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AIは次の成長へのカギ、KDDI松田社長が語る成長戦略
2025年10月28日 16:41
KDDIは28日、同社の法人向けイベント「KDDI SUMMIT 2025」を開催した。基調講演には、代表取締役社長の松田浩路氏と無印良品を展開する良品計画の堂前宣夫氏が登壇し、AIへの投資や地域社会との向きあい方などについて話した。
「循環」の力が課題解決のカギ
災害や少子高齢化など、多くの社会課題を抱える日本。
社会課題の先進国とも言えるが、松田氏は、社会課題は地方が先行しているとしつつも「いずれは都市にも来る問題。KDDIは、その街に安心して住み続けたいという願いに寄り添う」と語る。
同社では、これまでも社会課題の解決のための取り組みを重ねて来た。地域課題を解決する3つの力を「テクノロジー」と「リアル」「循環」と表現する。
「テクノロジー」と「リアル」の力は、その中心を支える。特に本業の通信技術は、その代表例で、全国津々浦々を結ぶ基地局の建設力は、リアルな世界につながる力に数えられる。
さらにauショップや近年ではローソンの店舗も「リアル」のひとつに数えられる。
一方で、課題解決に向けた取り組みが局所的なものに終わってしまうという課題も浮き彫りになっていたという。「持続的なものにしていくには『循環』の力が必要」と松田氏は語る。
局所的なものを横展開していくことと、社会的に意義があることをしっかりと事業につなげる2つに重点を置く。
循環に成功しつつあるのが、ドローン事業。橋梁や鉄塔など、社会インフラの点検に活躍しており、石川県ではすでにドローンポートの常設も始まっている。
さらに、衛星通信も「循環」させる必要がある点のひとつだ。
平時には音楽フェスなど一過性の混雑が見込まれるエリアでの対策に活用される。その一方で、災害時には地上基地局が損害を受けた場合のバックアップを担う。
「平時」と「災害」という二面での役割を持たせることで循環の形につなげている。
未来への投資は「AI」
ドローンや衛星通信のビジネスは、すべて過去の投資の賜物だという松田氏。それを踏まえて、次の世代を作るための投資は「AI」だと話す。
同社では、大阪府のシャープ堺工場跡を取得。大規模なデータセンターとして運用する計画を従前から明らかにしており、その稼働日が2026年1月に決まったことが、KDDI SUMMITの場で発表された。
同データセンターでは最先端のGPUを用いた設備が設置され、これまでのデータセンター事業で培った水冷技術や通信技術で、データを国内に保管したい企業のニーズに応える。
このほか、Google Cloudと提携を結び、2026年春にも参画する企業のコンテンツにソースを限定した信頼性の高いAI情報サービスの提供を始める予定という。
松田氏は「AIの取り組みが次の循環にもつながる。テクノロジー、リアル、循環の3つの力で地域にも貢献できるような価値を生み出していきたい」と語る。
良品計画の地域活性化
地域課題の解決で長く取り組みを続けている良品計画。良品計画の堂前宣夫会長は地域活性化を「土着化」と表現する。
都市部に集中していた店舗を地方へも分散し、生活必需品がそろうスーパーマーケットとともに展開する方策で拡大してきた。
「無印良品」というと、シンプルなデザインのおしゃれな製品のイメージが強い。しかし、当初は、流行の有名ブランド品に対して製品の質そのものに価値を定めて、良いものを提供するという理念から始まった。
現在の店舗数は世界で約1400店舗。8月末時点での今期の売上は8000億円ほどという。前年同期の7000億円ほどから大幅に伸びたことが示されている。
世界で広く展開する無印良品だが、良品計画では「グローバル製造小売業」から「地域資源循環業」への変革を進めているという。「農業や食のほか、販売した商品も100%回収して地域で資源を循環するモデルをつくれないか」と堂前氏。
松田氏と良品計画の堂前氏は実は同じ山口県出身。松田氏は、KDDIの「土着化」という良品計画の概念に感銘を受けたと松田氏は実感を述べる。「何に困っているかは見ててもわからない。地域に根差すことで信頼される」と話した。
奈良県のイオンモール橿原には世界最大の無印良品の店舗がある。きっかけは、廃校の校舎を活用した取り組みの相談をもちかけられたことという。事業として規模が必要なため、橿原に2400坪の店舗を構えた。喫茶店のように過ごせる書店や子供が遊べる場所、地元の食品を紹介する場所として活用されているという。
一方で、KDDIの位置情報ビッグデータ分析ツール「KDDI Location Analyzer」での分析によると、奈良県の店舗ゆえに奈良県内、そして隣接する大阪府からの来場者が過半数を占める。その一方で、大阪と同じく隣接する京都府からの来訪者は少ない。堂前会長は「京都に行って(奈良を)通過して大阪に行く人が多い」と嘆く。
これを受けた松田氏は、その土地を好きで、ずっと住み続けたいと思う地元住民がいる一方で、外部にはその魅力が伝わっていないことを指摘。「AIを活用して地域ごとにガイドブックを出すような会社があると、AIで自然におすすめできる。地域に対してデジタルができることはまだあるのではないか」と述べた。
加えて、KDDIとしても地域への取り組みとして挑戦はしているものの「地域への密着(土着)には至らないところもあると思う。ヒント・秘訣を堂前氏に教えてもらった」と講演を締めくくった。











































