量を増やしていただいてARPUを上げていくことはひとつあります。

 また、先ほどご紹介したオプション(15分かけ放題&安心パック)もあります。

 私もシニアのひとりですが、同窓会などで聞くと、ウイルス感染や迷惑電話、オレオレ詐欺みたいなことが怖いという声が多く聞かれます。

 そういった人が非常に多いというところを踏まえて今回このオプションを用意しましたので、できるだけ多くの方に加入いただいて、ARPUの向上を目指していきたいです。

――「最強シニアプログラム」は、今回65歳以上の人に提供される。シニアの定義がいろいろある中で、区切りを65歳にした理由は。

鈴木氏
 民間企業も、今は65歳まで定年を延長されているところが非常に多いです。今、政府は(それを)70歳までにしてくれという要請を民間にしているような状況になっています。

 会社で元気に働けているうちは「シニア」とお呼びするとどうなのかなというのもあり、今回は65歳にさせていただきました。

――プレスリリースでは「AQUOS wish4」がシニア向けの端末として挙げられていた。シニア向けの端末に関する考えを教えてほしい。iPhone 16を割り引く施策なども検討しているのか。

鈴木氏
 デバイスに関してはいろいろありますが、我々自身がデバイスを作っているわけではありません。

 各メーカーさんが需要に応じていろいろな戦略でデバイスをお作りになってくると思いますので、それを見ながら良いものがあれば、ぜひピックアップして提供していきたいと思います。

中村氏
 iPhone 16に関して現時点で発表できることはありません。

 たとえばAQUOS wish4では、「かんたんモード」に切り替えることで、デバイスは同じでありながら使い勝手はシニアの方向けにカスタマイズできるという部分もありますので、そういったところをおすすめしたいと思います。

――シニア向けに注力していくうえで、郵便局をあらためて活用する考えはあるのか。

鈴木氏
 日本郵便さんとの提携については、全国約500局の郵便局で、タブレットによるスマホ教室を展開しています。販売については少し様子を見ながら進めさせていただきたいと思っています。

 当然のことながら、日本郵便さんがお持ちの全国ネットワークは非常に貴重だと思います。そこに関しては、別のかたちで販売を強化するようなひとつのチャネルとして利用させていただくことも考えていきたいです。

――プラチナバンドについて、都市部のカバーで重点的に使っていると思うが、多くのキャリアの傾向を見ると、地方をカバーする意味合いが強いと感じる。シニアの使い勝手を高めるという意味で、プラチナバンドの地方での活用はどう考えているのか。

鈴木氏
 プラチナバンド関連するネットワークのカバレッジの問題になるかと思うのですが、こちらは再三申し上げているように、4Gと5Gの基地局建設を積極的にやっています。

 あとはKDDIさんとのローミング契約や、今回のプラチナバンドなど、いくつかの選択肢のベストミックスでカバレッジを強化するということを考えています。

 プラチナバンドもひとつ(の選択肢)ですし、KDDIさまとのローミングによってカバレッジを拡大することもありますし、5Gの基地局を積極的に建設していくといったようなことも視野に入れつつ、いわゆる最適解を常に探しながらやっていくかたちになります。

――シニア層のデータ使用量が(月)3GB以下という結果について、原因はどう考えているのか。

鈴木氏
 やはり通話が中心なんだろうなという風に思います。

 おそらく、ガラケーからスマホに変えたが、使い方はガラケー時代のままというユーザーさんが多いのかなと思います。

 おそらくかなり多くの方、9割以上の方がすでにスマホにされていますが、いろいろ話を聞いていると、「ガラケーが使いやすくて良かったけどしかたないからスマホに変えた」「サポートもなくなるし」みたいな声は結構お聞きします。

 積極的にスマホにするというよりは、ガラケーが使えなくなるからスマホにするという方が多くいらっしゃる。

 そういう方々は、スマホでもガラケーと同じように通話中心で使われているということが、(データ使用量が少なくなる)最大の理由かと思います。

 ですので私どもは、いわゆる消極的な理由でスマホを使われているシニアの方々に、スマホの機能を最大限に有効活用いただきたい。せっかくスマホを使っていただいていますので。

 エンタメやショッピング、あるいは健康など、アクティブに健康で長生きするような「最強デジタルシニア」になっていただくお手伝いをしたいと考えています。

中村氏
 若年層のデータ使用量が多いのは、YouTubeやTikTokといった動画コンテンツによるものです。

 ですので、シニアの方はメールやWeb検索といった利用になっていて、動画コンテンツを楽しむというところまでたどり着いていないのでは、というのが我々の分析結果です。