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「5G SA」普及が日本の5G高速化のカギ、エリクソンの定期レポート

 エリクソン・ジャパンは、世界の通信事情になどについて調査をまとめた「エリクソンモビリティレポート」の2023年11月版を公開した。本稿ではレポートの一部を紹介する。

エリクソン・ジャパン 鹿島氏

2029年、5Gは世界で50億超の契約数に

 レポートによれば、5G契約者数は2023年内でグローバルで16億件にのぼると予測。主に北米地域などの成長が堅調で、2029年には全世界で53億契約に達するとされている。一方で4G契約数は現時点で52億件と徐々に減少傾向にあり、徐々に5Gが人々の生活に浸透していることがわかる。

 エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏は、世界における1カ月のデータ通信容量の平均が21GBであると紹介。2029年には56GBにまで増加すると予測を示し、データ通信への需要は今後も伸びる傾向にあると説明した。国別に見ると、インドのスマートフォン1台あたりの月間平均データ通信量は31GBともっとも高かったという。

 5Gがモバイルデータトラフィックの25%を占めており、2029年にその割合はさらに増え76%に達すると見込まれている。また、全世界での5G人口カバー率は45%。2029年には85%に達するとされた。地域別に見れば、北米や中国などの地域が高いカバレッジを示している。

 5Gの普及により、通信事業者が提供するサービスにも変化がある。データ利用無制限プランを提供する事業者は4Gでは20%以下だが、5Gでは60%以上にのぼる。5Gの性能のアピールの一環としてエンタメサービスをバンドルするプランも増加した。さらに、スマートフォンとタブレットとのデータ通信容量の共有といったものも現れている。鹿島氏は今後、ウェアラブル機器がさらに普及すると、同様のサービスが増える可能性があると指摘した。

 アップリンクのトラフィックはSNSやクラウドでの利用が多数。一方で動画はダウンリンクでの利用が圧倒的と、視聴サービスで利用されていることがよく分かる。

NTNやURLLCなど5G高速化も順次

 レポートでは、今後の通信の進化も予測。現在、米スペースXの「Starlink」などで実現しているNTN(非地上系ネットワーク)についても、3GPPに準拠した仕組みのものが2025年くらいまでに開始すると予測する。このほか、超低遅延通信を実現する「URLLC」も2024年ごろには端末とネットワークの双方で準備が整ってくるとした。

 また、複数の周波数をまとめることで通信速度を向上させる「キャリアアグリゲーション」(CA)の高度化が進み、2025年ごろにかけて4CC、5CCなどさらに高速化するとされている。5GでのCAは、NSA(Non-Stand Alone)方式ではすでに実現しているが実際にはその多くに4Gの信号が使われており、5Gの仕組みのみで構成されるSA(Stand Alone)で実現できればさらなる高速化が期待される。

 日本の5G人口カバー率は96.6%とされているが、4G用の周波数を転用して整備されたエリアが多い。鹿島氏は「CAできるのは100MHz(幅)のエリア」として「どんどんアグリゲーションの機能を使うには、ミッドバンド(Sub6)のカバレッジをいかに広げるかが重要」と語り、SAについて「日本のカバレッジはかなり限定されたエリア。どんどん広げていくのは重要なポイント」と見解を述べた。

IoTやFWBの伸びにも期待

 セルラーIoT接続は、2029年に60億に達することが見込まれている。鹿島氏は今後「RedCap」対応のデバイスが2024年にも登場し普及するとした。

 RedCapは、5GのIoT機器向け規格。LTE Cat-4程度の性能があることに加えて、低消費電力などの特徴をもつ。今後、LTE規格のIoTデバイスを徐々に置き換えていくとみられる。具体的にはスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスなどがあり、省電力性の高さから、ARゴーグルなどにも普及が見込まれるという。

 このほか、無線アクセスを使う固定ネットワーク「FWA」(Fixed Wireless Access)も伸びており、2029年には全世界で3億3000万件の契約が予想されている。有線ネットワークが未整備の国で利用されるケースが多いが、光ファイバーが普及した日本でもFWAは伸びているという。