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Tポイント統合の「新Vポイント」は何が変わる? サービス統合で生まれる新しい価値とは

 三井住友フィナンシャルグループ、三井住友カード、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、CCCMKホールディングスは、VポイントとTポイントを統合した新しいVポイントを発表した。2024年春にもサービスを開始する。

左から三井住友カード 大西幸彦氏、カルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役会長兼CEO 増田宗昭氏、三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 グループCEO 太田純氏、カルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役社長兼COO・CCCMK ホールディングス 代表取締役社長兼COOの髙橋誉則氏

新ポイントサービス、来春にも

 TポイントとVポイントの統合による「新Vポイント」では、スマートフォンでの利用を重視し、アプリや決済、Visaが世界で展開するインフラとの融合をアピールする。従来のポイントサービスでは、プラスチックカードがサービスの主体だったが、新Vポイントでは決済機能を含むポイントアプリで新たな体験を目指す。

 三井住友カード 代表取締役社長の大西幸彦氏は、これまでのポイントサービスの課題をその閉鎖的な仕組みにあることを指摘する。従来は、発行された店舗で使わなければいけないケースが多かった。新Vポイントでは、使える場所を意識させない幅広い利用場所を提供。大西氏は「使い道にこまることは一切ない」と自信をのぞかせる。

 タッチ決済でも利用できるほか、近年、国内でも普及しつつある公共交通機関における「Visaのタッチ決済」での支払い時にポイントでの利用が可能となる。

より貯まりやすく

 Tポイント加盟店で三井住友カード発行のクレジットカード利用で最大2%上乗せするなど、これまで以上に貯めやすくなる。また、外出先でポイントカードを忘れたりアプリが開けなかったりというトラブルがあっても、アプリ上の利用明細から申請することで、あとからでもポイント還元を受けられるなどの施策が予定されている。

 さらに、これまではポイントを貯める操作と支払う操作の2段階だったが、新Vポイントでは一度の操作でポイント付与と支払いを実現する「ワンオペレーション」を導入するなど使い勝手にも配慮する。さらに、ポイントやチャージした残高を送金したり、保護者が子どもの支払いの通知を受け取ったり、送金したりといった新たな体験も提供する予定となっている。

 一般ユーザーのみではなく、加盟店向けにも統合によるメリットを示す。新Vポイントは、世界中のVisa加盟店でポイント貯めたり使えたりでき、国内でも750万のVisa加盟店、15万のTポイントで同様に利用できることになる。

 「こういった場所でポイントが貯まる、お客様が使える場所が増えるということが基盤拡大につながる」としたほか、三井住友フィナンシャルグループが提供する金融サービスとの相乗効果で、さらなる基盤拡大が見込めるとカルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役社長兼COO・CCCMK ホールディングス 代表取締役社長兼COOの髙橋誉則氏は説明した。

 新Vポイント会員の総数は、1億4600万人でアクティブかつユニークなユーザー数で見ても8600万人。日本最大の会員基盤は、加盟店にとっても大きな集客の面で魅力となる。加えて、直近3年で利用率が3倍超の伸びを見せているというアプリ「モバイルTカード」で、プラスチックカードでは難しかったユーザーコミュニケーションを図れるほか、さまざまな顧客の観測手段を実現する。

 これまでの加盟店に加えて、さらに多くの企業が新Vポイントの導入を検討しているとも明かし、三井住友カードのカード決済での取扱高30兆円とCCCのポイントデータ7兆円分とをかけあわせ、より高度なマーケティングソリューションの提供を目指す。

統合の背景

 統合についての協議は、2022年8月ごろから始まった。各社によれば協議はスピーディに進み、増田氏は「大企業との提携は時間がかかり、後からいろいろな人の意見が出てくる」と一般論を語ったうえで、今回については「ほとんどそういう不愉快な思いはしませんでした」とユーモアを交えつつ感想を述べた。

 今回、両サービスが統合するに至った背景として、SMBCグループ側としては「互いに不足しているところを補い合える」、CCCグループ側としては「新しい顧客価値が作れる。決済と紐づかないとポイントサービスは生きていけない」とその連携を意義を示した。そのうえで増田氏は「嫌いな人と(ビジネスを)やって上手いこと行ったことがない。太田さんと会ったときに『おもろいおっちゃんやな』と思って一緒にやりたいと思った」とも語った。

「Tポイント」なくなり「Vポイント」になった背景

 ロゴにはTポイントの印象が色濃く出ているが、名称としてはVポイントが残った。これについては、世界中のネットワークで使えるVポイントの名称を残すという判断があったためという。一方で長く親しまれてきたTポイントの名称は消滅することになる。

 増田氏は「(名称について)こだわりはなく、見ているのはお客さん」としたうえで「今回は明らかにVisaを核としたV(ポイント)がお客さんにとって価値がある」と、あくまでユーザーにとって価値がある判断をしたと、前向きな見方を示した。

市場環境の変化で統合決意

 競合他社の台頭やスマートフォンの普及など、大きな環境変化を迎えるなかで増田氏はTポイントの価値が「相対的に落ちていた」とも分析。かつてはTポイントもスタンプカードでサービスを提供していたことを紹介し、昨今のスマートフォン・キャッシュレス決済の普及について言及。そうした時代の変化のなか「CCCが単独でやるのがいいのかと考えたときに(統合を)『お願いするしかない』と決めた」と語った。

 金融事業は、携帯電話各社も新たなビジネスとして注力しており、ポイントサービスは多岐に渡る。各社がそれぞれのエコシステムの構築を試みるなかで、どう立ち向かうのか。増田氏は「経済圏(エコシステム)は基本的に企業のエゴだと思う。決めるのはお客さん。我々の考えは『どこよりも価値のあるサービスを作る』こと。その一点が競争戦略」と考えを示す。

 加盟店開拓もユーザー拡大に欠かせない。こうした分野については三井住友カードや三井住友銀行とも連携して、新たな加盟店獲得を進めるという。