法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)

KDDIは子会社で不適切会計、ドコモと楽天は不調 先行きの不安なキャリア決算を振り返る

 通信業界を中心に活躍するライター4人と編集長の関口による「スマホ会議(仮)」。今回は通信キャリア各社の決算について話し合っていきます。

KDDIは決算会見が開催できない事態へ

佐藤
 キャリア4社が決算会見を開催しました。今回はいろいろと話すことがありそうですね。

佐藤

石川氏
 これまで順調だったキャリアも含め、みんなズッコケたというか、バタバタと転がっているような状況だった。

石川氏

石野氏
 各社がズッコケるような特大ニュースを持ってきた。一番はやっぱりKDDIで、会見としては決算ではなくなって、提示された数字は業績の参考値になってしまいました。

石野氏

法林氏
 粉飾はまずいよね。1月に発表されたタイミングでは、金額は出てなかったよね?

法林氏

石野氏
 出てないですね。

法林氏
 今回は具体的な数字が出て、大騒ぎになったという流れ。

石野氏
 1月時点では、ビッグローブがやらかしたんだな程度にしか思っていなかったんですけどね。

法林氏
 我々としては、決算会場に行ってから「今回は決算会見じゃない」と言われて驚いた。

石野氏
 蓋を開けてみたら、かなりまずい額になっていた。

石川氏
 7、8年で合計2460億円なので、平均すると年間300億円くらい。KDDIの規模感からすると「結構持っていかれているな」くらいの心象だったのが、ビッグローブの売り上げを確認したら、年間1500億円だった。1500億円のうち300億円を、たった2人で作っていて、それが不正だったことになる。

石野氏
 しびれる金額ですよ。

法林氏
 そもそも、ビッグローブやKDDIは「広告が本業ではない」と書いている媒体があるけど、長年追っている身からすると、広告も本業と言えるくらい頑張ってる。

石野氏
 ビッグローブと並んで架空取引を行っていたとされるジー・プランは、もともと広告の会社ですよね。

石川氏
 今回の架空取引は、アドネットワーク関連と言われているので、人を介さずに売り上げが立つようになっていたんだと思う。

 あと、2017年にジー・プランが広告事業を開始したとあるけど、2017年はKDDIがビッグローブを買ったタイミングでもある。ここでなにかあったのかなと思ってしまいます。

石野氏
 グループファイナンスで、子会社は親会社から資金調達をできる仕組みがあるので、架空計上のために還流させる元手ができたと考えられたのかもしれません。

法林氏
 動かすための原資ができたと。

石野氏
 そうですね。ぐるぐるお金を回していって、手数料を抜いていくために、まずは原資が必要になります。

法林氏
 この話を広告関連の人に聞いてみたら、「いまだに還流での不正取引があるのか。いつの時代ですか」と笑われたくらい、古典的な手法らしい。

石野氏
 古典的ではありますけど、正当な取引の証拠を出しているので、そこだけ見ていると気づきにくい。

法林氏
 KDDIの松田社長は、金額が大きいからチェックしてみたら見つかったとしている。発見されるパターンとしては王道だけど、チェックしたら見つかるような不正をしている人が、いまだにいるということに、驚いている人もいる。

関口
 帳票があるから、なかなか見つけられなかったという話ですね。

石野氏
 そうですね。発注した証拠が残っているのに加えて、Web広告という一過性のものなので、不正の証拠が残りにくかったのかもしれません。

石川氏
 テレビCMならともかく、Web広告だと見つけられないよね。

石野氏
 自分のところにその広告が出なくても、「広告はパーソナライズ化されている」と言われてしまうと、それまでですからね。

石川氏
 会見としては、我々の空気を読む力が求められましたね(笑)。

関口
 我慢しましたね。

石川氏
 質問したいんだけど、まずは不適切会計の件からだろうとおとなしくしていて、誰かが流れを変えようと手を上げるけど、すぐに戻ってしまって。いつ質問できるかなと思っていました。

