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アスリートの練習姿をマルチアングルで、ドコモの「キャリー5G」で実現する新しいスポーツの楽しみ方

 NTTドコモと沖縄県浦添市、東京ヤクルトスワローズの3者は5Gを活用したマルチアングル配信の実証実験を2月7日~2月10日の期間で実施した。本誌ではその裏側を少しだけ覗き見る機会を得た。

ANA BALL PARK 浦添に設置されたキャリー5G

 沖縄県浦添市は、東京ヤクルトスワローズが春季キャンプ地としている「ANA BALL PARK 浦添」の所在地。実証実験は春季キャンプの練習に取り組む“推しの選手”の姿を手元のスマートフォンなどで見られるというものだ。

5Gで選手の練習を公開

 実証では、キャンプ会場のスタジアムや室内練習場、ブルペンにカメラを設置。Webサイトで練習計画表が公開されており、それにしたがって見たい映像が見られるというもの。実証には5Gを活用しているが、一般的な基地局ではなく可搬型の「キャリー5G」と呼ばれる設備が用いられた。

本来なら選手たちの練習姿が見られるが、あいにくの豪雨だった

 キャリー5Gは、自動車に搭載して利用したい場所へ持ち運べる移動式の基地局。通信設備のない場所でも5G回線を利用できるようになるため、さまざまな場所で同実証実験のマルチアングルのような5Gの特長を活かしたサービスの提供が期待できる。

 使用時には、下の写真のように電源車に接続する。活用方法などを聞くと災害時などの備えである移動基地局車にも近しい印象を抱く。しかし、キャリー5Gはあくまで、イベントなどで5Gがスポット的に必要というときにエリアを構築するもの。4Gも備える移動基地局車とはその性質を異にする。

配信用の映像を撮影する様子(ドコモ広報部提供)

 実証の場では、映像の中継に用いられるモバイルエンコーダーを5Gネットワークに接続する用途で利用された。今回の実証の場ではSub6で利用されていたという。球場のベンチでは、撮影された映像のアングルの切り替えなどの編集作業の場所が設けられていた。今回は配信の現場での作業が行われていたが、実際には遠隔地からでも可能と見込まれている。

キャリー5Gの運搬車兼電源車

 取材実施日は残念ながら悪天候に見舞われ、実際に選手らの様子を閲覧することは叶わなかったが、応援しているスポーツ選手の映像を好みのアングルで見られる仕組みが、試合時以外にも広まればより好きなスポーツ・その選手を身近に感じることができそうだ。

今後もさらなる取組みに期待

 ドコモと浦添市は、同実証実験を実施するタイミングで、スマートシティの実現に向けた連携協定を締結した。

2月10日に開かれたドコモと浦添市の連携協定締結式。左=NTTドコモ 井伊社長。右=浦添市 松本市長

 今回の実証実験は協定に含まれる取り組みではないようだが、NTTドコモ 代表取締役社長の井伊基之氏と浦添市長の松本哲治氏は、住民向けに行政サービスのデジタル化などをかかげる一方で、観光産業の活性化も視野に入れている。

 ドコモでは、これまでもサッカーや野球の試合のマルチアングル配信などを手掛けてきた。協定を結んだことで具体的にどのような取り組みが実施されるかは今後、両者がやり取りするなかで決まるとみられるが、こうした新たなスポーツとの付き合い方が沖縄から登場するのかもしれない。