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「24年内の月次黒字化」目指す楽天モバイル、三木谷氏語る「最強家族プログラム」投入などの戦略は

 楽天グループは14日、2023年度通期および第4四半期の決算を発表した。決算説明には、楽天グループ代表取締役会長兼社長最高執行役員の三木谷浩史氏らが登壇した。

三木谷氏

 本稿では、楽天モバイルを含むモバイルセグメントの内容を主に紹介する。

 モバイルセグメントの2023年度の売上収益は3645億5600万円で、前年度比3.9%増となった。損失は3375億2400万円を計上したが、前年度(4792億5700万円の損失)より改善されている。

 個人向けと法人向けを合わせたMNOサービスの契約回線数は609万回線。このうち約10万回線強が、バックアップ用の回線(BCP)となっている。

 なお、「最強家族プログラム」を発表した2月13日、三木谷氏は「約620万ぐらいのMNOの契約数」と最新状況を明らかにしていた。

 三木谷氏は楽天モバイルの戦略をあらためて振り返り、「社会的な意義」「新技術や楽天エコシステムの利用による他社との差別化」「楽天シンフォニーによる技術輸出」の3つを挙げ、“一石三鳥の戦略”とアピールする。

 携帯ネットワークの構築で投資活動も積極的に実施してきた2020年~2022年に対し、2023年は「リーンな(無駄のない)経営を目指してダイエット活動を実施した」と三木谷氏。月次の運営コストを150億円以上削減し、黒字化などを図っていく。2024年12月までに、月次EBITDA黒字化を目指すという。

 具体的な目標としては、契約回線数は800万件~1000万件、ARPU(ユーザーひとりあたり平均収益)は2500円~3000円とする。三木谷氏は「コストを現在のレベルに抑えていくということが極めて重要」と語る。

 料金プランの改定によって一時は落ち込んだ契約回線数も、再び伸長している。三木谷氏は解約数にも触れ、「契約後に短期で解約するいわゆる“ポイントハンター”を除いたら、調整後の解約率は1.1%。最高で7%以上だったので、そこから比べると劇的に改善した」と自信を見せる。

 通信品質の改善も解約率低下に大きく寄与しているといい、2024年は「さらにつながる楽天モバイル」を目指す。

 三木谷氏は通信品質のさらなる改善やキャンペーン施策の強化などを挙げ、今後への意気込みを見せた。

 同氏はNTT法の見直しについても言及し、「NTT法はいわば通信業界の憲法。これを廃止するというのは極めて危険な話であり、NTTの先祖返りにつながる。せっかく下がった携帯電話の料金も上がり、国民の負担増になりかねないので、慎重な議論が必要」と警鐘を鳴らした。

質疑応答

――モバイルのARPUについて、初めて四半期ベースで前四半期を下回った。2500円~3000円まで戻すために、どういうロードマップを描いているのか。

三木谷氏
 法人携帯が入った影響がかなり大きいです。それ以外に関しては順調に成長しています。

 (ARPUを)2500円以上に持っていこうとすると、さらに追加的なサービスを用意するという感じで、手の内はあまり言えませんが、いくつかの施策は必要かなと思っています。

 特に広告収入が「Rakuten Link」のなかで増えていくと思っておりますし、先般はiPhoneもRCSにオープンにしていくということですので、そこでの収入増には期待しています。

 将来的にはひとりあたりの広告収入を月300円ぐらいに上げていければと思っています。

――「最強家族プログラム」について、(回線の)100円引きはARPUにはマイナスになると思うが。

三木谷氏
 私も積極的に「楽天モバイルに入ってください」と営業していますが、そのときに一番大きな声として、「うちは他社さんの家族プランに入っているんだよね」という声がありまして。「じゃあ家族ごと引っ越しましょう」という話をさせていただいています。

 やっぱり若年層の方が、データの利用量が多いんだと思います。InstagramやTikTokをチェックするし、ゲームもやるということで、そうした若年層をさらに取り込めば、オプションサービスの利用も含めて必ずしもARPUダウンにはつながらないかなと思っています。

 (最強家族プログラムの)割引自体は100円ですが、4人家族が紹介プログラムを有効に使うと、最初の方が1万3000ポイントもらえて、そのあとに2万ポイント、2万ポイント、2万ポイントと続きます。(最大)7万3000ポイント、家族で獲得できるわけです。

 そういう意味では有意義なことですし、実際に使っていただきますと、家族のなかで(データ)無制限で使っている人の利用料が(他社と比べて)安くなり、効果が大きいかなと思っています。

――今は解約率が低下していると思うが、「最強家族プログラム」について、解約率を低くする効果などを期待している面はあるのか。

河野氏(楽天グループ 副社長執行役員CMO 河野奈保氏)
 楽天モバイルのなかで最もユーザーの獲得経路になっているのが、紹介キャンペーンです。紹介キャンペーンで(紹介者が)累計25万人以上ということで、このうち49%が家族を紹介していました。

 今回「最強家族プログラム」を出すことで、それがより加速していくと思っています。

河野氏

――ARPUの目標値が3000円とのことだが、それを達成するためにはオプションサービスが少ない気がする。

河野氏
 オプションについても、いくつか検討しているものがあります。他社のプログラムもそうですが、楽天らしい新たなオプションを今後出していければと思っています。

三木谷氏
 広告収益は相当大きくできるのではということで、Rakuten Link内でのプロモーションを、AIを使って実施していくのが結構でかいかなと思っています。

――モバイルのコスト削減に関して、2023年12月時点で月次のコスト削減が160億円ということだった。今後のコスト削減のペースとして、削減率を維持していくのか。

百野氏(楽天グループ 代表取締役副社長執行役員 百野研太郎氏)
 150億円の削減はもう標準化されていますので、このレベルを維持すると同時に、さらなるコスト削減をやっていくということで検討を開始しています。

 (ユーザー)ひとり当たりのコストを含めて、12月のレベルを維持しつつ、今年は10%~15%くらい下げたいということで活動しています。

――新NISAの開始を受け、他社ではモバイルと金融を絡めたサービスを出している。楽天銀行や楽天証券を絡めたモバイルのサービスや料金プランは検討しているのか。

穂坂氏(楽天グループ 代表取締役副会長執行役員 穂坂雅之氏)
 具体的なものはまだありませんが、現在はNISAが楽天証券のほうで人気です。

 そういう意味では、モバイルも合わせた形式のプロダクトを考えていこうかなと思っていますので、ご期待ください。

穂坂氏

 また、(楽天)カードとモバイルのタイアップでポイントを3万ポイント還元する施策が、テレビCM含めて非常に良い結果が出ました。年間を通してモバイルを強くサポートしたいと思っています。

――KDDIがローソンに出資したが、受け止めは。

三木谷氏
 他社さんの戦略について、我々のほうからコメントする立場にはないかなと思っています。ローソンの件についてはコメントを差し控えさせていただきます。