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インドが今後の5Gを牽引するか、世界の通信プラン動向など「エリクソン モビリティレポート」

 エリクソン(Ericsson)は14日、2023年6月版のモビリティレポートを発表した。エリクソン モビリティレポート(EMR)は、年2回程度世界のモバイル市場の最新動向が掲載されており、今回は、5G通信に関する内容を中心に、地域別のユーザー数やどういった料金プラン、サービスが提供されているかがグローバルで確認できる。

 今回は、エリクソン・ジャパン チーフテクノロジーオフィサーの鹿島 毅氏から世界のモバイル市場の動向を聞いた。

エリクソン・ジャパン チーフテクノロジーオフィサーの鹿島 毅氏

年末に5G契約が世界合計15億に

 今回のレポートの主要なトピックとして、「2023年末に5G通信の加入数が15億に達する見込み」や「上位20の5G市場は、過去2年間で7%収益が増加」、「100を超える通信事業者が5GベースのFWA(固定無線アクセス)を提供している」が挙げられている。

 まず、5G契約数について、北米で堅調な推移を見せていることもあり、2023年末までに15億契約となることが見込まれており、28年末には、その数が46億に達すると予想されている。

 一方、4G契約数も増加傾向にあるが、鹿島氏は「今年が増加のピークとなる」と分析。23年に52億契約で折り返しとなる予測を示した。

 通信事業者の利益に関しては、5Gの加入者普及率と売上の相関を見ると、2019年前後の5G通信サービス開始前後から売上が上向き傾向となっており、過去2年で年間7%程度伸びてきているという。鹿島氏は、5Gの浸透は通信事業者のビジネスにプラスとなる傾向にあるとしている。

 先述の通り、北米での5G浸透率が高く、地域別に見ても2028年の予測値もほかの地域と比較しても高い契約率となると見られる。北米にほか、西欧地域や湾岸諸国、日本を含む北東アジアといった地域でも5G浸透率が高い傾向にある。

 一方、中南米や東南アジアの地域は、周波数の割り当ての進捗状況なども鑑み、28年の予測値も低めの数字が示されている。

 5Gの真の力が発揮されるといわれているSA(Stand Alone、コア設備などを4Gと切り離して5G専用の設備で通信する方式)について、世界的にも比率が上がってきている。現状は中国が圧倒的に多いが、インドが速いペースでSA化を推し進めており、キャリアによっては5Gサービススタートの段階からSAを提供している。

 SA普及率は、中国、インド、北米の順で大きくなっており、このほかシンガポールなどでも普及している。

北東アジアについて

 日本、中国、韓国、台湾、香港が属するエリアを北東アジアとしており、比較的早い段階で5Gサービスが展開された地域である。

 特に韓国では中周波数帯の「ミッドバンド」でネットワークが構成されているほか、中国や台湾も早期にサービスインされている。中国では特に低周波数帯「ローバンド」での展開が進められている。

 早期に展開できた理由として鹿島氏は、通信機器ベンダーや通信事業者など5Gエコシステムに関わるプレイヤーが各国にいるためとしている。これは、5Gネットワークを作っていくなかで多くの方向性が混じり合う環境になるといい、国の政策や通信事業者の投資戦略などを見ても、グローバルとは異なる形で現れているという。

 たとえば、4Gと5Gの契約数を見ると、4Gの契約数は20年から右肩下がりに減っていき、5Gの契約数が非常に早いスピードで増えてきているのがわかる。

 28年の予測値は16億人になる予測が示されており、現時点で30%の5G契約費率が28年には71%になるだろうと予測している。

 北東アジアの5Gネットワークの傾向として、鹿島氏は「最初はミッドバンド、次にローバンドでカバレッジを拡大してきている現状。次は屋内エリアのカバレッジをどう展開していくかという段階に来ている」と分析。

 加えて、モバイルトラフィックも5Gトラフィックの増加が見込まれており、28年にはスマートフォン1台あたりの平均月間データ使用量は54GBと見込んでいることから、今後もさらなる5G設備への積極投資が必要としている。

スマートフォン出荷台数は減少傾向

 グローバルに話を戻し、今度はスマートフォンの出荷台数を見てみる。

 スマートフォンの23年第1四半期の出荷台数は、前年同期比で13%減少、主にハイエンドモデルで回復傾向が見られる。スマートフォンの買い換えサイクル長期化によるものとされているが、5G対応機種の展開や、スマートフォン自体の性能向上などもあるため、5Gスマートフォンの市場投入は今後も重要になってくるとしている。

 出荷台数自体は、23年後半に回復するとみており、23年年間で出荷されるスマートフォンのうち62%が5Gスマートフォンとなるだろうと見ている。

 また、ミリ波活用に向けて、Sub-6とミリ波を組み合わせて運用する「NR-DC」技術を採用したネットワークが今後登場してくると見込まれているほか、キャリアアグリゲーション(CA)など、スマートフォンの高機能化が進んでいくだろうとしている。

IoTデバイスでも5Gが活用

 また、従来は低消費電力で低速での通信が多かったIoTデバイスにおいても、近年早い通信速度が求められるIoT機器が登場している。

 これまでの2Gまたは3Gを使ったレガシーのものは、2023年ごろから数を減らしていく一方、Massive IoTや速度が早いブロードバンドIoTデバイスが急速に普及していくと予測。2028年末までに携帯回線に接続するIoTデバイスの60%がブロードバンドIoTになると見られている。

