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クアルコムCEOが語る生成AI時代の拡がりと、フラッグシップの「Snapdragon 8 Elite」がもたらす可能性

 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOにOpenAIのサム・アルトマンCEO、Metaのマーク・ザッカーバーグCEO、そしてEpic Gamesやベストバイ、GMモーターズの経営トップがビデオメッセージを寄せたかと思えば、サムスンでGalaxyシリーズを長年リードするTMロー氏まで登壇する――。

 スマートフォンだけではなく、生成AI、そして自動車と幅広い業界トップがパートナーとして存在感を見せたのは、21日(米国時間)に開催された、米クアルコムのイベント「Snapdragon Summit 2024」の基調講演だ。

クアルコムのアモンCEO

 世界のテクノロジー分野をリードする企業が手を結ぶクアルコムは、長年、携帯電話の処理能力を司るチップセット(SoC)を手掛ける企業。今年は、「世界最速のスマホ向けチップセット」をうたう最新製品「Snapdragon 8 Elite」を発表した。だが、クリスティアーノ・アモンCEOは、基調講演で幅広い分野の企業のトップからのメッセージを添えることで、「生成AIのある未来」へ変化する時代をあらためてアピールした。

 本稿では、アモンCEOがプレゼンテーションを行った基調講演の前半をご紹介する。Snapdragon 8 Eliteについては、基調講演の後半、あるいはイベントの別のセッションなどで詳細が紹介され、別記事でご紹介する予定だ。

クアルコムは「AIファースト」を目指す

 来年で10回目となる「Snapdragon Summit」。1年前の同イベントで、アモンCEOは、クアルコムが通信分野だけの企業からコネクテッドプロセッシングカンパニーへ変化すると宣言した。

 今回の基調講演冒頭で、アモン氏は、クアルコムが目指す姿は「新しいAI処理の時代に向けたコネクテッドコンピューティング企業」であり、移行期の現在、Snapdragonという存在も進化し続けていると語る。

 ここ数年の生成AIの興隆が、これまでを破壊する最たるもの、と位置づけた同氏は、巨大な処理能力を有するデータセンターが膨大なエネルギーを消費する存在であり、そこにデータも流れ込んでいる現状を指摘。

 人とコンピューターという関係の中でのユーザー体験では、まずキーボードが最初のインターフェイスとなり、その後、マウスが登場してGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)が取り入れられ、スマートフォンの登場で、そうしたユーザー体験がさらに深まったと振り返る。

 ユーザーインターフェイスの進化、処理能力の向上、そして通信環境の進化という3つの要素が交わり、今、生成AIで、コンピューターが人の言葉を理解できるようになった。そして、さまざまなサービスがアプリという形で使いこなされるようになり、これからは生成AIとアプリが組み合わされていく――。

 そんな将来像を唱えるアモン氏は、銀行アプリと生成AIの体験の進化を解説する。たとえば現在は、ユーザーがアプリを立ち上げて残高などを確認するという使い方だが、パーソナライズされたAIアシスタントが広がれば、「買い物のときにデビッドカードで支払いたいけど、残高はある?」と質問することで、支払えるかどうかわかる、といった流れになる可能性がある。

 アプリで用意された機能が、AIを介するようになる、つまりこれからはAIファーストになるというのが、アモン氏率いる、現在のクアルコムが考える未来だ。

業界をリードする企業のトップが続々

 そんな将来像を現実にするため、アモン氏はパートナーシップを結ぶ企業・団体のトップからのビデオメッセージを続々と紹介する。

 最初に登場したのは、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏。クアルコムとマイクロソフトの関係が、生成AI時代に向けて、たとえば直近ではCopilot+ PCを発表するなど、緊密な関係をあらためてアピール。

マイクロソフトのナデラCEO

 続いて登場したのは、Metaのマーク・ザッカーバーグCEO。Facebookも手掛けるMetaだが、今回は、XRデバイスを展開する存在として、空間コンピューティングと生成AIが融合する未来に向けて、「Meta Quest 3」などクアルコムが提供するチップセットプラットフォームを活用したXRデバイスをあらためて紹介した。

Metaのザッカーバーグ氏

 そして、OpenAIのサム・アルトマン氏からのビデオメッセージでは、クラウドベースでChatGPTなどを展開するなかで、「クラウドAIとオンデバイスAIはお互いを補完し合う」(アルトマン氏)関係とする。

サム・アルトマン氏

 PC、空間コンピューティング、生成AIの大手と続いたあと、アモン氏はクアルコムが自動車向けにプラットフォームを展開していることを紹介。その上でエピックゲームスのティム・スウィーニーCEO兼創設者からのビデオメッセージが披露された。

スウィーニー氏

 スウィーニー氏は主にスマートフォン向けのゲームでクアルコムとの関係を強化してきたなか、「ソフトウェア設計における次の巨大なフロンティア」として自動車分野を挙げる。車内エンタメのことを語るかと思いきや、スウィーニー氏は「運転における認識や支援などに対応できる準備ができている」と語り、新たな分野への意欲を見せる。

 その自動車業界を牽引する存在としては、GM(General Motors)のメアリー・バーラCEOから「クアルコムとの関係は、業界のイノベーションをリードするための鍵になる」というメッセージが寄せられたほか、BMWのフランク・ウェバーCTOが、クアルコムと協力して自動運転支援システムを設計していることを紹介。2026年に発売予定の新モデルがSnapdragon Rideを採用することに触れた。

GMのバーラCEO
BMWのウェバーCTO

 そして最後のビデオメッセージとなったのは、米国最大の家電量販店であるBest Buyのコリー・バリーCEO。クアルコムのアモンCEOとの対談というかたちで、生成AIはBest Buyにとってもユーザー体験を大きく変える存在であり、製品選びに迷う来店客をガイドするスタッフがBest Buyの財産と紹介。これからのクアルコムとBest Buyのパートナーシップへの期待感が語られた。

Best BuyのバリーCEO

GalaxyをリードするTMロー氏が登壇

 アモン氏は、新製品「Snapdragon 8 Elite」の能力を、ベンチマークなどを交えて紹介。

 そして登場したのが、サムスンでGalaxyシリーズの製品開発を長くリードするTMロー氏だ。

TMロー氏

 同氏は、2024年末までに2億台以上のGalaxyデバイスに「Galaxy AI」機能を拡大すること、Galaxy AIを通じて、自宅でも自分のクルマのなかでも、AIアシスタントとの会話で、日常生活がより豊かになると語り、今後もクアルコムと協力しながら未来を形作る意欲を示した。

 アモン氏のパートでは、多くのパートナー企業とともに、AIファーストの未来を実現すべく、さまざまなアプリやOSを支えるチップセット企業としての考えが示された内容だった。