石野氏
 佐藤君も流れを変えようとしていたもんね。

佐藤
 そろそろ、もういいかなと思って(笑)。かなり長くなってたので、みんなで帰ろうよという思いでした。

石野氏
 架空計上に関しては、どこまで責任をさかのぼるのかなとも思います。ビッグローブを買収した時となると、前々社長の田中さん時代ですからね。

法林氏
 スルーしていたというか、見つけられなかったという形。ただ、子会社を含めた帳簿を、役員全員が目を通しているわけではない。そのために会計担当がいるからね。

関口
 1月14日付けで最初に粉飾が公表されていますが、そもそも特別調査委員会が設置されているということは、その時点で一大事であることがうかがえます。

石野氏
 ここまで重大だとは思っていませんでしたけどね。一応報じられてもいましたが、株価にもそこまで影響は出ていませんでした。

石川氏
 ただ、KDDIが会見をやったタイミングは、広報部的にはベストだった。2月6日金曜日の夕方で、次の日曜日が衆議院選挙だったし、同じタイミングでトヨタの社長が交代したので、報道は従来よりも少なかった。

石野氏
 あと、2460億円という数字は、あくまですべての取引が不正だった場合の最大値です。

法林氏
 全部が不正かどうかはわからない。

石野氏
 そうです。かつ、累積の数字でもあります。KDDIの何兆円という売り上げと比べると大きくないので、株価も大暴落はしなかった。ビッグローブから見るとめちゃくちゃ大きいですけどね。

石川氏
 おかしいよね。年間1500億円の売り上げがある会社で、300億円を2人が稼いでいたら、もうその人が社長でいいじゃんって話になる。

石野氏
 さすがに見逃してはいけないくらい不自然ですよね。逆に、松田社長のタイミングで発見できたという見方もできます。

関口
 1月14日に発表をしたということは、遅くとも2025年末ごろには社内で気づいていて、2月6日の決算までに金額を絞り込む作業が行われたけど、絞り込めなかったから最大値を出したと考えられます。手がかりがなさすぎるのか、調べる件数が多すぎるのか。

石野氏
 これは刑事事件になりそうですね。

法林氏
 絶対なる。

石川氏
 ならないと、ホリエモンが黙ってない(笑)。

石野氏
 それもそうですし、2人でやって、流出した資金をどう使っていたのかという話になります。

法林氏
 ジー・プランの2人が、いつから所属しているのかも大事だよね。

石野氏
 そうですね。そのために入社したのではという疑いすらあります。かなり根が深そう。

関口
 それに、金額がほどほどだったら、永遠にばれていない可能性もありますよね。

法林氏
 クレジットカードの詐欺と同じで、毎月1000円くらいだったらバレないけど、一気に50万円持っていかれたからバレたみたいな形。

石川氏
 最初は少額だけど、手数料を抜いていくからどんどん大きくなっていったんだよね。

石野氏
 売り上げを還流させているので、回数を重ねるたびに手数料も上がっていきます。

法林氏
 それなのに、Gポイント(ジー・プランが運営するポイントサービス)のページではクレジットカードを作れとか、山のように通常の案内がある。会社としてしっかりとコメントしないとだめでしょ。

関口
 不適切会計以外では、KDDIの決算についてコメントはありますか?

