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クアルコムが紹介する「5G Advanced」3GPP Release 18の5つの主要テクノロジーとは

 米クアルコムは、「5G Advanced」と呼称する「3GPP Release 18」における、5つの重要なテクノロジーについて、自社ブログで紹介している。「5G Advanced」とされるRelease 18は2024年6月に正式リリースが予定される。

アップリンクの強化

 Release 18では、スマートフォンなどのデバイスからネットワークへのアップロード性能の強化が重視されている。アップリンクの性能および信頼性は、デバイスが伝送に利用できるLink Budget(リンクバジェット)がどれだけあるかによって制限される場合があり、これは主にデバイスの送信電力と、伝送路での伝播損失に起因する。

 これは、5G向けのsub-6周波数帯(特に3.5GHz帯)で特に顕著で、アップリンクの課題を克服することは、5G Advancedの技術開発において、重要である。ユーザーエクスペリエンスとシステム性能を向上させるため、クアルコムはRelease 18でデバイスのカバレッジとモビリティを向上させるアップリンクMIMO性能のさらなる向上、アップリンク送信スイッチング、キャリアアグリゲーション(CA)時の動的パワーアグリゲーションを導入した。

ブロードバンドの進化

 Release 18は、容量と速度の限界を押し上げるだけでなく、ネットワーク事業者とユーザーの双方にメリットをもたらす新機能が提供される。

 重要な進歩の1つはMIMO技術の継続的な進化で、Release 18ではモバイルおよびFWAサービスをターゲットに、デバイスごとに多くのレイヤーをサポートできるようになった。さらに、デバイスのモビリティ管理にも大幅な最適化が行われ、ハンドオーバー時のユーザー体験がよりシームレスになった。

 また、Release 18にはダイナミック・スペクトラム・シェアリング(DSS)、キャリアアグリゲーション(CA)、高精度位置測位、マルチSIMサポートなど、ブロードバンドサービスに関する性能や効率が多方面にわたって強化される。

IoTの親展と拡大

 Release 18の重要な分野の1つに、より効率的にIoTデバイスやサービスをインターネット接続することがあげられる。これには、強化されたRedCapデバイスや、小規模データ伝送のサポート、新しいLP-WUR(Low-Power Wakeup Receiver)が含まれる。

 多くのIoTサービスが、測位性能の改善と信頼性向上による恩恵を受けることができ、Release 18では帯域幅が狭いデバイスやSidelink測位のための最適化も導入される。より高性能なIoTサービスのために、Release 18では、ドローン通信の強化、XR向けのさらなる最適化に重点を置いている。

効率的なシステム設計

 「5G Advanced」は、運用の改善、柔軟な展開、周波数利用効率の面で大幅に進歩している。Release 18では、これまでの技術革新をベースに、新しい省エネ技術によって運用効率が改善されている。

 ネットワークの展開効率改善の面では、Release 18はコスト効率の高いエリア拡張のためのツールボックスを拡張し、Network Controlled Repeater(NCR)、Mobile Integrated Access and Backhaul(IAB)、サイドリンクリレー(sidelink Relay)や、NR-U sidelinkおよび、NTN(non-terrestrial network)の機能が強化されている。

 周波数利用効率改善の面からは、Release 18では全二重通信を可能にする干渉軽減技術に重点をおき、新しいサブバンド全二重通信を検討している。さらに、ブロードキャスト/マルチキャスト性能が強化され、複数のデバイスへ効率的に同時データ送信が可能となる。

AIワイヤレス基盤

 AIとワイヤレス技術は、将来の技術革新を牽引する相乗効果のある2つの要素で、最近の生成AIの人気急上昇は、AIが解き放つ無限の可能性をめぐる世界的な熱狂に火をつけた。無線技術の進歩にとって、AI技術はチャネルの非線形性を最適化するなど、困難な課題を克服するための強力なソリューションとなる。

 5G Advancedでは、エンドツーエンドの無線システムにシームレスに統合できるAIモデルとフレームワークの評価に焦点をあて、Release 18で無線AIの新時代をスタートする。これは、Release 19やその先の20で予定される仕様や、AIネイティブなプラットフォームとして期待される6Gプラットフォームの基礎となる重要なステップとされる。

 初期研究では、モビリティ最適化を含むいくつかの魅力的なユースケースや、チャネル・フィードバック、ビーム管理、測位などのユースケースを網羅している。