iPhone駆け込み寺
iPhoneがUSB-Cになってどう変わる? 何に使える? どれだけ速い?
2023年9月29日 00:00
iPhone 15シリーズはiPhoneとしては初めて、USB-C(USB Type-C)ポートを採用する。このUSB-Cポートは、従来のLightningポートの代わりになるもので、充電やデータ通信、映像出力、周辺機器接続などに使う。
2012年のiPhone 5以来、10年以上にわたって使われてきたLightning端子が、ついに終わりを迎えようとしている。Lightning端子はまだiPhone以外のいくつかのアップル製品に採用されているが、順次、USB-CかMagSafeに切り替わっていくことだろう。
今回はiPhoneが新たに採用したUSB-Cポートでどのようなことができるのか、どんな性能なのかをチェックしてみた。
USB-Cのメリットは「普及していること」
USB-C採用の最大のメリットは、アップル独自規格であるLightningではなく、業界標準規格であるUSB-Cのケーブルや周辺機器を使えることだ。USB-CはノートパソコンやAndroidスマートフォン、そのほかさまざまな電力供給が必要なデバイスに使われているので、iPhoneユーザーでもUSB-Cの機器やケーブルを持っている人は少なくないだろう。持ち歩くケーブル、買うケーブルを減らすことができる。
逆に言うとLightning端子のケーブルや周辺機器は使えなくなる。かつてのDockコネクタのように過去の遺物となっていくだろう。
USB-Cの方がLightningよりあとに登場し、仕様も拡張され続けているため、通信速度や送電能力に優れている。しかし端子のサイズはLightningよりUSB-Cの方が若干大きい。そのためiPhone 15シリーズのProモデルは厚みが増した……というわけでもないようで、スタンダードモデルの厚みは変わっていない。
普段の充電にLightningケーブルを使っていた人は、ケーブルの買い換えが必要になる、が、iPhone 15シリーズのパッケージにも1本入ってるし、すでにほかの機器のためにUSB-Cケーブルを複数持っている人も少なくないだろう。こうしたUSB-Cケーブルを使い回せるのもメリットとなる。ただし安いケーブルや安いデバイスに付いてくるケーブルは、性能や品質も低いので注意しよう。
なお、用途が充電だけであれば、USB-Cケーブルを買い足すより、MagSafeスタンドやMagSafeバッテリーをオススメしたい。MagSafeはノールック片手で使いやすく、充電忘れも減らせる。普段使いにはこちらの方が便利だ。
Proモデルだけ最大10GbpsのUSB 3仕様
iPhone 15シリーズではスタンダードモデルが「USB 2(最大480Mbps)」、Proモデルが「USB 3(最大10Gbps)」と、USBの性能に差が付いている。ProモデルのA17 Proに入っているUSBコントローラーが高性能、ということによる差だ。
アップルは細かい表記を省いているが、Proモデルの「USB3」は「USB 3.2 Gen 2」(旧称USB 3.1 Gen 2)のことと思われる。アップルの情報公開は中途半端なことが多々あるが、USBのバージョン表記もたいがいわかりにくい。
USB-Cからはアダプターなどを介することで映像も出力できる。USB-C端子を持つヘッドマウントディスプレイやモバイルディスプレイなら、アダプターなしで直結もできる。あとは従来同様、CarPlayも使える。このあたりはProモデルとスタンダードモデルで差はない。
USBの速度が速いと、ストレージやネットワークアダプター、パソコンと接続したとき、大容量ファイルを転送するのに要する時間が短くなる。たとえば撮影した大容量動画をパソコンやストレージに転送するような作業が日常的にある仕事をする人にとっては、Proモデルのスペックは頼もしい。
しかしそういった作業をやったこともないというような人は、おそらく今後もないと思うので、あまり影響があるスペックでもない。普通の人にとってはUSB 2で困ることも少ないので、スタンダードモデルはムリせずUSB 3に対応させなかった、ということだろう。
ちなみに最近のスマホのストレージアクセス速度はというと、シーケンシャルの実効で10Gbpsを少し超えるくらいは出るので、USB 3.2 Gen2の最大10Gbpsというのは必要にして十分な速度とも言える。理論速度が出ることなんてめったにないけど。
USB-C採用で周辺機器が使いやすくなる……かもしれない
USB-C採用により、いろいろな周辺機器が使えるようになる……といっても、Lightningポートでもアダプターを使えば周辺機器を使えるので、できることはあまり変わらなかったりする。端子形状は違えど、通っている電気信号はUSBなので、iOSが対応していれば使えるし、非対応ならUSB-Cでも使えない。
更に言えば、Lightningを採用するiPhone用の周辺機器も少なくない。たとえばキーボードやストレージ、SDカードリーダー、マイク、テレビチューナー、アクションカメラなどにLightning採用製品がある。
現状のiPhoneの周辺機器では、Lightning接続の製品の方が選びやすいケースもある。たとえばiPhone用テレビチューナーは、現状ではLightning接続の製品しかない。いままでUSB-CのiPhoneが存在しなかったので当然だ。
一方、汎用のUSB機器にはフルサイズのUSB端子のものも多いので、そうなるとiPhone 15シリーズでもアダプターが必要だ。アダプターを使うなら、Lightningでも使い勝手に大差はない。