石川氏
 架空取引がなければ、いい決算の内容でした。値上げ効果でARPUが上がっているし、端末購入プログラムもコントロールできているとコメントしています。そのわりには、あとから返却時に2万2000円がかかるプログラムを発表していて、これからコントロールするのかよって思いましたが。

石野氏
 まあ2万2000円は、コントロールに効くというよりは、新しい2年縛りという感じですよね。同じキャリアで機種変更をすれば2万2000円の支払いは免除されるので、導入したからといって、ドコモも赤字がなくなるわけではありません。

ドコモのネットワーク整備にはまだ疑問が残る

石川氏
 ドコモ、ソフトバンクの話に繋がるけど、KDDIとソフトバンクが契約者数の純増を追わなくなったのは面白いところ。決算の順番で言うとKDDIが先でしたが、今期は2万人くらいしか増えてない。それくらいでもいいのかという驚きがありました。

法林氏
 どうしたら純増が増えるのか、楽天の三木谷会長に聞いたほうがいいくらいのスローペースだね。

石川氏
 各社の現状が出ていて、ドコモはネットワーク品質が悪いのでユーザーが離れている。その穴を埋めるために一生懸命販促をしていて、結果どんどん赤字が膨らんでいる。一方で楽天モバイルは1000万契約を突破しなければならなかったので販促を力に入れている。

石野氏
 ネットワークが安定していて、ユーザーが普通に入ってくるKDDIとソフトバンク、販促に力を入れるドコモと楽天モバイルという形で、はっきり分かれましたね。

石川氏
 ドコモは、トータルでは純増だけど、スマートフォン純増数がマイナス6000とか。

法林氏
 トータルだと純増になっているところはびっくり。なにで増やしているんだろう。現状の契約者数を見ると、ドコモが9000万、KDDIおよび沖縄セルラーが7000万、ソフトバンクが5600万、楽天モバイルが930万。割合を見ると、ドコモは半分を切っている。

石川氏
 だからこそ、NTTの島田社長は35%を死守と言っています。

関口
 だた、今回の決算で島田社長は、35%はあくまでたとえと言っていましたね。

法林氏
 契約者の割合もそうだし、端末購入プログラムの見直しもそうだけど、なんでこのタイミングなのかなと思ったら、MNPが始まってちょうど20年だった。当時はドコモのシェア率が6割強で、減ったとはいえまだ4割以上が使っていることを考えると、相変わらずドコモユーザーのロイヤリティは高いなと驚かされる。

石野氏
 とはいえ相当減りましたけどね。

石川氏
 減らすためにMNPが生まれているからね。ドコモとしては、今年基地局をたくさん作って、他社に追いつくと言っていますが、ソフトバンクの宮川社長は「数だけじゃない」とコメントしていますし、基地局数が追いつけばいいという問題ではありません。制御とか、パラメーターの問題もあるので、そういうところまで踏み込めるかの勝負ですね。

石野氏
 だからこそ、そもそも基地局数がいま少ないのがダメなんですけどね。

法林氏
 スタート地点で負けているからね。No.1キャリアなのに、基地局が少なくていいわけがない。

石野氏
 ドコモはもともと2.5GHz帯をやっていなかったので、保有している周波数帯が、ユーザーの数に対して少ないんですよね。

石川氏
 一方で、以前はソフトバンクユーザーのデータ使用量が多くて、次にKDDI、ドコモユーザーは少ないとされたけど、最近はドコモユーザーもどんどん使うようになって逼迫している。

法林氏
 JTOWERの鉄塔を売ったという話があったけど、じゃあそのお金を使って基地局を建てるという話があってもよかったはずなのに、そうはならなかった。

石川氏
 前社長の井伊さんのインタビューでは、これからはエリアで競争する時代ではないと話していましたからね。

石野氏
 と言いつつ、ahamoでネットワークをたくさん使う若者を集めたのも、井伊さんのころでしたね。

法林氏
 裏を返すと、ahamoがなかったらもっと状況は悪かった。この前、知り合いの子供で高校生の子たちが海外に卒業旅行をするとき、みんなahamoにして行くんだけど、日本に帰ってきたら繋がらないからやめると話していたらしい。高校生くらいの感覚だと、MNPするのは当たり前で、キャリアがどうとか、dポイントがどうとかは関係ないらしいね。

