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エリクソンが日本の5G強化を打ち出す 世界での成功を背景に事業者を支援
2024年11月11日 19:19
エリクソンは、通信事業者向けに5Gネットワークの運用・改善などで活用するソフトウェア7点を新たに発表した。また、エリクソン・ジャパンが11日に開催したイベント「エリクソン・フォーラム 2024」で今後の日本の5Gネットワークの展望が示された。
プログラマブルネットワーク向けの機能を提供へ
プログラマブルなネットワークを開発するRANソフトウェア。通信事業者はさまざまな性能レベルを測定しサービス品質保証(SLA)と照合することでビジネスと持続可能性を達成できるとする。
AI活用のRANや通信事業者の定義にあわせてRANが複雑なプロセスとアクションを処理するインテントドリブンネットワーク、多様な接続ニーズに適応してサービス要件を満たし、デリバリーを証明するリアルタイムな調整と可観測性を確保するサービス認識RANなどの技術を含む。
GPSなどの位置情報がなくとも位置情報サービスを導入できる「屋外ポジショニング」やスマートフォンなど接続されるデバイスのバッテリー消費をおさえるネットワーク機能、警察や消防・救急などへ向けた高負荷時でも安定した接続を保証する機能などがある。2024年第3四半期~2025年第1四半期ごろにサブスクリプションサービスとして提供される見込み。
高度化が求められる5G、成功する条件
エリクソンの調査では、今後5年間で通信トラフィックは3倍以上もの増加が見込まれている。世界の例で言うとモバイルデータトラフィックは月間136EB(エクサバイト)から467EBになることが予測される。日本でも同様にトラフィックは増加の一途をたどる見込みという。
さらに5Gに限ればさらにハイペースでトラフィックが増加していくとされる。グローバルにおける予測では、2029年までに5G人口カバー率は50%から85%にまで上るとされる。ユーザーやトラフィック、5Gアクセス率に加えて、SLAベースの産業用ソリューションも増加すると考えられている。
エリクソンが示したデータによれば、5G SAは日本では一部の都市部での展開にとどまっているとみられるが、米国やインドでは国土のかなりの地点で5G SAが利用できる。なかでもインドは「最も注目すべき成功事例」とされ、速いスピードで5Gの展開に成功したという。世界全体では5G契約者数は17億人に達した。
インドや米国での5G展開には、エリクソンのプロダクトの進化やソリューションの影響があり、日本国内でもこれをもとに5Gネットワークの高度化をサポートする。基地局の構成を削減したり、デジタルツインの活用で基地局の現場への人員派遣を最小限におさえるなどの取り組みが紹介された。
世界では、5G SA(Stand Alone)と用途ごとに帯域を区切る「ネットワークスライシング」を用いて、各地域のオペレーターによるサービス提供をサポートしている。F1の会場でレースのマルチアングル映像を提供、消防士が装着するカメラ映像を共有し消火活動に役立てるといった取り組みがあり、通信事業者の収益に貢献している。
エリクソン・ジャパン 野崎哲社長は、ネットワークAPIとして通信がさまざまな産業に浸透することを説明し「5Gネットワークに求められる要件はどんどん高まっていく」と見る。その世界を実現するためには「Massive MIMO」や全バンド5G導入、高5Gアクセス率・高5Gレートで高性能かつ大容量の5G構築を急ぐ必要があると指摘する。エリクソンは9月、世界の通信事業者12社とともにネットワークAPIの導入加速に向け新会社設立を発表している。現時点で日本企業の名前はないが今後、声をかけて取り組んでいく予定という。
エリクソンの技術開発は基本的に本国で進められるというが、開発の最後の部分やコアネットワークの開発を日本で行うことで、国内通信事業者の要求に応えやすくする。ほかに6G時代に向けて、横浜国立大学および電気通信大学と共同研究を進めるほか、日本・EUの共同研究などにも参画し「日本に溶け込む取り組みを行う」とした。
AIとともに進化するネットワーク
6G時代に向けては日本を含め、世界で5GがNSA(Non-Stand Alone)からSAに移行していく見込み。それをベースとして「5G Advanced」が浸透していき、やがて6Gに至る。
エリクソン・ジャパンの鹿島毅CTOは「6GはAIがある前提での議論。今後のネットワークはAIネイティブになる」と話す。エリクソンのAIでの注力分野としては「AIインフラ」「信頼できるAI」や生成AIの通信のなかでの活用方法など6つを主に追求していくという。
また、衛星通信などNTN(非地上系ネットワーク)の広まりやネットワークをコミュニケーション以外にも使用する構想を鹿島氏は説明する。デジタルツインを構築する手法としての活用や飛行禁止区域を飛ぶドローンの探知などがその例として挙げられた。実現すれば、これもまた通信事業者の収益のひとつとして期待される。