しかし最近は主にノートパソコン向けのUSB機器を中心にUSB-C採用の周辺機器が増えている。そうした汎用品がアダプターなしで使えるのは、USB-C採用の大きなメリットだ。汎用品は選択肢も多いし価格も安くなる。もちろんiPhone用に作られていないので、なんでも使えるわけではないが、意外と互換性がある。
たとえば筆者の手持ちのUSB-C多機能ハブは、iPhoneでも一通りの機能が使えた。HDMIを出力できるし、SDカードも読み取れる。これは数年前に買った製品なので、iPhone向けの製品ではないが、iPhoneでも使えている。
ちなみにデジカメの写真をiPhoneに取り込むなら、SDカードリーダー付きのアダプターも便利だが、ケーブル直結も手っ取り早い。製品更新サイクルの長いデジカメの世界だと、まだまだmicroUSBのデジカメも少なくないが、Lightning - microUSBのケーブルはほとんどない珍品なのに対し、USB-C - microUSBのケーブルはAmazonベーシックでも売っている。仕事でデジカメを使う人は、「さっさと滅びろmicroUSB」とつぶやきながら一本持っておくと良いかもしれない。
あと筆者が所有するサングラス型ディスプレイ「XREAL Air(旧Nreal Air)」は、ツルの先から直接USB-Cケーブルが伸びていて、ディスプレイ出力に対応するUSB-C機器で利用できるのだが、iPhone 15シリーズはNreal Airを直結して映像出力できた。けっこう便利だ。
ちなみにこのXREAL Air、けっこうバッテリーを消費する。測定してみると、5V-0.3Aくらいなので、USB 2.0の上限値(0.5A)に近いので、伝統的なUSB機器なら使えてしまいそうだ。Lightning+アダプターだと、機種によっては電力消費の大きいキーボードなどが使えないケースがあったと記憶しているので、それに比べると汎用性は向上している。あとはiOSがソフトウェア的に対応しているかどうかの問題だ。
現時点では販売されているUSB-C機器がiPhoneでも使えるかどうかは判別しづらい状態だが、今後はiPhone対応を謳うUSB-C製品が増えるだろう。そうなってくると、いろいろと便利になってくることも期待できる。
有線LANアダプターを試したら、けっこうな通信速度がでたよ!
ProモデルとスタンダードモデルでUSBの速度差がどのくらいかは、USB 3.2 Gen 2の10Gbpsという性能を使い切れる機器が少ないこともあり、ちゃんと測定するのは難しい。しかし、Proモデルとスタンダードモデルの差を見ることはできる。
今回は試しに2.5Gbps対応の有線LANアダプター(ADTEC製AUCL-V025G-U31)を使い、インターネットの通信速度を測定してみた(回線はドコモ光の10ギガ)。ちなみにこのアダプターは半年くらい前にMac用に買ったものであり、iPhone用とは謳われていないが、普通にiPhoneにつなぐと「USB 10/100/1G/2.5G LAN」として認識される。
iPhone 15 Proで測定してみると、ダウンロード2349Mbps、アップロード2340Mbpsと、アダプター性能の上限に近い数値が出た。これ以上の性能を見るには、より高性能なアダプターが必要になりそうだが、USB接続で10Gbps対応の有線LANアダプターってたぶん存在しないし、もはやサーバー側が対応してない気もする。
同じアダプターをiPhone 15で使ったところ、アップロード336Mbps、ダウンロード273Mbpsとなった。ここにUSBの性能差が出た形だ。ちなみにWi-Fi 6環境ではダウンロード583Mbps、アップロード186Mbpsだったので、ダウンロードに関してはWi-Fiの方がマシとなる。
同じアダプターをMacで使った場合、ダウンロード2370Mbps、アップロード2178Mbpsだった。iPhone 15 Proと同じで、この測定方法の限界値みたいなものだろう。
一方、iPad mini(第6世代)はアップロード1957Mbps、ダウンロード1686Mbpsとなった。iPad miniはUSB 3.1 Gen 1(最大5Gbps)なので(こちらはアップルが細かいバージョンを表記している)、iPhone 15 Proより速度が低い。しかしそれでもネット回線としては十分な速度だ。
ついでにPixel 7aで同じアダプターを使うと、ダウンロード440Mbps、アップロード925Mbpsと、ちょっと低めの結果となった。Pixel 7aは「USB Type-C 3.2 Gen 2」となっているので、iPhone 15 Pro同様に最大10Gbpsに対応し、本来ならもっと速度が出るハズだ。
Pixel 7aは筆者宅のWi-Fi 6環境でもダウンロード61Mbps、アップロード37.9Mbpsと冴えないので、アプリかOS、ストレージあたりがボトルネックになっているのかもしれない。まぁそもそもPixel 7aはハイエンドではないスタンダードモデルなので、iPhoneのProモデルと比較するべきではないかもしれないのだけど。
余談だが、世の中にはLightning接続の有線LANアダプターという珍品も存在する。しかし筆者が所有しているものは100Mbpsまでの製品なので、iPhone 14 Proで使うとダウンロード93.7Mbps、アップロード92.7Mbpsと、かなりしょぼい数値となる。Wi-Fiの方が速いので、速度目当てというよりWi-Fiが使えない特殊な状況向けのアイテムでもある。