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スマートホームの新規格「Matter」で何が便利になるの? Amazonの中の人による説明を聞いた

 朝起きたときに「おはよう」と言えば電気がついたり、帰宅前にスマホアプリからエアコンの電源を入れたり……生活が便利になるスマートホーム製品の存在は、日本でも少しずつ浸透してきた印象がある。

 そんなスマートホーム製品を、もっと便利なものにするための新規格――それが、2021年5月に発表された「Matter(マター)」だ。スマートホーム製品間の互換性を向上するというねらいのもとで発表され、2022年には「Matter 1.0」が登場。アマゾン(Amazon)やアップル(Apple)、グーグル(Google)をはじめとするさまざまな企業が参画している。

 では、Matterでいったい何がどのように便利になるのか? アマゾンジャパンは4日、報道陣向けの説明会を開催し、Matterに向けた取り組みや、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の事業の概況などを説明した。

スマートホームをよりシンプルなものに

 Matterは、米国のConnectivity Standards Alliance(CSA)が策定した、スマートホームの接続規格。スマートホーム製品やシステム、音声アシスタントの相互接続をその目的としている。

 先述の通りアマゾンもMatterに参画しており、「Echo」シリーズのデバイスでMatterのサポートを進めてきた。

 Matterの普及によって期待される大きなメリットは、乱立するさまざまなスマートホーム規格の一元化を図れること。利用者にとって、スマートホーム製品を使い始める際のハードルが下がる。

 たとえば、あるメーカーのスマートプラグを購入し、それを照明につなげてアレクサから操作したいとする。通常であれば、スマートプラグメーカーのアプリをインストールしてセットアップし、それをあらためてアマゾンのAlexaアプリで認識させなければならない。そうして初めて、「アレクサ、(スマートプラグにつながった)照明を消して」というコマンドを使えるようになる。

 もしスマートプラグがMatterに対応していれば、手順はもっとシンプルだ。スマートプラグメーカーのアプリのインストールは不要になり、Alexaアプリからデバイス(スマートプラグ)を登録するだけでいい。

写真右奥にあるのは、米国向けのMatter対応スマートプラグ。アマゾンの製品ではないが、Alexaアプリから登録してすぐ使える

 Amazon Alexa インターナショナルのジャパン カントリーマネジャーを務めるティニス・スキパース(Theunis Scheepers)氏は、「複数のスマートホーム製品があり、それぞれで環境を構築しなければならないというような“負荷”が、Matterによって下がる。そして最高の体験が実現する」と語った。

スキパース氏

アレクサにおける取り組み

 アマゾンでは従来から、スマートデバイス向けに「フラストレーションフリーセットアップ(Frustration Free Setup:FFS)」と呼ばれる拡張機能を提供している。これは、デバイスのセットアップの際、Wi-Fiパスワードなどの入力を省くことで、利用までの手順を簡略化するもの。

 FFSに含まれるソリューションのひとつとして、Matter対応デバイス向けにも「Matter Simple Setup(MSS)」が用意され、シンプルな手順でセットアップが完了する。

 そのほか、アレクサ経由で操作されるMatter対応デバイスをローカルでコントロール可能にすることで、遅延などの低減につなげる機能「コミッショナブルエンドポイント」や、開発者向けのAPIセット「Ambient Home Dev Kit」も用意される。

今後に向け、パートナーとも連携

 説明会が開催された4日には、日本企業では初となるMatter対応の製品として、Natureからスマートリモコン「Nature Remo nano」が発売された。

Nature代表取締役の塩出晴海氏
「Nature Remo nano」

 アマゾンは、Matterを策定したCSAの主要メンバーとして、これからも同規格の普及に向けた取り組みを継続する。また、Natureのようなパートナーと連携しながら、自社製品における機能拡張なども図っていく。

Amazon Alexa インターナショナル 技術本部本部長の福与直也氏