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ソフトバンクが営業利益1兆円を達成、宮川社長「過去最高益を目指していく」

 ソフトバンクは10日、2023年3月期の決算を発表した。決算説明会には、同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏らが登壇した。

宮川氏

 連結業績として、2022年度の売上高は5.9兆円を記録。4%の増収で、セグメント別に見てもすべてのセグメントで増収となった。

 営業利益は1兆円を超え、10%の増益を記録した。そのうちコンシューマー事業では、通信量の値下げの影響などを受け、28%の減益となっている。

 宮川氏は「通信量の値下げが最も厳しい1年ではあったが、そんななかでも営業利益1兆円を達成できた」とコメントした。

 純利益は5314億円で、3%の増益となった。

 ソフトバンクが2020年8月に発表した中期経営目標では、2022年度の業績目標として、「売上高5.5兆円」「営業利益1兆円」「純利益5300億円」という目標が掲げられていた。2022年度の実績でこれらをすべて達成し、宮川氏は「正直安堵している」と語る。

 今後のビジョンとして「次世代の社会インフラ」の提供を目指すソフトバンクは、2021年度~2030年度の10カ年を3つのフェーズに分割。第2フェーズとして位置づけられる2023年度~2025年度では、スマートフォンの累計契約数の純増継続などを目指し、強固な事業基盤の構築を図っていく。

 2025年度までの財務目標として、宮川氏は「純利益をV字回復させ、過去最高益を目指す」と語った。

質疑応答

――KDDIとの取り組みとして、「副回線サービス」が始まった。今のところの反響を教えてほしい。

宮川氏
 正直、過度な期待はしていませんでした。必要な方に必要なかたちで提供できればと思っていましたので、そういう意味では順調な滑り出しじゃないかなと思っています。

 (「副回線サービス」は)1カ月で何万回線も増えるようなサービスではありませんので。

――KDDIはNTTドコモとも「副回線サービス」を始めたが、どうとらえているのか。

宮川氏
 ドコモさんとの話について、個別の話をするわけにはいかないのですが、当然ながらやっていきたいとは考えています。いろいろなかたちでキャリア同士が支える世の中を、そろそろ実現していかないといけないと思います。

――「副回線サービス」についてワンナンバー(ひとつの番号)でやりたいという発言もあったが。

宮川氏
 KDDIさんとも議論させていただきましたが、技術的に(ワンナンバーが)できることは確認しました。ただ、障害の状況によっては、着信側のほうが正常に行なえないケースがあるということがわかりました。

 ですから、世の中が混乱してしまうのではないかと思いました。

 障害のケースによってということであれば、たとえば“呼”を処理しているコア設備だけの問題なら、発着信は普通にできます。しかし、障害が起こる場所によっては事象が変わってしまうことになり、当面は今のかたちのまま行こうかということになりました。

 KDDIさんも同じ認識でしたので、サービスは統一させていただきました。

――最近はソフトバンクのモバイルネットワークの品質が良いという印象がある。

宮川氏
 なかなか褒めていただけない会社ですので、「良くなった」と言われると本当に嬉しいです。

 私どもとしましては、700MHzと1.7GHzの2つの周波数を主力としながら、Sub6との組み合わせで5Gネットワークの“面展開”を進めています。やってみてよくわかりましたが、4Gから5Gへの移行(マイグレーション)は思った以上に難しい。

 利用者の声を分析する専門チームを設けており、ネットワークに関する改善は順調に進んできました。日本のエリアを666メッシュに区切って品質を日々チェックし、その結果も把握しながら進めています。

 4Gから5Gへの移行は、3Gから4Gのときより課題が多いと感じます。ほかのキャリアさんも本当に難しいと思います。課題を解決しつつ、5G SA(スタンドアローン)への切り替えもしっかりこなしていきたいです。

――ARPU(利用者ひとりあたりの平均収入)に関する考えを聞きたい。

榛葉氏(代表取締役 副社長執行役員 兼 COO コンシューマ事業統括の榛葉淳氏
 我々の事業を引っ張っているのはワイモバイルですが、ARPUという観点で言えば、当然ソフトバンクブランドのほうが多くの料金をいただいています。

 通信料の値下げもあるなか、ソフトバンクブランドの再強化ということで、PayPayと連携したクーポン配布などの施策を実施してきました。

 データ容量の観点で、ワイモバイルとソフトバンクブランドで悩まれる方が増えていまして、そうした方にソフトバンクを選んでいただけるよう、総合的に注力しています。

――ソフトバンクが掲げる「次世代インフラ」のビジョンと、NTT(持株)が掲げる「IOWN」のビジョンが似ている印象を受ける。連携の可能性はあるのか。

宮川氏
 政府と一緒にやっている分散処理ネットワークの会合には、NTTの澤田さん(編集部注:NTTの澤田純代表取締役会長)も私も委員として入っておりますので、情報は共有しています。

 もし日本が、エネルギーが潤沢にある国だったらこんな議論はしません。この国のなかでどのようにデジタル化を推進していくかということについては、企業の垣根を越えて連携していく必要があると考えています。

――LINEMOについて、現状の反響は。

宮川氏
 私どものLINEMOは、ドコモさんの「ahamo」やauさんの「povo」とは位置づけが少し違います。

 料金面で言えば、ワイモバイルとLINEMOの違いはあまり大きくありません。お客さまに選択を委ねるかたちで提供していますが、ワイモバイルは店頭で申し込まれる方が多いので、どちらかと言えば、主力商品はワイモバイルになると思います。

 ですから、LINEMOとワイモバイルを合算して見ているところは正直あります。

 LINEMOの調子については、昨年末、オンラインの加入者が活発だった時期があって加入数が少し増えましたが、またいつも通りに落ち着きました。

――PHSが終了したが、総括はどのようなものになるのか。また、sXGPに関する期待感を教えてほしい。

宮川氏
 僕としてもPHSに対する思いは深くて、非常に面白いテクノロジーであったというように思います。ただ、帯域のなかでやれるサービスとして、音声とデータ通信の入り口までしかできないということで、時代にはそぐわないかなと思いました。

 私どもの屋外局になっている局には、PHSの局と併存した局が今でもたくさん残っています。数万単位で共存しましたので。PHSと4Gの電波を吹いていた局が、いずれ5G単体の局になっていくというのは、時代の移り変わりとして仕方がないかなと思います。

 sXGPについては、やはり病院ですとか、干渉が少なければ少ないほうがいい場所はたくさんあります。アップルさんも議論に協力的で、今後新しいサービスを提案できるような時期が来たらいいなと感じています。