ニュース

「江ノ電」のタッチ決済対応は15日から、ひと足先に江ノ島駅で体験してきた

 明日4月15日から、“江ノ電”こと江ノ島電鉄の全駅にタッチ決済が導入される。三井住友カード、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、JCB、日本信号、QUADRACとの取り組みで、乗客にとっての利便性向上や窓口の混雑緩和を図る。

 決済ブランドは、Visa、JCB、American Express、Diners Club、Discoverに対応する。MastercardやUnionPayは順次追加される予定。

 鉄道におけるタッチ決済の導入は、首都圏では江ノ電が初になるという。そこで今回は実際に江ノ島駅へ赴き、タッチ決済を体験してきた。

導入の背景

 相模湾に面し、観光地としても高い人気を誇る神奈川・湘南エリア。藤沢~鎌倉間の計15駅をつなぐ江ノ電は、近隣住民だけでなく多くの観光客が利用する。それゆえ、新型コロナウイルスが猛威を振るう前は、特定の曜日や時間帯に乗客が集中することも多く、慢性的な遅延や運休に悩まされていた。2019年度には、約400本が運休したという。

 江ノ島電鉄 代表取締役社長の󠄀楢󠄀井進氏は、「対策工事などにも取り組んできたが、ハード面の整備には限界があった。新型コロナウイルスが収束しつつあるこのタイミングで、ソフト面で施策を探していた」と語る。

楢󠄀井氏

 今回のタッチ決済導入により、乗客にとっての利便性アップにつなげる。また、たとえば加盟店とのタイアップ施策などを通じ、地域経済の活性化も図っていく。

 江ノ島電鉄 常務取締役の嶋津重幹氏は、「乗客のうち、交通系ICカードの利用者が9割で、それ以外が現金を利用している。定量的な数字は持っていないが、アジアや欧州など、外国人の利用者も多い。今回の導入で、キャッシュレス化を加速できれば」と語る。

嶋津氏

実際に体験してみた

 タッチ決済対応の改札機器としては、有人窓口向けの簡易改札機のほか、ポール型改札機が用意される。全15駅のうち、簡易改札機とポール型改札機が併設されるのは、江ノ島駅と長谷駅。鎌倉駅と藤沢駅が簡易改札機のみとなり、それ以外の駅にはポール型改札機が設置される。

簡易改札機
ポール型改札機

 江ノ島駅への入場時にポール型改札機を利用する場合、通常の改札機をいったんスルーし、その先にあるポール型改札機にタッチ決済対応のスマートフォンやカードをかざす流れ。Google PayやApple Payに対応しており、スマートフォンだけでなくスマートウォッチでも利用できる。

 ホームのスペースを考慮し、ポール型改札機の下部は厚さ115mmのスリムなデザインになっている。

ポール型改札機を横から撮影。スリムなデザインでスペースを節約できる

処理速度は実測で0.25~0.35秒

 交通系ICカードの処理速度は0.2秒とされ、タッチ決済のスピードもそれに近づけるべく改良が進められている。三井住友カード Transit事業推進部長の石塚雅敏氏は、「QUADRACとの取り組みにより、(処理速度は)実測で0.25~0.35秒程度にはなっている」と自信を見せる。

石塚氏

 QUADRACは今回の取り組みで、SaaS型プラットフォーム「Q-move」を提供。LTE通信を活用しており、障害などに備えて通信は冗長化されている。同社営業部長の高野泰典氏は「環境調査を実施し、最適と判断される複数の通信事業者を利用している」と語った。

高野氏

現状の課題や今後の展望

 江ノ島電鉄の嶋津氏は、「タッチ決済導入による運賃の値上げは考えていない」とコメント。また、江ノ電でのタッチ決済が、現状では小児料金や定期券には対応していないことを課題として挙げた。

 三井住友カードの石塚氏は、「タッチ決済は世界中で普及が進んでいる。多様な乗車手段へのニーズへ応えるべく、さまざまな事業者への導入を図りたい」と語り、今後への意欲を見せた。