FWA(固定無線アクセス)の成長

 5G通信では、世界の100を超える通信事業者がFWA(固定無線アクセス)を提供している。

 FWAは、いわゆる「携帯回線を活用した家のインターネット」であり、基本的にはモバイルルーターと異なり設置場所を変えない形で利用できる。

 FWAを提供するモバイル事業者数は増加傾向にあり、と行くに速度ベースの料金体系をもつ事業者の割合が増えてきているという。

 数字を見てみると、20年4月はFWAが占める割合が56%だが23年4月には79%まで拡大、このうち5Gで提供しているのが41%、速度で料金体系を変えている通信事業者が27%となっている。

 地域で見ると、北米ではすべての通信事業者でFWAのサービスが提供されているほか、速度ごとのプランも多く提供されている。

 アジアでは、インドなどで廉価なユーザー端末(CPE)の普及で伸長する傾向にあるとしており、28年には世界の5G通信の80%がFWAで占められるのではないかと予測されている。また、28年の固定ブロードバンド接続のうち、17%がFWA接続とみられている。

 インドでの普及の背景としては、ミッドバンドによるMassiveMIMOやSA対応など先進的なネットワークが構築されてきており、ファイバーによる接続を上回る勢いでFWAが普及してきているという。

世界の通信プラン

 続いて、グローバルで提供されている5G通信の提供形態別事業者数を見てみる。日本でおなじみの「パケット」いわゆるデータ通信量で料金が決まる提供形態は、世界的にも主流で多くの事業者から提供されている。

 次に多いのが先述のFWAで、無制限や動画サービスなど特定の通信だけ無制限となるもの(サービスベース)の提供形態をとる事業者も増加傾向にある。

 なお、5Gを開始した通信事業者のうち22%が5Gに付加価値をつけた「プレミアム課金」を実施しているほか、5G提供事業者の58%がエンターテインメントサービスなどをバンドルして提供している。ただし、5G自体が主流になりつつあることから、通信事業者としても5G移行を促進しており、プレミアム課金自体は減少傾向にあるという。

 ユーザーが契約する通信容量と実際に利用したトラフィックを、契約容量層ごとで見てみる。欧州と北米の通信事業者それぞれで、容量別に加入者数とトラフィック量の割合を見ると、欧州では月間20GB以上を消費するユーザー数は全体の17%だが、トラフィック量は全体の81%を占めており、北米ではユーザー数は全体の14%である一方、トラフィック量は全体の80%を占めている。

 つまり、約10%程度のユーザーがトラフィック全体の約70%を占める結果となっており、トラフィック増を牽引しているのは、大量にデータ通信を行う一部のユーザーであることがわかる。とりわけ月間100GB以上利用するユーザーでは、VODのストリーミングサービスを使う傾向が強いとしており、今後ARやXRサービスの普及動向に注視していく必要があるとしている。

 トラフィック全体では、22年第1四半期から23年第1四半期にかけて36%増加している。加入者増が見込めない日本においても年間で20%増加しており、今後10年間で現在の14倍、年間30%程度のペースで伸びてくると見込まれている。

 グローバルでは、先述の5GによるFWAのほか、国によっては4Gの契約数も増加傾向にあるところもあるため、4Gの設備投資も継続的に行っていく必要があるとしている。

 加えて、リアルタイム性が追求されるAR/XR関連の普及次第では、さらにデータ量の増大や低遅延性が求められることになるとしている。

今後のトラフィック増加は5Gが担うように

 1台あたりの月間データ通信量は、22年の数字で月間16GBで23年には20GBに到達するのではと予測されている。インドでは28年に62GBに到達する予測も出ている。

 5Gの人口カバレッジでは、22年は35%だったが28年には85%になるだろうと見られている。

 一方、5G体験を享受できるミッドバンドでの人口カバー率は、世界で約30%だが中国以外では10%強となり、地域間で大きなばらつきが見られるという。ミッドバンドでは、ローバンドよりもより5Gのメリットが出てくるが、北米などで高い普及率となっている一方で欧州ではその割合が小さい傾向にある。

エリアや時間帯によるトラフィックの傾向

 レポートでは、都市部や閑散部(ルーラルエリア)などエリアごとのトラフィック増加傾向や時間帯による増加傾向などがまとめられている。

 たとえば、都市部では5Gによるデータトラフィックが増加傾向にある一方、ルーラルエリアでは5G端末の普及が進んでおらず引き続き4Gによるデータトラフィックが占めている。

 また、ミッドバンドによる5G展開は、北米での進捗が進んでいる一方、欧州では遅れをとっており、世界全体では25%の基地局で提供されている。今後は利用できる周波数の追加による機能強化や、SAやネットワークスライシングの商用化、ミリ波など高い周波数帯の活用と行ったことが求められるとしている。

衛星との干渉など、日本固有の問題も

鹿島氏

 国内の携帯回線では、4Gからミッドバンドを積極的に活用しているほか、4Gの周波数転用(NR化)による5Gサービスなどが提供されている。

 5G Sub-6で利用している周波数帯の一つ「3.7GHz帯」については、三大都市圏において衛星(地球局など)との電波干渉が課題となっており、スムーズなエリア展開の障壁になっていると言われている。

 鹿島氏は「当事者の立場ではない」としながらも、これらの衛星干渉のほかにも、Massive MIMO対応基地局の設置が難しい既存基地局の存在やミリ波対応スマートフォンの普及率など日本固有の問題も多いと指摘する。

 本来であれば、5Gネットワークの拡大と5G端末の普及でユーザーの体験価値が上がり、データ利用料が増大し通信事業者がさらに設備投資に意欲的になるというサイクルができあがるが、日本では4Gネットワークの品質が高かったため、NR化による5Gでは4Gとの体験価値の差が出にくく、通信事業者の設備投資意欲も下がってしまっていると分析。

 一方で、電波干渉が徐々に解消する方向に進んでおり、今後マルチバンドでのMassive MIMOやCA、高い周波数帯のNR化などが期待されるとした。