佐藤
 クレジットカードを持っているわけではないでしょうから、ポイント経済圏みたいなのはあまり関係ないですよね。

法林氏
 そう。だからそこにロイヤリティはないけど、それでもahamoがなかったらドコモは相当やばかったね。

ドコモSMTBネット銀行はAIに期待大

法林氏
 ドコモで言えば、ドコモショップでマネックス証券の口座開設ができるようになったね。

石川氏
 ドコモの人に話を聞いた限りでは、結構好調らしいです。NISAを始めようと思っても、証券会社に行くのはハードルが高いですから。

法林氏
 そもそも証券会社はネット証券が中心で、そもそも窓口がないからね。最近は、ポイントから入るライトなユーザーが証券に増えているらしいので、いい取り組みだと思う。あとは証券外務員資格を取得する店員さんが増えてくれればいいね。

石野氏
 最近は銀行も支店がどんどん減っているので、ドコモショップにATMがあると便利だなと思いますね。

法林氏
 それはauショップ、ソフトバンクショップにも言えることだけどね。全店舗に置くのは難しいだろうけどね。

佐藤
 キャリアショップにATMと聞いて、郵便局に楽天モバイルのブースがあったことを思い出してしまいました。あれは立ち位置が逆ですけど。

法林氏
 あったね。

石野氏
 郵便局にスマートフォンを買いに来る人はいないけど、キャリアショップで金融のことをやってもらいたいというニーズはありそう。

石川氏
 手続きに時間がかかるので、待っている間に話を聞いてもいいかなと思う人は多いと思う。ドコモはやっぱりショップが強いので、そこで証券をやったり、相続の話をするという流れはありだし、ドコモユーザーはお金を持っている人が多い。

関口
 ショップ対応から、ドコモ銀行の開設まで動いてくれますかね。

法林氏
 銀行を変えるのは相当ハードルが高いけど、若い世代は抱えているものが少ない分、難易度が下がるから、可能性はあるよね。

石川氏
 あと、この前NEOBANK aiを触らせてもらったんですけど、すごくよくできていましたよ。

石野氏
 あれはめちゃくちゃよかったですね。あいまいな指示でも応えてくれるのがすごくいい。

石川氏
 銀行アプリは階層がどんどん深くなっていますが、NEOBANK aiならストレートに操作ができるし、おかげでUIはどんどんシンプルになっていく。最終的には、グーグルの検索バーみたいに、窓だけになるかもしれないくらい。住信SBIネット銀行はすごい面白いですし、ドコモがそれをつぶさないで欲しいなと思いました。

石野氏
 現時点で完成度は高かったですね。個人的には、「先月と同じ金額を振り込んでおいて」といった指示ができるようになってほしいですが、現状の完成度としてはかなり高いです。

 ただ、話していて思ったのは、生成AIなので、動かすのにコストがかかる。どれくらいのコストになるのかを見極めながら拡大していくという話だったので、バンバン使う人がいたら、それだけコストがかかるんだろうなという心配はあります。

佐藤
 とはいえ、銀行アプリのAIをそこまでガンガン使うことはないんじゃないですか?

石川氏
 そうだね。画像を生成するわけじゃないから。

石野氏
 でもグラフは作っていますよ。みんながグラフを作り出したら、コストになるかも。

法林氏
 逆に言えば、そこは機能でコントロールできるはず。全ユーザーがフル稼働させると、リアルなトラフィックが多すぎる。ブラウザとかアプリを開いて、メニューから操作をするのと、プロンプトを入力してAIに作業をさせるので、どれくらいトラフィックに差があるのかが見えないので、それ次第かな。

石川氏
 あと、レノボのイベントで聞いた話だと、AIはこれから推論になっていて、オンプレで動かせる時代になるとのこと。そうなれば、どれだけ使ってもコストはあまり変わらなくなると思います。

