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スマホに高速Wi-Fi、ブロードコムがIEEE802.11ac対応チップ

 シャープ製の「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」は、IEEE802.11nの後継にあたる5世代目の規格IEEE802.11acに対応している。このWi-Fiチップを提供しているのが、ブロードコムだ。同社は7日、台湾で開催されているイベント「COMPUTEX TAIPEI」に合わせ、国内でもWi-Fiチップの説明会を開催した。

ラフール・パテル氏
AQUOS PHONE ZETA SH-06E

 IEEE802.ac規格は、IEEE80211.n規格の後継となる5世代目のWi-Fi規格で、国内では3月からドラフト版が認可されている。5GHz帯に対応し、規格上は、帯域幅がこれまでの40MHz幅から160MHz幅に拡張し、256QAM変調への対応、通信を束ねて高速化するMIMOのサポートする。理論上の通信速度は最大で6.9Gbpsとなる。

 なお、ドラフト版に対応する各メーカーのルーターは、1Gbps程度の通信速度をうたっており、こうした製品と対応スマートフォンを接続すれば、より高速な通信が実現する。

 ブロードコムでは、AQUOS PHONE ZETA SH-06Eに「BCM4335」というWi-Fiチップを供給している。このほか、サムスン製の「GALAXY S4」やHTC製の「HTC One」もブローコムのWi-Fiチップを採用しているという。

 7日、同社は、エントリー市場向けの向けのWi-Fiコンボチップ「BCM4339」を発表した。スマートフォン向けの「BCM4339」のほか、タブレット端末やパソコン向けの「BCM43162」もアナウンスされ、2013年後半から量産出荷される予定。

 ブロードコムのモバイル&ワイヤレスグループのバイスプレジデントであるラフール・パテル氏は、調査資料を元に2012年から2017年にかけて、モバイルトラフィックが13倍に伸びるとし、その66%が動画で占められる話した。動画の利用は特に、スマートフォンやタブレット端末の利用者に顕著で、動画の利用者にとって5G Wi-Fi(IEEE802.11ac)が必要とした。

 パテル氏は「IEEE802.11acは、第4世代の11nよりもスループットが3倍速くなっている。チャンネル幅が拡がり、容量も増えて高速なスループットが体験できる。また、スループットが劇的に改善することで、ワイヤレス接続の状態が限定されるため、バッテリーが大幅に伸びる」と語った。

 だが、これまでIEEE802.11ac対応チップは高価だった。今回発表された「BCM4339」と「BCM43162」は、“マスマーケット向け”としており、さまざまなコンシューマー向けハードウェアでIEEE802.11acをサポートしやすい価格になるという。

 さまざまな機器がネットワークを介して相互に接続される環境を構築するためには、それを導入しやすい環境作りも必要だ。ブロードコムでは、WICED(ウィキッド、Wireless Internet Connectivity for Embedded Devices)という名称で、Wi-Fi向けとBliuetooth向けのエコシステムを作った。いずれも開発キット(SDK)が用意され、より導入しやすい環境を提供しているという。

 ブロードコムは7日、WICEDシリーズとして、Wi-Fiのシングルチップソリューション「BCM4390」、Bluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)対応ソリューション「BCM20732」を発表し、エコシステムへの仲間入りを促していく。

 最後に、ブロードコムのジェフ・ベアー氏(ワイヤレスコネクティビティコンボ エンベデッド ワイヤレス マーケティングディレクター)は、「ネットワーク技術は相互運用性(インターオペラビリティ)が大きな要素になる。今持っている製品と繋がるかどうか、が消費者にとってもOEM先にとっても重要だ。我々はインターオペラビリティを確保する。それを確約していきたい。ブロードコムがベストな選択になるよう提供する」とし話した。

ジェフ・ベアー氏

津田 啓夢