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Google Play、アプリ開発者のストーリーが見られる「#WeArePlay」を日本でも展開スタート

Google Playで「#WeArePlay」、日本国内で提供開始

 グーグル(Google)は10日、新しい開発者支援プログラム「#WeArePlay」を日本国内で提供を開始した。

 開発者がアプリを設計/開発するに至った経緯などのエピソードを披露するものですでにインドや米国、欧州で展開が始まっている。日本では、10日から21のストーリーが提供され、今後合計49のストーリーが提供される。

 今回のプログラムは開発者にどのような影響を与えるのか? アプリストア「Google Play」の現況とともにGoogle Playシニアディレクターのキラン・マニ(Kiran Mani)氏から話を聞いた。

10日から21のストーリー、合計49ストーリーが展開される(写真はGoogle Playシニアディレクターのキラン・マニ氏)
公開スケジュール。開発者の地域ごとに展開される

 また、後半では、日本のアプリ開発者3名によるトークセッションの模様も紹介する。

ユーザーの継続した信頼を得るために投資

キラン氏

 プライベートでも日本を訪れているキラン氏は、日本のアプリ市場について「世界でも人気のある漫画やアニメ、ゲームの発祥地でもある日本は、Google Playにとって特別な市場」とコメント。Google Playでは、アプリ開発者が優れたアプリやそれによるビジネスの構築を実現すべく、今回のような刺激的な新しいキャンペーンで支援していくとした。

 Google Playについてキラン氏は「ユーザーがお気に入りのアプリやゲーム、映画、テレビ番組、書籍などが見つけやすい『デジタルモール』のようなもの」と説明。「新しい世界を提供するアプリのるつぼ」として、ものの販売から購入、読み書きや仕事を探したり、従業員を雇用したりするためのアプリなどさまざまなものがある。

 キラン氏は続けて「Google Playの素晴らしい点は、本当に多くのアプリがあり、毎月何十億人ものユーザーが訪れ、開発者による何百ものアプリやゲームを見つけられていること。そして、アプリ開発者はアプリを配信し、世界中のユーザーに見てもらえること」と指摘する。

 そのうえで、グーグルの重要な使命の一つとして「開発者がユーザーと出会い、ロイヤリティを獲得することを支援すること」とし、そのための取り組みとして「安全なアプリの開発」や「ユーザーからの信頼強化」に役立つプラットフォーム開発やポリシーへの投資を継続してきたとキラン氏は説明する。

 ユーザーによくないアプリを排除する「Google Playプロテクト」もその取り組みの一つとキラン氏。

 「Google Playプロテクト」では、ユーザーがインストールしている数十億のアプリをスキャンし、Android端末の安全を提供するための機能で、2022年だけでも143万件のポリシー違反アプリがGoogle Playで公開されるのを防ぐことができたという。

 キラン氏は「ユーザーからの信頼を獲得するには、まず安全なアプリでなければならない」とし、加えて、ユーザー保護だけでなくアプリ開発者への投資も実施しているとコメント。開発者の創造性やアプリ開発への支援だけでなく、開発者の経歴や企業規模に関係なく優れたビジネスを構築することを支援しているとしている。

開発者支援プログラム

 開発者への支援の一環で、開発者向けにさまざまな支援プログラムを提供している。

 まずは、「インディー ゲーム フェスティバル」。学生を含む小規模なゲーム開発者をサポートするために毎年開催されているイベントで、グーグルや外部審査員とともに、日本でプレイされている革新的なインディーズゲームやアプリを毎年選出し、受賞者への支援を行っている。日本では、今年で5年目の開催となる。

 続いて「Google Play ベストオブ」では、ライフスタイル関連のアプリやゲームを含む多くのカテゴリーにわたり、各国の優れたアプリを表彰するプログラムで、グローバルで開催されている。

 今回の「#WeArePlay」を含め、これらの開発者支援プログラムについてキラン氏は「アプリを利用するユーザーにとっても有用なプログラムではないか」とコメントし、今回のプログラムの意義を語った。

 キラン氏は最後に自身の経験を交えて、さまざまなスマートフォンアプリにより生活が豊かになっていることを説明。

キラン氏

 自身は幼少期に吃音(発話障害のひとつ)を抱えていたほか、母国語が英語ではなかったため、長い期間練習を重ねてこの壇上に上がっていることを明らかにした。

 その上で、「さまざまなアプリがさまざまな言語で開発されているほか、生成AIなどの技術もあり、世界中のユーザーが自分の時間で吃音のような壁があってもそれを克服する練習ができるようになった。それこそが、優れたアプリの力であり、Google Playの力だと思っている」とコメントした。