関口
 NEOBANK aiは顧客データを学習しているわけではなくて、フロントエンドだけというお話でしたね。

石野氏
 これを見ると、auじぶん銀行は負けているなと思ってしまいました。キャリアがやっている銀行なのに。

法林氏
 まあそれは世代の差だよ。両方ともネット銀行ではあるけど、世代感が違うのと、auじぶん銀行は出自が三菱UFJ銀行(当時は三菱東京UFJ銀行)なので、やっぱりちょっと固い。ドコモSMTBネット銀行は、SBIの流れがしっかりと入っていて、アイデアが豊富な印象を受ける。

石野氏
 あと、セキュリティの考え方もきっちりと整理されています。振り込みのタイミングではワンタイムパスワードの認証とかがありません。これはアプリを開いてログインするタイミングで本人認証をしているので、振り込み操作も本人が行っていると見なして、追加での認証はいらないという考えです。セキュリティと利便性の両方を保つ考え方ができています。

関口
 dアカウントとは全然違いますね(笑)。

石野氏
 そうなんですよ。この人たちを全員ドコモに派遣したほうがいい(笑)。

石川氏
 作っているチームは優秀だよね。UIのデザイナーがAIの勉強をしてやっているので、デザインありきで作られている。

石野氏
 ドコモをフォローすると、パスキー自体はドコモが仕様策定に大貢献しています。ドコモに技術がないというよりは、ドコモの実装の仕方があまりよくない。

石川氏
 dアカウントが大きすぎるので、なかなか動かせなくて、先送りになってしまっている。

純増数を追わなくなったソフトバンクはいきなり10万減

法林氏
 ソフトバンクは純増がいきなり10万減。けっこう大きいよね。

石野氏
 純増数ではなく、利益を追うというのはわかりますが、それにしてもいきなり減りましたね。

石川氏
 ただ、ソフトバンク社内として、純増を目指すプレッシャーからは解放されると思うので、これから思い切った値上げができるし、KDDIのように既存プランの値上げもできる。

石野氏
 それにしても、四半期で10万ですからね。この10万がそのまま楽天モバイルにいって、1000万契約を突破したのかも。

石川氏
 宮川社長もおっしゃっていましたが、低ARPUユーザーを集めてもどうしようもないという認識ですよね。

法林氏
 低ARPUというか、低ロイヤリティだよね。ドコモの場合は、低ARPUというか、そこまで通信を使うわけではないけど、ロイヤリティは高いユーザーが多かった。

石川氏
 ただ、最近ドコモminiのテレビCMが結構流れています。低ARPUユーザーをなぜいま集めているのかがわかりません。

石野氏
 それこそ、ソフトバンクが追わなくなった層を取りに行っている感じですよね。

石川氏
 数だけという感じ。

石野氏
 しかも、格安SIMと違ってドコモ品質と言っていますけど、その品質に課題がある。

石川氏
 料金が安いのも、条件込みだしね。

法林氏
 ただ、3キャリアは光回線、家族割引があれば安く使える。それはいいけど、プランの発表から10カ月くらい経って、いまさらこんなCMをやっているのはなぜなのか。予算が余ったとしか思えない。

石野氏
 春商戦ですからね。

石川氏
 ただ、CMキャラクターに加藤あいさんを20何年振りに起用したのは、マーケティングとして理解できる。親世代を取りたいんだろうなと。

楽天とYouTubeのタッグはどこまで効果が出るのか

関口
 楽天の決算についてはいかがですか。

石川氏
 単に数字を作りに来ただけというか、EBITDA黒字化をするしかなかったので、設備投資を抑えたりしている。2000億円の設備投資をすると言っているけど、楽天モバイルは年間4800億円くらいしか売り上げていないので、半分近くを使って大丈夫かなという心配もあります。

法林氏
 毎回話題になるけど、事業戦略として、安い、使い放題、この人は何百GB使ったという話をしていて、大丈夫かなと思ってしまうよね。

石野氏
 EBITDAって、いいところだけを出しているだけですよね。楽天全体で黒字、楽天モバイルもEBITDAは黒字と言っても、楽天モバイルのノンギャップ営業利益はまだまだ赤字なので、見せ方がうまいなと思いました。

