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震災直後にEcoFlowのポータブル電源が重宝、石川県珠洲市で話を聞いた

 1月1日に発生し、北陸地方に甚大な被害をもたらした令和6年能登半島地震。被災地では、さまざまな事業者が復旧活動にあたっている。

 たとえば電力や水といったライフラインはもちろんのこと、人々の情報収集やコミュニケーションにはモバイル通信やインターネットも欠かせない。そこで携帯各社は、可搬型の基地局や衛星通信「Starlink」を用いた応急処置のほか、状況に応じて他社と連携しながら復旧に取り組んだ。

 例として、NTTドコモとKDDIは船上基地局を共同で運用。ソフトバンクは能登半島で給油所を開設し、KDDIの車両にも給油した。

 また、ソフトバンクの3Gサービスは1月末で提供が終わる予定だったが、震災の影響を受けて延期が発表され、4月15日の終了予定となった。楽天モバイルは被災地の一部で1月~3月の利用料を無料にし、被災した人々を支援する。

 そんななか、“持ち運べる電力”として、ポータブル電源も各地で活用されているという。ポータブル電源を手掛けるEcoFlowは、支援活動として76台を被災地に展開。今回、現地を訪れた。

珠洲市の現在

 金沢市から車を北へ約140km走らせると、能登半島の北端に位置する珠洲市に着く。道路状況が整っていない場所もあるなか、金沢市から珠洲市への所要時間は3時間弱だった。

 震災から3カ月近くが経過してもなお、人々にとっての日常は失われたままだ。倒壊した家屋、亀裂が入った道路、傾いた電柱や標識が、揺れがいかに激しかったかを物語る。

EcoFlowによる被災地支援

 EcoFlowは被災地に対し、「DELTA Pro」などを含むポータブル電源76台、ソーラーパネル17枚を提供。また、モバイルバッテリーや充電ケーブル、防災ボックスもあわせて提供している。

 1月2日にプレスリリースやSNSで支援情報を拡散したあと、石川県の企業や自治体、ボランティア団体から問い合わせがあったという。

 当初、道路の寸断や損傷などを理由として物流がストップし、輪島市や珠洲市などへの直接の輸送手段はなかった。そこで1月5日、EcoFlowが手配したトラックで、東京から金沢市や七尾市、小松市まで物資を配送。現地の企業やボランティア団体によって、その先へ物資が運ばれた。

キャンプ場を営む濱野氏の話

 キャンプ場「Camping Spot Hamano(キャンピングスポットハマノ)」は、眼前に日本海を臨むロケーションにある。珠洲市で生まれ育った濱野達也氏は、本業として瓦屋を営むかたわら、キャンプ場を運営してきた。

 地震が起きた日は濱野氏の誕生日であり、利用客から祝福の言葉をかけられながらキャンプ場を開けていたが、ただならぬ揺れを感じ、10分~15分程度で荷物をまとめて避難することになった。

 キャンプ場に戻ってきても電気が通じず、濱野氏はDELTA Pro(3600Wh)を人づてに借り、スマートフォンの充電やLEDライトの使用に役立てた。

利用イメージ。写真は「DELTA 2」

 その後キャンプ場では電気が通り、DELTA Proは周囲で困っている人に貸し出すことに。貸し出した先ではエアコンを稼働させるケースもあったという。

 DELTA Proについて「満充電へのスピードがとにかく速い」と濱野氏。業界最速の充電速度をうたうDELTA Proは、約3.1時間で満充電できる。

濱野氏

 DELTA Proとあわせてソーラーパネルも持ち込まれ、曇天続きのなかで一日だけ晴天に恵まれた日に、DELTA Proへの電力供給に役立てられたようだ。

 「震災後の珠洲市に残るかどうか揺らいでいたが、キャンプ場のお客さんなどに励まされ、気持ちが固まった」と濱野氏は語る。

 現在は、キャンプ場の再建を目指すクラウドファンディングプロジェクトが「CAMPFIRE」で実施されており、本稿執筆時点で600万円以上の支援額が集まっている。

理容室を営む瓶子氏の話

 瓶子明人氏が営む「ヘアーサロンHEISHI」は、4代にわたって長年の歴史を持つ老舗の理容室で、常連客も多い。

 震災直後は電気などのライフラインがストップしたが、利用客のリクエストに応えるかたちで「1月13日には店を開けた」(瓶子氏)。

 その時点で電気は復旧していなかったため、瓶子氏が活用したのがDELTA Pro(3600Wh)。約一週間後に電気が復旧するまでの間、バーバーチェアやドライヤー、ライトなどの使用にポータブル電源が役立った。「かなり重宝して、大型(のポータブル電源)が欲しくなった」と瓶子氏は語る。

利用イメージ。写真は「RIVER 2 Pro」

 「あとは水さえ来れば」と、今後のライフライン復旧について語る瓶子氏。依然として断水は続き、理容室でシャワーに使う水は、井戸水をヒーターで温めて使用しているという。

 「ヘアーサロンHEISHI」の現在の店舗は解体予定で、今後どこに建て直すかも含めて検討中とのこと。新たな店舗が、再び多くの常連客でにぎわう日が来ることを願ってやまない。