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交通機関へ広まる「Visaのタッチ決済」、その現状と今後の展望とは
2022年12月20日 00:01
コンビニやスーパーなどさまざまな小売店で、徐々に普及が進むクレジットカードの「タッチ決済」。日本国内で発行されたVisaのタッチ決済対応カードは2022年9月末時点で約8700万枚。昨今では鉄道に導入する実証実験が行われるなど、公共交通機関での利用に向けた動きも見られる。
タッチ決済を進める意義とその現状はどのようなものなのか。ビザ・ワールドワイド・ジャパンが、タッチ決済の現状と公共交通機関への導入に向けた取り組みを海外との比較を交えて説明した。
ビザが都市交通に取り組む理由
ビザが都市交通の変革に取り組む意義を、ビザ・ワールドワイド・ジャパン ソリューション企画部 ディレクターの大野有生氏は、高齢化や地球温暖化防止の観点で説明する。
都市化による渋滞や高齢者の移動手段確保や自動車のCO2排出といった環境問題を、タッチ決済を用いた公共交通機関の拡大で解決に寄与する。日本は、2050年に100人のうち16人が65歳以上の高齢者となるという試算もあり、少子高齢化は対処すべき喫緊の課題となっている。
新型コロナウイルスの影響により、需要が大きく落ち込んだ公共交通機関。2022年の日本の場合、乗客数はコロナ禍以前の70~79%程度。一方でアメリカニューヨークは40~65%、ロンドンは45~80%と、日本は比較的需要の回復が早いと大野氏は指摘する。運賃値上げ傾向が続く世界に対して、鉄道輸送以外の事業展開を目指す事業者が多いこともまた日本の特徴という。
そうしたなか、タッチ決済を導入する公共交通機関は全世界で615以上。加えてすでに800件以上の導入プロジェクトが進行していると大野氏は紹介。公共交通機関でのタッチ決済利用はこの10カ月で10億件を突破するなど、大きな伸びを見せている。
さまざまな交通機関に展開へ
タッチ決済の普及が進む理由について大野氏はそのひとつに対応カードの枚数が増えたことがあるのではないかと推測する。
グローバルでは、2020年~21年の公共交通機関におけるタッチ決済比率はおよそ1.7%。2019年の約2.3%と比較して、落ち込んでいるがこれはコロナ禍によるものと考えられる。その後2022年には約5.3%に大きく伸びた。日本においても、入国制限を撤廃した10月からは徐々にタッチ決済の比率が高くなっている。
大野氏は可能性のひとつとして、タッチ決済対応カードの発行が増えたこととあわせて、新型コロナウイルスによる移動制限が解除されるとともに、タッチ決済対応カードを持つ旅行者の利用が増えているのではと語る。
同社による日本における利用者の意識調査では、交通系カード利用時の悩みは、チャージの手間が全世代通して35%。特に20%。一方でタッチ決済で感じるメリットとして、チャージが不要という点を56%の対象者が挙げている。
大野氏は今後、ビザが思い描く姿として「すべての移動手段にビザのタッチ決済を拡張していく」ことと説明する。MaaS(Mobility as a Service)は、全ての移動手段で支払いが発生して最適なルート組んで統合的に決済することで初めて実現するとして、今後鉄道やバス以外の移動手段にもタッチ決済の展開を目指すことを語った。
加盟店と公共交通機関は「両輪」
日本国内におけるタッチ決済に対応するカードは8700万枚。タッチ決済の対応端末は150万台以上にもなるという。
取引件数としても増加しており、2021年と2022年の7~9月における比較ではコンビニで約2.3倍以上、ドラッグストアでは約3.9倍以上、公共交通機関では約5.3倍以上と堅調な伸びを示していることが明かされた。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン デジタルソリューションズ ディレクターの今田和成氏は特徴的な事例として、コンビニでの取引を紹介する。同氏によれば、コンビニにおけるビザが取り扱う取引のうち、2件に1件がタッチ決済によるものという。
国内の公共交通機関では、バスを中心に鉄道でもVisaのタッチ決済の導入が拡大している。2022年12月時点で21都道府県33プロジェクトが展開もしくは発表済みとされている。今田氏は「公共交通機関でのタッチ決済は次のフェーズに移行し始めている」と語る。
南海グループでは、タッチ決済の実証実験を継続しているほか、2023年夏には初の首都圏の鉄道におけるタッチ決済の実証実験が予定されている。このほか、姫神バスにおいて1日の上限額を設定した定額乗り放題的サービスを導入。エリア拡大や新たなサービスの展開を始めており、今田氏はその現状について「タッチ決済の認知度や公共交通機関でも利用できることが広がってきている」と評価した。
一方で、タッチ決済のマークがあるにもかかわらず利用を断られてしまったというケースも散見される。これについて今田氏は「ハード的に対応しているが、ソフトウェアが導入されていないところがたくさんある」と見解を示す。加えて、店員が認識していないケースもあるとして「タッチ決済加盟店の拡大、(各ブランド間での)『タッチ決済』という名称とオペレーションの統一、加盟店への教育に力を入れておりできるだけ早く便利な環境を整えたい」とした。
さらに、鉄道でタッチ決済を導入するに当たっては、日本独特の課題もあるようだ。都市圏の鉄道は、事業者間で直通運転をしているケースが多く、これは海外ではあまり例がないという。カナダ・トロントでは空港線と在来線を改札なしでつなぐという試み進んでいるものの、これはあくまで同じ事業者間のケース。大野氏によれば、現時点で違う事業者間でどのように接続するかという取り組みは行われていないものの、今後必ず対処すべき課題になってくることから、そう遠くない時期に何らかの対応を進めていく姿勢を示した。
タッチ決済における、公共交通機関と店舗の拡大は自転車の両輪であると説明する今田氏。キャッシュレス決済の加速に向けて、タッチ決済は重要な柱と位置づけ、今後カード発行のほかにもタッチ決済可能な店舗と公共交通機関の拡大を推進。タッチ決済そのものの認知度向上もあわせて進めると語った。