それぞれのエピソードが語られたトークセッション

 トークセッションでは、日本のアプリ開発者3人が登壇し、アプリ開発の経緯などが披露された。

 登壇者は、佐久医師会 佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医員の坂本 昌彦氏、ユキヤマ 代表取締役の岡本 圭司氏、ワンダープラネット 代表取締役社長 CEOの常川 友樹氏。

保護者の心配や苦労を軽減したい

佐久医師会 坂本氏

 佐久医師会のアプリ「教えて!ドクター」では、子供の病状にあわせて医師の目線で適切なアドバイスを行うアプリ。保護者の不安を軽減するほか、医療機関の適正受診を促すことで病院の負担軽減につながるという。

 アプリ開発のきっかけは、佐久医師会の坂本昌彦医師が以前勤めていた豪雪地帯の福島県南会津郡で、集落の端に住んでいる遠方のユーザーが、夜中に生後11カ月の赤ちゃんを抱えてやってきたことだった。結局その赤ちゃんは、自宅で療養できるほどの症状であったが、保護者にヘルスリテラシーがあれば、危険を伴いながら来院する必要がなかったのでは? という気づきからアプリ開発に至ったという。

 現在では、佐久市以外の大都市圏のユーザーなどにもSNSなどで広まり、海外の日本人ユーザーにも使用されている。

 今回の取り組み「#WeArePlay」について坂本氏は、アプリの効果を研究していると、繰り返しアプリを使うユーザーがヘルスリテラシー向上の傾向があることがわかっており、繰り返しユーザーに使ってもらえるよう、病院での広報以外に今回プログラムで機能などを知ってもらいたいとコメント。

 インターネットの医療情報をもとに健康情報を判断する保護者が多いが、なにが正しい情報なのか、正確なのかわからないことが多いと指摘。「教えて!ドクター」アプリの正確な情報で、ユーザーに安心感を与え、多言語化などユーザーとの距離を縮めていきたいと今後の展望を語った。

世界のスキーヤーをサポートしたい

ユキヤマ 岡本氏

 ユキヤマのアプリ「yukiyama」は、全国のスキー場のデータを集め、スマートフォンでスキー場の地図や、同伴者の位置情報などスキー/スノーボードを楽しむユーザーのためのアプリ。

 ユキヤマ代表取締役の岡本圭司氏は「世界の中で雪質は日本が一番良い」とする一方で、「スキー場のサービスは昭和から発展していない」と指摘。「テクノロジーの力で、スキー/スノーボードを面白くしていきたい」という思いでアプリ開発を進めたという。

 今回の「#WeArePlay」について岡本氏は「Playというフレーズが気に入った」とし、自身を「開発者ではなく1プレイヤー、スノーボーダー」だと説明し「自分も開発者と接することで世界が広がった。今回のプログラムでも参加者同士のコミュニティがあると感じ、ほかの開発者などと出会えたり、グーグルとのコミュニケーションを経たりすることで、『yukiyama』アプリの可能性を広げていきたい」と語った。

 アプリでは「コミュニティ」を大事にしているという岡本氏は、自身もプロスノーボーダーである経験から、アプリのユーザーであるスノーボーダー/スキーヤーを「同じ遊びを共有している仲間」とし、アプリ開発についてもユーザーからの改善点を吸い上げながら、アプリ改良を行っているとした。

グーグルから非常にいいアドバイスをもらえた

ワンダープラネット 常川氏

 ワンダープラネットのアプリ「クラッシュフィーバー」では、RPGにパズル要素を加えることでユーザー層の拡大に成功したゲームアプリ。ワンダープラネット設立時について「最初は、自動車関連のエンジニアと大学生アルバイトで立ち上げた」とワンダープラネット代表取締役社長CEOの常川友樹氏は説明。

 今回のプログラム参加については「創立10年で上場も経験した一方で、名古屋のゲーム会社はまだ数えるほどしか無い状態。世界で戦えるゲームを作成し広めることで、名古屋で頑張っていることを広めていきたい」とした。

 Google Playについては、8年前のクラッシュフィーバー開発時を振り返り「どうしたらゲームを作れるのか、どうやって市場を広げていけば良いのかわからない状態で、グーグルとのコミュニケーションを通じて、サポートや不具合の発見など、(自身が)ゲームクリエイターになっていく中で非常に良いアドバイスを得られた。(会社の)成長に欠かせないものを提供してもらえた」とコメントした。

