ケータイ用語の基礎知識

第596回:Miracastとは

 Miracastは、Wi-Fi Directの技術を使い、HDMIクラスの動画送信を無線で実現する技術です。規格は、Wi-Fiの標準を定めている団体、Wi-Fi Allianceによって策定され、2012年9月に発表されました。

 Wi-Fi Directに準拠しているため、ルータなどは使用せず、対応機器同士1対1での無線LAN通信で動画を送受信します。

 このMiracastを使用することで、スマートフォンの画面に映っている画像をそのままテレビに映し出したり、逆にケーブルテレビのセットトップボックスからタブレットで番組をみたり、ノートPCの画面を対応プロジェクタに映し出す、などということが可能になります。

 Miracastでは、Wi-Fi Allianceで認証された機器であれば他メーカーの製品でも互換性が保たれるので、スマートフォンのメーカーと、映し出すテレビのメーカーが異なっていても問題ありません。

 これまで、無線LANを利用し映像を送受信する規格には、インテルが開発したWiDiや、他のベンダーが独自に開発したものなどいくつかありましたが、この「他メーカーの製品との接続性」はMiracastの大きなメリットのひとつであるといっていいでしょう。

 Miracastを支持するメーカーとして、ソニーモバイルコミュニケーションズ、ブロードコム、インテル、LG、Marvell、MediaTek、NVIDIA、Realtek、サムスン、テキサス・インスツルメンツの名前が挙がっています。

 ちなみに、インテルのCPU、Core i3/i5/i7搭載のノートパソコンなどでは、無線で外部ディスプレイと接続できるIntel WiDi規格が存在しますが、Intel WiDiはバージョン 3.5からMiracast認定となり、Miracst対応機器との接続が可能になっています。

Miracastを利用し無線でテレビに映像を出力する様子

 また、既に、「Wi-Fi CERTIFIED Miracast」として対応機器の認定も始まっています。

 スマートフォンでは、AndroidがOSバージョン4.2からMiracastに標準で対応しており、2013年1月現在、日本国内で販売されている端末ではソニーモバイル製の「Xperia AX SO-01E」が、また海外ではNexus 4、Sony Xperia T、Sony Xperia V、LG Optimus Gなどが公式にMiracastをサポートしています。

 なお、Android 4.2以降のMiracast対応端末において、携帯電話の画面をTVなどに映し出すには携帯電話側がWi-Fiへのスクリーンミラーリング機能を持っていなければならないため、Android 4.2にアップデートしても、Miracastに対応していない機種もあります。

 また、Miracastは、Wi-Fi Directの技術を利用しているため、スマートフォンからMiracast対応TVなどに接続すると、通常の無線LAN接続は無効化されます。このため、ブラウザの画面やYouTubeの動画などのインターネット上のコンテンツをMiracastでテレビに表示する場合、端末側では3GやLTEといった無線LANとは別の通信方式での接続が必要となることは、注意が必要でしょう。

 Miracastは、通信路はWi-Fi Direct、またコンテンツのコーデックには映像はH.264、音声はLPCM/AAC/AC3が使用され、5.1chのサラウンドオーディオにも対応しています。

 映像は一度、H.264によって圧縮されるため不可逆な劣化が生じてしまいますが、フルHD(1080p)の解像度で動画を伝送することができ、著作権保護技術としてHDCP2.0/2.1が使用されるため、著作権保護(DRM)のかかったコンテンツの再生にも対応しています。

 また、Miracstでは、接続の際にセキュリティモードとしてWPA2が自動的に使われますので、経路上で覗き見されたりといった懸念にも対策がなされています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)