石川温の「スマホ業界 Watch」

「razr 50/50 Ultra」発表、モトローラ・モビリティ・ジャパン仲田社長に聞く日本発売への意気込み

 モトローラが折りたたみスマートフォンの新製品「motorola razr 50 ultra」と「「motorola razr 50」」をニューヨークで披露した。昨年同様、日本での発売も予定している。

 「motorola razr 50 ultra」はSnapdragon 8s Gen 3を搭載。一方、「motorola razr 50」はMediaTek Dimensity 7300Xを採用することで価格を抑えた。外部ディスプレイが大型化され、より使い勝手が増した感がある。グーグルのAI「Gemini」に対応するだけでなく、モトローラによる自社AI「moto ai」にも使える予定だ。

 ニューヨークに来ていたモトローラ・モビリティ・ジャパンの仲田正一社長は「いままでのrazrも良かったが、今回のモデルはとても良い仕上がりになっており、さらに磨きがかかったのではないか。ヒンジ部分も素晴らしい。日本での発売を楽しみにしている」と胸を張った。

 昨年、日本で発売した 「razr 40 ultra」はFeliCa非対応であったが、その後、発売となった「razr 40s/40」では、FeliCaに対応し、モバイルSuicaやPASMO、楽天Edy、nanaco、WAON、iD、QUICPayといった電子マネーサービスが利用できた。

 「razr 40 ultra」は発売タイミングをできるだけ早めるためにFeliCaの搭載を見送ったようだったが、今年、日本で発売となるrazr 50 ultra、50については「必須だと思っている」(仲田社長)とのことで、FeliCa搭載を期待して良さそうだ。

 もうひとつ、昨年のモデルではIP52として雨の影響を受けない程度の防水防塵性能であったが、今回はIPX8として防水性能が向上。ディスプレイが水に濡れてもタッチ操作がしっかり反応する。

 仲田社長は「防水性能の強化は我々、日本法人からずっとリクエストを出してきた。この努力により、防水性能の強化はグローバルでも新たな価値として認められるようになってきた」と語った。

カラーバリエーション、フォルダブルで一新狙う

 日本市場においてモトローラと言えば、昔からケータイを使っている年齢層が高めのユーザーであれば、超薄型の折りたたみフィーチャーフォンとしてのRAZR、さらに日本でもNTTドコモで発売された「M702iS」が印象的かも知れない。

 最近ではオープンマーケット向けにコストパフォーマンスのいいスマートフォンで存在感を出しているものの、お世辞にも知名度が高いメーカーとは言いがたい。

 仲田社長は「これまで、モトローラといえば、端末の色は黒とかシルバーで、割と男性、40〜50代に受け入れられてきた。しかし、これからは、もっと若い人にもモトローラの良さを知ってもらいたい。新しい色、新しいデザインなど、いままでにないような新しい感覚、新しいモトローラを認知してもらいたい」と語る。

 実際、モトローラはグローバルでシェアを伸ばしているが、海外市場で見てみると若い世代にターゲットを絞ったマーケティング活動をしている。しかし、日本では「モトローラ=若者」というイメージからはほど遠い印象だ。

 ただ、仲田社長としても「これまでスマートフォンというと、ストレートなかたちが常識だった。しかし、我々が二つ折りという新しい価値を提案し、若い人に今までと違うもの、折りたたみという新たな実用性があるものだということを理解してもらいたい」とZ世代へのリーチを考えているようだ。

 ただ、縦型の折りたたみスマートフォンは日本市場においては、サムスン電子が「Galaxy Flip」シリーズを長年、手がけてきたが、端末価格が高めということで、普及させるのに苦労してきた。

 そんななか、今年、ZTEがnubiaブランドで7万9800円、ワイモバイルが同等製品を「Libero Flip」として3万9960円で販売。折りたたみスマートフォンで価格破壊を起こしたが、縦型の折りたたみスマートフォンが爆発的に普及した感じはしない。

 縦型の折りたたみスマートフォンでサムスン電子やZTEが苦戦する中、モトローラはどういったポジションで攻めていくのか。

仲田社長

 仲田社長は「スマートフォンは高くなりすぎた。20まん円を超えるようになってきた。スマートフォンに価値を感じ、アフォーダブル(手ごろ)だというところを狙っていきたい。二つ折りでコンパクト、開くと大画面で使える、外側のディスプレイの価値をご理解いただけるよう訴求したい」と意気込む。

 モトローラはこれまでオープンマーケットが中心であったが、「razr 40s」ではソフトバンクで扱われるなどキャリアにも納入できるようになった。

 今後、ソフトバンクだけでなく、さらなる取り扱いキャリアの拡大が気になるところだが、仲田社長は「色んなルートで製品を届けていきたい。キャリアを通じてもらうことで、多くの人に手に取ってもらえるようになる。さらに法人需要も取り込むことで幅広い選択肢を提供していきたい」と期待を込めた。

 3キャリアからすれば、iPhoneとPixelという二大主力商品があるなかで、それ以外のAndroidはどのメーカーから調達すべきかは、かなり悩ましい問題になりつつある。
 総務省の割引規制により、高額な製品は調達しづらい。日本メーカーだからといって、ハイエンドが黙って売れる時代は終わった。日本メーカーのなかには、フラッグシップであっても、ハイエンドチップの採用を見送るところも出てきたくらいだ。

 また、キャリアの中にはどんなに勢いがあっても中国メーカーというだけで敬遠するところもあったりする。

 モトローラとして、キャリアから求められているところはどんなところだと仲田社長は自己分析しているのか。

「我々は、いままでにない新しい価値を提供できているのではないか。二つ折りでありながら、手に届きやすい価格設定、外側のディスプレイによる新しい使い方提案。まさに競合他社にはないチャレンジャーとしての新たな価値を提供していると自負している。そこを是非認めて欲しい」(仲田社長)という。

 実は仲田社長は昨年末に社長に就任したばかりで、元々はNTTドコモ出身で、様々な通信事業の立ち上げやスマートフォン市場参入をリードした実績、さらには複数地域での海外赴任経験を持つ。

 社長に就任して半年が経過するが、日本のモトローラをどのように見ているのか。

「可能性はあると感じている。モトローラは元々は通信の会社としてやってきた。デザイン力、新しい技術開発力は強いものを持っている。さらに親会社であるレノボによる調達力、製造力は大きく、総合的な競争力を秘めているのではないか」(仲田社長)という。

 では、今回のrazrをきっかけに、日本のモトローラをどのようにしていくつもりなのか。

仲田社長
「razrは重要な商品で、日本においても重要な位置づけになる。日本での正式発表後は大規模なプロモーションを考えており、これまでとは全く違ったモトローラのイメージになるだろう。

 特に最近はオープンマーケットで3位になったことに大きな手応えを感じている。日本でモトローラが受け入れて入れられている土壌がある。今後、さらにrazrで加速していく。

スマホが面白くなくなってきたと言われて久しいが、モトローラが日本のスマートフォンを面白くしていきたい」

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。