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交通機関にも広まる「ビザのタッチ決済」、移動に留まらないその効果

 日本の公共交通機関でも広まりを見せる「ビザのタッチ決済」。交通機関へのビザのタッチ決済導入がもたらす効果と現状について25日、ビザ・ワールドワイド・ジャパンが公共交通機関におけるビザのタッチ決済の取り組みについて説明した。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン 今田氏

広まる「タッチ決済」

 同社ではこれまで、各公共交通機関の事業者と連携し、ビザのタッチ決済を導入する実証実験などを実施してきた。現状ではバスや鉄道路線でのビザのタッチ決済導入が進んでおり、26都道府県で42プロジェクトが発表もしくは展開済みという。

 そのうちの1社である鹿児島市交通局では当初、Suicaなどに代表される相互利用可能な交通系ICカードの導入はなく、独自ブランドのカードを用いていたという状況でビザのタッチ決済を導入。ビザ・ワールドワイド・ジャパン コアプラットフォーム ソリューションズ ディレクターの今田和成氏は、3月末時点での利用が2022年11月の実証実験としての開始時と比較して、トランザクションベースで4倍に伸びたとその成果を強調した。

 さらに3月28日からは全車両がビザのタッチ決済に対応したことで、さらなる利用拡大が見込まれる。

経済効果へも波及する

 世界でみると、650の公共交通機関ですでにビザのタッチ決済が利用されている。公共交通機関でのタッチ決済利用は単なる移動の利用にとどまらず、周辺店舗などへの経済効果ももたらすという。

 ロンドンでの例では、ビザのタッチ決済を公共交通機関で利用したユーザーは、決済件数が2倍に伸び、決済金額は70%増えた。ブカレストやミラノでも同様に交通機関でのビザのタッチ決済ユーザーによる周辺店舗での決済金額が伸びる傾向ある。

 インバウンド需要の点からもタッチ決済は有効という今田氏。ある調査では「タッチ決済が公共交通機関の利便性を高めるか」という設問に88%が肯定している。さらに、公共交通機関でタッチ決済を利用するユーザーは、利用のないユーザーと比較して平均利用額が高い傾向にあることが示された。

 国内ユーザーの場合でも、タッチ決済利用のある場合、22%ほど利用額に伸びがあるがインバウンドの場合は伸び率244%と突出している。

交通機関と加盟店の両輪が必要

 2022年3月と2023年3月で、日本国内の公共交通機関で使用されたビザのタッチ決済の海外会員の比率は9.6倍の違いがあった。あわせて、90以上の国と地域で発行されたカードが利用された実績があると今田氏は紹介する。

 ビザでは、公共交通機関と加盟店での普及が、タッチ決済全体の普及のためのインフラと位置づける。コロナ禍が収束しつつある今、かつてのように観光都市での競争がもう始まっていると和田氏は指摘。日本が観光立国を目指すうえでは観光客にリピーターになってもらう必要があるとして、タッチ決済によるスムーズな移動の実現の必要性を訴える。

 今田氏は、東京駅の券売機に並ぶ外国からの観光客を見かけたという自身の体験を語り「(券売機に並ぶ時間は)消費するわけではなくずっと待っている」と指摘。海外からの観光客は消費意向が高いという前出のデータに触れつつ「スムーズな移動ができていれば、新たな消費が生まれたかもしれない」とも語る。経済への影響から見ても移動のスムーズさは重要なポイントと指摘した。

 海外では、実際に周辺の店舗への経済的波及効果がでているほか、日本でも同様な傾向が出てきたとして、今後も交通機関での利用から生まれる経済効果を重要視していく構えを見せた。