サイドローディングは歓迎するものか

 Androidのアプリストアとして規模が大きい「Google Play」だが、その一方でアプリの入手先を公式のアプリストア以外からダウンロードする「サイドローディング」を広める取り組みが、公正取引委員会などで実施されている。

 たとえば、アプリ開発者が自社サイトでアプリをダウンロードできるようになれば、これまでアプリストアに支払っていた手数料がなくなるほか、情報の吸い上げリスクなどが軽減されることが考えられる。その一方、アプリストアでの審査を経ずにダウンロードできるようになるため、セキュリティリスクや重大な欠陥を抱えたアプリが市場に放出されるリスクが懸念されている。

 Androidでは、Google Play以外のアプリストアからダウンロードすることもできるが、現在では多くのユーザーがGoogle Playからアプリをダウンロードしていると考えられる。

 このサイドローディング議論について、アプリストア側(グーグル キラン氏)と、開発者側(佐久医師会 坂本氏、ユキヤマ 岡本氏、ワンダープラネット 常川氏)双方から考えを聞いた。

キラン氏
 Androidでは、Google Playがほとんどの開発者にとってメインのアプリストアとなっていることはうれしく思う。

 一方で、サイドローディングについて、なぜ「Google Play」というプラットフォームを作っているかというと、ユーザーを守るためということ。Androidでは、「ユーザーの情報がほかに漏れないようにする」などユーザーの安全性をグーグルでは最優先事項として考えている。

キラン氏

 サイドローディングがあった場合でも、ユーザーの安全を第一に、マルウェアやユーザーの情報が許諾なく使われることのないよう、今後もプラットフォームに力を入れていきたいと思う。

 グーグルとしては、すでにサイドローディング時に3つの取り組みを実施している。

 まず1つめは「アプリがアプリストア経由でないことをユーザーに警告する」こと。標準的な経路ではないアプリであるため、安全性に問題があると、それを理解した上で使用するようにと案内するもの。

 2つめは、もしそのアプリが認証を得た場合は、そのアプリに関する警告を発しないようにすること。

 3つめは、サイドローディングによるアプリにも「Google Playプロテクト」準拠の調査を定期的に実施し、マルウェアなどが入っているなど懸念があるアプリに関して警告するプログラムを実施している。

 Google Playでは、常にユーザーの安全を確保し、開発者がより多くのユーザーを見つけ、非常にシームレスで安全な方法でグローバルに成長することができる。開発者がアプリをGoogle Playに持ち込んで、より多くのユーザーを見つけるための最も優れたプラットフォームになるように努力していく。

坂本氏
 子供の健康を守るアプリにおいて、言うならば保護者から子供の健康をアプリに委ねてくれていることになる。

 非常に大切な子供の健康、したがってその信頼に応える必要があると考えている。そうなると、やはりプラットフォームが安心できるものであるということはすごく大切だと思う。

 「Google Play」に対する信頼が、私たちのアプリへの信頼にもつながる部分となるため、多くのユーザーに使ってもらいたい思いもあるが、やはり信頼というところは私たちにとってとても大切な要素だと思っている。

岡本氏
 私は、フリースタイルスノーボードというのをやっており、どれだけ自由に表現できるかという競技をやっている。一方で、自由と無秩序というのは全然違うと感じていて、ある程度のルールで管理されている中でどれだけ表現するかということをすごく大事にしている。何もかもが自由であれば楽しいわけではないと思っている。

 僕たちのアプリは提供して4年目となるが、Google Playのなかで展開していくことで、アプリを広めていくだけでなく、開発者のコミュニティへ参加できたり、グーグルからのサポートを受けられたり、Google Playでやる意味というのがあると思うので、そういったものを模索しながらサービスを大きくしていきたい。

常川氏
 デベロッパーにとって、いろいろな選択肢が増えることはポジティブだと思う。

 一方で、我々のようにグローバルに対してできるだけ開発者の負担を減らしながらワンストップでプロダクトを出していくことは、見えない手間がかかったり、さまざまなハードルがあったりするため、適切なプラットフォームを選択していく必要があると感じている。

 そのなかで、「Google Play」については、非常に満足しており、すごくサポートしてもらえているので、ユーザーに一番(我々の)ゲームが届くプラットフォームを選択できていると思っている。

【訂正】
サイドローディングに関するグーグルの取り組みについて、すでに実施している内容と確認できたため、内容を修正しました。