石川氏
 まあ、EBITDAで出す手法は、昔ソフトバンクの孫さんもよくやっていたからね。

石野氏
 そうですね。設備投資がまだ重いタイミングではよくやる手法なので、あまりこれに一喜一憂しないほうがいいと思います。

法林氏
 評価の仕方として、今の楽天グループが置かれている状況と、モバイルがどうなのかという話は考えないといけない。グループ全体で見ても楽天証券が強い、楽天市場が強いと言われているけど、それを屋台骨としていていいのかという疑問もある。

 たとえば、Yahoo!ショッピングで買い物をしようとすると、AIでポイント還元がもっとも多い日を表示してくれる。ユーザーが使う上での進歩という意味では、楽天にはあまり感じられない。

石野氏
 ただ、ヤフーも思うところがある。期間限定ポイントと言いつつ、実態は用途限定ポイントだし、ソフトバンクグループという意味では、しれっと海外ローミングをやめていたりする。不利益な部分は告知しないあたりは、グループの体質なんだなと思ってしまいます。

石川氏
 楽天市場で言うと、YouTubeショッピングとの提携が発表されています。楽天はかなり体育会系で、ECコンサルタントがたくさんいて、店舗に営業をかけて売り上げていくという形で、人力でやっている。そこにYouTuber、クリエイターの魅力でレビューしていく組み合わせはいいと思った。

 去年はUberとも提携していて、モバイルで言えばU-NEXTとも提携している。従来の楽天は自前主義で、自社のサービスばっかりだったのが、ユーザーに近いサービスを提供する会社と提携し始めていて、楽天経済圏の拡大という意味では面白いと思います。あとはモバイルさえしっかりすれば、めちゃくちゃ強い会社になりますよね。

関口
 YouTubeショッピングについては、媒体をやっている身からすると、アフィリエイトの選定に困ります。メーカーが公式店を楽天市場に展開していればいいですけど、公式店がないところの場合、YouTuber、インフルエンサーがどれくらいしっかりと品を選んでくれるのかは気になります。拡張はすごいけど、運用は難しそう。

石川氏
 そこは、グーグルのAIが補填してくれればいいですね。

石野氏
 三木谷会長もすごく熱が入っていて、モバイルの話もこれくらい滑らかにしてほしいと思いましたね(笑)。ひとことくらい、「YouTubeを見るなら楽天モバイル」と言ってもよかったはずです。

法林氏
 動画とショッピングを結びつけるやり方は、中国でも流行っていて盛り上がっている。結びつきも含めて、間違っていない戦略だとは思うけど、石野くんが言う通り、モバイルの話を加えてもよかったよね。

石川氏
 あと、YouTubeがいつまで楽天独占でやってくれるかですね。いつかは広がっていくと思うので、どれだけアドバンテージを作れるか。

関口
 一方で、昨年始まったTikTok Shopはあまり調子がよくないという話も聞きます。

法林氏
 動画の中で何かを紹介しても、そこから何をどこから買うのかを選ぶのは、視聴者次第だしね。

石野氏
 中国のライブコマースは、日本のデパートで突然ライブ配信を始めて、その場で買い物代行をやっていたりするレベルです。日本ではなかなかそこまでできないと思うので、テイストの違いは生まれそうです。

法林氏
 買う側も含め、どうなっていくかな。

佐藤
 そもそも、TikTokを見ている世代の人が、動画を見ながら何かを買うかと言われると、そうではない気がするんですよね。

石野氏
 そうですね。お金に余裕があるわけでもないですし。

佐藤
 それもそうですし、若い世代は「案件」というものにすごく過敏で、買わされている、言わされているものを嫌う人が多いので、TikTok Shopみたいなやり方には合わなさそう。